伊礼彼方・数々の演劇賞を受賞した伝
説のミュージカル 『ジャージー・ボ
ーイズ』トミー・デヴィート役への思
いを語る

トニー賞最優秀ミュージカル賞やグラミー賞などを受賞し、2014年にはクリント・イーストウッド監督により映画化もされたミュージカル『ジャージー・ボーイズ』。『Sherry』『恋はヤセがまん』をはじめ、数々のヒット曲を残したフランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズの実話に基づいた感動の物語だ。日本版は2016年に初演され、第42回菊田一夫演劇賞や第24回読売演劇大賞など数々の演劇賞を受賞し、大きな話題を呼んだ。そして2018年、藤田俊太郎の演出をはじめ、最強のクリエイティブ陣と実力派キャストが集結し、“伝説のミュージカル”に新たに挑む。
トミー・デヴィートを演じる伊礼彼方は、日本版の初演を観て感銘を受けたという。「映画も公開されていたので見ていましたが、初演は映画よりさらに良くて。音楽を扱う作品は生で聴いた方が迫力もありますし、生命力にあふれている作品だなと思いました」。
伊礼彼方
この作品に出たい! という思いから、再演のオーディションに挑む伊礼。トミー役とニック役、両方を受けることになったが「トミー役をやりたい!」と猛烈にアピールした。「僕の音域だとトミーではないでしょうか! ニックの低音も響きますが!という感じで(笑)、どうしてもやりたい役だったので、ものすごいアピールをしました。何が何でも出る!という気持ちでした」。
その思いは通じ、見事トミー役を射止めた。「嬉しくて、非常に喜びに満ち溢れています」と顔をほころばせる伊礼だが、なぜそこまでこの役にこだわったのだろうか。「作品も曲もすごくいいというのもありますが、一番はトミーという役どころ。冒頭から作品を立ち上げるという役をやったことがないので、そこをどうしても担いたい、やりたいという希望がありました。『ジャージー・ボーイズ』は「春夏秋冬」で構成されていて、トミーは春を担当します。一発目で観客を巻き込んで作品の説明、グループの馴れ初め、物語の軸となる彼が担っているポジションは大きいので、とても難しいのですが喜びと責任を感じています」。
頼れるリーダーでありながら、裏ではマフィアとのつながりや借金を抱えているという二面性のあるトミー。そんな彼に憧れもあると語る伊礼。「僕は工業地帯で育ったので、チンピラ的な要素が内在しているんです(笑)。そういう気質が少なからず僕にもあるので、この作品を見た時、トミーが一番カッコいいと思いました。トミーの言葉遣いや生き方に共感できる部分も多々あります。僕は借金もないし、大きな失敗もしていないですけど、心底憎めない人間力の溢れた非常に魅力的な人物だと思います」
本公演では、フランキー・ヴァリを演じる中川晃教以外のメンバーはWキャスト。中河内雅貴(トミー)、海宝直人(ボブ・ゴーディオ)、福井晶一(ニック・マッシ)のホワイトと、伊礼彼方、矢崎広(ボブ)、spi(ニック)のブルーという2つのチームが演じる。「ガウチ(中河内)とは10年来の付き合いですが、あまり共演する機会もなく、彼もチンピラ的な気質が内在していると思うんで(笑)。類は友を呼ぶというか、僕とキャラクターがちょっと似ていると思います。顔は断然、僕の方が品があるのですが(笑)、彼も昔から真面目だし熱い男なので、トミーをWキャストで演じられるのも必然なのかな。でも全然違うトミー像が出来上がっているので楽しみにしてください」。
改めて『ジャージー・ボーイズ』という作品そのものの面白さについても聞いた。「この作品は、ジュークボックスミュージカルと言われていますが、この4人のグループの楽曲を使って、さらに自分たちの半生を描く。芝居があるから曲が生きるし、曲があるから芝居が生きるという作品で、通常のミュージカルにあるように役の感情を歌にしているわけではないんですね。切り離されています。そこが魅力的に思えましたし、演出的にも舞台の裏と表を見せるところが非常に面白い。人間の影の部分も見える作品。たくさんの曲で溢れていますが僕はミュージカルというより芝居だと思っています。あと、名曲が生まれたエピソードなど、『Sherry』が生まれた瞬間を初演で見た時は感動しました」。
伊礼彼方
どの作品においても、稽古中など積極的に意見を交わすという伊礼。それは、ものづくりをする上では欠かせないコミュニケーションだと話す。「ものを作る時は、役者と演出家は同等じゃないといけないと思っています。お互いが意見交換をして、よりいいものを作るには、双方のアイデアを出し合った方がいいと思うんです。この考えを教わったのは指揮者の塩田さんという方なんですが、塩田さんは舞台経験の少ない物怖じしている僕を見て「彼方くん、言いたいことは言っていいんだよ。思うことはどんどんぶつけて! いいものは一緒に作ろう! それがお客さんに伝わるんだ」とおっしゃってくれて。それからは、自分の意見が通る、通らないに関わらず、徹底的に話し合ったりやってみたりして、腑に落ちて舞台に立てるようになりました。消化不良のままだと、やはり最後まで納得できるものにはならないですからね」。
再演に先立ち、5月には「ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』イン コンサート」に出演した。このとき「関わっているスタッフ全員、この作品に愛情を持っていることが伝わった」という。そして「当たり前のことですが、個々が役に責任を持っている、そのモチベーションの高さを感じました。作品がそうさせているのか、このカンパニーそのものがそうさせるのかわかりませんが、一度初演を経験された皆さんはエネルギーが高かった。そこの感動も大きかったですね。役者としてなかなか味わえないものでした。初演から同じスタートだったら感じなかったかもしれませんが、レベルの差も感じたので、これは早々に埋めないといけないと思って、こっそり歌稽古入れてもらったり。負けるもんかと(笑)。差を埋めるには血のにじむような努力をしていこうと」と、より一層の熱を込める。
ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』は9月7日(金)より東京・シアタークリエで幕を開け、10月からは全国を巡回。10月24日(水)~28日(日)には大阪・新歌舞伎座で上演する。
取材・文・撮影=岩本和子

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