劇場に入るとそこは体内。細胞の一部
である客席との絡みも。体内活劇『は
たらく細胞』ゲネプロレポート

「はたらく細胞」とは、清水茜による大人気コミック(月刊少年シリウス連載中)で、今年7月にアニメ化され、人気を博した(現在TOKYO MXで再放送中)作品だ。ストーリーはタイトル通り、人間の体内にある細胞たちを擬人化した「体内擬人化」だ。
身体の隅々の細胞へ酸素を運び、肺へ二酸化炭素を運ぶ役割の赤血球。舞台中にもたくさん出てくる赤血球たちだが、七木奏音演じる赤血球はまだ体内に慣れておらず、迷子になることが多い様子。「肺に行きたいのに~!」とウロウロしていると肺炎球菌(馬場良馬)に出くわし、襲われているところを和田雅成演じる白血球(好中球)に助けられる。
赤血球役:七木奏音
白血球(好中球)役:和田雅成
(c)清水茜/講談社・体内活劇「はたらく細胞」プロジェクト 2018
赤血球のほか、血小板、マクロファージ、B細胞、樹状細胞など体内にあるたくさんの細胞たちが、生命維持のために酸素や二酸化炭素を運んだり、体内に入ってきた異物などと戦う、そんな彼らの日常が描かれている舞台だ。どんな細胞が体の中にいるのか、劇中での説明もバッチリだ。解説もあるので、自然と身体のことを勉強できる。
ヘルパーT細胞役:戸谷公人(左)
制御性T細胞役:甲斐千尋
樹状細胞役:川隅美慎
白血球(好中球)、キラーT細胞は体に害を及ぼす細菌などを退治するもののひとつ。病原菌と戦うということでアクションが非常に多い。和田ら白血球(好中球)のナイフを使った殺陣、君沢らキラーT細胞たちの長身と筋肉を使った肉体はアクションはかなり見ごたえがある。
(c)清水茜/講談社・体内活劇「はたらく細胞」プロジェクト 2018
(c)清水茜/講談社・体内活劇「はたらく細胞」プロジェクト 2018
斬っては投げ、蹴っては投げ……と身体を守る細胞たちがいくら戦っても無限に湧き出る敵たち。インフルエンザウイルス感染細胞(髙木俊)、肺炎球菌(馬場良馬)、化膿レンサ球菌(増田裕生)、黄色ブドウ球菌(富田翔)をはじめ、身体の敵となる敵たちはビジュアルも禍々しく、次々と身体を守る細胞たちに襲い掛かってくる。
インフルエンザウイルス感染細胞役:髙木俊
肺炎球菌役:馬場良馬
今舞台は客席との絡みが多い。客席との会話やアドリブは役者の腕の見せ所でもあるが、そこはベテランの俳優たちがキャラクターの個性を出しつつ、笑いの場を提供してくれる。関係者の多いゲネプロでも大きな笑いが何度も起こっていた。客席一体となって病原菌を運んだり、敬礼したり、声を出したり……詳しくは劇場か千秋楽のライブ配信で楽しんでほしい。
化膿レンサ球菌役:増田裕生
黄色ブドウ球菌役:富田翔
そして特筆すべきは血小板を演じる子役たち(岸田結光、森田 恵、木内彩音)の可愛さ。キャラクターたちのみならず客席からも思わず「カワイイ…」との声が。
血小板役:岸田結光(右)、森田恵(中央)、木内彩音(左)
また、スマホの電源を切る、飲食の可否など開演にあたってのマナーや諸注意を促す前説がどの公演でも開演前に行われるが、今回の公演ではとある細胞たちが実際にステージに出てきて前説が行われる。舞台公式Twitterによると、前説は2バージョンあるとのこと。開演前にトイレを済まそうと並ぶ人も多いと思われるが、事前に済ませておいて開演5分前には着席しておくことを非常にオススメする。
B細胞役:正木郁
マクロファージ約:平田裕香
NK細胞役:茉莉邑薫
この舞台を観ると、私たちが健康でいられるのは彼ら細胞のおかげなんだと実感し、感謝せざるをえない。観劇に訪れたらスタッフの服装にもぜひ注目してほしい。なんと役職名(プロデューサー、スタッフ、ロビーなど)の入った「細胞」Tシャツを着ている。これは観客である我々も観客細胞(!?)になるしかない!
(c)清水茜/講談社・体内活劇「はたらく細胞」プロジェクト 2018
「富田さんたちが自由すぎて困っています」ゲネプロ公演前の囲み会見
ーー意気込みをお願いします。
白血球(好中球)役 和田雅成:今日ついに初日を迎えます。お客様と一緒にこの「はたらく細胞」の世界を作り上げたいと思います。
赤血球役 七木奏音:ついにこの日が来ました。とにかく早くこの稽古場のみんなを見てほしかったので、すごく楽しみにしています。
キラーT細胞役 君沢ユウキ:「細菌を発見し次第、2秒で殺す」という役です。パワフル全開でみんなと一緒に頑張りたいと思います。
肺炎球菌役 馬場良馬:肺炎球菌になりました、馬場良馬です。僕自身、違う仕事で一年間ヒーローをやっておりました。その時の知識を存分に生かして、今回の肺炎球菌という役を頑張っていきたいと思っております。
和田:(隣の馬場を指さしながら)この菌はすぐに殺します!
ーーご自身の演じるキャラクターでみどころがあれば教えてください。
君沢:応えられる質問にはマル出したら?
和田:(レセプターを出す)……俺がスベったみたいになるだろー!
一同:(笑)
(c)清水茜/講談社・体内活劇「はたらく細胞」プロジェクト 2018
和田:白血球って雑菌を見つけたときはすごい形相になるんですが、ちょっとした天然さがあるんですよね。僕はその天然さが白血球のすごく可愛いところだなと思うので、そこが僕の可愛さとマッチすればと思います。(隣の馬場に対して)って、突っ込めよ! 可愛さが出るように頑張ります。
七木:赤血球さんは酸素を運ぶ仕事なんですが、私が演じる赤血球はとにかく迷子になるので、そのおかしな感じを精一杯出せたらいいなと思います。
君沢:キラーT細胞はですね、とにかく戦います。この作品は演出のきださんや殺陣師の方がとにかくこだわって作ったところがたくさんあり、とにかく戦います。いろんな種類の戦いを楽しみにしていてください。
馬場:僕たちウイルス細菌チームは、勉強になるこの「はたらく細胞」の世界観の中で、悪い人ながら、どう笑いを残していくかをモットーにしています! みなさんの空気が温まるような笑いを、僕以外の先輩たちが頑張っています。ぜひそこを見ていただきたいなと思います。
和田:馬場良馬が一番面白いですよ~。
(c)清水茜/講談社・体内活劇「はたらく細胞」プロジェクト 2018
ーーそれぞれ衣装を着た感想をお願いします。
和田:白いなぁって。僕、基本的に腹黒なんです。原作やアニメでは血で染まったシーンが多いんですが、やっぱり……これだけ白い衣装を赤く染めていきたいなと思います。原作を読んでいる方はレセプターどうするんだろうって気になっていると思いますが、しっかり立てていきます。
七木:私は、赤いなぁって。
君沢:バカばっかじゃねぇか!(笑)
七木:衣装さんもメイクチームさんもすごく素敵にしてくださりました。赤血球さんのポイントのアホ毛とかもすごい角度が保たれていて、好きだなぁって思います。
君沢:僕は、黒いなぁって思います(笑)。ちょっと強い特殊部隊という感じで、男の子としてはテンションあがる服だなって。筋肉も頑張って鍛えてきました。
馬場:僕を始め、細菌チームはこの舞台史上一番お金がかかっています(笑)。その分に見合ったお芝居で還元できればいいなってモチベーションにつながっています。でも、この衣装の技術って本当にすごいと思うんです。細菌って舞台ではどうなるんだろう? っていうところで、このビジュアルで。そうやってモチベーションも高めてくださっているので、あとは演じる人間次第かと!
(c)清水茜/講談社・体内活劇「はたらく細胞」プロジェクト 2018
ーー稽古中のエピソードがあったら教えてください。
和田:(黄色ブドウ球菌役の)富田翔さんが自由にやりすぎて僕が困ってます。僕、本当に笑うことが好きで、まっすんさん(増田裕生)とか馬場さんもみなさん本当におもしろくて素敵で、微笑ましくなっちゃって。基本的にウイルスチームって僕との1対1の対立になることがすごく多くて、その時にちょっとしたアドリブというかほんわかするシーンがあると、それが僕は耐えれるかどうかというのが稽古場からの課題でした。稽古場だと笑いが抑えられなくなっちゃって。
(c)清水茜/講談社・体内活劇「はたらく細胞」プロジェクト 2018
君沢:今回、血小板のお子さんたちがいます。あの子たちも稽古中は緊張していたところもあるんですが、途中から一緒に腹筋しだしたりとかね。子供がいる分、大人がしっかりやらなければならない、そういう現場ですね。
七木:私は血小板の三人が稽古場に来てくれただけで、すごく心の支えに。幸せ~って思いました。
和田:めっちゃニコニコしてましたよね。
七木:学校との両立で帰っちゃうとか、遅い時間から来るとかすごく頑張っていて。入ってきたときもちゃんとあいさつをしていて。とにかく癒されてました。
(c)清水茜/講談社・体内活劇「はたらく細胞」プロジェクト 2018
馬場:今回、アクションがガッツリあるじゃないですか。そこは一ヶ月ちゃんと稽古した成果が出てるんじゃないかと思うんです。アクション苦手な方も裏で本当に一生懸命になって、みんなで支え合って教え合って出来てる今の形が素敵だなって。そういうところが少しでもみなさんに届いて、素敵な物語になっていけばいいんじゃないかと……。
和田:全部カットしてください。
君沢:おい、最後好感度上げようとしてるぞ!
(c)清水茜/講談社・体内活劇「はたらく細胞」プロジェクト 2018
ーー客席とのやりとりもあるそうですが、どんな感じになるか教えてください。
和田:どんな感じになるかは僕らもわからなくて。お客様ってどういう方が来るのか予想がつかなくて、それにあわせた掛け合いをウイルスチームがするんです。逆に僕たちも楽しみというか。
馬場:基本、ウイルスチームがお客様に絡みに行くことが多いので、そこを楽しんで一緒になってこの体内活劇に参加していただければと。
和田:あと僕ら細胞チームは一緒に身体を守っているっていう気持ちになってもらえれば、この舞台のひとつの成功なんじゃないかなって思います。
君沢:お客様も細胞の1つとして参加していただくところがたくさんあるので、前のめりで来て頂ければと思います。
(c)清水茜/講談社・体内活劇「はたらく細胞」プロジェクト 2018
ーーファンのみなさんにメッセージをお願いします。
馬場:役者として、怪人だったり悪役だったりというのはすごく役者冥利に尽きるなと思います。今回も満を持しての怪人を存分に楽しんでやりたいですし、今回体内活劇ということで、みなさんと一緒に一公演一公演作っていくんで、みなさんの力を貸していただいて、白血球を倒しにいきましょう!
君沢:パワフルで観ているみなさんに楽しんでもらえる舞台を作りたいと思っています。今回はお子さんシートとかもあるので、そういうところで観てくれた子供たちがこういうのをいつかやりたいと。演劇やりたいとか、先生が見てちょっと勉強になるお話なので、小学校や中学校でやってみたいなんてことになっても楽しいかなと思いながら、まずは初日を頑張りたいと思います。
七木:知っている細胞さんや知らなかった細胞さんもいて、とにかくみんなで楽しめる作品です。お客さん同士でもたくさん楽しめるお話になっていると思います。とにかくお勉強になるお話にもなっているので、観て良かったなぁって帰って元気になって、長生きしてくれたらいいなって思います。頑張ります。
和田:この作品は楽しく学べるっていうのをテーマにあげていて、演出のきださんも脚本の川尻さんもすごくわかりやすく届けようっていう想いで書いて演出してくださったので、僕たちはそこをしっかり体現して、お客さんと一緒に学んでいけたらと思っています。
(c)清水茜/講談社・体内活劇「はたらく細胞」プロジェクト 2018
取材・文・撮影:松本裕美
(c)清水茜/講談社・体内活劇「はたらく細胞」プロジェクト 2018

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