【インタビュー】PENICILLIN、結成2
5周年第2弾「根源から脈々と続く今と
未来を考えて」

結成25周年を迎えたPENICILLINが9月20日、ミニアルバム『Lover’s Melancholy』をリリースした。長い月日の中、「さまざまな局面をしなやかに乗り超えてきた」という3人の関係性を紐解いていく内に爆笑トークになってしまったのもPENICILLINならでは。インタビュー序盤では10代の頃から変わらない彼らの本質が垣間見えるはず。
そして『Lover’s Melancholy』だ。結成25周年記念の第一弾としてリリースされた『Lunatic Lover』とのつながりを持つ同ミニアルバムは、過去でもなく未来でもなく、今、バンドがいちばんカッコいいと思う楽曲をパッケージしたという意欲作。その全貌について3人に語ってもらったロングインタビューをお届けしたい。
   ◆   ◆   ◆
■バンドって崩れていっちゃうもの

■という認識で始めていないですから
──まずミニアルバム『Lover’s Melancholy』はPENICILLIN結成25周年と関係性を持たせた作品なんですか?
O-JIRO:“25周年の僕たちはこれですよ”っていう想いはありますけど、内容的には自分らがカッコいいと思えるものですね。
──今は10周年も迎えられずに解散するバンドが多いと思うんですね。バンドを始めてそんなに年数が経たない人たちにとっては25周年って途方もない時間だったりすると想像するんですが、どう乗り超えて今に至ってるんですか?
HAKUEI:解散したバンドの当事者じゃないのでわからないですけど、理由を本人や人づてに聞く機会もちょこちょこはあるんですね。で、“なるほどな”と思うこともあるんです。ウチのバンドが少し違うのは、タフなんだろうなって。振り返ったら、いろんな局面があったし、どんなアーティストも常に順風満帆ではないと思うんです。PENICILLINは、何かあっても変に力が入ることもなくマイペースにしなやかに乗り超えてきたというか。メンバーの組み合わせの妙で今まで来られたのが持ち味というか。ある意味、チャームポイントでもあるのかなと思います。
──危機的な局面があっても変に深刻に考えこまなかったという?
千聖:感じ方は人によって違うと思いますけどね。3人とも育った場所も違うし、兄弟でも何でもないんですけど、同じ時代を生きてきているので、今回のアルバムもそうなんですけど、思い浮かべるものが近かったり、“PENICILLINにとってコレはいいなぁ”と思える感覚が近かったりする箇所が多いんでしょうね。20代〜30代の頃は逆にそれが嫌だったり、反目しあったりもあったと思うんですけど、40代になるとそういうことも面白くなってきて、許容量も違ってくる。あと、普通25年前からずっと一緒にいることってほぼないと思うんですよね。家族でも会社でも大人になってからそんなに長い時間一緒にいることって少ないんじゃないかって考えると、ちょっと変わった関係性ではあると思います。それが今回のアルバムに面白く出てると思いますね。
──PENICILLINの関係性が?
千聖:そうですね。バンドって崩れていっちゃうものという認識で始めていないですから。脆いものだって感じていなかったのは確かなんです。もっと言うと、そんなこと関係なく、ただやってるだけ。とりあえず音を合わせたら面白いなって。漫画『美味しんぼ』でも海原雄山と山岡士郎が親子でイガミあってても、相手の料理が“美味い!”と思ったら認めちゃいますよね(笑)。意外とそういうところかもしれない。食の本能も音の本能も一緒なのかもしれないですね。
──ふーむ。「脆いと思ってない」ってスゴイですね。
千聖:子供はオモチャが壊れると思って遊んでないですよね。ここは押さないほうがいいなんて思わないで、とりあえず押しちゃうみたいな。バンドやってる人は基本そういう体質だと思うんですよ。そこでバーンって壊れちゃうこともあるし、壊れないこともある。
▲HAKUEI(Vo)


──その結果、25年続いてしまったっていうことですかね。
千聖:ははは。結果、子供にオモチャを与えた状態のままっていうのもね(笑)。ただやっぱり、壊れるとは思ってないですね。
──O-JIROさんはどうですか?
O-JIRO:確率なんだとは思いますけどね。活動を止めずにずーっと同じメンバーでやっているバンドも少ないでしょうし、続けていくモチベーションを保つのはすごいことだと思うんです。で、PENICILLINの場合は放っておいてくれるんですよね。常に一丸となってるわけでもなく、誰かが他にやりたいことがあれば見守ってくれるので。
──PENICILLIN以外のそれぞれの活動も並行させていますもんね。
O-JIRO:そういうところもいいんじゃないですかね。違うことをやってもホームに戻ってこれるというか、うまい具合に干渉しないというか。そういう関係性は築こうと思っても築けないだろうし、そこはこの出会いがラッキーなんでしょうね。なんで続いたのかわからないですもんね。
千聖:ライブやる前に「気合い入れようぜ!」みたいなこともないし(笑)。
HAKUEI:「ウォー!」みたいなことしないもんね。
──初期の頃も気合い入れとかしなかったんですか?
千聖:武道館の前にマネージャーが握手を求めてきたことはあったけど(笑)。
HAKUEI:それぐらいだね。初めての武道館で。
O-JIRO:円陣とか組まなかったね。
千聖:円陣を組むことが悪いこととは思わないけど、俺たちのスタイルとは違うかなっていう。
HAKUEI:お互いに存在が身近過ぎるのかな。例えば子供が親とメシ食いに行って会計の後に「お母さん、ごちそうさまでした!」とか言わないじゃないですか。
──気を遣わなくていい関係なんですよね。
千聖:例えばJIROさんが機嫌悪くて1人でボーッとしてても、肩叩いて「どうしたんだよ」って話しかけたりしないから(笑)。
O-JIRO:でも、3人集まってめちゃくちゃモチベーションが低いこともないですからね。
千聖:ああ、アップダウンが激しい人は……まぁいないかな。
O-JIRO:「今日、俺ちょっとテンション低いかも」と思っても一緒にやっている内に高まるから、普通に戻れるんですよね。負の方向に行くことがないので、それは良いところですよね。
■“果汁1%の炭酸飲料”とかあるでしょ?

■意味ある?と思うんだけど、あるんです(笑)
──それは続いてきた秘訣かもしれないですね。
千聖:あと野球の話をしないとかね。
──えっ? 野球の話はNGなんですか?
千聖:例え話ですけど、俺とHAKUEIがヤクルトが好きだとしてJIROさんが全然興味なかったら、2人で盛り上がり過ぎちゃうと「野球知らないからな〜」ってなっちゃうかもしれない(笑)。だから、そこはあまり掘り下げず。でも、「映画『ウォーキング・デッド』を見た!」って話題が出ると3人とも「いいね!」ってなったり。そのへんの感覚は意外と似てるのかもしれない。
HAKUEI:あと誰かがふざけ始めると3人で独特の悪ノリになりがちだったり。ヘアメイクさんも“うるさい”と思ったりしてるんだろうなって(笑)。
──ははは(笑)。それ、今の話ですか?
HAKUEI:たまにそういうスイッチが入るんですよ。
千聖:確かに他の現場だとそうはならないからね。
HAKUEI:10代から知ってるから感覚が変わってないんでしょうね(笑)。
──面白がるポイントが同じなのかも。
O-JIRO:同じことばっかり言ってたりね(笑)。
HAKUEI:似てないモノマネずっとしてたり(笑)。
千聖:いや、似てると思うよ(笑)。
HAKUEI:「長嶋茂雄です」みたいなモノマネとか。
O-JIRO:4時間ぐらいやってますね(笑)。
千聖:でも、JIROさんは……ヘタだね(笑)。
O-JIRO:ははは(笑)。それはしょうがない。
HAKUEI:みんなでアドバイスするんですよ、「ちょっと力入り過ぎ」とか(笑)。
▲千聖(G)


──そういう変わらない関係性がいいんでしょうね。アップダウンが激しくないっていうのも、特にヴォーカリストは珍しい気がします。
HAKUEI:そうなんですかね。多少はあるけど。
O-JIRO:ダウンしてる時にめちゃくちゃ話しかけてくるのはこの人(千聖)だけですよ。
千聖:(笑)!
──さっきと話が違う(笑)!
O-JIRO:でも、気を遣ってくれてるんだろうなと思えるんですよ。よけいにくだらないこととか言ってきて(笑)。
HAKUEI:JIROさん、たまにムカついてるの伝わるけどね(笑)。
O-JIRO:ウチは伝わってて、話しかけてくる人とこない人がいるんですよ。
千聖:ここは敢えて悪いベクトルを真逆に変えて、楽しくなったらいいんじゃないかなぁと思ってね。HAKUEIには、あまり言わないですけどね(笑)。
HAKUEI:でも、面白いこと言ってくると意外とちゃんと拾うのは俺だと思います(笑)。
千聖:楽屋とかだとギャグを言った時に拾うのはHAKUEIですね。JIROさんはHAKUEIくんがいると急に怠け始めるんですよ(笑)。
O-JIRO:アウェイな現場ではしっかり拾ってますよ(笑)。
千聖:たまに「JIROくん、元気ないのかな?」って思うと元気出させてあげなきゃと。
HAKUEI:撮影の時、照明がぶっ壊れたことがあったんですよ。そしたら(千聖が)「僕の性格の明るさでカバーするから大丈夫」って(笑)。
千聖:「幻想カタルシス」という曲のミュージックビデオの撮影で、「はい! スタート!」って声がかかった時に照明がカターンと倒れたんですよ。「倒れてますよ〜」って指摘するだけだと味気ないから、「僕の明るさでカバーできればいいんですけどね」って言ったらJIROさんは全く動かなかったんですけど、HAKUEIくんだけ肩がちょっと揺れてたから「面白がってるな」って(笑)。
HAKUEI:ちょうど疲れてた時だったから助かりましたね。1年に2回ぐらいハマることがあるんです(笑)。
O-JIRO:数打ってかないとね(笑)。
HAKUEI:たまに“果汁1%の炭酸飲料”とかあるでしょ? “この1%に意味あるのかな?”と思うんだけど、あるんですよ(笑)。
千聖:俺は果汁1%(笑)? でも、もし僕がいなくなったら2人とも本当に寂しいと思いますよ。
──照明がなくなってしまいますから(笑)。
HAKUEI:もうずーっと夕暮れみたいな感じですよ(笑)。……作品の話、全くしてないですね(笑)。
■バンドのエネルギーや躍動感が大胆に出てる

■という意味ではちょっと昔っぽいかもしれない
──作品を作る時の臨み方も昔から変わらないんですか?
千聖:やりたいことを最初にお互いに話して、みんなで確認した上で、そこをめがけて個人個人が曲を作るんですね。それを聴いて、「こうしたらどうかな」「ああしたらどうかな」って話して化学反応が起き始める。今回は制作期間が短かったので、細かいところまでは話し合わずに「ここは任せる」「ここはやる」ってお互いに割り振って作っていったから、メンバー間の信頼度が高いアルバムだと思います。
──前作『Lunatic Lover』と繋がりのあるミニアルバムでもある?
千聖:対比させた時にすごく近い感じがする作品だと思います。
HAKUEI:最初の質問に戻りますけど、25周年の関連性っていうのは、“そういう気持ちで臨んでますよ”ぐらい。だからってガチガチに作り上げたわけではなく、今、バンドとして一番面白くてカッコいい作品っていうのはいつもと変わらずです。
──アルバムのタイトルは最初から存在していたんですか?
HAKUEI:曲が出揃ってからですね。前作と合わせて2枚のミニアルバムが25周年の作品なので一応リンクさせていますけど。
──1曲目の「黙示録」からドラマティックで引き込まれますが、全体像をどう捉えていますか?
千聖:メンバーそれぞれが作ってくる曲を楽しみにしていたんですけど、聴いてみて前作の流れに近いものになるなと思いましたね。前作では1曲目に「Lunatic Love」という短い曲がきて、それが今作は「黙示録」。この2曲が映画のオープニングみたいだったりとか、前作の「月の魔法」という曲に対して今作では「Dear Friend...」が収録されていたり、アプローチの仕方が似ているんですね。
──なるほど。
千聖:ハードなのは言わずもがなですけど、そういう流れがありつつメンバーの個性も出せて。チャレンジしている部分もあるし、王道の部分もある。非常によく出来ていると思います。タイトルもJIROさんが前作の流れを汲んで「Loverという言葉を入れたい」と言っていたので、HAKUEIがリード曲の「メランコリア」というタイトルを付けてくれたことにヒントを得て、僕が「じゃあ、『Lover’s Melancholy』っていうタイトルはどうだろう」って提案をしたんです。それもさっき話した刺激し合っての共同作業なんですよ。
O-JIRO:タイトルは“なんとかLover”がいいって、制作の終わりぐらいにずーっと考えてたんですね。そしたら、千聖くんから“『Lover’s Melancholy』はどう?”ってメールが来て、いくつか候補があった中で一番いいなって。
▲O-JIRO(Dr)


──内容については?
O-JIRO:最初は「雰囲気やムードを大事にしたいよね」って話から始まったんですよ。当初はこんなゴリゴリなロックになるとは思ってなかったけど、PENICILLINが曲を持ち寄る時はいつも“芽が出た!”っていう感じで。そこからガラッと変わる曲もあれば、そんなに変わらない曲もあって、なかなか予測できるものではないんですね。タイトルが先に決まらないのもそういう理由だと思います。結果『Lunatic Lover』のほうが繊細な仕上がりで、両作の対比的にも良かったのかなと。テンポの速さやシャウトとは違う意味で、バンドの激しさが出ていると思うし、いいアルバムになったと思います。
HAKUEI:短時間での進行ではあったんですけど、時間があればいいというものではないなと常々思うし、ちゃんと丁寧には作れたのでいい勢いが出たなって。時間をかけて何度も塗り直す油絵もあれば、ダイナミックにガッと書く書道もあるでしょ。今作はバンドのエネルギーや躍動感が大胆に出てるなって。そういった意味ではちょっと昔っぽいかもしれない。
──PENICILLIN初期ですよね。私も通じるものがあると感じました。
HAKUEI:もちろん経験を積んできて、レコード会社が元気だった時代やカラオケブームの時代だったり、「間奏を短くしてほしい」って言われたりした時期もあって……ウチはそこはシカトしましたけど(笑)。いろんな時代を経験して、昇華して成長してきてはいるんですけど、「今作はそういうことにあまりこだわらないで作ろう」と言ってたんですよね。もっと自由な作品にしようって。1曲はバラードを入れようとか、今まで作ってきた方法論もあるけれど、そこにこだわらなくていいんじゃない?って。今年の5月に久しぶりにインディーズ時代の曲だけでライブをやったときに、“こういうのもいいな”と思ったのもあったし、スキルがなくても曲として成立していることも感じられた。今回も面白いタイミングでギターソロが2回入っている曲があったりするんですよ。今の自分たちでありながら初期衝動もどこか意識して作りました。
──歌詞でキーワードになったものはありますか? 1曲目と2曲目の「Perfect Flame」には“霊長”という言葉が出てきますよね。
HAKUEI:25周年だからかもしれないけど、根源的なものから脈々と続いている今と未来を考えた時に出てきた言葉ですね。
──王道の曲もあればチャレンジしている曲もあるということですが「メランコリア」はPENICILLINの王道かなと思いました。
O-JIRO:「メランコリア」みたいなテンポでぐいぐい押していく感じは最近のPENICILLINらしいかなとは思うんですけど、昔からアルバムは統一感よりヴァラエティに富んだものを作ってきた傾向があるんですね。1曲1曲を突き詰められるところまで突き詰めて「歌謡曲っぽく行こうよ」とか「これはパンクっぽく行こう」って作ったものが多い。だから、突き詰めたものがPENICILLINらしいという感覚。自分たちからすると“みんながイメージするPENICILLINらしさってこういうことなんじゃないかな”っていうことしか思い浮かばないんですよね。
──自分たちのことを少し引いた視点で見るわけですね。
O-JIRO:そう。速くて激しい曲がPENICILLINらしいと思ってるだろうから、そういう曲もあっていいかなと思ったりとか。
千聖:世間がイメージするPENICILLINらしい曲と自分たちの雰囲気がマッチしてるんだろうね。「メランコリア」みたいな曲調は確かに自分達にはたくさんあるんだけど、その中でもいろんな挑戦をしているんですよ。例えば“こういう曲のサビで、こんなマーチングドラム入らないでしょう”とか。1つ1つが輝きを放っているし、目には見えない色があるので逆に「どの色が好きですか?」って聞いてみたい感じですね。
──「メランコリア」だと、メランコリックなところが爆発しているのがPENICILLINらしいなと思ったんですけどね。
HAKUEI:うん。千聖くんも言ったように、新しいことに挑戦しているからなんですよ。ドラムのパターンもそうだし、切ないのに躍動感があったり。普通はやらないようなことをあえてやって、今までにない面白さや雰囲気が出ていてる。それは他の曲も同じなんですけど、25周年やってきたから挑戦できることで。逆に言うと先を見ているというか、全体に前のめりな感じになっていると思います。
■全体的に手数を増やすのをやめたんですよ

■人力で行けるところまで行ってみようと
──では「メランコリック」はアルバムのリード曲ですが、選んだ決め手は?
千聖:レコーディング中にHAKUEIが「メランコリア」でいいかなって言ってたような気がするけど。
HAKUEI:そうだね。「メランコリア」か「Perfect Flame」かなって。リード曲に決まった時には“だよね”って思いました。
千聖:HAKUEIくんの声質とのマッチングがいいからね。それでいて激しいアプローチをしている曲でもあるし。
O-JIRO:アルバムタイトルが背中押してくれた感はありますね。
千聖:『Lover’s Flame』じゃないなって。『Lover’s Melancholy』のほうがPENICILLINに雰囲気的には合ってる。
O-JIRO:ジメジメ感がね(笑)。
千聖:“燃え上がる恋人たち”っていうのはね。
HAKUEI:鬼ダサいしね(笑)。
千聖:ま、中身はFlameですけど。
──ははは。炎のように燃え上がっていると。
O-JIRO:でも、曲順も「メランコリア」が最後に来て落ち着いたなって。
HAKUEI:いいよね。
千聖:いいバランスになったよね。
──「メランコリア」のミュージックビデオはどんな仕上がりに?
HAKUEI:監督曰く、「みなさんでの演奏シーンはさんざん撮ってきたでしょ?」ということで、スチール写真が動いているようなモード感のある映像にしてみたいという要望が。なので今回、集合のカットがないんですよ。しかも、各自のポジションをあまり変えずに撮った。それがスチールっぽくってことだと思うんですけどね。あとハーフのモデルさんに出てもらってイメージ映像を撮ったり。
──おしゃれな感じの映像ですかね。
千聖:そうですね。今までにない感じの映像ですね、新しい監督と一緒にやったので。
O-JIRO:回したロールも少ないし、集合カットもなかったんですけど、監督の中にヴィジョンがあって「大丈夫だ」って言ってくれて、そういう方と一緒にやったことがなかったので新鮮でしたね。
──監督さんに委ねたんですね。
千聖:初めての方でしたけど思いきり委ねましたね。シナリオを送ってもらった段階で、すぐに行けるなっていうのがあったので。
O-JIRO:「自分が持っている感性をPENICILLINのビデオで表現したい」と言ってくれたので、委ねるしかないなって。
HAKUEI:撮影中はイメージ通りの素材が撮れたらOK。「一応、こういうパターンも撮っておこう」っていうのもなかったですね。
──アーティスト写真の艶やかさとはまた違うイメージですね。
HAKUEI:そう。色のトーンも落ちてて、もう少しレトロっぽい感じ。
──では、各自チャレンジした楽曲について教えてください。
HAKUEI:1曲目の「黙示録」はJIROさんがデモを持ってきた時にチャレンジ精神を感じて、ボーカルなしのインストにしても良かったんでしょうけど、しっかり歌が入った設定にしたくて、すごく満足しています。
──先ほど映画のような始まり方という話も出ましたが。
HAKUEI:そうですね。演奏もしていて、ここまで劇版っぽい雰囲気の曲で始まる作品というのはなかったので。短い曲ですけど、すごく大事な曲だと思ってます。
──なぜ「黙示録」というタイトルにしたんですか?
HAKUEI:7つの大罪の英語のつぶやきから始まるっていうアイディアがJIROさんからあったんですよ。
O-JIRO:作った時は“人の本質”みたいなものを表現した曲になったらいいなって。生命が生まれて大地を走り回ってるみたいなイメージでリズムやテンポから作り始めたので、歌詞の内容にも満足です。最初は作り込んでシンセをいっぱい入れてたんですけど、MSTR(千聖)が激しいギターをガンガン入れてくれたので、さらに躍動感が出たんですよね。妖しいクリアトーンのギターを2本弾いてくれて、音的にだんだんお腹いっぱいになっていくような感じを出したかったから、すごく良い出来になって嬉しいですね。
千聖:「黙示録」は、自分からすると、ジェーンズ・アディクションのデイヴ・ナヴァロのギターに近いイメージかな。‘80年代のニューウェーブのノリと‘90年代のオルタナ系のギターを合わせたような、変則的なフレーズを弾いていますね。
──短い曲だけど濃縮されてますね。
O-JIRO:そう。ガーッと行く感じを短い中に全部表現できてるんじゃないかなって。
HAKUEI:尺は普通の曲の半分ぐらいなんですけど、このサイズがカッコいいなと思ったんですよね。
▲ミニアルバム『Lover's Melancholy』Type-A


──「黙示録」から「Perfect Flame」のダイナミックなアプローチに移行するのがいいんですよね。サバンナをライオンが駆け抜けていく描写で始まる歌詞もピッタリで。
HAKUEI:そうですね。曲順は最後に決めたんですけど、偶然流れが出来て。
千聖:「Perfect Flame」は、リフを作った時にスピード感のあるジミヘンとか、マシュー・ベラミー(MUSE)の疾走感のあるギターの感じとベルベットリボルバーのセクシーで重いサウンドとか、いろんな要素をくっつけて。湿度はイギリスだけどダイナミクスはアメリカみたいなイメージでデモを作って、最終的にはHAKUEIとJIROさん、シゲさん(プロデューサー)に参加してもらいましたね。
──ギターソロもカッコいいですね。Flame=炎のイメージですか?
千聖:タイトルは後でつけたので何とも言えないですけど、揺れてる感じはしますよね。ジミヘンとかのイメージだったのでエフェクターもファズとかフェイザーを使っているんですよ。揺れたり、激しかったりする音にしたかった。パンチ力のある音になっているのはそういうところもあるのかもしれない。
HAKUEI:歌詞は根源的なもの=本質がテーマ。そういう大事なことって時々思い出さないと忘れちゃったり気づかなかったりするので、嫌だなと思うんですよね。歌詞はメッセージでもあるので、メンバーや聴いてくれる人と共有したいと思って書きました。タイトルも情熱的ですね。
──ピンクのイルカが出てくるのもHAKUEIさんらしい。
HAKUEI:官能的なものと神秘的なものを融合させるのに良いイメージかなと思って。ピンクのイルカって実際アマゾンにいて“神の使い”って言われてるんですよ。
──そうなんですね。あとこの曲、ドラムの後半の追い込みがすごいなって。
O-JIRO:でも、今回のミニアルバムは全体的に手数を増やすのをやめたんですよ。もうちょっとテンポが欲しいなと思っても人力で行けるところまで行ってみようというのを課題にして。
千聖:手数、少ない?(笑)。
HAKUEI:俺も多いと思うけど。
O-JIRO:ははは(笑)、これでも減らしたほうなんですよ。
HAKUEI:効果的に抜くところ抜いてるんじゃない?
O-JIRO:打ち込みと同じぐらいの手数があったのをだいぶ減らしたんですけど、好きにやるともっと増えちゃうんでしょうね。アタックが増えてパンパンパーンってノレるような箇所も本当に強いアクセントしか入れてなくて。
千聖:入れようと思えばいくらでも入れられるぞってことだよね。
■予定調和じゃないロックの在り方なんです

■1個1個のピースが合わさって1つの作品になる
──サウンドやプレイ的にレコーディング中の印象深いエピソードは?
千聖:ギターに関しては「飛翔遊戯」だけ使ってるアンプが違うので、他の曲とは音色が違うかもしれない。音がジワッとしてるというか。
O-JIRO:「飛翔遊戯」はHAKUEIさんらしい譜割りですよね。
千聖:そうだね。キミも人のことは言えないけどね。「HUMANOID COMPLEX」はモロにJIROさん節だからね(笑)。
HAKUEI:「飛翔遊戯」は美しく病んでる曲。こういう曲はほかの人は書かなそうだし、書こうかなって。
──ミステリアスな曲ですね。
HAKUEI:そうですね。サビの最後は言葉とかいらないなと思ってニュアンスとか雰囲気で押し切るような感じで歌いました。アッパーに突き抜けるんじゃなくて逆の方向に突き抜けるというか。精神的にぐさりと深く刺さるような感じの曲にしたいなって。
──「HUMANOID COMPLEX」はO-JIROくん節でロックンロールなテイストもあってノリやすいナンバー。
千聖:この曲、さっきも言ったけどO-JIRO節がスゴイよね(笑)。
HAKUEI:俺、譜割りだと思うんだよね。
千聖:ドラムのパターンがJIROさんだなと思って。
O-JIRO:自分が書く曲のドラムは一番単純なんですよ。「メランコリア」は最後に思いついた曲で、最初はシンセとかループとか入れようと思ったんですけど、最終的にはガッツリしたバンドサウンドになったなって。サビもHAKUEIさんがきっとこういうふうに歌ってくれるんだなと思ってたら、ジャストミートして嬉しいなという。
──歌詞もPC用語が出てきて、O-JIROさんらしいなと。
O-JIRO:ははは(笑)。
千聖:実はこの曲のギターソロはお気に入りです。
O-JIRO:カッコいいね。
▲ミニアルバム『Lover's Melancholy』Type-B


──そして千聖さん作詞作曲の「Dear Friend...」は最もピュアなラブソング。
O-JIRO:人を映したかな。
千聖:その通り!松坂桃李!(笑)。
HAKUEI:それ、今度のニコ生で言ってほしいな(笑)。
千聖:(笑)。この曲は最後に作ったんです。サビを自宅で作って“これ、いい感じだな”と思ったんですけど時間も無いので、スタジオで一人でAメロBメロといった構成を作って形にした後で、シゲさんにデモ音源を録音してもらった曲ですね。キャッチーで綺麗な曲だからスローテンポにもできたんですけど、まったりしたくなかったので、テンポの良い感じの曲に仕上げました。歌詞は、AメロBメロは違うところもありますが、サビに関してはストレートなアプローチなので、どうHAKUEIくんが料理するんだろう?って楽しみだった。
──実際、歌を聴いてどう感じたんですか?
千聖:「こういうふうに歌ったんだけど、どう?」って言われた時に「ああ、面白いな」と。表現力があるプロのボーカリストって、テクニック云々じゃなくて「いいねぇ」って思わせる力を持ってる人たちだと思うんですよ。HAKUEIがこの歌詞をどう料理して歌うのか聴いてみたかったんですけど、面白かったですね。で、歌ったのを聴いてギターのアプローチを考えたり、一緒に歌う箇所を作ったり。
HAKUEI:すごく良い曲で、歌詞のシチュエーションも明確ですよね。あとは、ポップな曲なんですけど、譜割りが凝っていてタイミングが独特だったりするから、バンドっぽさが出るんだなって。だからこそ歌のニュアンスが大事で、イメージに近づけて歌う作業が楽しかったですね。歌録りの時はシゲさんに「もっと抑えて、もっと雰囲気出して」って言われたんですよ。どうしてもレコーディングだとキレイに歌わなきゃって気持ちが出るんだけど「カッチリしなくていいよ」と。
千聖:この曲、本当に切ない歌なんです。ギターソロ終わりのBメロの“Dear Friend...キミは僕をそう呼ぶたび”っていうところなんかまさに。
──好きな人から友達だと思われている人の曲ですものね。
千聖:そこをHAKUEIくんがどう歌うのかなと思ってたんですけど、切なさがちゃんと出ていて「これだな」って。
──メンバーへ、いまだにそういう好奇心を持てているのもバンドが続いている秘訣ですね。
HAKUEI:“これホントに良いアルバムだな”と思ったのはマスタリングが終わった後ですからね。ピンポイントピンポイントで考えながらやってたので、「ああ、繋がった〜!」って。でも、その感じがやっぱり我々の予定調和じゃないロックの在り方なんですよね。1個1個のピースが合わさって1つの作品になる。不安もありますけど、一生懸命にやれば必ず結果は出るので、“よかった!”と思いましたね。
──そしてボーナストラックに収録されている初期のナンバー「Quarter Doll」や「螺旋階段」のアコースティックバージョンがまた良い味を出しています。ライブでも披露した曲ですか?
HAKUEI:ファンクラブライブとかインストアイベントでやったのかな?
千聖:何回かちょいちょいやってましたね。
HAKUEI:音源にはしてなかったので、25周年ということでアコースティックという全然違うアプローチで入れましょうと。
──今のPENICILLINが感じ取れる貴重なテイクですよね。
O-JIRO:今回、パーカッションも全部生音で録って、ちょっと贅沢にお送りしました。シェイカーを振る音ってデータでそれっぽく作れるんですけど、あえてシェイカーもタンバリンもマイクの前で生演奏して録って。本編のレコーディングが全部終わってから取りかかったので気もラクだったし、楽しくてしょうがなかったですね。
──今後もライブで聴けるんでしょうか?
HAKUEI:どうでしょうね、ははは(笑)。
千聖:その時その時で考えます。
──最後に開催中のツアーについてメッセージをお願いします。
HAKUEI:フルアルバムのツアーだと、どうしても新曲がほとんどになってしまうんですけど、ミニアルバムなので過去の曲もやると思います。PENICILLINはもう200曲以上楽曲があるし、自分らも昔の曲もやりたいんですよ。これだけ歴史があるとファンの人も期待すると思うんですよね。なので新曲も旧曲も網羅したセットリストを組むツアーになると思います。あとはメンバーの誕生日が近かったりするので、祝いに来てください(笑)。
取材・文◎山本弘子
■結成25周年アニバーサリー第2弾ミニアルバム『Lover's Melancholy』


2017年9月20日(水)発売

【Type-A:CD ONLY】XNBG-10026 ¥2,500(本体価格)+税

1.黙示録

2.Perfect Flame

3.飛翔遊戯

4.HUMANOID COMPLEX

5.Dear Friend...

6.メランコリア

7.Quarter Doll ~Acoustic ver.~

【Type-B:CD ONLY】XNBG-10027 ¥2,500(本体価格)+税

1.黙示録

2.Perfect Flame

3.飛翔遊戯

4.HUMANOID COMPLEX

5.Dear Friend...

6.メランコリア

7.螺旋階段 ~Acoustic ver.~

■<TOUR 2017 とのGIG to ROCK ROCK IV>


2017.09/16(土) 新宿ReNY OPEN 17:15 / START 18:00

2017.09/17(日) 新宿ReNY OPEN 16:15 / START 17:00

2017.09/23(土) 大阪MUSE OPEN 17:30 / START 18:00

2017.09/24(日) 名古屋ell.FITS ALL OPEN 17:30 / START 18:00

2017.09/30(土) 福岡 BEAT STATION OPEN 17:30 / START 18:00

2017.10/07(土) 恵比寿 LIQUIDROOM OPEN 17:15 / START 18:00

2017.10/08(日) 恵比寿 LIQUIDROOM OPEN 16:15 / START 17:00

2017.10/14(土) 仙台 MACANA OPEN 17:30 / START 18:00

▼チケット

All Standing ¥6,500(税込/D別)

2017.7/29(土) 10:00発売

※6歳以上チケット必要

・e+ http://eplus.jp

・ローソンチケット http://l-tike.com 0570-084-003

・チケットぴあ http://t.pia.jp 0570-02-9999

(問)サイレン・エンタープライズ 03-3447-8822(平日12:00~18:00)

■<HAKUEI BIRTHDAY LIVE「SUPER HEA
RT CORE ’17」>

2017.12/16(土) TSUTAYA O-EAST OPEN 17:15 / START 18:00

▼チケット

All Standing ¥6,500(税込/D別)

オフィシャル先行受付:2017.9/15(金)12:00~2017.9/25(月)18:00

一般発売:2017.7/29(土) 10:00

※6歳以上チケット必要

・e+ http://eplus.jp

・ローソンチケット http://l-tike.com 0570-084-003

・チケットぴあ http://t.pia.jp 0570-02-9999

(問)サイレン・エンタープライズ 03-3447-8822(平日12:00~18:00)

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