フジロック2018と僕らの5日間戦記を
プレイバック(後編)
2018年最高の思い出はやっぱりフジロッ
クだった
フジロック2019も開催決定!
荒天にも屈しなかったフジロッカーたち
大体、フジロックを3日間フルで楽しもうと思ったら総額で10万円ぐらいかかるわけです。そのうえ苗場には「変動が激しすぎる天気」というラスボスが鎮座していますから、並大抵の気力と決意では返り討ちにあいます。その点でフジロックは、世界的に見ても参加者のノリがめちゃくちゃ良いフェスだと思いますね。その心、台風にも屈せず。筆者だってCHVRCHES(3日目ホワイトステージのトリ)のライブを観るまでは死ねぬのだ。
Skrillex(スクリレックス)のライブを観ているときに出会ったイギリス人、ニコラス。タトゥーが両腕に入っていて、ガタイもすこぶる良い。Skrillexという共通の話題がなければ恐ろしくて声もかけられないルックスのナイスガイです。音楽は人見知りを変えるので素晴らしい。ちなみに2日目夜の時点でニコラス的ベストアクトはポスト・マローンだそうです。「6年前にここでストーン・ローゼズを観たんだが、そのときと同じくらい感動したよ。素晴らしかったよな?」
「ああ、その通りだよ(N.E.R.Dに夢中になるあまり、すっかり見逃したことは黙ってました)」。
ケンドリック・ラマーと荒ぶる多国籍軍
団
恐らくフジロック期間中最も期待値が高かったであろう、ナンバーワン・ラッパーの登場。それまでお祭り然としていた会場の空気が一変。夜に染まった苗場が、ヒリヒリとした緊張感を漂わせておりました。ニコラスの言葉通り、ケンドリック・ラマーは紛れもなく待望されていた存在であります。
2013年、彼はホワイトステージのトリひとつ前の時間帯に出演しました。筆者もその場に居りましたが、あのときのステージの過疎っぷりは今でもよく覚えています。当時はメジャーデビュー作『good kid, m.A.A.d city』を引っさげての来日でした。
海外と日本のオーディエンスの間で温度差も感じまして、「おぉ…、やっぱりUSヒップホップはなかなか厳しいのか」なんて思ったものです。この『Backseat Freestyle』でケンドリックにシンガロングを促されたのですが、やはり非英語圏の我々にとってはなかなか難易度が高い。筆者も含め、何となくごまかしてモゴモゴしてしまった日本人が大半でありました。
だがしかし、2018年は違います。こればかりは本当に、YouTubeに非公式にアップロードされている動画だけ見て判断しないようお願い申し上げます。ステージの前のほうに居た多国籍なヘッズたちは、激ムズなケンドリックのフロウを正確に再現しておりました。
「Alright」という概念に言語の壁はありません。どの国で生活していたって関係ない。この曲がアフリカ系アメリカ人のみならず、世界中の人々の希望になり得たように。
音楽は抽象的であるところが最大のストロングポイントで、本来その曲が作られた意図とは別な方向性で解釈できる場合も多いです。『Alright』はまさにそんな曲で、だからこそ多くの人に愛されているのだと思います。そしてそれはもちろん、混迷を極める今の日本でも――。
ニコラスの他に、いつの間にかオーストラリア人の夫婦とも仲良くなってました。「やっぱり日本でもケンドリック・ラマーは人気なのね。私たちは『King Kunta』と『HUMBLE.』ぐらいしか知らないけれど、みんな凄い。全曲盛り上がってる。あなた(筆者のこと)もずっと歌ってるものね」。
「家でめちゃくちゃ練習したからさ。“My left stroke just went viral”(『HUMBLE.』の一節)のところだけは何としても完璧にしたかったよ(笑)」。
ノリが良いとか悪いとか、英語を理解できるだとか、それらはあくまで副次的なことだと思います。音楽は元々聴くもの、つまりアーティストから受け取るものでしたから、そういう意味でもやはり「ノリ」はライブの副産物であるような気がします。もちろん、アーティストはお客さんの明確にリアクションが返って来る方が楽しいでしょうけれど。
「機会があればまたどこかで会いましょう」と言って、各々次の目的地に向かいました。フェイスブックで連絡先は交換したけれど、あれから一度もメッセージのやり取りをしてません。後でこの記事を口実に連絡してみよう。
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