【竹友あつき】 “手を握ろう”と言
われたら、握り返せるようになった
自分のディープな部分が出てくる感じは
してますね
《あんなに素敵だったファンタジー 今となれば 金のにおいしかしないな》って、18歳に言われると…。お金の意味を知っちゃったのかな。
そうですね。いろいろバイトをしたりの経験を含めて、今になって気付いたというか。あの頃は、ただ“楽しい場所”として楽しめてたなって。ただ、その気持ちも大切だとは思ってて、そこがまだ大人になり切れていないけど近付いているっていうことで、だったらタイトルは“成長期”でいこうって、すぐできました。一番早かったですね。
なるほどね。「あの子の席」はなんかすごいね。
“それ、いじめじゃん”というような内容を、ある子が“してるんだぞ”みたいなトーンで話してて。普段は純粋そうでやさしい感じの子だったから、すごい違和感を感じたんです。多分、罪悪感を感じていないから、気軽で問題なんだろうなって。もしかして被害者側も “僕はこういういじられキャラだから”とか納得してることが、加害者側も“一緒に遊んでるだけ”と。また、その子が“笑ってる”っていうのも大きなポイントなんです。そういう教室が世界中にあるとしたら本当に問題というか、怖いなって。で、高校生というタイミングでそういうテーマの曲を1曲作らないといけないなと思って書きました。
ドキッとしたのが《自分じゃなくて 良かったって思う》という歌詞。これって、倫理観と言うのかな、いわゆる大人は書かないと思うのね。
なんか、“言っちゃいけないこと”っていう考え方をしなくていいっていうのが、今だからこその利点というか…。いつでも誰でもそういうふうになる可能性があって、それに怯えていて…だから、“あ、うちのクラスじゃなくて良かった”って片付けちゃえば踏み込まないというか安心する自分がいる…全員がそう思っているって思うことで、それを正当化している。そんな自分も含めてのアンチテーゼという感じですね。
そんな流れで、「皆勤賞」。これはシンプルにラブソングみたいなものだよね。好きな子いるの?(笑)
付き合う前、恋に発展しそうな友情関係みたいな。“うまくいきそうな気がする”って思ってた時の気持ちなんです。学校って無条件で会えるじゃないですか、友達だったり、好きな子に。自分の中で“あの子に会えるから会いにいこう”とか理由付けをして、学校に行っている部分があったので。そういうウキウキできる楽しい気持ちは素敵だなと、純粋に(笑)。
《風邪をひいたよ》から始まる、日記みたいな感じがいいよね。これがあって、「制服の裏側」になるわけですが。
前半3曲はメロディーも開けてるんですけど、その後の3曲はちょっとひと筋縄ではいかない感じだったり、小さい器にぎゅっと詰まっているというか、パーソナルな部分、感情の中でも深い部分が表れているなって。なんか、いつも裏の裏を考えちゃうんですよね。“素直に生きよう”って嘘を吐く自分も本当の自分だとしたら、その考え方を作ってるのも自分なんじゃないか?…って、ひねくれた考え方というか、裏の裏の裏みたいなことがループしていくと、いつまでもゴールはないんだけど、と思った時に書きました(笑)。
サビの《ワイシャツのボタン 上までしめた 喉の下の苦しさが 僕らを大人に近付ける》が気になるね。
朝礼のイメージがあって。体育館で体育座りして、まじまじと校長先生の長〜いありがたい話を聞いている全校生徒がいるじゃないですか。その姿が工場の生産ラインみたいに見えたんですよね。ロボットみたいな、機械的な感じ。その時に同じ制服を着てまったく同じ姿勢で同じほうを見ている姿が異様に思えて、“制服”というモチーフが自然と出てきましたね
他の曲もタイトルだけ見てると学生っぽいけど、こういう歌詞に落とし込んでくるのって中身が高校生っぽくないよね(笑)。書くことで、今の自分の位置を確認しているみたいなことなの?
メロディーを先に作るんですけど、それに呼ばれて“あ、こういうことを思ってたんだ”という歌詞が書けたり、「制服の裏側」はまさにそうです。最初の《偽らず生きようと 偽って生きてきた》の2行ができていたから、バババっと書いてきて。“あ、こういうことなんだ今の自分の思ってることって”とか、曲作りによって自分に気付くというか。いつも何かしら考えことはしているんですけど、その中では表面上で終わることとか、発展せずにぼんやり“おかしいな?”と違和感にしか思わなかったりとか、喋ってる中ではうまく表現できなかったり。でも、曲を作る時だけ、無理矢理考え出そうとしていないからなのかもしれないけど、自分のディープな部分が出てくる感じはしてますね。
これ、30年前でも10年後でも成立するものだね。一定のルールがある中で本音があって、それが人間性なのかもしれないけど“出しちゃダメ”みたいな。
無理して出そうとすれば、それすら嘘っぽいというか。
先生なんかまさにそうだよね。公務員っていうルールの中で義務を守る前提で、その職についている人たち。そうじゃなくて生きている人が何人いるんだろう? そういう意味では学生が一番自由なのかもね。これは、ヒット曲にはならないかもしれないけど、世代問わず誰もが理解できる普遍的な曲だね。
ありがとうございます。最初はもうちょっと学校っぽかったんです。でも、学生限定になっちゃうなと思って。だから、サラリーマンのスーツだったり、学生以外でも使えるキーワードの方がいいなと思って、3行くらいですけど、年齢とか限定しない言葉に書き換えたんですよね。学生だけじゃないってところ、まさにそうであってほしいなと思って。
十分理解できますね。今作品、“今時の高校生ってこういう考え方や視点なの?”と思うと、ちょっと怖い(笑)。
聴かせたら聴かせたで、そんなに“大人だな”という感じにはならないですよ。話していてもそれに近いテーマだったりとか、ポロっと名言みたいなことを言うと間違えたりとか(笑)。
精神的に若干冷めているということなのかな。
トーンとしては絶対そうですね。あまり意気揚々としている感じではない。僕の友達も斜めのほうから見ているのが多かったりするので。そういう自分のコミュニティーみたいなものも関係しているなと思います。
で、全然話飛ぶんだけど。毎年書いてるという年齢の曲「18歳」が入っていないなと。18歳になってるよね?
はい、でも、まだ作ってないです。半分くらい試作段階で作ってはいるんですが、まだ見えていなくて。“18歳”というところを狙いすぎて作っちゃうと良くないなと思って。今いっぱい曲を作って、その中でタイトルはもともと違うにしても、“これ、「18歳」じゃん”と思った時にその曲を「18歳」にしようと思っていますね。
なるほど。見越して?(笑) 振り返って作る感じだもんね。
はい(笑)。6月が誕生日なので、12月〜1月くらいが作る時期としてはいいんですけど、そうするともうリリースに間に合わないかもで…。ちょっと今、巻きで制作中です。
- 『未来ライン』
- UPCH-20370
- 2014.09.10
- 1944円
タケトモアツキ:1996年6月25日生まれ、神奈川県出身。神奈川の高校に通う、現役高校生シンガーソングライター。幼少の頃から歌うことが好きで、音楽が好きで、気が付けば音楽に夢中だったという。Twitterを通じて出会った音楽プロデューサー浅田信一にその才能を見い出され14年4月、EP『17歳』でメジャーデビューを飾る。竹友あつき オフィシャルHP