BugLug これまでにない激動の年月を
過ごしたバンドの現在地、そして歩み
出した未来への想い

ボーカル・一聖の事故からの復帰、初の日本武道館公演、47都道府県ツアーを経て、3年ぶりとなるフルアルバム『KAI・TAI・SHIN・SHO』を完成させたBugLug。これまでにない激動の年月を過ごしたバンドの現在地、そして「がっつきます2018」というスローガンを掲げて新たな未来へ歩み出した5人に今の想いを訊いた。
──3rdアルバム『KAI・TAI・SHIN・SHO』が完成しましたが、前作から今作までの3年間は、バンドにとって激動という言葉では物足りないぐらい大きな意味を持った期間でした。それを経て、今作はどういうものにしたいと思っていましたか?
一聖(Vo):今回は、人間の心情とか喜怒哀楽をいろいろな曲で表現していきたいという話を最初にしたんですよ。自分が(事故での入院から)退院して、当然事故以前と同じ関係性でみんな関わってくれる訳ですけど、その頃はなんかそういう関係性について自分では不思議な感覚がしたんですよね。スタッフもそうだし、メンバーも最初のうちは……なんか、交友関係じゃないけど、難しいなと思って。
──いわゆる距離感みたいなものを掴みづらかった?
一聖:そうです。そのときに、それが合っているかどうかはわからないけど、それこそ、その人の心情が伺えることが多かったなと思って。あと、変な言い方ですけど、“嫌われてる瞬間もいっぱいあったんだろうな、俺”とか、いろいろ迷惑かけてたんだろうなとか、いろいろ思ったりして。退院してから半年間ぐらいはそういうのが尾を引いていた感じも、今思うとあった気がするんです。自分のそういう実体験から出てきたテーマですね。
──優さんとしては、一聖さんが話したテーマがあった上での制作はいかがでしたか?
優(Gt):アルバムって2つの側面があるけど、言いたいことというか、精神的な部分としては一聖が話したことで。もうひとつのミュージシャン的な部分で言うと、どんな曲でもやろうと。これが3枚目だからとかそういうのは全部無視して、とにかく俺らがいいと思ったものをやろうっていう。だから、改めて1枚目を作る気持ちでやってました。これがBugLugですっていう作品になればいいなって。
──言ってみれば、新たな名刺というか。
優:うん、それです。バンドを続けていくと、表現したいことも鋭利になっていくというか、固まっていっての3枚目になると思うんですけど。でも、俺らの場合は、俺らは変わっていなくても周りからの見え方が変わったと思うし、一回リセットされているからこそできる3枚目になっているんですよね。すごいフレッシュなんだけど、色気もあるというか。結構ハイブリッドなアルバムになっているなと思います。
燕(Ba):名刺代わりの1枚というのもあるけど、復活して、武道館をやって、47都道府県ツアーをして……っていう、ライブをしてきたからこそ揃った曲たちというところも大いにあるんですよ。ツアー中に制作していたんですけど、だからこそ感情のすごくこもった曲もあるし、やっぱりライブを意識したものにはなっているので。
──将海さんは今回の制作はいかがでした?
将海(Dr):曲数が多かったのでレコーディングが大変だったなという印象はありますけど、まあ、大変だったぶん、いい感じになったなと。ドラムに関しては、La'cryma ChristiのLEVINさんがサポートしてくれたんですよ。手取り足取りいろいろ教えてもらえて。
──1から10まで?
将海:いや、1から20ぐらいまで。
BugLug/一聖(Vo)
嫌われてる瞬間もいっぱいあったんだろうなとか、いろいろ思ったりして。退院してから半年間ぐらいそういうのが尾を引いていた気がするんです。
──大きな存在だったと(笑)。ミュージックビデオを撮影されているのが「Die s kill」という曲で。タイトルの字面だけ見るとものすごく物騒ですけど、歌っている内容はすごくポジティブですね。なんか、希望を絶望でコーティングしているというか。
一聖:まさにそうですね。これはBugLugらしい遊び心のひとつであって。タイトルがもうおかしいし、“ヴィジュアル系ってこういう歌を歌うよね”みたいな雰囲気なんだけど、そんなことをするバンドではないっていう。
優:ミスリードとか好きだしね、俺ら。
一聖:そうだね。この曲、いつも通りみんなでスタジオに入って作ったんですけど、何回アレンジ変えたんだろうっていうぐらいずっとやってて。でも、これだけ場面展開が多い曲になったのは、メンバーみんなで作ったからこそだと思うし、大変だった部分もあったけど、それが結果的に楽しさに繋がった。それもある意味、俺の中では“Die s kill”だなって思いました。
──歌詞にある<語弊を生んでも 絶え間無く叫ぼう>という一節が気になったんですよ。一聖さんって、なるべく語弊を生まないように、誤解のないように正しく伝えたいと思うタイプだったと思うんです。
一聖:うん、まさにそうでしたね。
──何か気持ちの変化があったんですか?
一聖:そうなのかもしれないです。自分ではわかんないんですけど。
──今作の歌詞は、語調の強いものが多い印象もあったんですよね。たとえば、「新人生」はシングルとして先に世に出ていましたけど、歌詞の<僕ら>を<俺>に変えていて。この変化はかなり大きいと思うんですけど。
一聖:デカいですね。この曲を47都道府県ツアーでずっとやってきて、自分のことを歌っているのに<僕ら>と言ったところでなんか違うなと思って。じゃあ<俺>って歌ったほうがわかりやすいなと思ったので変えました。
──以前から歌詞を書く際にはご自身の感情を大切にされてはいましたけど、より大事にするというか。
一聖:そうですね。共感を得るものが最高に素晴らしいものというのはすごく理解できるけど、それがすべてじゃないと思うんですよ。みんなに好かれたいとか、みんなに認められたいからといって、そういう言葉を使いまわすのは、曲によってはやめようかなって。
──とにかく自分の考えを突きつける。
一聖:うん。そうすることが、歌う意味が一番見えてくると思うんですよ。歌っている本人だけじゃなくて、聴いている人からしても“なんで一聖は歌っているんだろう、そうか、こういうことが言いたいんだから、それは歌うよね”っていう。そこにしっかり結びつけばいいなと思ってましたね。
BugLug/優(Gt)
ラブソングとか青春ソングが結構好きで。10代の頃の感覚を曲に書き留めて、いつでも思い返せるようにしておきたいんですよね。
──優さんは「[Boy]Adolescence[Girl]」を作曲していて、サウンド的にはBugLugのポップサイドな感じになっていますけども。
優:単純に甘酸っぱい曲だなと思ったし、一聖の仮歌詞も青春マンガみたいな世界観だったから、なんかもう微炭酸のような感じというか。
一聖:確かに(笑)。
──そもそも甘酸っぱい曲を作ろうと思っていたんですか?
優:ラブソングがいいなとは思ってたんですよ。俺、ラブソングとか青春ソングって結構好きで。なんか、10代の頃の感覚を曲に書き留めて、いつでも思い返せるようにしておきたいっていうところがあるんですよね。
──それこそ「Adolescence=思春期」なものを書こうと。歌詞は音からインスパイアされたんですか?
一聖:そうです。恋愛っていつから始まるんだろうと考えたときに、まあ思春期だろうなと俺は思ったんで、そういうものを綴ったんですけど。でも、青春って歳をとっても一生続くものだと思うんですよ。優も言ってたけど、10代の頃の感覚を書き留めたこの曲を聴くと、青春が蘇ってくる。だから永遠に続いてるじゃんって。
──決して終わったわけではなく、自分の中にあり続けるというか。
一聖:そうそう。
優:感度が鈍くなってくるじゃないですか、大人になってくると。俺らも鈍く……なってはないか。まだまだ思春期だし。アイドルとか好きだし。ガチ恋してるし(一同笑)。
燕:永遠の思春期だな(笑)。
──まあ、ガチ恋は冗談として(笑)。
優:それに、この曲を聴いてそういう感情が湧き上がってくるっていうのは音楽の力だとも思うし。
BugLug/一樹(Gt)
オラつきたいというよりは、ギラつきたいのかもしれない。ギラついていくことで成長して、それが自信に変わっていくというか。
──そこは本当にそうですね。一方で、一樹さんが作曲した「言刃」と「SHISHIMAI」は、どちらもハードです。
一樹(Gt):曲を作るときに、自分の好きなバンドだったらどういうアルバムがいいかなというのを考えたんです。そのときに、やっぱり聴いていて心が熱くなる、ハートに火が灯るような曲にしたいと思いながら作り始めたんですけど。いまの俺たちに必要なのは、やっぱり噛みつくほどにスピーディーな曲なんじゃないかなと思って作ったのが「SHISHIMAI」ですね。
──でも、なぜまた獅子舞の歌詞を書こうと思ったんですか?
一聖:“獅子舞がいい”って一樹が言ったから(笑)。
一樹:ロータリー奏法っていうのをイントロでやっているんですけど、回転する奏法、回るっていうところから、ここでファンのみんなに頭を回転させるように振ってもらうのはどうだろうっていうのが先にあったんです。で、回転か……と思って、冗談で“獅子舞は?”って言ったら、“いいね”って。そしたらサビが<Yeah Yeah SHISHIMAI>ですよ(笑)。
一聖:で、最後が<獅子舞 My HERO>っていう。
燕:最高にいいよ、あれ。
優:早かったもんなあ、タイトルが出てきてから歌詞ができるまで(一同笑)。
──勢いで書いたんですね(笑)。
一聖:はい(笑)。曲もすごい好みだったし、本当に楽しいなって思いながら書いてました。あと、タイトルをローマ字にするのもBugLugというか、俺が好きなんですよ。“「SHISHIMAI」ってどんな曲なんだろう”って思ったら、サビで<Yeah Yeah SHISHIMAI>って歌ってて“おいおい!”みたいな(笑)。そこもBugLugが持っている味のひとつです。
──あと、一聖さんと一樹さんは「Heroin」を共作されていますね。
一樹:熱くなれる曲も好きだけど、個人的にはメロウなものもわりと好きなんですよ。この曲は、サビはこういう雰囲気のメロディーがいいなと思っていたものを出したら、一聖が“俺の曲と合体させよう”って。結果、ジャジーでムーディーな感じになりましたね。
一聖:一樹が持ってきたサビがすごいよかったんですよ。俺的にはシャンソンっぽいイメージがあって、これをBugLugでやったらおもしろそうだなって。で、本番前の楽屋で、2人で話し合いながら、一緒にパソコンの画面を見合いながら作業していて。今回はそうやって作った曲も多かったんですよ。「ASHURA」もそうだったし。
──「ASHURA」は、ポエトリーリーディングを交えつつ、社会風刺をしているヘヴィな曲になっていて。
一聖:人って、ニュースとか携帯や、交友関係の中で何か情報を得ようとするんだけど、そのなかで自分を見失ってしまうときもあると思うんですよ。でも、なんだかんだ自分を一番大切にしたい、自分というものを持って生きているという感覚が強いから、会ったこともない人に対して、なんでこんな人がいるんだろう、なんでこんな世界で生きているんだろう、こんなのもうひとりで生きていたほうがいいんじゃないか?って思っている歌詞を書いたんですよね。
──収録曲のほとんどは他者と何かしらの関係があるけど、「ASHURA」はそれを断絶してしまっているという。
優:これ、アルバムの中で唯一、対になっている歌詞なんですよ。人間の感情って、ある種矛盾しているところもあるじゃないですか。矛盾していない人間なんていないし、それでいいと思うし。だから、この曲があることによって、言っていることは違っていても筋が一本ちゃんと通っているアルバムになったなと思います。
BugLug/燕(Ba)
噛みついていくことは大事だけど、今こうやってバンドができていることに感謝して、もっと前に進んでいきたい。
──そして、「解体心書」は、今作の核になっている曲です。
一聖:ひとりで生きていたほうがいいという気持ちを歌ったのが「ASHURA」だけど、実際問題、ひとりで生きるのなんて無理じゃないですか。歌詞にも書いているけど、たとえば衣食住や環境って、自分だけで作っているものではないし。
優:“俺はひとりで生きていくよ、飯とかコンビニでいいし”って言ってる人がいたとして、じゃあ、誰がそのコンビニの弁当を作っていて、その弁当に入ってる米は誰が作ってるの?っていう。
──見落としがちというか、忘れがちになってしまうところですよね。
優:そういったものの大切さに気付こうよっていうのが、言ってしまえばこのアルバムの答えではあるんです。
──武道館ワンマン以降、“みんながいるから自分たちがいる”ということをライブのMCでよくされていましたけど、今作はそれを様々な形で解釈していったわけですね。自分の思っていることがそのまま出てきたっていう。
一聖:そのまま出てきたものじゃないと真剣に歌えるわけないですよ。やっぱり自分が思ったことを書かないと。
──かなり濃いアルバムになりましたが、今年は「がっつきます2018」というスローガンを掲げていて、アルバムツアー、主催フェス、3度目の野音ワンマンと、さまざまなトピックを発表されました。その中でも、8月9日に行われる主催フェスはどんなものを考えているんですか?
優:3ステージ作って、先輩も後輩も混ざり合って、シーンをもっと盛り上げようっていうものにしたいんですよ。俺らはワンマンばっかりやってたから、内々で固まって……というか、今のヴィジュアル系シーン全体がそうなってると思っていて。もっと全体でシーンを盛り上げていこうぜっていうキッカケになるイベントのひとつにしたいなって。俺らじゃ役不足かもしれないけど、誰かが動かないと何も変わらないから。ていうか、俺らもやるからみんなもやろうよっていう、各バンドへの提唱みたいな感じです。
──確かに他のジャンルと比べると、ヴィジュアル系ってアーティスト主導型のフェスが少ないですよね。
優:そうなんですよね。やっている人たちもいるんだけど、結局一部だけでやっている感じだから、誰が率先してやらないとっていう。
一聖:この前、『均整を乱す抗うは四拍子』っていう4マンツアーをやって、それはそれでよかったんだけど、それも内々になっていると見られてしまったらもったいないなと思って。ヴィジュアル系ってもっと広くて、もっといろんなバンドがいて、もっといろんな表現方法があって、すごくおもしろいジャンルだからこそ、もっと世間にもアピールしたいし、もっと規模を大きくしていきたいんですよ。それを8月9日(バグの日)にできたらおもしろいんじゃない?って。
BugLug/将海
曲数が多かったのでレコーディングが大変だったなという印象はありますけど、大変だったぶん、いい感じになったなと。
──将海さんはフェスってやりたかったですか?
将海:いや、特には。やりたいっていうよりは出たいほうでしたね。
──なるほど。なんか、ガラスの天井じゃないけど、ヴィジュアル系バンドってフェスに呼ばれづらい現実ってあるじゃないですか。
将海:ありますね。
──だったらもう自分たちでやってしまえ!っていうところもあったんですか?
優:そうそう。出れねえって言ってるぐらいだったら、自分たちでその規模のやつを作ればいいじゃんっていう感覚ですよ。もう本当にそれだけの話。
燕:俺、フェスに行くの結構好きなんですけど、やっぱヴィジュアル系の中ではそういうところに出ているバンドってあんまりいないし。でも、この界隈でもこういうフェスをやることによって全体が盛り上がれば、自然とヴィジュアル系じゃないところとぶつかったときに、もっと大きなことができるんじゃないかなって。
一樹:ヴィジュアル系の活性化とか、シーンに一石を投じるとか、そういう面もあるんだけど、BugLugはお祭り騒ぎが好きなバンドなので、単純にみんなでおもしろいことをやろうよっていう気持ちでいますけどね。やるからには自分たちも楽しみたいし、今の規模でやれること/やれないことはあるんだけど、そのなかで自分たちらしくやれることをやりたいなと思ってます。
──まだ話が早いですけど、このフェスは今後も継続していくんですか?
優:やらないといけないなと思ってますね。最終的には俺らがやらなくても、他にやるバンドがガンガン増えていけばいいなと思うんですけど。まあ、いまはとにかく誰かがやらないといけないんで。
──それこそ“がっつきます”というスローガンだったり、アルバム曲の言葉の強さだったり、いい意味でオラついてますね。
一聖:うん、オラつきは大事。
──そこは大事にしようと思ったんですか?
一聖:思ってなくても出ちゃうんですよ(笑)。たぶん本能なんでしょうね。
将海:だから変わらずですよ、そういうスタンスは。
──そのオラつきが強まってきたりとかは?
将海:どうなんだろう……。端から見ないとわかんない気がする、そこは。
燕:まあ、オラついているというか、もっと前に進んでいこうっていう気持ちがやっぱりデカいんだと思いますよ。もちろんオラつくというか、噛みついていくことは大事だけど、今こうやってバンドができていることに感謝して、もっと前に進んでいきたいと思うし。
一樹:なんか、オラつきたいというよりは、ギラつきたいのかもしれないですね、そうやってギラついていくことで成長して、それが自信に変わっていくというか。だから俺たちはまだまだですよ。これからです。
取材・文=山口哲生

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着