XOX『OVER&OVER』ひとつの終わりと、
新たなはじまり

ボーイズグループXOXが5月26日、東京・渋谷TSUTAYA O-EASTにて新体制初の全国ツアー『OVER&OVER』をスタートさせた。1月末に大隅勇太(おおすみ・ゆうた)と安井一真(やすい・かずま)が加わり、6人体制として始動したXOX。3月10日に渋谷WWW Xにて初ワンマンライブを成功させ、6thシングル『OVER』はオリコンデイリーチャートで4位を記録するなど、順調な滑り出しを見せている。初の全国ツアー初日となった東京公演も勢いそのままに、見どころの多いライブを作り上げた。


Photography_Hiroyuki Dozono
Text_Sotaro Yamada


「一人ひとり絶対幸せにしてやる!」

メンバーがステージに登場すると、東京・渋谷TSUTAYA O-EASTは悲鳴のような歓声で湧いた。それらの歓声に「一人ひとり絶対幸せにしてやる!(田中理来)」「渋谷でいちばんアツい場所にしましょう!(木津つばさ)」「お前ら、俺らについて来いよ(バトシン)」と応えてさらに盛り上げる。
ステージから放たれるレーザーと照明、志村禎雄を軸にしたダンスなどで非日常空間を作り出し、フロアを陶酔へ導く。XOXが6人体制でワンマンライブを行うのはこれで2回目だが、あれからたった2ヶ月のあいだで、歌もダンスも見違えるほどクオリティがあがっていた。大隅勇太と安井一真の歌唱力はやはり際立って高いわけだが、それに影響されてか、他のメンバーまで歌に成長が見られる。さらにはダンスのコンビネーションも素晴らしかった。新メンバー加入によって良いシナジーが生まれていることがよくわかる始まりだった。

メンバーそれぞれの自己紹介や志村禎雄によるタオルの使い方レクチャーなどでフロアが和やかな雰囲気になると、ORANGE RANGEによる名曲『上海ハニー』をカバー。15年前の大ヒット曲に2018年のXOX流解釈を加え、XOXがライブに強いボーイズグループであることをアピールした。

爆笑のパロディ寸劇『キスえもん』。脚
本を書いたのは……?

(大隅勇太)

「ここからはしばらくのあいだ、脱力してご覧ください」

大隅勇太のこの一言で、ライブはガラッと雰囲気を変える。ここからは寸劇『キスえもん』の時間。これが良い意味での驚きだった。

タイトルから想像できるかもしれないが、某超有名アニメのパロディ演劇。6人のメンバーが、それぞれ主要人物をアレンジした役を演じる。ストーリーは見てからのお楽しみ!ということで詳細は伏せるが、「キスえもん」「さだおくん」「カズマちゃん」「バトシン」「りくお」「出来なすぎ君」と、それぞれの役名を記すだけで、そのハマり具合と、漂うユーモアを感じることができるだろう。フロアでは何度も笑いが起きた。コメディとして想像以上の寸劇作品であった。

そして驚くべきは、この寸劇の脚本を書いたのが大隅勇太であるということ。

XOXのメンバーは全員が役者としての経験を持っているが、脚本の才能まで持ち合わせているということになると、これはグループにとってかなり大きな武器になるのではないか。初めての試みは大成功。大きな笑いに包まれてライブは後半へと向かった。

超至近距離!ライブでMV撮影

ライブ後半は、XOX流ファンク&クラブミュージックの流れるような展開。しかしいちばんの目玉はアンコールに訪れた。なんと、その場で『OVER』のカップリング曲である『Homie!』のMV撮影が行われたのだ。

しかも、ステージでパフォーマンスするメンバーや盛り上がるオーディエンスを映すだけでなく、メンバーが指名した数名のオーディエンスにGoProを持たせて自由に撮影させ、さらにはメンバーがフロアまで降りて超至近距離でパフォーマンスを行ったのだ。

こんなことは、メンバーのパフォーマンスの高さ、スタッフ間の信頼、そしてファンとの信頼がなければ、とてもではないが実現できなかっただろう。リスクが高すぎる。しかし現実にはこのMV撮影が本公演のハイライトになった。超至近距離のパフォーマンスと、ライブに来た全員でつくるMV。観るだけではなく一緒に楽しむライブ。

「みんなと一緒にこうやって作品をつくれるのは初めてだから、本当に嬉しい」

田中理来がこう語ったように、ファンだけでなくメンバーにとっても新鮮な経験になったようだ。ラストはライブ終盤の定番となりつつある『WE ARE』で締めた。

こうして、全国ツアー『OVER&OVER』初日は幸福なムードで幕を閉じた。このあとツアーは7月8日の大阪公演まで続く。終演後には、人気曲の新体制ver.が5曲連続で配信されることもアナウンスされた。6月15日に配信される第一弾は、この日最後に披露された『WE ARE』新体制&Remix ver.だ。

『OVER & OVER』断固たる決意

さて、本ツアーのタイトルは『OVER&OVER』である。これはもちろん6thシングル『OVER』に由来するものだ。

「OVER」という言葉が使われる時、多くの場合、それは「終わり」という意味で使われる。「終わりから始まりを探そう」と歌われるXOXの『OVER』からは、彼らにとってひとつの「終わり」が訪れたことを示している。

終わりとは何か? 

あらためて言うまでもないかもしれないが、XOXは昨年、メンバーの脱退という大きな傷を負った。それはたしかに傷であり、ひとつの終わりだった。本当の傷は、決して癒えることがない。しかし、傷とともに生きることはできる。傷があるからこそ見えるものがある。傷を負った彼らは、あたらしい2人の仲間とともに、次のように歌う。

まだ痛むの?あの日の傷は それでも続けよう 僕らのストーリーを (XOX『OVER』より)

傷を傷として認識すること。そうした冷静な態度がなければ、「僕らのストーリー」すなわち自分たちだけのオリジナルな道を進むことはできない。第1期の終わりをしっかり見極めることで、XOXは、第2期へのスタートをしっかりと切ることができた。だからこそ「止められない涙を祝おう」と歌うことができるのだし、だからこそ彼らがMVで流す涙があれほど美しいのだ。
(XOX『OVER』MV)

また、すでにSNSなどでメンバーが発言している通り、「OVER」には「越える」という意味もある。シングル『OVER』は、「終わり」であるとともに、この困難を「越える」ことを宣言した作品でもある。

そして、ツアータイトル『OVER&OVER』は「OVER」という言葉が重ねられた言葉だということにも注目されたい。

「OVER and OVER」とは「繰り返し」という意味。つまり彼らは、今の痛みだけでなく、これから先何度も訪れるであろういくつもの困難を「繰り返し、何度でも乗り越えていく」のだと同時に宣言していることにもなるのではないか。そのような決意がこのシングルとツアーには込められているのではないか。

ライブ前日、インスタグラムのストーリーで木津つばさがさり気なく口にした次のセリフは、そうした決意をはっきりと表していたように思える。

「このライブに命を賭けています」

命を賭けるほどの断固たる決意は、必ず人の心を動かす。そして実際、そうなった。

これ以上、言葉は必要ないだろう。

新たなはじまりを迎えた6人が、決意の先に何を掴み取るのか。その行方をこれからも見守りたい。
XOX
オフィシャルサイト
Twitter
Instagram

XOX『OVER&OVER』ひとつの終わりと、新たなはじまりはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着