2019年4月より大阪交響楽団の正指揮
者に就任する太田弦にインタビュー

先日、大阪交響楽団の正指揮者が発表された。就任時25歳と、全国のオーケストラでポジションを持つ指揮者としては最も若い太田弦が、大役を担う事となった。
正確にはポストは違うが、2019年3月で常任指揮者を離れる寺岡清高の後任という位置付けになるという。独自のプログラミングで大阪交響楽団のレパートリーを開拓し、他楽団との差別化を図るとともに、鮮烈なイメージ作りに一役買った寺岡清高の功績は大きかっただけに、太田弦にかかる期待は計り知れないものがあろう。
大阪の4つのオーケストラが一堂に会した記念すべき「大阪4オケ共同記者発表会」に出席のため、来阪していた太田弦と大阪交響楽団 二宮光由楽団長に話を聞いた。
太田弦 (c)Ai Ueda
―― 正指揮者の就任が発表されましたね。どうもおめでとうございます。
太田弦 ありがとうございます。たいへん光栄なことだと思っています。もちろん若さ故の不安はありますが、素晴らしい柔軟性とポテンシャルを備えた大阪交響楽団と、これから多くの共演の機会を持てることが本当に嬉しいです。
―― 昨年の6月に初めて指揮してからこれまで5度の共演で決まったそうですね。
太田 はい、そうなんです。初めて合わせた時からとてもやり易いオーケストラだと思いました。提案するとちゃんと返してくださいますし、とてもフレキシブルなオーケストラです。指揮していて幸せな気持ちになれるオーケストラで、大好きなオケストラでしたが、まさかこのようなお話を頂けるとは、正直驚きました。
太田弦 (c)H.isojima
―― 二宮楽団長、太田さんの正指揮者就任の決め手は何だったのですか?
二宮 相思相愛ですね。太田さんも良い印象を持ってくれていたようですし、楽員は皆「彼、イイよ!」と最初から言ってましたからね。私は最初の本番は聴けなかったのですが、2度目の共演となったシンフォニーホールのゲネプロを見ていて、途中に客席飛び出し所属事務所に電話して、「実はこんなことを考えているんだ…」と電話をしたくらい(笑)。決まる時は早いですね。
―― ミュージック・アドバイザーの外山雄三さんは何と仰っているのでしょうか?
二宮 「おー、良いね!」と喜ばれています。と云うのは、外山先生も大学を卒業してすぐに、NHK交響楽団に当時の事務局長 有馬大五郎さんの勧めもあって指揮研究生からキャリアをスタートさせておられます。ご自身の経験からも、非常にいい事だと思われているのでしょうね。太田さんには特に楽団としての制約など設けておりません。オーケストラの全てを、この期間に勉強していただけたら良いと思っています。
(c)飯島隆
―― 太田さんが第17回東京国際音楽コンクール〈指揮〉で2位と聴衆賞を受賞されたのは2015年でしたね。あの受賞記念コンサートで大阪フィルを指揮された時、客席で聴いていましたが、実に楽しそうに指揮されていたのが印象的でした。百戦錬磨のオーケストラのメンバーを相手に、指揮する事に、不安や怖さは無いものですか?
太田 コンクールの頃が大学4年の時でした。あの頃は振っていて楽しさしか無かったです(笑)。今は、行ったことのない土地で初めてのオーケストラを前にすると、試してみたいことをちゃんと聞いて頂けるのか、不安もありますが、いざ練習が始まると、オーケストラの側からも思っていた以上の反応が来ることも多く、とても刺激的な時間です。こういうやり取りは自分の成長の為に必要な事だと理解しています。でも、本番中は全く緊張しませんし、楽しくて仕方ありません(笑)。
―― 太田さんが指揮者を目指されたのはどんなきっかけだったのですか。
太田 出身は北海道札幌です。幼いころからチェロとピアノを習っていましたが、どちらかというと楽器よりも勉強やサッカーの方が得意でしたね。中学の時には札幌交響楽団を聴きに行くようになり、指揮者の動きにすっかり魅了され「指揮者っていいなあ。僕もなりたい!」と思うようになりました。当時の札幌交響楽団は、音楽監督が尾高忠明さん、正指揮者が高関健さんでしたので、指揮者になるならお二人が教えておられる東京芸術大学しかないと思い、勉強しました。入学から大学院までの6年間、お二人にはちょうど同じ期間、教えて頂きました。中学時代に客席で聴いていた時から変わらず、今でも二人の師匠が目標であり、憧れです。
―― どんな指揮者になりたいですか。
太田 以前は、細部まで全部を振れる指揮者になりたいと思っていましたが、最近はそれじゃオーケストラは揃うけど、窮屈な棒になってしまい、オーケストラのポテンシャルを引き出すにはどうなのかと考えるようになりました。自然体で振れて、自分の考えが乗っていると云うのが理想ですね。ここ最近は指揮するたびに振り方も変わっています。
太田弦 (c)Takefumi Ueno
―― この先、正指揮者としてやってみたい曲は何でしょうか。
太田 オーケストラでやった曲の方が少ないので、色々やってみたいです。前期ロマン派のシューベルト、メンデルスゾーン、ウエーバーなんかやりたいですね。他にはハイドンも好きですし、やっぱりいつか機会があればブルックナーやマーラーもやりたいです!
それと、変奏曲が好きなので、エルガー「エニグマ」やコダーイ「孔雀」変奏曲なんかが出来ると嬉しいです。
―― 正指揮者就任のお披露目コンサートはいつになる予定ですか?
二宮 来年4月に就任し、7月の0歳児に向けたコンサートが最初になりますが、お披露目という意味では12月の「感動の第九」ですね。そして2月の「名曲コンサート」では、メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」を指揮していただきます。
―― 自主公演の「第九」でお披露目ですか。それは楽しみですね。では、太田さん、読者の皆さまにメッセージをお願いします。
太田 おそらく皆さまとは、初めましてと申し上げるべきだと思います。未熟者ですがどうぞよろしくお願い致します。
大阪のお客さまはノリが良いですね。音楽を楽しまれているのを、毎回背中で感じます。皆さまにもっと喜んでいただけるように、若さをポジティブに捉えて、どんどん新しいことにも挑戦してまいります。ぜひコンサート会場にお越しください!
太田弦 (c)Ai Ueda
取材・文=磯島浩彰

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