天真爛漫なおバカキャラで新境地開眼
!? 映画『モヒカン故郷に帰る』前田
敦子インタビュー

女優・前田敦子の新境地!?

――今回の由佳という役柄は、これまで前田さんが演じてきたどのキャラクターともタイプが違いますよね?

「私自身はこう見えてすごく人見知りで、最初はわりと構えちゃうほうなんで、どんな人とも会って数時間で仲よくなれる由佳ちゃんは、ホントに魅力的だと思うし、尊敬しますね。しかも、口調はちょっとバカっぽいところもあるのに、礼儀とかはちゃんとわきまえてる。KYな感じがしないのもいいですね」

――そんな魅力的な彼女になりきるうえで特に気をつけたことは?

「意識したのは、若い子風に語尾を伸ばした話し方にしたりだとか、かなりザックリしたイメージだけ。あとは監督のなかにある設定や、シーンごとにいろいろ出してくださるアイデアを、自分なりに汲みとって表現するっていう作業のくりかえしでしたね。沖田監督は『台本はあってないようものと考えてくれていいです』っておっしゃってくれるような役者に優しい方なんで、最初は手探りだった私も、すごく楽しんでお芝居に取り組めましたし」

――沖田監督と言えば、役者さんなら誰もが「組みたい」と口をそろえる〝旬〟な作り手ですもんね。

「そうですね。とりあえず一度やってみて、そこからおもしろい部分だけを引きだしたり、時間をかけていろいろ試したうえで固めてくれたり。沖田組は、監督自身がいちばんの観客として楽しんでくれている感じがこちらにも伝わってくるので、すごく居心地がいいんです。それでいてビジョンは明確に持ってらっしゃるから、たとえば(柄本)明さんが本番でアドリブをたくさん入れても、〝なぁなぁ〟の関係性になることが全然ない。そういうところはホントにすごいなぁと思います」


前作に続き相手役は松田兄弟
豪華共演者たちとの舞台裏


――いまお話に出た柄本さんとの共演はいかがでした? 前田さん演じる由佳にとっては彼氏のお父さんにあたる役どころ。劇中でもかなりの存在感を発揮されていましたが。

「おもしろかったですね。とくに明さんが寝たきりになってからの病室のシーンなんかは、もう〝柄本明劇場〟って感じで(笑)。なにかを見つけては監督と楽しそうにキャッチボールされているのを、そばで観ているだけでもすごく勉強になりました。ご一緒してるときも、本番のたびに毎回ちょっとずつ変えたりして、こちらがリアクションを取りやすいお芝居をしてくださって、明さんやもたい(まさこ)さんには、撮影のあいだじゅう、ホントに助けてもらいっぱなしでしたしね」

――一方、主人公・永吉役の松田龍平さんとはどうでした?

「龍平さんからは、なんだか同じ匂いがしたので、私自身も無理せずすぐに仲よくなれましたね。彼は誰に対してもフラットな人だから、まわりにヘンに気をつかわせないフワッとした空気感がいつもある。どんなことにもポジティブだし、『楽しんで生きてるなぁ』っていうのをすごく感じる役者さんでしたね」

――昨年の『イニシエーション・ラブ』では、実弟の翔太さんとも共演されていましたが、やはり「兄弟だなぁ」と感じるような場面も?

「ひと言で言うと、真逆なんですよね。お互いすごく仲よしなのに、生き方も、見ているものも、仕事の仕方も全然違って、兄弟というより昔からの幼なじみっていう感じ。そんな人がいちばん身近なところにいて、一緒に切磋琢磨できるっていうのは、同じ役者という立場からしても、すごく羨ましいなと思います」


プライベートでは旅行好き
電車でフラッと行くことも!?


――ところで、今回は瀬戸内海の小島が舞台ということで、実際に島でのロケもされたんですよね。

「もう村のお父さんお母さんにはホントに優しくてしていただいて。島では名産のみかんが挨拶代わりみたいになっていたから、現場にはいろんな種類のみかんがつねにある。だから撮影中はずっと、お腹が空いたらみかんって感じで、みかんばっかり食べてたんです(笑)。あんなにウエルカムしてもらえるなら、私が由佳ちゃんの立場でも、すぐに飛びこんで行っちゃいますね」

――前田さん自身はプライベートでも、初めての土地にフラッと飛びこんで行けるタイプです?

「わりと好きですね。ふだんは基本ひとり行動ですけど、遠くへ行くときは仲よしの女の子と一緒にふたりとか。気心の知れた相手と普通に電車に乗って遠出をして、おいしい食べものやその場所ならではのものを探すのが好きなんです。このあいだも小遠足って感じで、海老名の寒川神社まで行きましたし」

――海外旅行なんかも?

「劇中に出てくる〝やりたいことリスト〟じゃないですけど、去年行った台湾は『なんでもっと早くに行かなかったんだろう』ってぐらい女子旅に打ってつけの場所なんで、ぜひもう一度行ってみたいですね。お腹こわすんじゃないかって敬遠しちゃう人もきっと多いと思うんですけど、夜市で食べられる鴨のレバーがもうホントにおいしくて。まぁ、食べることがとにかく大好きだから、どこに行っても結局、食べてばっかりなんですけどね(笑)」


家族や恋人とは対等でいたい
あっちゃんの思う理想とは


――映画のなかでは、息子から父親への親孝行というのがひとつのテーマになっていますが、前田さん自身は〝親孝行〟してますか?

「お母さんたちには日頃から楽しんでほしいから『したいことがあったら言ってね』とは言ってるんですけど、親ってそういうこと絶対言わないじゃないですか。だから、できるだけ自分からいろいろ提案するようにはしてますね。4年前の年末に両親をパリ旅行に招待したのがきっかけで、そういうことが私もしやすくなったって言うかね。ふだん身のまわりのこととかでお世話になってるぶん、そこはやっぱりちゃんとお返しもしておきたいですしね」

――オヤジがガンにならないと気づけなかった永吉と違って、前田さんはすでに実践されてるわけですね。ちなみに、永吉のような男性は?

「ちょっと〝まぁ、いっか精神〟が強すぎて、実際おつきあいするとなると、どうなんだろうってのはありますよね(笑)。夢はあるけど、語ってるだけだし、生活費を稼いでいるのも由佳ちゃんだし。本人たちがそれでいいなら素敵なカップルだとは思いますけど、私だったら『自分も働くから、お願い、働いて』って言っちゃいます(笑)。好きな人には対等でいてほしいですしね」


いまは人との出会いが財産
本格女優としての現在地


――では最後に、女優さんとしてこれからどうなって行きたい、的な意気込みをうかがえれば。

「うーん、どうなりたいんだろ。あんまり考えてはいないんですけど、ここ数年で今回の作品のような素敵な方たちとの出会いが一気に増えて、それが毎回財産になってるなぁ、貯まってきてるなぁっていうのはヒシヒシと感じてはいるんで、それをしっかり吸収して、お芝居に活かせていけたらいいかな、と」

――AKB48を卒業された直後のインタビューでは「私自身が前田敦子のいちばんのアンチになる」とも発言されていました。そのあたりのスタンスの変化というのは?

「基本的に自分のことが好きじゃないから、わざと自分をナナメから見ちゃったりっていうのは、あんまり変わってないですね。でもだからこそ、それがモチベーションになるって言うか、自分をどうしたら磨けるかってことに必死になれるのかな、とは思ってますけどね」

――自分が好きじゃないからこそ、つねに成長をしていけると。

「AKBのときは、すぐに結果を求めちゃって、秋元さんからも『なんでもやればいいってもんじゃない。待つのも仕事だぞ』って諭されるぐらい、実際焦ってる時期もあったんです。あの頃のことを思うと、それがなくなったいまは『現実に向きあえているんだな』って実感はすごくある。いろんな意味で、安定してきているような気はします」

(取材・文/鈴木長月)


『モヒカン故郷に帰る』
2016年3/26(土)広島先行、4/9(土)テアトル新宿他全国拡大公開!

監督・脚本:沖田修一(『南極料理人』『横道世之介』)
出演:松田龍平 柄本 明/前田敦子 もたいまさこ 千葉雄大
主題歌:細野晴臣「MOHICAN」(Speedstar Records)
音楽:池永正二
©2016「モヒカン故郷に帰る」製作委員会
配給:東京テアトル
映画公式HP:

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