(C)NHK

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【芸能コラム】再放送で見直したい!
親子げんかに込められた作品の魅力 
「カーネーション」

 NHKが4月から、地上波の総合テレビで平日月~金の午後4時20分から朝ドラの再放送(2話連続)を始めた。その第1弾として、4月10日から「カーネーション」が放送中だ。
 世界的ファッションデザイナーとして活躍するコシノ三姉妹の母・小篠綾子氏をモデルに、大阪・岸和田で呉服商の家に生まれ、大正、昭和、平成を生き抜いたヒロイン、小原糸子の波乱の生涯を描いた物語。糸子を演じたのは尾野真千子(少女時代は二宮星、晩年は夏木マリ)。
 本放送は2011年10月から2012年3月で、視聴率は最高25パーセント、全話平均19.1パーセントと好評を得た。今回の再放送が決まった理由についても、「視聴者からのリクエストが多かったため」と報じられており、本放送から6年半を経て、いまだに高い人気を誇っている様子がうかがえる。
 この作品の何が視聴者を引きつけたのか。それを知るヒントになるのが、番組の名物にもなった糸子と父・善作(小林薫)の親子げんかだ。洋裁師を目指す糸子と呉服屋を営む善作は事あるごとに衝突し、けんかを繰り返す。その様子は、出演者が当時の思い出を語る番組「“朝ドラ”同窓会 カーネーション」(4月14日(土)午後4時から再放送あり)で尾野が、「(小林から)本気で殴られた。芝居じゃない」と語った通りのド迫力。
 父親が娘に手を上げるという、見方によってはすさまじい場面だが、嫌な感じはしない。それは、丁寧な脚本と俳優陣の好演が、その裏にある親子の愛情を視聴者にきちんと伝えているからだ。
 脚本を担当したのは、『ジョゼと虎と魚たち』(03)、『天然コケッコー』(07)など、等身大の若者を主人公にした作品を手掛けてきた渡辺あや。本作でもそのリアリティーあふれる日常描写が、物語を視聴者の身近にグッと引き寄せる。現在放送中の序盤でも、呉服屋の娘として生まれた糸子が洋服に魅せられていく過程が、きめ細かく描かれている。
 さらに、その丁寧な脚本を人間味あふれるドラマに仕上げたのが、俳優陣の好演だ。真っすぐな糸子を文字通り体当たりで演じる尾野。商売下手だが家庭では威厳を見せたがる内弁慶な性格の善作を、愛情深く憎めない人物として演じる小林薫。親子げんかが愛情にあふれたものになったのは、この2人の入魂の演技があればこそだ。
 糸子と善作の親子げんかに象徴される、家族愛を基本とした丁寧な脚本と俳優陣の好演。それが本作を魅力的な作品に仕上げ、多くの視聴者を引きつけた大きな要因と言えるのではないか。
 その基本線に沿って、糸子の幼なじみの奈津(栗山千明)、勘助(尾上寛之)や、糸子の3人の娘・優子(新山千春)、直子(川崎亜沙美)、聡子(安田美沙子)らが繰り広げるドラマも見応えたっぷり。そして忘れてはいけないのが、糸子と仕立て職人、周防龍一(綾野剛)の許されざる恋…。朝ドラらしからぬ展開で話題を呼んだ不倫劇や戦争をめぐるドラマなど、一見ネガティブと思える出来事に正面から向き合ったことも物語に深みを与え、作品の人気に貢献した。
 優秀な番組に贈られるギャラクシー賞テレビ部門大賞を朝ドラとして初めて受賞するなど、人気だけでなく高い評価も得た「カーネーション」。本放送から6年半を経た今、当時見ていなかった人にはこの機会にその魅力に触れてもらうとともに、見ていた人も改めて見直してみると、また新たな発見があるに違いない。(井上健一)

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