【Base Ball Bear】対象化された青春
を描きたくなった
青春を対象化させたのは何か? それは
時間なのかもしれない
そして、また変化を迎えつつあるのが、ここ1~2年ということではないでしょうか?
小出
そうですね。ライヴのやり方が分からなくなったり、煮え切らない気持ちを抱えていたこともあった時期を抜けて、『C2』のようなアルバムを作ることができるようにもなり、ようやく無事に大人…おじさんになってきました(笑)。そこでようやく、“昔のあの根拠のない全能感って青春だったんだな”と思えて、対象化された青春を描くという、当時とは違うアングルのことをやってみたくなったんです。
「すべては君のせいで」はそういう部分がすごく出ている曲ですね。
小出
はい。教室の風景とか、昔はほとんど描いていなかったですから。クラスメイトとの景色とかを歌ったことはほぼなかったんですよ。あと、今回、“青春を対象化させたのは何か?”ということも考えました。それで思ったのは“時間”かなと。18歳から15年くらい経って、当時のことを引きで見られるようになったんだと思います。そして、ずっと4人で一緒にやっていくもんだと思っていたバンドからギタリストが抜けるということが起きてから時間も経ったから。“そういうことあるか!?”ってことをするのも時間。良いことも悪いことも起こす…人が触れられないものが時間ってことなんでしょうね。まぁ、科学が進んである程度操作できるようにもなるかもしれないけど(笑)。そう言えば、パラレルワールドって存在することがほぼ証明されつつあるみたいなんですよ。雑誌の『ムー』みたいな話ですが。
「逆バタフライ・エフェクト」もパラレルワールドのことが出てきますね。
関根さん、軌道修正してください(笑)。
関根
はい(笑)。もう青春みたいなことは歌わないのかなと何となく思っていたので、今回出てきた曲を聴いて変化を感じました。前回のアルバムの「不思議な夜」や「どうしよう」もそういう曲だったんですけど、昔とは違う別の感覚で青春を描くようになっていると私も思います。
そう言えば、僕、今回の「Low way」と「不思議な夜」に相通ずる空気感や風景を感じました。
小出
「Low way」は「不思議な夜」の並行世界として作ったんです。舞台と物語の始まりはどちらも同じ。「不思議な夜」は例えば会社の飲み会とかの終わりだとして、多分、意識してない同僚とかとたまたま残っちゃうんですよ。でも、終電を逃したのは自分だけで、もし他の全員は帰っちゃったら? それが「Low way」です。
今回、パラレルワールドの要素がかなりありますね。
小出
最近、青春とパラレルワールドとかタイムリープを絡めた映画とかがたくさんあるんですよね。『ラ・ラ・ランド』もそうだし、『恋はデジャ・ブ』も舞台化されるみたいだし、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』もそうだし。世の中は並行世界ブームなんですよ。
小出
うん。『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』の舞台は2015年で、トランプが実際に大統領になったりもして、いよいよ現実が並行世界みたいになっているじゃないですか。別にそういうことを意識していたわけではないんですけど、結果的に世間と一致する部分がありました。
歌詞に関しては「すべては君のせいで」と「Darling」は共通する単語やフレーズが出てくるのが気になったのですが、この2曲はつながりがあるのですか?
小出
今までと違って、自分の中でも明確な答えがあるわけじゃないんです。漠然とした感じがいいなぁと今回は思っていました。そもそも時間について歌うというテーマ自体が漠然としたものですし。昔は答えがない漠然としたことは許せなかったんですけど。
「すべては君のせいで」には《ハードロック雑誌》っていう単語が出てくるのも面白いですね。こういう生々しい単語はベボベ節を感じるポイントのひとつです。
小出
《ハードロック雑誌》という言い方自体、ほぼあまりしないでしょうしね。この雑誌は僕の中のイメージだと『Player』なんですけど。
『BURRN!』かと思っていました。
小出
僕、『Player』派だったんです。スタイリッシュな感じがあるところが好きだったので。『Player』はヴィンテージギターのピンナップポスターが真ん中辺りにあるんですよ。あれが欲しくて買っていました。親父は車好きなんですけど、『LEVOLANT』っていう高級外車やスポーツカーのグラビアが載っているスタイリッシュな雑誌を愛読していたんです。そういう影響もあったのかも。
小出
ピンナップポスターが嬉しくて部屋に貼っていました。
(笑)。新しい切り口も見える今作を振り返ってみて、改めてどんなことを感じます?
小出
いろいろやったアルバムですけど、ちゃんとまとめることができたから、今後もいろんなやりようがありそうだなと感じています。
堀之内
ドラムとベースで作るビートの振り幅もかなり広げられたから、さらにいろんなことができそうだね?
小出
ベースがすごく重い感じで、トラックがそういう雰囲気のものとか。そんな想像も広がっています。
・・・
『光源』2017年04月12日発売EMI Records
- 【初回生産限定盤(DVD付)】
- UPCH-29252 3780円
ベースボールベアー:2001年、同じ高校に通っていたメンバーが学園祭に出演するためにバンドを結成したことがきっかけとなり、高校在学中から都内のライヴハウスに出演。その高い音楽性と演奏力が大きな話題を呼び、06年4月にミニアルバム『GIRL FRIEND』でメジャーデビュー。これまで2度に渡り、日本武道館でのワンマン公演を成功させる。16年3月、結成当初からのメンバーであった湯浅将平(Gu)が脱退。17年4月、新体制後初となる7thフルアルバム『光源』をリリース。Base Ball Bear オフィシャルHP
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