尾崎由香 2ndシングルは“私らしさ”
に寄り添った、原点となる一枚

この夏に「LET’ S GO JUMP☆」でソロ・デビューを果たした尾崎由香。2ndシングル「オトシモノ」は明るく元気いっぱいだった1stシングルから一転した、切ないバラード曲。意外にも思える仕上がりだが、彼女にとってはむしろプレーンな「等身大の自分」を表現した一作だという。歌を通じて伝えたい尾崎由香の“いま”、声優として、歌手としてのこれから、そしてもうすぐ帰ってくる“あの子”のことまで、じっくりと語ってもらった。

2ndシングルでは素の自分に近いものを出したいという思いがあった
――この2ndシングルがリリースされる頃にはソロ・デビューから4ヶ月になりますが、その間にご自身の中でどんな変化がありましたか?
それまではグループで活動することが多かったので、こうしたインタビューでも周りのみんなに任せたり、同調するポジションで、その分大きな責任感を背負わなくてもよかったんです。それがソロ・デビューにあたって、ひとりで人前に立つ機会がたくさんあって、まず度胸がついたかなと。自立心というか、そういうものが強くなった気がします。
――1stシングルの制作時にもっとも苦労した点は?
尾崎由香として歌う、“私の歌声”ってなんなんだろう、という部分が一番難しかったです。それまでずっとキャラクターソングを歌ってきていたので、私の歌声で歌ってくださいと言われた時からそれはずっと模索し続けました。今回、2ndシングルでかなり“自分の歌”を築けたけたんじゃないかなと思ってはいるんですけど、それまでは本当になにが自分の歌声なんだろう、と考え続けていたところではありますね。
――「LET’ S GO JUMP☆」からイメージをガラっと変えた2ndシングルですね。
切ないバラード曲なので難しさもありますけど、自分の中で解決ポイントがすぐに見つかったというか、歌詞と曲にすんなりと入り込めた感じで、“こう見せたい”ということはあまり考えなかったですね。本当に自分の等身大の歌声が乗っていて、気持ちがストレートに入っているんじゃないかなと思います。
撮影:大塚正明
――歌詞の中で特に胸に響いたフレーズはありますか?
「なくしてしまえばラクになる 簡単なことなのにできなくて」とか、そういう気持ちって誰しもがきっと持っていると思うんですけど、たとえば私の中でいえば頑固さだったり……でもそれはきっと長所と裏表だから簡単に切り離せないですよね。「オトシモノ」は恋心を歌っているんですけど、少し違ったアプローチで共感できる部分だなと思っています。
――ミュージック・ビデオは全編アニメーションですが、これは事前にイメージなどを伝えられていたりしたんですか?
レコーディング前にはまったくなかったので、曲ができてからそれに合わせて作っていただいたものですね。メインビジュアルと同じ格好をした私が出てくるんですが、アニメーションが曲に重なるとより切なさが募ります。風景も草木や水の表現が繊細で本当に曲にぴったりだなと思って。ファンの方にも曲のイメージや心情に寄り添っていただけるんじゃないかなと思っています。
――ミュージック・ビデオ内は過去の自分に出会って対話をするようなシーンが出てきますが、もしも昔の自分に会えたら伝えたいことはありますか?
考えたことがなかったなぁ……でも会えるなら伝えたいなって思うことはたくさんあります。真面目な話をすると、「もっと勉強しなさい」とか、親の気持ちになっちゃうんですけど(笑)。今までやってきたことに後悔はないので、友達とたくさんいろんな思い出を作って、無邪気にその時々を楽しんでくれたらいいなと思いますね。
――ミュージック・ビデオの中で出会うのはおそらく10歳くらいの女の子ですよね。
私は10歳の頃にはもうお芝居をやっていたので、ちゃんとまだ今でも続けられているよ、人前に立てているよ、というのは伝えてあげたいですね。自分を大切にして、これからもがんばり続けてねって小さい頃に言ってもらえたら、きっと安心できると思うので。
撮影:大塚正明
――アートワークも曲と同様にしっとりとした印象ですね。
ちょっと大人っぽい、落ち着いた雰囲気のジャケットになっているんですが、1stシングルとはガラッと印象を変えたいという意気込みや、等身大の私を見せられたらいいなという思いでこのようなイメージにしていただきました。きっと「LET’ S GO JUMP☆」が今まで皆さんがイメージしていた私とぴったりな感じだったと思うので、そこからの変化でみんながどういう反応をするんだろう、という不安はありました。
――こういうイメージの尾崎さんを見るのは初めてだなという気がします。
せっかく尾崎由香として出しているものなので、ひとつのイメージじゃない私を見せたい、素の自分に近いものを出したいという思いがあったんです。原点になるようなものを早めに見せることでこれからの自分の幅が広がっていくとも思ったので、この2ndシングルは不安もありつつ、私にとってすごく挑戦した1枚になっています。
――「オトシモノ」は放送中のTVドラマ『今夜、勝手に抱きしめてもいいですか?』のエンディングテーマ曲にもなっています。
まさかドラマのエンディングテーマ曲を歌うことになるとは思わなかったので、担当することになったのはとてもうれしかったですね。私自身、恋愛ものドラマなどをたくさん見てきたので。特にエンディング曲を歌うって、お話の一部というか余韻を与えるものだからすごく大切じゃないですか。だから責任も感じていたんですけど、曲ができあがって、実際にドラマを拝見するととても物語の中に溶け込んでいて、本当にドラマの一部になったんだなと感動してしまいました。
――『少年アシベ GO!GO!ゴマちゃん』の次が深夜帯の恋愛ドラマというのも、すごい落差ですよね。
『少年アシベ GO!GO!ゴマちゃん』の時はお子さんにも聴いてほしい、という思いがあったんですけど、今回はちょっと大人の女の子、女子高生の方なんかに聴いてもらえたらなと思っています。
撮影:大塚正明
――ドラマを通して尾崎さんを知るという女性も出てくると思います、こんなところを見てほしい、という部分を挙げるとしたら?
声優のお仕事をやっていますけど、普段気になることだったりというのは本当にみんなと変わらないと思うんです。おしゃれが好きだしコスメとかファッションに興味があって……インスタグラムもやっていたりするので、そういうところで身につけているもの参考にしたり共感してくれたりするとうれしいです。
撮影:大塚正明
――カップリング曲の「Wishing Love」ですが、こちらも新境地といえる印象の曲ですね。
この曲も恋心を歌っているんですけど、「オトシモノ」とは逆に恋の入り口というか、王子様との出逢いを夢見て瞳をキラキラさせているみたいな女の子の曲ですね。歌詞も本当に好きな気持ちをまっすぐに表現している感じで、まだ無邪気でいられる頃だからこそ出せる気持ちなんじゃないかなと思いますし、大人になっても忘れてほしくないな、その気持を大切にしてね、と思いながら歌いました。
――1stシングルからは通算で5曲、どれも印象の違った曲を歌われていますが、 歌を通して新たに自分の中で発見できたことなどはありますか?
歌手活動をするまでは自分自身を出すのが苦手だったので、遠慮がちな部分があったんですけど、1人で歌うにつれて、自分にできる表現の幅が広がった気がします。バラードが好きなのでおとなしめ曲のほうが自分の中では馴染みがあって、キラキラした曲だったりポップな曲を歌うのは自信がなかったんですけど、そこで自分をさらけ出して歌うこともできるんだ、と気づけたのは発見だったと思います。
――やはりこの2ndシングルのような世界観のほうが尾崎さんの中心にはあったんですね。
そうなんです。今までは明るい性格のほうが前に出ていたと思うんですが、ここでもともとの自分を提示することができて良かったなと思っています。
――きっとその明るいイメージの一番の源はサーバルちゃんだと思うのですが、もうすぐ帰ってきますね。
帰ってきます!
撮影:大塚正明
私の生涯で一番濃厚で忘れられない2年間
――『けものフレンズ』1期の放送開始からもうすぐ2年になりますが、この2年間を振り返ってみると?
すごく短かったです。あっという間すぎて、私の生涯で一番濃厚で忘れられない2年間でした。たくさんの経験をこの中でさせていただいて、いろんな面で急激に成長できたと思っています。サーバルのことを考えない日はなかったですし、「耳をつけていないほうが違和感があるね」と言われるくらい、本当に自分の一部になっているので(笑)、これからまたスタートだね、という感じですごく楽しみです。
――いつもサーバルちゃんのことを考えていて、逆にギャップを感じることはなかったですか?
落差を感じることはありましたね。耳を取った普段の状態はあんな感じではないので(笑)。でも、サーバルとして歌ったり、TVに出させてもらったりしているのは自分自身が作り上げた姿でもあるので、深く考えることなく、うまく共存してきました。サーバルを演じることで自分にもこんな明るくて天真爛漫な部分があったんだと気付かされましたし、私にとってはすごくプラスになっています。
――歌手活動の今後について、夢や目標を挙げるとしたら?
やっぱりデビューさせていただいたからにはアルバムを出して、大きなところでライブをしたいという夢があります。いつか武道館でライブをやりたいです。さいたまスーパーアリーナや横浜アリーナにはグループでこれまで立ってきているんですけど、武道館まだないので、ソロで立つことができたらうれしいですね。
――ソロでこんな曲を歌ってみたい、という希望はありますか?
これまでは恋の歌が多かったんですけど、家族っ子なので、家族に宛てた歌を歌ってみたいです。母への感謝とか、思い出を振り返ったりこれからもよろしくね……みたいな。そういうメッセージ性の強い曲を歌えたら、また新しい私の一面を見せることができるんじゃないかなと思っています。
――声優としてこれから演じてみたい役どころは?
少年!ファンタジー系の少年漫画が大好きなので、そういう作品の主人公の男の子を演じたいです。
――具体的に好きな作品を挙げると?
『鋼の錬金術師』や『進撃の巨人』ですね。朴璐美さんが大好きで、一度生で声を聞かせて頂いた時は“ごちそうさまでした”という感じで感動して、心の震えが止まりませんでした(笑)。
――他に憧れている先輩声優の方はいますか?
花澤香菜さんの独特の透き通った声は憧れですね。それでいていろんな役を演じていらっしゃいますし。
――声優を目指している若い学生の方などに向けてメッセージを送るとしたら何を伝えたいですか?
自分にできるのかなって不安が大きくなる時期ってみんなあると思うんです。私もずっと自信がなくて諦めようかと思ったことが何度もあったんですけど、自分を一番信じてあげられるのは自分だと思うので、一回しかない人生、好きなことのために諦めずに努力を続けてほしいと思いますね。
――きっと「サーバルちゃんを見ていました」と言って入ってくる後輩に会うのは時間の問題だと思いますよ。
本当ですか? まだ自分では想像したことがないです。でもそんな後輩に会ったらたくさん可愛がります。うれしすぎてすぐに「一緒にご飯に行こう」って誘ったり、いろんなプレゼントを贈ったりしちゃうと思います(笑)。
撮影:大塚正明
取材・文=御杉重朗 撮影=大塚正明(LookUP)

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