松田凌×西田大輔インタビュー 映画
と舞台で描く『ONLY SILVER FISH』の
世界とは

西田大輔が脚本・演出を務める舞台『ONLY SILVER FISH』が2018年1月6日(土)から東京・紀伊国屋ホールにて再演となる。本作は同タイトル&同キャストによって映画化されることも決定しており、2018年春、公開予定となっている。
舞台『戦国BASARA』シリーズや『煉獄に笑う』の演出を務めた西田が、2007年に上演した一幕もののミステリー作品。“本当の名前を知れば過去を振り返ることができる”といわれている伝説の魚「オンリーシルバーフィッシュ」を軸に、古い洋館で開かれるパーティに偶然集まった11人の男女のもとに、不可解な招待状が届き、語が展開していく。
映画版では、出演キャストは同じくして内容、登場人物や物語は全く別ものになっているようだ。そこで、舞台版で本作の主人公・マシュー役を務める松田凌と、脚本・演出・監督を務める西田に舞台&映画『ONLY SILVER FISH』の話を聞いた。
同キャスト&同タイトルの映画と舞台。
“中身は全く別もの”とはどういうことなのか
――映画版の撮影が終わり、舞台版の稽古が進んでいる段階だと聞きました(2017年12月末)。まず、現在の率直な心境を教えてください。
松田:これはみんな口を揃えて言っていることですが、やはり台本がおもしろいですね。だから、今はそれをどうやって表現するか、台本に負けないよう試行錯誤しています。この作品の出演者は皆すごく個性が強いんですよ(笑)。稽古場でその個性をぶつけ合っています。
西田:映画と舞台が同じキャストで同時進行するという、僕自身初の試みに挑んでいるわけですが、先日映画版の撮影が終わって、今は戦いをひとつくぐり抜けたような心境で俳優たちと稽古しています。こういう心境で稽古に臨むのは初めての経験ですね(笑)。
西田大輔
――松田さんは映画と舞台とで全然違う役なんですよね?
松田:全く別の役です。また、役が違うのは全キャスト同じなので、出演者は映画と舞台は全くの別ものだと考えて向かい合っていると思います。映画ありきの舞台でもないですし、舞台ありきの映画でもない。とてもおもしろい経験をさせていただいています!
西田:映画も舞台も同じキャストですが、僕は天邪鬼なので、映画での役作りを舞台の役作りにフィードバックしてほしくなくて、それぞれ全員が真逆のキャラクターを演じているんですよ。
松田:そうですね。なので、映画も舞台も両方見ていただきたいです(笑)。
西田:そうだね(笑)。映画の方は役名も違うというか……皆、役名がないんですよ。簡単に映画版の設定を明かすと、世界に一匹しかいない魚がいる。そして、その魚だけがいるという話なんです。舞台版では、その魚に関連してアガサ・クリスティーの逸話が設定としてあるんですけど、映画版では、その魚だけがいるといった感じです。
――なるほど。
松田:共通しておもしろいと思うのは、西田さんが作る“状況”。“状況”こそが主役なのだと思えるほど、映画も舞台もおもしろいことが次々に巻き起こるんです。
松田凌
「松田凌はやはり華と色気がある」(西田大輔)
――稽古場を拝見したのですが、和気あいあいとしていてとても楽しそうな現場に感じました。
松田:それは西田さんの雰囲気作りのおかげです。西田さんが皆を硬くならないようにしてくれるので。そして、皆お酒が好きなので(笑)。
西田:映画の撮影をくぐり抜けてここまできていますから、お互いの信頼関係は厚く築けていると思います。
――本作の主演でもある松田さんの印象を教えてください。
西田:松田凌と一緒に舞台を作るのは今回で2本目なんですけど、やはり華と色気のある存在だと思いましたね。それに、自分の中にブレない芯があるから、一緒にものづくりをしていて楽しいですし、託すことも自然と大きくなっているように感じます。出演者の真ん中に立つ彼の振る舞いによって作品の質が変わってしまうと思うのですが、その点、凌くんはとても頼りになる真ん中でいてくれています。
松田:こんなこと普段は言ってくれないので嬉しいですね(笑)。個人的なことを言うと、自分が関わる作品でこんなに全キャストと絡む役を演じられるのが久しぶりなので、それぞれの目を見て芝居ができて楽しいです。
西田大輔、松田凌
――2007年に初演が行われた本作ですが、今回、再演と共に映画化されるなど、本作の手触りを西田さんが様々なアプローチで試しているように感じるのですが、いかがでしょうか?
西田:その通りだと思います。三谷幸喜さんがワンシチュエーションの上質な喜劇を作り時代を牽引している姿を下の世代として見ていて、自分も昔からワンシチュエーションの舞台を作りたいと思っていたんです。ですがそれは既に三谷さんがやられていることなので、その気持ちを封じて自分はあえて作らないようにしていたんです。
でも、やっぱりワンシチュエーションの舞台を作ってみたいと思って作ったのがこの『ONLY SILVER FISH』なんです。一匹の魚がいれば世界を表現できるとも考えたんです。そう思って始めた作品だったので、手触りを確かめるという意味では、これからもいろいろな試みをしたい作品です。
西田大輔
松田:西田さんやAND ENDLESS(※西田が主宰する劇団)をご存知の方は、西田さんがワンシチュエーションの芝居を作るイメージはないかもしれませんが、今回の作品を観たら西田さんの根っこにあるピュアな部分が分かるんじゃないかと思います。
「裏をかいたり、その裏の裏をかいたり」(松田凌)
――西田さんの作品は鮮やかな演劇的仕掛けと共に、必ず最後に残るものがありますよね。
松田:まさに! そして、この作品も多分にもれず“気づき”がある作品だと思います。それと、余談ですが今回は劇場が小粋で洒落た雰囲気に包まれるんじゃないかなって考えています(笑)。
西田:小粋?(笑)
松田:“粋”ではないんだっていうね(笑)。なんか葉巻を吸いたくなるような洒落た雰囲気になると思うんです。僕はもともとかっこつけなんで、そういう舞台空間で演じられるって本当に心が踊るんですよ。だから、お客様にもそれを体験しにきてもらいつつ、“気づき”を持ち帰っていただければ。
西田:この作品は大まかに言うと、「魚の名前を言えればたった一度だけ過去が振り返れる」というものなんだけど、実はその振り返る過去自体を見せたいわけではないんです。人というのは、恋愛でも友情でも、あの時あの人はあんなことを言ってたなってふと思い出し、その言葉の意味を考え直す瞬間が何かしらあると思うんです。『ONLY SILVER FISH』という作品は、その言葉が過去と今では全く別の意味になるという作品なんです。今回は殺陣もダンスもありませんが、僕としてはかなり純度の高い作品になっていると思います。
西田大輔、松田凌
――西田さんが再演、映画化と『ONLY SILVER FISH』をアプローチを変えて試している理由が見えるようですね。それでは最後に本作に興味を持っているお客様にメッセージをお願いします。
西田:コーヒーを片手にミステリー小説を読みながら謎解きするのもいいんですけど、劇場の客席という制限の多い空間で、物語に神経を張り巡らせつつ、一筋縄でいかない俳優たちの物語を劇場で楽しんでいただけたら嬉しいです。
松田:西田さんについてみんなは天才だって言うんですけど、僕としては…、生意気ですがそう一口に言ってしまうのが悔しかったりもして。でも、あらためて一緒に作品を作らせていただくと、やはり西田さんは天才なんだと実感するんですよ。まず、演出がセオリー通りじゃない。裏をかいたり、その裏の裏をかいたり。それは、演出だけではなく物語も同じ。
僕たちキャストは自分が持っているものをすべて注いで役と作品に没頭しますが、西田監督、もしくは演出家の西田さんという見方で映画も舞台もぜひ観て欲しいです。後世に語り継がれる作品になると思います。僕自身、10年前にこの作品が作られたと知った時は驚きましたし、10年前でも出演したかったって思いましたので(笑)、ぜひ皆さんも作品を体感しに劇場へお越しください。

インタビュー・文・撮影=大宮ガスト
公演情報

舞台『ONLY SILVER FISH』
■日時:2018年1月6日(土)~17日(水)
■会場:紀伊國屋ホール
■脚本・演出:西田大輔
■出演:松田凌、皆本麻帆、玉城裕規、高柳明音(SKE48)、伊藤裕一、山口大地、小槙まこ、双松桃子、菊地美香、辻本耕志、中村誠治郎、川本成

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