「90年代リバイバル」なんて言われて久しい昨今。毎日のようにあたらしいショップがオープンし、常にあたらしいカルチャーが生まれる東京の街で、「90年代リバイバル」ではなく「90年代に生まれた世代」が活躍中。90年代に生まれた、まだまだ「若手」と言われる人たちは、どんなことを考え、何を想っているのだろう。働き方で「90年代生まれ世代」が見えてくるかも。第1回目は、下北沢にあるライブハウス「GARAGE」の店長・小野友希さん、25才に会いにいきました。

Photography_Kae Homma
Text&Edit_Momoka Oba

24年の歴史を持つライブハウス〈GARAG
E〉。

――まずは、GARAGEという場所について教えてください。

1994年にオープンしたライブハウスで、今年で24年目になります。下北沢の北口にあって、地下一階がフロア、一階の別のレストランを挟んで二階が事務所と楽屋になっています。二階の入り口ではCDやグッズの販売もしています!

――おー、24年ってことはGARAGEと小野さんはほぼ同い年なんですね。

そうなんです! そう思うと、この場所の歴史を改めて感じますね。
――小野さんがGARAGEで働き始めたのはいつ頃からですか?

今から3年前、大学4年の頃です。大学では心理系の勉強をしていて、専門的な職業に就くために卒業後は進学しようと思っていたんです。大学からの推薦ももらえてあとは自分次第っていう状況だったんですけど、ふと“このままでいいのだろうか?”と立ち止まってしまって。誰にも相談せずに、GARAGEに履歴書を送りました。それまで音楽関係の仕事をするつもりはまったくなかったので、本当に衝動的に飛び込んだ感じでしたね。

――思いっきりがすごい! 履歴書を送る前にも、GARAGEにライブを見に来たりしていたんですか?

ライブを見たり、遊びに来ることはたまにありました。アットホームでいいライブハウスだなぁと思っていて。

――もともとは、どんな音楽が好きなんですか?

ロックバンドがずっと好きですね。GARAGEと親交のあるアーティストで言うと、Base Ball Bearは中学時代からよく聴いていました。GARAGEのことを知ったのもBase Ball Bearがきっかけなんです。

現・店長が想う、GARAGEの魅力とは。

――店長になったのはいつ頃でしたっけ?

去年の10月です。前任の店長が“やったらどう?”ってプッシュしてくれていたのですが、20年以上の歴史があるライブハウスなので、正直プレッシャーも感じていて……。いろんな人に相談したり力を借りたりして、なんとか“やるぞ!”って決意できました。

――自分が生まれた頃からあるライブハウスを任されるとなると、緊張感もありますよね……。普段はどんなお仕事を担当しているんですか?

イベントの制作や日々の運営がメインです。ブッキングからプロモーションまで、一からすべて自分たちでやっています。あとはとにかく、ここに集まるいろんな人を繋げたり(笑)。事務作業もするし、わりとなんでもやっています。
――小野さんの思う、GARAGEの魅力ってどんなところですか?

みんなにとってGARAGEってどんな場所なんだろう、どんな場所にしていったらいいんだろう……というのは店長になる前からずっと考えていたのですが、やっぱり最大の魅力はここに集まってくれる人だなと思ったんです。RHYMESTERの宇多丸さんがラジオ番組『アフター6ジャンクション』でGARAGEのことを取り上げてくださった際にも“サロン的”と表現してくれたんですけど、まさにそんなイメージで。過去にGARAGEに出演していた人も今まさにライブ活動を始めたような若い人も、垣根なく集まれる場所というか。ミュージシャンに限らず、常にいろんな人が出入りしているんです。そういう人の面白さとか、人の縁によって生まれるものが、GARAGEの魅力なのかなと思っています。
――楽屋スペースにこんなに人が集まるライブハウスって他を探してもなかなかないと思います。昔からずっとそうなんでしょうか?

そうみたいです。その時代によって出入りする人が変わっていたりはするけれど、未だに“10年ぶりにスタッフに会いに来ました!”って顔を出してくれる人がいたりとかして。このアットホームな雰囲気は、昔から変わらない部分みたいですね。

――なんだか、卒業して数年が経ってから母校に帰る時の感じに似ていますね(笑)。ここにいると日々たくさんの人に出会うと思うのですが、特に印象的だった人っていたりしますか?

同世代のミュージシャンがふらっと会いに来てくれるだけでもすごく楽しいし、昔から憧れていたBase Ball BearやペトロールズのメンバーがGARAGEのことを気にかけて立ち寄ってくれるのも嬉しいです。相談に乗ってくれる先輩がたくさんいるのはありがたいですね。毎日、本当にいろんな人が来てくれるので、刺激の連続です。

小野さんが注目する、90年代生まれの3
組。

――同世代の、“これから一緒にGARAGEを盛り上げていきたい!”っていうアーティストもいるんでしょうか?

たくさんいます! 実は、同世代のミュージシャンたちには店長になる前に“これから一緒に頑張らせて下さい”って話もしていて。そんな彼らが最近やっとGARAGEの外まで活動の幅が広がってきたりしているので、私自身もとても嬉しく思っています。年齢が近い人たちが集まると、一緒にいるだけで楽しいですよね。

――新たに注目したいミュージシャンはどうやって見つけるんですか?

日々のライブです。イベンターさんの企画やバンドの持ち込み企画で出会ったり、出演希望として音源を持って来てくれたバンドに惹かれたりとか。ライブを見ていて、“このバンド、なんだかほっとけないぞ!”と身体にビビッと来ることが多いですね。
――すごい、常にアンテナを張ってるんですね。今、同世代でオススメの3組を教えてください!

本当に同期みたいな感覚で一緒に走っているバンドはジオラマラジオ。メンバー2人とサポート4人で構成されたバンドなんですけど、曲がとにかく良くて。8月4日に初のリリースパーティをGARAGEでやることになったのですが、バンドも私もかなり気合を入れているので、ぜひ遊びに来て下さい!
それから、CLOWという弾き語りのアーティスト。2年前に初めてGARAGEでライブをしてくれたんですけど、ライブの惹きつける力が本当にすごくて。一度見るとハマっちゃいます。今は一緒にイベントを企画したりして活動を頑張っています。
あとは、Burn Que。なかなか魅力を言葉で伝えづらいような泥臭いロックバンドなんですけど、見ていると元気になるし、彼らにしか出せないエネルギーみたいなものがあるんですよね。バカだなあって思っちゃうくらい熱い人たちです。
――3組に共通する、この世代ならではの魅力ってありますか?

メロディの良さと歌心かなぁ。カラーはまったく違うのですが、言葉の強さとライブの衝動が人を惹きつける力を持っています。私たちの世代は、活動をする場や発信する先の選択肢がどんどん広がっているので、その中から自分たちの音楽に合わせて好きに選ぶことができるんですよね。誰と作るのか、何を巻き込んでいくのか、それぞれが模索しながら新しいスタイルを提示してくれている気がします。そこが今の時代の面白さでもあるし、難しい部分でもあるんですよね。
――GARAGEの店長として、今後叶えていきたい目標はありますか?

私にしかできない革新的なことが何かできたらかっこいいんですけど、まずはたくさんの人が来てくれるこの場所を守りたいなと思っています。その上で、最新のGARAGEを作っていきたいですね。日々シーンが変わっていくのがライブハウスの面白い部分でもあるので。そして、GARAGEの中だけにとどまらず、外に向けてもどんどん発信していけたらいいな。今紹介したようなアーティストたちが、広く活躍していってくれたら私も本望です!
〈GARAGE〉
東京都世田谷区北沢3-31-15 B1 LiveHouse/2F office
☎︎ 03-5454-7277
http://www.garage.or.jp

ザ90年代ズ:25才 下北沢GARAGE店長の場合はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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