【インタビュー】Hilcrhyme、一人で続ける意味を見つけ出せた 一生一度のセルフ・タイトルを掲げたアルバム『Hilcrhyme』
TOCがマイクを握り、ラップをし、Hilcrhymeの名前でニュー・アルバムが出る、今はその幸せをしっかりと噛み締めていたい。青天の霹靂だったメンバー脱退、一人での再始動、新体制でのEP「One Man」のリリース、日比谷野外大音楽堂での復活ライブと、激動の2018年を乗り越えて届いたフル・アルバムのタイトルは、ずばり『Hilcrhyme』。デビュー10周年を迎えた今、一生一度のセルフ・タイトルを掲げたアルバムに込めた、新生Hilcrhymeの真実とは? TOCがその胸の内を語ってくれる。
■一人になったけどHilcrhymeはチームだという感覚があります
■むしろ団結力が増したんじゃないかな
――最初に伝えたいことがあります。TOCさんがHilcrhymeの看板を背負って、今ここにいることが嬉しいです。
TOC:ありがとうございます。ちょっと踏み込んだ話をすると、前のメンバーとの協議の結果、そうなったんですよ。脱退すると言ったから、彼には名前を残してほしい気持ちがあるんだなと思ったし、僕も残したかったので。「じゃあ一人で続けて行くよ」という話し合いがありました。
――ああ。なるほど。
TOC:ただ、重かったですよ。最初はやっぱり重いなと感じたんですけど、今はそんなことはないです。というのは、一人になったけど、Hilcrhymeのチームにはたくさんスタッフがいるんですよ。そういう人たちが、重荷を「僕が持つよ」と言ってくれて、「TOCは曲を作ることだけ考えてくれればいい」という環境を作ってくれてるから。僕が作った超チープなコードに乗っけたラップが、2日あれば、ギラッとしたJ-POPになって戻ってくるから。アレンジャーやディレクターの力はすごいし、一人になったけど、Hilcrhymeはチームだという感覚がありますね。むしろ団結力が増したんじゃないか?というぐらいで。
――今度のアルバムを聴いて、良い意味で肩の力が入りすぎてない感じがしたんですよ。もちろん熱い決意表明曲はあるけど、これまでのHilcrhymeの王道の上に、しっかりブラッシュアップしたような、基本姿勢は変わらないぞというふうに聴こえたので。
TOC:根本は、変えたくないんです。僕はラップを生業として、そこにJ-POPフィールドに持って行ける要素をたくさん入れて、ポップスのフィールドで勝負していくということを今後もずっとやっていくつもりなので。自分に求められているものと、自分がやりたいことをちゃんと把握した10年があって、その上で作っていきましたね。
――まさに、これはそういうアルバム。
TOC:それがヒットするかしないかは、因果の流れというか(笑)。いろんな要素があってヒットは生まれるので、狙ってできるものではないし、因果の流れに任せるしかない。僕は、たとえばタイアップならばオーダーされたことに応えて作るし、「Lost love song【II】」みたいな自分で発案したものに関しては、「こういう続編を作ったら面白いだろう」と自分で考えたりして作っています。今は非常に楽しいんですよね。この間、子供用のギターを買ったんですよ。
――子供用の?
TOC:普通のサイズだと、持ち運びが大変だから。小さなギターを買って、それでコードを練習しています。それが超楽しくて、10年後ぐらいに弾き語りできるようになっていればいいなと。40代後半とかで、弾き語りでラップで、一人で全国のディナー・ショーを回る。そんな10年後は最高だなという絵が浮かんでます。
――いいなあ。かっこいい。
TOC:ラップでディナー・ショーをやってる人、まだいないでしょ? 新しすぎるなと思って、だから絶対やりたい(笑)。そんな10年後を考えています。