SIX LOUNGEインタビュー 2018年、ロ
ックンロールでメインストリームに殴
り込む3人組は天然モノか確信犯か?

ここ1~2年は特に、ライブ会場などの現場で会話しているとき、“注目の存在”として頻繁に耳にするバンドがある。大分発の3人組、SIX LOUNGE

彼らの鳴らす音は激しくてストレートで叙情的で危険で色気があって、要するにロックンロールそのものだ。とはいっても決して懐古趣味的な要素はほとんどなく、00年代までのあらゆる音楽の要素も取り込みながら、何より単純に「これが一番かっこいいんだ」と本人たちが信じきって鳴らしていないとこうはならない、そんなリアルな音を鳴らしている。で、メジャー第1弾作品『夢うつつ』のリリースとその後のツアーを控えた今回、じっくり話を聞いてみたら実際にそうだった。
すごく本能的に、ピュアに選択された「自分たちのカッコいいと思う音」がたまたまロックンロールだった、という2018年のシーンにおいては異端ともいえる存在が、世間の耳目を撃ち抜く日はもう間もなく訪れる。

■違う場所にいたら、もしかしたらメロコアバンドをやってたんじゃないか
――この音源を聴いてもライブを観ても一発で分かるんですけど……SIX LOUNGEはロックンロール・バンドじゃないですか。
ヤマグチユウモリ:はい(笑)。
――この時代に、なぜロックンロールだったのか。そこがまず気になるんですよ。
ヤマグチ:まず(ナガマツ)シンタロウと高校で出会ってバンドを初めて、後から(イワオ)リクが入ったんですけど、2人でやってた頃はロックンロールとかじゃなかった気がするんですよね。シンタロウもなんか化粧とかしてたし。もっとグラムロックみたいな。
ナガマツ:もともとグラムロックとかは好きだったし、今でも好きなんですけど。
ヤマグチ:高校1~2年くらいの多感な時期だったし、多分、その頃に聴いてた音楽とかをモロにやってたんで。あんまりジャンルがどうとかより、やりたいことをバーっとやってたというか。
――その頃好きだった音楽でいうと?
ヤマグチ:とにかく激しいのがカッコいいなと思ってた時期で、ちょうどそのときに銀杏BOYZとかに出会って、青春パンクみたいなのが一番カッコいいと思った時期ですね。……(自分たちの音楽を)ティーンエイジ・パンクロックって言ってました(笑)。
――おおぅ。
ヤマグチ:それでデッカいバックドロップとかも作って。後々「これどうしよう?」ってなりましたけど(笑)。
――ティーンじゃなくなっちゃうし?
ヤマグチ:そうそう、もうパンクロックでもねえしな、みたいな(笑)。
――そのときはまだ前のベーシストですよね?
ヤマグチ:そうですね。辞めた理由が進学とか就職とか真面目な理由だったので、次に入れる奴は本当に未来がない奴にしよう、未来を捨ててる人間にしようと思って――
イワオ:未来を捨ててはないけど(笑)。
ヤマグチ:リクはもともと後輩で連れまわしてたので。チケット売れてないときとか、「来い!」って言って。
――客として観に行ってた頃の、ティーンエイジ・パンクロック時代のSIX LOUNGEってどんなでした?
イワオ:曲がめっちゃ良くて。なんか、おっぱいの歌とか歌ってて。
ヤマグチ:「第一次世界母乳大戦」っていう、リード曲です。
イワオ:俺は今でも昔やってた曲をやってみたいなとか、たまに思います。
ヤマグチ:いや、無理だろう……!(一同笑)
ナガマツ:かっこよかったけどね(笑)。
ヤマグチ:途中で語りとか入るんですけど、今それやったら俺、帰りますね。恥ずかしさで。
――てっきり元から今やっているような音楽、煙と酒の匂いがするロック!みたいな音、カルチャーに憧れてやってたのかな?とも思ってたんですけど、違ったんですね。
ヤマグチ:大分の先輩には結構そういう泥臭いロックンロールの先輩が多くて、だんだん身の回りの人、Droogとかhotspringだったりに憧れていったというか。そこから感化されたのが俺は結構大きいです。
――たまたま大分でバンドをやってたことで、身の回りにそういう先輩がいて、こういう音と出会えた。
ヤマグチ:そうです。だから俺は、違う場所にいたり、たとえば当時にカッコいいメロコアのバンドが周りにいたら、もしかしたらメロコアバンドをやってたんじゃないか?とか思います、たまに。大分だからこうなったんじゃないかなって。
――ということは、「パンクやめてロックンロールやろう」って決めたわけじゃなくて、自然と作る曲も今みたいな感じに変わっていった?
ヤマグチ:そうっすね。そこに寄っていって好きになっちゃって、色んな方向に掘っていって、また好きになって。
SIX LOUNGE 撮影=木村泰之

■もうちょっとTHE NINTH APOLLOでやりたいなってずっと言い続けてた
――歌詞をシンタロウくんが書くっていうのは昔からですか?
ヤマグチ:一番最初の曲からそうですね。
――作る曲の方向性が変わってきたことで、作詞に影響があったりはしました?
ナガマツ:変わっていったのは同じくらいのタイミングで。でも、そんなに変わってないとも思うんですけど。
――ロックンロール的なロマンチシズムが感じられる歌詞だと思うんですよ。たとえば「SWEET LITTLE SISTER」の<黒いドレス ペパーミント/ヴィヴィアンの香りでバイバイ>とか、そういう感じ。
ナガマツ:それはおっパブに行ったときの……。
イワオ:へへへへへ(笑)。
――おっパブって聞くとさっきの「第一次……」、何でしたっけ。
ヤマグチ:世界母乳大戦。
――そことも繋がってくるから、書く歌詞があまり変わってないっていうのは、その通りなんでしょうね(笑)。
ヤマグチ:おっぱいが好き!っていう。
ナガマツ:……好きですね(笑)。
SIX LOUNGE 撮影=木村泰之
――今の音楽性に至る中で、特に強烈に憧れた存在っているんですか?
ヤマグチ:立ってるだけでサマになるロックスターたちに、永遠の憧れはありますけどね。俺だったら一番好きなのは斉藤和義さん。ステージに立つと映えるロックスターだなって。
イワオ:俺はミッシェルのウエノ(コウジ)さんとか、すごい好きです。なんか大人の色気というか……だから竹野内豊とかも好きです。
――そこが一緒に出てくるのもなかなかですけど(笑)。
イワオ:(笑)。なんというか渋めの、ダンディな感じが憧れです。
――シンタロウくんは。
ナガマツ:いっぱいいすぎて「これ」っていうのはないんですけど……地味なドラマーは嫌いなんで。
――それは手数が、とかいう意味ではなく。
ナガマツ:じゃないです。見た目、叩いてる姿とか、ステージにいるだけでカッコいいドラマーが好きなんで、そういう風になりたいなとは思います。
――そんな嗜好を持つ3人がバンドを続けてきて、今作からメジャーレーベルからのリリースじゃないですか。それに関しては率直にどう思っているのかなと。
ヤマグチ:いやぁ、元々はメジャーでどうとかは全然思ってなかったというか。どういう風にしてメジャーになるんだろう?みたいな疑問はあったんですけど。なんかこう、運良く拾っていただいて良かったなっていう。
――メンバー間で「どうする?」みたいな話はあったんですか?
ヤマグチ:ありました。もうちょっとTHE NINTH APOLLO(これまでの所属レーベル)でやりたいなってずっと言い続けてて、一番待ってもらったというか。長いこと見てもらってて。
――へえ! 最初に声が掛かったときのことって憶えてます?
ナガマツ:……覚えてないですね(苦笑)。
イワオ:シンタロウがメジャーの人を羽交い締めにして、テキーラをめちゃくちゃ奢らせてました(笑)。それはすごい憶えてます。
ヤマグチ:俺はなるべく関わらないようにしてたんですよ、できるだけ。まあ、ガキだったんで、抵抗はありました。何でなんですかね?
――無理くり音楽性を変えられちゃうんじゃないか、とか?
ヤマグチ:ああ、そういうイメージは確かに大きかったですね。
SIX LOUNGE 撮影=木村泰之
■勢いだけでバーンみたいな単純な曲を、最近は作れなくなってきた
――ここからは『夢うつつ』の中身の話ですけど、まず全体的にロックンロール全盛期の60’ sから受け継がれてきたものも含みつつ、80年代以降の色んな音楽の要素も入っていると感じました。
ヤマグチ:ああー。高校とか入るより全然前には、めっちゃJ-POPばかり聴いてた、というか聴かされた時期もあって、姉ちゃんの影響でジャニーズとかも聴いてましたし、特にaikoさんが好きで聴いてました。ギターを始めたきっかけもフォークソングなので、小学生から中学生の間はフォークソングをバーっと聴いてたり。最近でいうと90年代とかのアイドルの歌を聴いたり、歌謡曲を聴くのも好きですね。
――曲のできた順序でいうと最初は?
ヤマグチ:「STARSHIP」かな……いや、違うな。
ナガマツ:「ZERO」じゃない? 「ZERO」は一昨年くらいからあったよ。
ヤマグチ:あ、「くだらない」と「STARSHIP」と「ZERO」が元からあったんだ。「くだらない」はずっとAメロだけ出来てて、俺は「いいな」と思ってたんですけど、どう詰めていくかってところからずっと逃げてて。やっとちゃんと良い感じのサビができたんで、そこから作り上げていった感じですね。「ZERO」は最初のリフだけあって――
ナガマツ:サビのリズムとかをいろいろ変えて。
――「くだらない」はじっくりと、腰を据えた感じの曲ですね。
ヤマグチ:そうですね。ワッと上がるところがCメロぐらいなので。俺らの曲の中で一番ドッシリとしてると思うんですよ。
――そうですよね。そういう今までのイメージとは一味違う曲を、今回リード曲に持ってきたというのは?
ヤマグチ:リードをどうしようか?っていう話し合いのときに、3人ともなんとなく「まあ、『くだらない』かなぁ」っていう話になったのは憶えてます。俺はすごく好きなんで、「これだ!」っていう感覚はあったんですけど、そこに歌詞も合わせたら、今のSIX LOUNGEっぽいなっていう。そこで3人が一致したのかなって。
――“今のSIX LOUNGE”って、あまり速い曲とかガツガツいくよりも、こういう曲の方向に向いている感じですか。
ヤマグチ:あー、俺が作れなくなってきたっていうのもありますね。昔のこう、勢いだけでバーンみたいな単純な曲を、最近は作れなくなってきた。まあ、「LULU」は速いですけど。これは本当1日か2日で出来ました。シンタロウに「なんか叩きたいリズム無いの?」って聞いて、叩き始めたリズムに2人が合わせたら「あ、これでカッコいいな」っていう曲になって。一番早く出来ましたね。
――「LULU」もリード曲なので、結果的には今一番「これだ!」思ってるタイプの曲と、一番ナチュラルに出来てしまうタイプの曲を二本柱で、世に出せるわけですね。
ヤマグチ:そうですね、良かったです。
――「STARSHIP」は音源化済みの曲の中から唯一の再収録ですけど、ライブの定番になってますし、これは外せないと?
ヤマグチ:曲も好きなんですけど、単純にアルバムを通して聴いたときにちょっと暗いんじゃないかな?みたいな印象があって。
ナガマツ:うん。(「STARSHIP」が入ることで)良い感じにバランスが取れるかなと。
ヤマグチ:実際気持ち良い流れになったので、入れました。一番、今までの俺たちっぽい曲というか、いい意味でアホっぽいストレートなロックンロール。
――いや、そこがまた良いんですよ。もう、<真っ赤な宇宙船に乗って>ですからねぇ。
ヤマグチ:その一言を言うためにライブでやったりしてますもん(笑)。
――もう一曲、以前からあったという「ZERO」はハードな雰囲気と歌謡曲っぽさ、さらにサビの<ゼロの ゼロの~>っていうリフレインが強烈ですけど、SIX LOUNGEって繰り返す歌詞が多いですよね。
ヤマグチ:そうですね、確かに。
シンタロウ:メロディを聴いてから書いてる歌詞なので、同じメロディが続くところに同じ言葉をそのまま乗っけるっていうことは多いです。多分、そういうところですかね。
ヤマグチ:たしかに、サビでコード進行は進んでるけどメロはずっと同じ、みたいなのは多いですね。
「ZERO」に関してはこれ、是非みんなカラオケで頑張ってみてほしいですね。めっちゃ言いにくいんで<ゼロの>って繰り返すの。<レロろ>ってなるんで(笑)。
SIX LOUNGE 撮影=木村泰之
■一昨日、「俺らっていつからメジャーなんですか?」って聞いたんですよ。そしたら「え、今さら!?」って
――「SUMMER PIXY LADY」はまたコード感が他の曲とガラッと違いますけど、以前からこういう引き出しはユウモリくんの中にあったんですか?
ヤマグチ:これ作ったときにハマってたのがCynbalsで、アルバムを聴いてるうちにジャズとかボサノヴァとか、こういう雰囲気もほしくなって何となく作り始めたんですけど、結局そういう風にはならなくて、俺の持ってるものに寄っていってこうなったと思うんです。でも元々結構あるんですよ、『東雲』に入ってる「青い春」って曲とか。こういう感じをたまに挟むのが好きなんで。
――「ORANGE」はマイナーコードのカッティングで押していくダイナミックな曲ですけど、こういう曲だとベースの負う役割も大きいんじゃないですか。
イワオ:この曲はもう、バリバリのレッチリからインスパイアされた感じというか。ちょっとスラップを入れてみたりとか、ザ・レッチリです。ベースをやろうと思ったキッカケの一番がレッチリだったし、この曲を聴いたときにそういう方向で行こうと思いました。
――SIX LOUNGEって、そこまでファンキーな曲は無いじゃないですか。その中にレッチリ由来のベーシストがいるっていうのは面白いです。で、最後が「SWEET LITTLE SISTER」。
ヤマグチ:これはリクが作ってて。
イワオ:自分がかっこいいと思うものを集めて作ったというか。単純に、自分がやりたい曲を作りたくて、好きで聴いてたような曲を一つにまとめたくてできた曲なので。結果オーライなんですけど、アルバムを通して聴いたらいい感じになったなって思います。
――最後のコーラスはいろんな声が入ってますけど、あれは?
ヤマグチ:あ、はい。めっちゃ入ってるんですけど、4人なんですよ。この3人と、HERO COMPLEXっていう先輩バンドのベースのしんぺーさんが来てくれて、ガヤだけ録って。わざわざ結構、1時間半くらい車飛ばしてきてくれてたのに、全然何を歌ってるかわからないところのガヤっていう(笑)。
――てっきり、周りの仲良いバンドとか呼んでみんなで録った、とかかと思いました。
ヤマグチ:そういう風に書いといてもらってもいいですか? あとは酒場で録った、とか。その方がカッコいいんで(笑)。
――(笑)。ちなみに、リクくんが曲を書くことは、過去にもあったんですか?
イワオ:いや、リフとかならちょいちょい思いつくことはありましたけど、ちゃんと作るのは初めてで。どうせ多分、アルバムにも入んねえだろうなと思ったんですけど、意外と2人が気に入ってくれたので。
ヤマグチ:「いいやん、やろうか」って。
――バンドとしての武器のひとつになるかもしれないですね。
ヤマグチ:そうですね。俺だったらできない曲だった気がします。
SIX LOUNGE 撮影=木村泰之
――そしてこの作品が4月25日にリリースされますけど、そのあたりは実感としていかがですか?
ヤマグチ:俺、一昨日かな。レーベルのスタッフにLINEして、「俺らっていつからメジャーなんですか?」って聞いたんですよ。そしたら「え、今さら!?」って。25日に移籍っていう形になるとか、細かく教えてもらって、あ、なるほどなと。
――じゃあ、実感は無いということですね(笑)。
ヤマグチ:そうっすね(笑)。今もまだ。
――もしかして『夢うつつ』っていうタイトルも、そういう心境の表れ?
イワオ:(笑)。
ヤマグチ:ではないんですけど(笑)、タイトルはシンタロウが。
ナガマツ:タイトルを決めようってなったときに、全体のイメージに合うタイトルを考えたら、これが一番ピッタリで。はっきり見える感じじゃなくてちょっとボヤけてるイメージがあったので、それが『夢うつつ』かなぁと思いました。
――リリース後にはツアーもあって、それ以外にもライブの本数が多いバンドですけど、そのあたりも含め、いまどんなところを目指していこうとか、どんな風に進んでいきたいと思ってますか?
イワオ:いや、もう大人になって……普通になります(笑)。お酒とかも。
ヤマグチ:あまり人を傷つけずに、物も傷つけずに、生きていけたらなって思います。
ナガマツ:免許取ろうかなぁと。
――とても個人的な目標が聞けましたけども(笑)。もちろん、バンドとしてもこれからもっと、ですよね。
ヤマグチ:そうですね、続けていきたいです。大きい目標とかそんなに無いんですけど、とにかく目の前にいる人を一番大事にして、やっていきたいですね。

取材・文=風間大洋 撮影=木村泰之
SIX LOUNGE 撮影=木村泰之

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着