西郷吉之助を演じる鈴木亮平

西郷吉之助を演じる鈴木亮平

【芸能コラム】今後に期待を抱かせる
大河ドラマ「西郷どん」 快調な滑り
出し

 幕末の英雄・西郷隆盛の波乱の生涯を描くNHK大河ドラマ「西郷どん」。先週放送された第3回までは、薩摩藩の下っ端役人として働き始めた主人公・西郷吉之助(隆盛)が、数々の理不尽な出来事に直面し、苦悩する姿が描かれてきた。現在は、吉之助が隆盛へと成長していくための種まきの段階だと言えるが、その内容は充実しており、今後に十分期待を抱かせてくれる。
 まず何といっても光るのは、主演の鈴木亮平の熱演だ。大河ドラマ初出演ながら体当たりの演技を見せる鈴木は、思いやりがあり、困った人を放っておけない西郷吉之助という人物を全身で表現している。
 「彼は体当たりで芝居をやりますから。体が大きくて力も強いので、追い掛けて止めなければいけないときも止まりません(笑)」。
 吉之助の父・吉兵衛を演じる風間杜夫が、当サイトのインタビューで語ったこの言葉が、その熱演ぶりを端的に伝えていると思う。
 そんな鈴木に引っ張られるように、共演陣も好演を披露している。特に目を引くのは、島津斉彬を演じる渡辺謙の堂々たる存在感だが、風間、松坂慶子(吉之助の母・満佐役)、平田満(大久保利通の父・次右衛門役)という名作『蒲田行進曲』(82)のトリオが35年ぶりに顔をそろえたことも話題だ。
 一方、脚本も、ここまで見応えのあるドラマをつむぎ出している。第1回は、少年時代の西郷と、後に三番目の妻となる岩山糸や主君・斉彬らの出会い、第2回は、貧しい百姓を助けようと奮闘する姿など、メリハリある物語の中に吉之助の人間的魅力を描き出してきた。
 なお、本作は林真理子の小説『西郷どん!』を原作にしているが、劇中には原作にない展開が多い。「ハケンの品格」(07/日本テレビ系)、「ドクターX ~外科医・大門未知子~」(12~/テレビ朝日系)など、数々のヒット作を手掛けてきた脚本家・中園ミホが、その力を存分に発揮していると言えるだろう。
 第3回では、薩摩藩主・島津斉興(鹿賀丈史)と嫡男・斉彬との確執に端を発したお家騒動“お由羅騒動”が勃発する。最後は吉之助の師・赤山靭負(沢村一樹)に切腹の沙汰が下るというショッキングな幕切れとなった。第4回「新しき藩主」(1月28日放送)では、その後の経緯とともに、新藩主・斉彬誕生のいきさつが描かれる模様。いよいよ本格的なうねりを見せ始める物語から、ますます目が離せなくなりそうだ。
 ところで、第1回放送時点では、「歴代ワースト2位の視聴率」、「薩摩弁が分かりにくい」などネガティブな報道もあったが、いずれもそれほど心配する必要はないだろう。視聴率に関して言えば、視聴環境が大きく異なる数十年前の作品と現在とを比較することに意味があるとは思えない。その一方、地上波より早く放送されるBSの視聴率がこれまでに比べて高いとの報道もある。
 また、薩摩弁についても、SNSでの視聴者の反応をリアルタイムで拾ってみると、「分かりにくい」=「詰まらない」とする反応は薄いように感じる。むしろ、「分からないことを面白がっている」という印象だ。確かに劇中の薩摩弁は、耳慣れない人間には聞き取りにくいが、物語が分からないというほどではない。物語が進めば違和感も解消され、いずれはSNS上でも薩摩弁が飛び交い始めるのではないだろうか。
 快調に滑り出した「西郷どん」。今後は北川景子演じる篤姫なども登場し、激動の幕末を乗り越え、明治維新を成し遂げる西郷の波乱の生涯が描かれていく。今年1年、見応えのある作品となることを期待しつつ、その行方を見守っていきたい。(井上健一)

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