Ryu Matsuyamaが歌ってきたYou & Me。新作で見せた創作の変化とは
『And look back』はRyu Matsuyamaの可能性を広げた作品だ。宇宙をぷかぷかと漂うような静けさのあるインスト「Debris」で幕を開け、祝祭をイメージして作ったという、大地を蹴り上げ快哉を叫ぶような「From the Ground」で始まっていく。作品としては『Borderland』の発展系と言えるだろう。バンド史上初のコラボとなった、塩塚モエカ(羊文学)とmabanuaを招いた前作に引き続き、今作ではタイのアーティスト・Max Jenmanaと、Daichi Yamamotoとの共演を実現させている。コロナ禍だからこそチャレンジできたという国境を越えた共作は、今後の選択肢を大いに広げるものだろう。ワールドワイドな発想が、きっとこれから制作では増えていくいくはずだ。関口シンゴ(Ovall)をプロデューサーに招き、シティポップへ傾倒した「Under the Sea feat. Max Jenmana」は、音楽的にも新境地。ファンキーなギターには色気があり、ディスコグラフィの中でも新鮮な1曲である。面識はないものの、アイデンティティの面で通ずるものを感じていたというDaichi Yamamotoとの「Snail feat. Daichi Yamamoto」も、本作のハイライトと言える出来栄えだ。天にも昇るようなエモーショナルなRyuの声と、心の奥底で燃えているようなスリリングなDaichi Yamamotoの声が、内面を曝け出すリリックを通して交差する。その他デジタルと生音の融合を突き詰めた「Deep, blue」や「 Roots, trunk, crown」、娘に宛てて書かれたという素晴らしきバラード「Fragments」など、多彩な楽曲はどれも上々の仕上がりを見せている。充実のEPについてたっぷり語ってもらった。