[第34回]「初期の頃のAKBみたい」宮
澤佐江が舞台『TOKYO TRIBE』で得ら
れた経験と、得がたい出会い

「エンタテインメントって、やっぱり最高!」と佐江ちゃんに思わせた舞台『TOKYO TRIBE』。クリエイターとして、プレゼンターとして生きたステージは佐江ちゃんにどんな変化をもたらした?

ーーさあ、佐江ちゃん! 今回もよろしくお願いします。
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はい! よろしくお願いします。
ーー前回からひと月ぶりの取材です。
前回の取材は10/2でしたよね。「ミラチャイ」に関しての私の記憶力はすごいですよー。
ーー(笑)。前回は、舞台『TOKYO TRIBE』の東京公演中でしたね。
そうですね。その後に、名古屋と大阪公演があって、大阪で大千秋楽を迎えて。
『TOKYO TRIBE』の大千秋楽から今日まで、たったの10日しか経ってないの!? 濃密な10日間だったなぁ。。 『TOKYO TRIBE』がもう、すっごく前のことのように感じる!!
ーー千秋楽前は、「TRIBEロスになりそう」と言っていた佐江ちゃんですが、実際にはいかがですか? (第32回)
それが「ロス」を感じる感覚は、もうなくなっちゃったみたいなんです!
頭の切り替えができるようになりました。
これまでに、一番「ロス」を感じたのは、『王家の紋章』の初演(2016年8月公演)を終えた後。ちょうど去年の今頃の季節です。心にぽっかりと穴が開いちゃって。でも、今年に入ってからは、
『王家の紋章』再演のお稽古が2月に始まって、4、5月に本番
『ピーターパン』のお稽古が6月に始まって、7、8月に本番
『TOKYO TRIBE』のお稽古が9月に始まって、10月に本番
今はもう『朝陽の中で微笑んで』のお稽古に入っていて。いくつかの舞台を経験して、「ロス」という感覚がなくなっちゃったみたいなんです。
ーー『王家の紋章』初演のとき、次の作品の稽古場へ行く共演者さんを見て、「さみしい! 」と言っていた佐江ちゃんを思い出します。(第5回)
ひとつずつ、経験を積んでいく
あのときは本当にさみしかった!
久々に名前を出すけど、平方元基さんが「次の稽古が… 」と言っているのを聞いて、“もう言わないで〜。さみしい〜 ”って、本当に思ってた(笑)
もちろん、『TOKYO TRIBE』が終わってさみしいし、もっと共演した皆と一緒にいたいし、この作品をもっとやっていたいと思うから、一緒にいた人たちへの「人間ロス」はやっぱりあります。
でも、こうしてひとつずつ経験を積んでいくんだなって感じてます。自分も成長しちゃったな。えへへ(照れる佐江ちゃん)
ーー大阪での大千秋楽の様子を聞かせてください。
それが、相方がもうずっとふて腐れちゃってて。相方=メラ役のSHUNなんですが、前日から、ずぅーーーっと同じことを言ってるんです。
SHUN「ホンマにイヤや! 明日(大千秋楽)のことホンマ、言わんといてッ」
佐江「そんなこと言っても、来るんだよ、明日は」
SHUN「寝たくない…、寝たくない! 寝たら千秋楽や! 」
佐江「もぉ、何歳なんだよッ! 」
って(笑)
でも、SHUN は「人生で一番がんばってる」って、自分で言えるくらいに本当にがんばったみたいなんです。私はこの作品で初めてSHUNに出会ったから、過去の彼は知らないんだけど、SHUNをずっと見てきたBBBの皆も、
「SHUN、マジでがんばってるわ」
って、言っていて。そういうふうに「まっすぐに仲間を褒められる」って、すごくいいなって思いました。
そりゃあ、千秋楽で泣いちゃうよなぁ、SHUN。 私は隣で「な、な、泣かないでぇ〜〜〜」って、アウアウしちゃいました。
ーーまるでお姉さんのように(笑)
濃密がゆえの”さみしさ”
もうね、姉御ですよ、完全に。
メラとフジヲの関係性になっちゃいました。フジヲはメラより年上の設定だったから。あのとき、泣いているメラをなぐさめてた佐江は、神々しかったと思うぞ。わははははははは〜(笑)
あのときは皆がメラをなぐさめてた。「よくがんばった! 」って!!
SHUNはプレッシャーもあったと思うし、演技も殺陣も初めてで。「俺、ライブ以外でこんなに汗かかない」って言ってました。本当にがんばってた。
ーー共演した皆さんの「TRIBEロス」はどうなんでしょう?
『TOKYO TRIBE』が初めての舞台っていう人が多かったので、皆、「イヤだ、イヤだ!! 終わりたくない! さみしい!!」って、言ってました。
『TOKYO TRIBE』でグループLINEをしているんです。また、その中でさらに小さいグループLINEを作っていて。そこに、
「ヤバい、さみしい。もう、ロス感じてる… 」
って、大千秋楽のあった大阪から、東京に戻って3、4時間しか経ってないのに、もうメッセージがきて。さっきバイバイしたばっかりなのに、早いなぁと思っって(笑)
皆で一緒にいた時間がすごく濃密だったから、その分さみしさもすごいんです。稽古中も、お休みはほとんどなくて本当に毎日一緒にいたから。
ーーお稽古と本番を合わせて約2カ月間くらいですね。
お稽古が始まったのは8月末だから、2カ月足らずです。共演した皆とは、親友の域を超えるくらい仲良くなりました。
ーーそれぞれの道を極めている共演者さんからの刺激も、大きかった舞台だったのでは?(第32回)
クリエイター集団
めちゃめちゃ刺激を受けました。
例えば、ラッパーさんなら、『フリースタイルダンジョン』というラップバトルの有名な番組にも出演されている、ラッパー界でも有名なすごい方たちが集まっていました。
そのラッパーさんたちにとっては、“芝居をしながらラップをする”という状況は、初めての経験だし、未知なる世界だったはずなのに…。それなのに、『TOKYO TRIBE』のなかでは役者になっていて。
お稽古中、すごいと思ったことがあったんです。
書記長役のDOTAMAさんが、「PARADISE」という曲を歌うんですが、最初は自分の役柄である書記長として歌っていて、途中からラッパーへ変わっていくんです。
役からラッパーに変わるその「瞬間」がすごいんです。
めっちゃかっこいいんですッ!! その「瞬間」をDOTAMAさんは、演出をしていた梅棒の今人さんからは一度も言われていないのに、自ら突然生み出していて。それが本当にすごくて。。
メラ役のSHUNくんは、また違うすごさなんです。ラップの場面ではすごいラッパーで、芝居になると一瞬にして役者になっちゃう。ダンスも、歌も、ラップも、芝居も、殺陣も、本当に何でもできちゃう。だから、
佐江「無敵だねぇー」
SHUN「オレ、無敵やねんッ」
って、言ったりしてました(笑)
ーー皆さん、クリエイターなんですね。
まさにクリエイターです。
のりちゃん役で、シンガーソングライターの當山みれいちゃんもすごいと思いました。私にしてみれば、曲や、歌詞は、最初から出来上がったものがあるのが当たり前だったから。みれいに聞いちゃいました。
「どうやったら、曲って降ってくるの?? 」
って。
あと、Beat Buddy Boi(以下、BBB)のビートボックス(人間が自らの発声で創り出す音楽)もすごくて。『TOKYO TRIBE』では、BBBのToyotakaくんがビートボックスをやっていたんですが、
「どういうビートボックスがいいかな。このウラの音に合うやつ」
とか言いながら、BBBの皆で集まって話してるんです。もう、聞いたこともないカタカナの言葉を使いながら!! 皆で創り込んでいるのを目の当たりにしていると、マジで?? すご過ぎ!! って、驚くばかりで。
「口の中からいっぺんに、いくつ音を出してるの?? 」
っていうくらいすごいんです。実際に、そのビートボックスがあるかないかで、曲の印象も全然違って、ないと音がさみしいんです。
『TOKYO TRIBE』では、さまざまなクリエイターたちが「何かを創り出す瞬間」に何度も触れることができました。
ーーなかなかできない経験ですね。
48グループ=プレゼンター
そうですね。48グループにいたとき自分たちは、「出来上がったものを、自分たちのものにして観せる」という、いわばプレゼンターの役割だった。
でも、『TOKYO TRIBE』では、クリエイターとして生きて、プレゼンターとしても生きられた。
「エンタメってこういうことなんだ、エンタテインメント最高ッ!! 」
って、すごく感じさせてもらいました。
最初、舞台化が発表されたときは、『TOKYO TRIBE』の原作をどう舞台化するんだ? それもHIP HOP? ラップで? 難しくないか?? って、見られていた部分もあったと思うんです。
幕が開いた当初も、ステージに立って客席を見ると、初日に比べて2日目で、もうこんなに空席があるんだ…、って皆がすごく感じていたんです。
だけど、日にちを追うごとに、空席がどんどん埋まっていって。
客席が埋まっていくのを見られたのはすごく幸せでした。毎公演、自分たちの全身全霊をかけて、できるものを全部観せて、やり切って。
だから、客席にどんなに人が少なかろうと、毎公演、本当に達成感があったんです。そういう気持ちにまでたどり着けた、自分自身にも驚いています。
今までは、見栄えをすごく気にしていた自分がいて、客席に人がいないというだけで、気持ちが落ちちゃうこともあったんです。
だけど、そういうこともなくて。そう思えたのは、この作品が、自信をもって届けられる作品だったからこそだと思っています。
ーー客席がどんどん埋まっていく過程を見られる、っていいですね。
「初期の頃の、AKB48みたいだな」
初期の頃のAKB48みたいだな、って思いました。
劇場の客席が全然埋まらなくて、それでも噂を聞いたり、ネットの書き込みを見たお客さんが来てくれたり。出演している自分たちから発信して、お客さんを増やしていったり。気づいたら劇場が満員になっていた、みたいな。。
それを東京、名古屋、大阪と、公演を重ねるごとに感じることができた作品でした。
ーー公演中、作品の評判がじわじわ広まっていく感覚がすごくありましたよね。
それはすごく感じていました。
やっぱり演劇をあまり観ない、知らないという方たちからすると、チケット代は決して安いものではないし…。だから、今一歩、足を踏み入れづらかったりしたのかなとも思います。
逆に、舞台を観る人にとっては、「ラップ? HIP HOPって何? 」っていう抵抗感があったと思うんです。
でも、本当にそういう抵抗感もひっくり返せる作品が創れたなと思っています。私が偉そうに言うことではないんだけど、自分でやっていて感じていたから。それは観に来ていた人に伝えられていたんじゃないかと思います。
“観に来てほしい”っていう気持ちを、こんなにあからさまに表に出したのは、この作品が初めてだったと思うんです。
ーー佐江ちゃんは普段、あまりそういうのは好きじゃないんですよね。
再演希望!
そうなんです。
「観に来てください」って、自分のことを人に言うのはあんまり好きじゃなくて。自分でちゃんとプレゼンしなきゃいけないんだけど、好きじゃないから、ずっと避けてきて…。
でも今回は、自分を観てほしいというのではなくて、すごい人たちが集まっているから、とにかく観てほしい。少なくとも、私を好きと言ってくれる人には、知ってほしかった。その思いの方が強かったです。
ーー再演を希望する声もとても多いようですね。
そうですね。
再演も1回だけじゃなくて、「毎年1回、この期間に公演する」という感じにすれば、すごくおもしろいと思う。
でも、同じ時期に同じメンツが集まるのはすごく難しいことだなぁ。。 もし再演があって、自分が出られなかったら…。すごくヤダッ!!
再演をやれるなら、やりたいなっていう気持ちがすごくあります。
今人さんもたまたまご飯に行ったときに話してくれたんです。「スンミにこういう過去があるとか、もっと入れてみたい」って。それは「役柄1人ひとりに対してそう思ってる」って。
今回は1時間半の公演時間だったけど、その中で、お話を創るのは本当に難しいことだったとも話していました。
とはいえ、原作を知っている人が観たら、「あそこのシーンはこういう形にしたんだ」って楽しめるし、原作を知らない人が観ても、わかりやすくなっていたと思うんです。原作のいいところが、1時間半に凝縮されていたから。
脚本家さんも、演出家さんも素晴らしいなって思いました。
ーー前にもお話しましたが、台詞はほとんどないのに、ストーリー展開がとてもわかりやすかったです。
こういう出会いは大切にしたい
本当にそうです。こういう作品だったら、エンタメとして海外にも進出できるんだろうなって、頭をよぎりました。海外なら、あらかじめストーリーのあらすじを配っておいて、話の展開を理解してもらって。
言葉じゃない分、舞台を存分に「体感」してもらえると思うんです。
ーーそうですね。言葉じゃない分、ダイレクトに伝わって本当に楽しめました。再演をぜひ期待したいです。
本当にそうですね。
ーーところで最近の佐江ちゃんのSNSでは、共演者さんのライブに行った様子がアップされていたり、楽しい関係は続いているようですね。
もちろん、もちろん!! もう、大ファンですから! こういう出会いは大切にしたいと思っています。
やっぱり私はこれまでも、後輩がいる環境にずっといたじゃないですか。
そういう中で、後輩から刺激を受けて、“自分はこういう背中を見せなきゃいけないんだ。自分はここをがんばらなきゃいけないんだ”っていう気持ちでやってきたな、って思い出したんです。
『朝陽の中で微笑んで』への影響
今回共演した皆は、キャリアでは違う道でやっているから、後輩とは言えないけれど、お芝居や演劇という部分では、たまたま私に経験があったから。その部分を皆と共有できたことは、自分の成長にすごくつながったと思います。
『TOKYO TRIBE』では、舞台が初めてだという人が多かったから。その人に何かを教えることによって、自然と自分の自信につながったり、経験値が上がったりするのをすごく感じることができました。
だから今、『TOKYO TORIBE』と間を空けることなく入った『朝陽の中で微笑んで』の稽古場でも、いい意味で緊張を感じることなく現場にいられています。
ーー『TOKYO TORIBE』は佐江ちゃんにいろんな変化をもたらしたようですね。そこのところ、まだまだじっくりお聞きしたいので、この続きは次回の「ミラチャイ」連載で、といたしましょうか?
はい!
ーーまた次回もよろしくお願いします。それでは今回も、たくさんのお話ありがとうございました!
ありがとうございました! 今、『朝陽の中で微笑んで』のお稽古に入っています。周りは、これまでテレビでしか見たことがないような大御所の方ばかり。
だけど、チャレンジ精神をもって、稽古に臨めている自分がいて、自分自身驚いています。次回はそんなお話もしていきます。次回の「ミラチャイ」でお会いしましょうね!
撮影:増田慶 スタイリング: 藤井エヴィヘア&メイク: 大場聡美
次回の更新は、11/24(金)予定です。

ウレぴあ総研

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