写真右より、犬山紙子さん、蟹めんまさん

写真右より、犬山紙子さん、蟹めんまさん

犬山紙子×蟹めんまが“おっかけ・ヲ
タ魂”を語る! 「好きなものを共有す
ることで自分が肯定される」

さまざまなジャンルの「おっかけ現場」に潜入した新作を発表した蟹めんまさんと、ハロプロ・プロレス好きとしても知られる犬山紙子さんが初対談! おっかけとは、ヲタとは、そして何かに夢中になることの意味とは…?

『バンギャルちゃんの日常』シリーズで知られる漫画家・蟹めんまさんが最新作『バンギャルちゃんの挑戦』を発売。V系にとどまらず、K-POP、プロレス、アイドルなど、さまざまなジャンルの「おっかけ現場」に潜入した濃密レポマンガとなっています。
“おっかけ女子”の本音とは? 人気漫画家に直撃取材!
そこで今回は、ハロプロヲタとしても知られるイラストエッセイストの犬山紙子さんと対談企画を実施! おふたりのヲタ・おっかけ歴から、なにかを好きになることの尊さとは?……など、幅広くお話いただきました。
「にわかだからヲタの人たちに申し訳ない」という苦悩が描かれてる(犬山)犬山 『バンギャルちゃんの挑戦』読みました。色んなジャンルに顔を出して「失礼なことがあったらどうしよう」って神経すりへらしながら描いたと思うんですけど、結局好きになっちゃう様子が楽しいんですよ。
葛藤してるんですけど「やっぱり結局ハマってるじゃん」みたいな。そういう過程で色んなジャンルの魅力が伝わるし、ウソで書いていないから、それがすごく伝わってきました。
めんま ありがとうございます。伝わってよかった…!
犬山 謙虚なところから入ってメチャクチャ好きになっているという感じがいいというか「にわかだからヲタの人たちに申し訳ない」という苦悩が描かれているじゃないですか。
まさに今、私にとってのプロレスがそれで、プロレスにハマったといっても、ガチの方にくらべたら全然なんですけど、段々プロレス関係の仕事が来るようになったりして。本当のプロレスファンに怒られてしまうのでは…という恐怖があったんです。
もちろん案外優しく受け入れてくれてるんですけど。ヲタの人へのリスペクトがあるがゆえにビビっちゃって。
めんま でも「私そんなでもないし…ガチの人に申し訳ないからヲタって名乗れない」っていう人ほど濃厚なパターンもありますよね(笑)。
犬山 それに色々なものにハマるとお金と時間が死ぬじゃないですか。現場に行けない間もだんだんプレッシャーみたいなものが生まれてきたりして…。
めんま わかります…。
犬山 たとえば、私ハロプロも好きなんですけど「ハロコンにしばらく行けてないからヲタって名乗っちゃダメだ」みたいな葛藤が生まれちゃうし、ファンの使命として「お金落とさなきゃ」みたいな意識も働きません?
よく「握手券が欲しいからCDを大量買いする」ということを言われるじゃないですか。そりゃあそれもあるんですけど、「(対象に)お金を払わないと、落とさないと」って考えてしまう。
めんま 学生時代は自分の好きなジャンルにお金を落とせなかったから、今になってその時の分まで払わなきゃ!みたいな感じ、あります。
「これは医者が薬と認めても良いくらいですよ!」(犬山)
「これは医者が薬と認めても良いくらいですよ!」(犬山)犬山 何かにハマるきっかけってありますよね。私がアイドルにハマったきっかけは、ちょうど仕事がうまくいかなかったり、体調も良くなくて、死ぬほど落ち込んでいる時期で。
その時にモーニング娘。の曲をYouTubeで見たら、異様に元気が出たんですよ。それまではアーティストが「私たちの歌で元気になってくれれば」とか聞くと、「そんなことあるわけない」と思っていたけど、「マジでそんな処方箋みたいなことがあるのか!」と衝撃を受けて。
それで最初からモー娘。の歴史を掘っていったんです。それを繰り返していくと「ああアイドルって本当に元気をくれるんだと」感じまして。
周りを見渡していくと、似たような状況の人や、心に闇を抱えている感じの人…清水さんがそうだとは言ってないですよ?(※めんまさんの担当編集の清水さんは犬山さんのハロプロ仲間です)
そんな風に、ちょっと苦しさを感じているひとがアイドルから元気をもらっているというのを痛感したんです。これは医者が薬と認めても良いくらいですよ!
めんま 私、一応義務教育を終えられたのはヴィジュアル系のおかげというか。とにかく学校が大嫌いだったんですけど、通学中に好きなヴィジュアル系のCDを聴いていたらなんとか通えたんですよね(笑)。
途中でウォークマンの電池が切れてると、テンションが下がってしまうような子供だったので、ライブに行くのは許してくれなかった親も「CDだけは与えないと…」みたいな感じで許してくれて(笑)。
犬山 素晴らしいですよね。逃げ場を与えてくれるというか。癒やしというか。
めんま 12歳からバンギャルなので、私はヴィジュアル系に育ててもらったという気持ちが強いです。
犬山 そんなふうに何かをずっと好きでいられるのは凄いなと思っていて。熱量を持つ持たないの違いって何なんだろう。
「情熱が炭火みたいになってるんです」(めんま)
「情熱が炭火みたいになってるんです」(めんま)めんま 私の場合はヴィジュアル系に対してずっと不完全燃焼状態なので、長く続いている気がします。
犬山 なるほど、作中に「新規ハイ」という言葉も出てきましたが、ああいう感じではなくて。
めんま そうですね。好きになりたての頃は田舎の学生でお金も全くなかったので、好きという気持ちはあっても年に1~2回くらいしか現場に行けなくて。ハイになれなかったんです(笑)わりと自由にライブに行けるようになったのは17歳くらいからですし一度も大スパークしないまま今に至っているというか…。
清水 大ブレイクしたあと冷めていったらどうしようみたいな不安はないですか。
めんま 燃え尽き症候群的な感じですか? なんというか、この10年くらいヴィジュアル系ではいわゆる「本命」、アイドルでいうところの「推し」のような存在がいないんですよ。シーン全体が好き、みたいな。
だから情熱が炭火みたいになってるという。箱推しになりやすい体質なのかもしれないです。
「新日本プロレス・棚橋選手=モーニング娘。・道重さゆみ」説犬山 じゃあプロレスも「箱推し」なんですか?
めんま 入り口は飯伏幸太選手だったんですけど、見ているうちに増えに増えて…結果箱推しに。だから対戦カードを気にせずチケットを買ってます(笑)。
犬山 そうなると箱推しですね。
めんま それにプロレスは棚橋選手が新規ファンに対してすごく間口を広げてくれるというか、入りやすい雰囲気を作ってくれているので、客席もネット上も、とても居心地がいいですね。
私、棚橋選手の公式ポッドキャストを聴いてるんですけど、プロレス初心者にもわかりやすく専門用語の解説もしながら話してくれるので本当にありがたいです。著作も元気をもらえるし本当に尊敬しています。
犬山 わたしもプロレスは棚橋さんからでした。
めんま だから今年のG1で優勝したことも嬉しくて。プロレスが氷河期の時代に一度優勝して、それを支えていた棚橋選手が今回は超満員の会場の中での優勝したということに感動しました。
犬山 これは旦那の受け売りですが、棚橋選手=道重さゆみという見立てをしておりまして。棚橋さんも道重さんも自分のいるジャンルが停滞している時に、すごい努力をして引っ張っていって、もう一回盛り上げていったんですよ。
めんま だからこの盛り上がっている時に優勝してくれて。まあ予想は飯伏幸太選手って書きましたけど!
犬山 だから誰が勝っても嬉しいんですよ。棚橋選手と真様(中邑真輔選手)が好きなんですけど、誰が勝っても楽しませてくれてありがとうという気持ちになりますよね。
「ファンが一番の宣伝マンですよね」(犬山)
「好きなものを一緒に楽しんでると、自分を肯定してもらえる気持ちになりますよね」(犬山)犬山 それにヲタの人って、コンサート中も楽しそうなんですけど、終わった後に「今日はどうだった」っていう話をしてる時も同じくらい楽しそうじゃないですか。「いま皆青春やってんな」みたいな。あの時間は楽しいですね。カラオケに集まって「今日は◯◯ちゃんよかったね!」みたいなのが。
めんま そう! こないだのG1の両国国技館の近くの居酒屋「はなの舞」がヤバかったです。
犬山 わかる! あそこ、試合の後はいつもすごいよね!
めんま 昨日試合が終わった後、お客さんはほぼ全員プヲタなんですよ。あちこちから「イヤォ!」(※中邑選手のキメ言葉)と聞こえてきてましたね。
私、お酒もほとんど飲めないので普段飲み会で全然ハジけられないんですが、昨日はシラフなのにたまたま目が合った知らないプヲタさんと「愛してまーす!」(※棚橋選手のキメ言葉)って言いあったりしてました(笑)。「同じものが好き」って本当にすごいなと。
犬山 好きなものを一緒に楽しんでると、自分を肯定してもらえる気持ちになりますよね。私もはじめてコンサートに行った時にそれを感じました。アンコールの時に揺れるペンライトが綺麗で、泣きそうになるというか、「私の好きなものは皆と一緒に共有できて、今自分も肯定されている」という多幸感がすごくて。
ファンの作った文化って楽しいじゃないですか。だからこの本もそういう雰囲気がすごく出ていて、漫画にもありましたけど、ファンが一番の宣伝マンですよね。
めんま そうなんです…、その結果、今いろんな沼につっこんでる状態なんです…(苦笑)。
蟹めんま
『バンギャルちゃんの挑戦』発売中!
シリーズ累計10万部突破! 「おっかけ」を、おっかけろ!
バンギャル=ビジュアル系バンドの「おっかけ」が、ビジュアル系以外の深すぎる《おっかけ現場》に挑戦! K-POP、プロレス、アイドル、宝塚、演歌……「愛」の数だけドラマがある! さらに連載分に加え、単行本描き下ろし漫画+コラム40ページ超! 深すぎる愛と情熱の黙示録! 大人気コミックエッセイ『バンギャルちゃん』シリーズ最新作!
犬山紙子
イラストエッセイスト、愛犬家、愛酒家。トホホな生態を持つ美女たちを描いた「負け美女」でデビュー。只今SPA!やananなどで連載中。スッキリ!やみんなのニュースなどコメンテーターとしても出演中。
最新書籍『SNS盛』、文庫版『地雷手帖 嫌われ女子50の秘密』発売中

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