まるで本当の恐竜のような、全長約1
5mの復元ロボット出現! 『オダイバ
恐竜博覧会2024』は刺激と学びの宝庫
だった

2024年3月20日(水祝)から5月6日(月休)まで、お台場のフジテレビ本社屋にて、『オダイバ恐竜博覧会2024 ー福井から“ヤツラ”が新幹線でやってくる!ー』が開催されている。本企画はフジテレビの本社屋内、広場、さらに球体展望台「はちたま」などを歩き回りながら恐竜たちに出会う、ちょっと変わった恐竜博だ。
新幹線に乗ってやって来たのは、“恐竜王国”として名高い福井県にある「福井県立恐竜博物館」の恐竜たちご一行。会場では化石やロボット、そして最新の研究を紹介する展示が来場者たちを待っている。
『オダイバ恐竜博覧会2024 ー福井から“ヤツラ”が新幹線でやってくる!ー』
それにしても、なぜ“新幹線に乗って”なのかというと……ちょうどこの春、北陸新幹線が福井(敦賀)まで延伸したからである。ティラノサウルスやスピノサウルスが、ちょこんと座席に座ってやって来る姿を想像すると可愛い。本記事では内覧会・オープニングイベントの写真とあわせて、この恐竜博の見どころについて紹介していく。
ようこそ恐竜たち!
第1会場風景
まずは1階・フジテレビ広場にある第1会場へ。プテラノドンや首長竜など、メジャーどころの複製骨格が勢揃いだ。解説文を読んでいくと、実は翼竜や首長竜は厳密には恐竜に分類されないそうで、早速びっくり。展示冒頭にしてすでに「もっと知りたい!」モードに突入である。ちなみにおなかにFの文字を付けた2頭は、展示を鑑賞する福井県公式恐竜ブランドキャラクター「ラプト」と「サウタン」。イキイキと動き回る2頭の意識の高さにもまた、福井県の本気を感じた。会期中、会場で出会える日もあるようなので見かけたらぜひ挨拶してみてほしい。
第1会場風景
大注目は、ティラノサウルスの生体復元ロボットと、その隣のトリケラトプスの複製全身骨格だ。ティラノサウルスは全長約12mと大迫力!
ティラノサウルスのライフサイズロボット
このティラノサウルスは著名な恐竜学者のジャック・ホーナー博士による監修とのこと。獲物のトリケラトプスを食べているところをリアルに表現していて、近くで見ているとロボットだと分かっていてもドキドキしてしまう。咀嚼音や、たまに動く小さな前脚が怖い。
化石発掘体験には、本物の気づきと学びが含まれている
化石発掘体験会場 ピロティなので風通しがいい
福井からやって来たのは恐竜だけではない。「福井県立恐竜博物館」の人気コンテンツ〈体験!“ホンモノ”の恐竜化石発掘〉がフジテレビ本社屋にて開催されている。実際に体験してみたが、想像以上、“ガチ”の発掘体験である。位置付けとしては“発掘作業のお手伝い”なので、発掘したものは持ち帰らずお返しするし、そもそも必ずしも成果が上がるとは限らない。「体験」という言葉からはかけ離れたストイックさである。
体験中
タガネとハンマーを使って、タイの発掘現場から運び込まれた石を割っていく。硬い。力一杯叩いているのにびくともしない。
「石の層に合わせて、もっと力強く!」「ハイッ!」
ダウンコートの下を汗まみれにしながら、叩き続ける。体験中は一心不乱だったが、後から考えてみたら、ものすごいストレス解消になっていた。見回る研究員さんたちが細やかに声を掛けてくれるのが非常に頼もしく、気分はすっかり一端の発掘スタッフ。制限時間の40分をフルに使って、ガンガン割りまくる!
図らずもハート型に割れました。マルのついている部分が化石。
「ハイ出ましたね、これウロコです」「え? ふぅ……、やったあ……(疲労)」
激闘の末、ものすごくさりげないウロコを発掘。研究員さんが目印の丸をつけてくれてパアッと嬉しいのと同時に、発掘作業の途方もなさが骨身に染みてクラクラした。タイの発掘現場は気温も高いそうなので、その大変さは想像に余りある。
発掘例たち
参考に展示されている、“大当たり”の発掘例も。ああ、こんなのが出てきたら本当に嬉しいだろうな……。これから、化石の展示を見るたびに今日のこの腕の痛みを思い出すだろう。
フジテレビを探検しよう
チューブエスカレーターでまず7階へ。そこから更にエレベーターで上がっていく。
さて、発掘体験を堪能したのちは、チューブエスカレーターで第2展示室のある上階へ。迷路のようなテレビ局内を移動するので、ちょっとオリエンテーリング風のワクワク感がある。そして気を抜くと本当に迷いそうになるのでご注意を。
24階「W7系ミニ新幹線かがやきに乗ってロングコースを疾走‼︎」(別途要乗車券¥400)
道中には、北陸新幹線延伸を記念するミニ新幹線「かがやき」の姿が。局内の長ーい廊下に敷かれたレールを、ミニ新幹線にまたがって進むことができる。
これが恐竜王国の研究最前線だ
第2会場風景
22階・第2会場では、「福井県立恐竜博物館」の6人の恐竜博士たちが、各々の専門分野について最新の研究成果を展示してくれている。ぜひじっくり理解しながら足を進めてほしい、見応えあるゾーンである。
フクイベナートル・パラドクサスの生体復元ロボット(左)と複製全身骨格(右)
福井県で発見された新種の恐竜6種もすべて展示。そのうち3種は、複製全身骨格でいきいきとした姿を見ることができる。中でも小型の獣脚類フクイベナートル・パラドクサスは、羽毛姿のロボットも登場。隣の骨格と併せて鑑賞することで、さらに理解を深めることができるだろう。
第2会場風景
切り口様々な研究の中で、とりわけ分かりやすく面白いと感じたのは「恐竜の脳」の研究だ。頭骨の空洞の型を取ることで、恐竜たちの脳・内耳の形状を推定していく。その特徴から、彼らがどんな能力を持ち、どんな動き方をしていたのかを知ることができるのだ。
トリケラトプスの一種の脳函の、実物化石標本(赤い矢印の先が、脳の入っていた穴)
サラッと、トリケラトプスの一種の脳函(脳みその入れ物になっていた頭の骨)の実物が展示されていて感動。トリケラトプスの脳・内耳の形からは、彼らが低音を聴くのが得意だったということや、自然な状態での首の角度などが分かるという。物言わぬ化石が、私たちの知る“恐竜という生き物”になるまでの間には、こういった研究があったのか、と胸が熱くなった。
お披露目! ティラノミムス・フクイエンシス
第2展示室風景
さらに第2会場では、県外初お披露目となる新種の恐竜、ティラノミムス・フクイエンシスの化石(複製)が展示されている。2023年9月に発表されたばかりの新種恐竜とのことで、これは見逃せない。
ティラノミムス・フクイエンシスの複製化石標本
「ティラノミムス・フクイエンシス(福井のティラノもどき)」という名前の割には、ティラノサウルスというよりダチョウに似た姿の恐竜だったらしい。名の由来となったのはこの腸骨。よく見ると真ん中に真っ直ぐなラインが入っている(腸骨の垂直稜)。この特徴がティラノサウルスと類似しているので、ティラノもどきの名を頂いたのだそうだ。今後、さらなる研究が待たれる存在である。
空で待つのは水の王者
スピノサウルスのライフサイズロボット
さあエレベーターでぐいぐい上がり、いよいよ本展のハイライトともいえる球体展望室「はちたま」内の第3会場へ。そこで待ち受けているのは、本展のために制作された新作のライフサイズロボット、スピノサウルスだ。今回が世界初展示となる本作は、全長は約15mという迫力。身をくねらせた躍動的なポーズの向こうにはお台場のナイスビューが広がり、まさに「王者の間」と呼ぶにふさわしい展示だ。
反対側からもパシャリ。
スピノサウルスはワニに似た頭を持つ謎の多い恐竜で、ティラノサウルスと並んで“最大の肉食恐竜”と呼ばれている。映画『ジュラシックパーク3』に登場した頃は二足歩行でティラノサウルスと戦ったりしていたそうだが、研究を経て、近年では主に水の中で生活していた恐竜だと考えられている。ロボットは口を大きく開いたり、鼻息を吹きかけてきたりとリアルな振る舞いを見せてくれるので、ぜひとも近くでその存在感を味わってみてほしい。本展でスピノサウルスのファンになる人も多そうだ。
スピノサウルスの実物化石標本(個人蔵)
嬉しいことに、スピノサウルスの化石標本(実物)も併せて展示されている。特徴的な下顎を観察して往時の姿に思いを馳せよう。
公式オウエンザウルスのガチャピン&公式サポーターのやす子 オープニングセレモニーにて
ともすると忘れてしまいそうになるが、恐竜はおよそ6600万年前に絶滅している。当たり前のように語られる“〇〇サウルスは△△な恐竜だった”という情報一つひとつは、途方もない努力と探求の果てに推定されるものなのだ。本企画は、ただ知識と骨を並べるだけではなく、「へえ〜」の向こう側にいる研究サイドのことを深く知り、ちょっと追体験できるような恐竜博だった。大迫力の恐竜に出会えて目が大満足なのはもちろん、発掘員や研究員といった“探求する側”への共感は、大人もワクワクするし、子どもなら「自分もそうなりたい」と夢を抱く、最高のきっかけになるのではないだろうか。
『オダイバ恐竜博覧会2024 ー福井から“ヤツラ”が新幹線でやってくる!ー』は2024年5月6日(月・休)まで、フジテレビ本社屋にて開催中。なお、会場では他にも恐竜関連のワークショップや、福井県、北陸新幹線の魅力を特集したコーナーなどのお楽しみがたくさん用意されている。この春は自分もスピノサウルスになったつもりで、フジテレビ本社屋をダイナミックに丸かじりしてみては。

文・写真=小杉 美香

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