「憤死」綿矢りさ(河出書房新社)

「憤死」綿矢りさ(河出書房新社)

芥川賞作家・綿矢りさが描く、ユーモ
ラスで歪な女性像の魅力!

高校在学中の17歳のとき「インストール」で文藝賞を受賞してデビューした小説家・綿矢りさ。2004年には、若干19歳にして「蹴りたい背中」で芥川賞を受賞した…… とはいえ、それもすでに10数年前のこと。
もしも、「綿矢りさ」という作家のイメージが、ただ若くて可愛らしい女性小説家というものなら、それは少しもったいない!

人間の歪でグロテスクな心理をすくいとろうとする彼女の格闘は、手練の読書家にとっても充分楽しめるものに成熟しているのです。

「かわいそうだね?」

2012年に第6回大江健三郎賞を受賞した本作には、「かわいそうだね?」「亜美ちゃんは美人」の2編が収録されている。
百貨店勤めをしている28歳の樹理恵は、無口だけど頼れる恋人・隆大と交際中。順調な日々を過ごしていたはずが、ある日、隆大から、元彼女・アキヨを居候させると告げられる。
「もちろん愛しているのは樹理恵だけ。でも、居候が許せないなら、樹理恵と別れる」と隆大から言われてしまって、樹理恵は仕方なく承諾するが……。
そんな恋愛トライアングルを描いた「かわいそうだね?」も良いが、とくにオススメしたいのが、「美人の親友のこと、本当に好き?」という複雑な女性心理を描いた「亜美ちゃんは美人」だ!
さかきちゃんは美人。でも、亜美ちゃんはもっと美人――。

高校時代に出会い、大学、社会人へと時間を経ていくなかで、さかきちゃんは複雑な思いを抱えながらも、とびきり美人の親友・亜美ちゃんを見つめ続けていく……。そして、いつも注目の的だった亜美ちゃんが、結婚相手に選んだ男は……!?
とびきり美人な亜美ちゃんと、いつもその隣にいるせいで、バカな男からは「亜美ちゃんのマネージャー」呼ばわりされ、イジられ役に甘んじるしかない、さかきちゃん。まるで正反対なふたりだけれど、それぞれが同じように、与えられた「キャラ」を演じることに悩んでもいる……という複雑な思いと、女同士の友情。

そんな、滑稽でブラックだけど愛おしくもある、厄介な女子の世界を描いた傑作は、女性でも男性でも楽しめること間違いなし! ぜひ読んで欲しい小説です。

「夢を与える」

他にもオススメの小説を2作チョイス! 2015年春に、小松菜奈と菊地凛子のW主演により、WOWOWでドラマ化されたことでも話題となったのが、小説「夢を与える」。
チャイルドモデルだった美少女・夕子は、母の念願通り大手の芸能事務所に入ると、やがてブレイクして人気タレントになっていくが……。

芸能界で生きる、夕子の栄光と失墜の姿を描く、著者初の長編小説!

「憤死」 

「命をかけてた恋が、終わっちゃったの」
自殺未遂をした女友達の見舞いに行き、思いがけない恋の顛末を聞く表題作「憤死」のほか、「おとな」「トイレの懺悔室」「人生ゲーム」など4つの物語がおさめられた著者初の連作短編集!

ホラーテイストの作品など、著者の新たな魅力が楽しめる!
「憤死」綿矢りさ(河出書房新社)

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