『没後90年記念 岸田劉生展』が開催
初期から最晩年までの作品を制作年
代順に展示し、画業の変遷を辿る
《道路と土手と塀(切通之写生)》1915年11月5日 油彩・麻布 東京国立近代美術館蔵 *重要文化財 [東京展、山口展に出品予定]
1912年には、斎藤与里、高村光太郎、萬鐡五郎らとともに、ヒユウザン会を結成、強烈な色彩と筆致による油彩画を発表する。しかし、画家としての自己の道を探求するために、「近代的傾向…離れ」に踏み出し、徹底した細密描写による写実表現を突き詰めた先に、ミケランジェロやデューラーなど西洋古典絵画を発見して、「クラシックの感化」を受けた独創的な画風を確立する。1915年には、木村荘八、椿貞雄らとともにのちの草土社を結成、若い画家たちに圧倒的な影響を与えた。最愛の娘・麗子の誕生とともに、自己のなかの「内なる美」で満たされた究極の写実による油彩画に取り組む。
《黒き土の上に立てる女》1914年7月25日 油彩・麻布 似鳥美術館蔵
日本の近代美術の歴史は、フランスの近代美術を追随した歴史であったと言えるが、画家・岸田劉生は、ただひとり、初期から晩年に至るまで、自己の価値判断によって、自己の歩む道を選択して、自己の絵画を展開していった。フランス近代絵画から北方ルネサンスの古典絵画、中国の宋元院体画から初期肉筆浮世絵へと、西洋と東洋の古典美術を自己の眼だけで発見、探求することで、自己の絵画を創造、深化させたのだ。
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