『SION with Kazuhiko Fujii Acoustic Tour 2024』 at SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

『SION with Kazuhiko Fujii Acoustic Tour 2024』 at SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

SION、
『SION with Kazuhiko Fujii
Acoustic Tour』
東京公演のレポートが到着

 もはやSIONとファンの冬の風物詩と言ってもいい「SION with Kazuhiko Fujii Acoustic Tour」が今年も開催され、2月25日の千葉公演でツアーファイナルを迎えた。最初の2公演が終わったところでSIONが新型コロナウイルスに感染したため、その後の4公演(松山、神戸、大阪、名古屋)が4~5月に延期されるというハプニングこそあったものの、前回の8公演から今回は12公演に増え、SION’S SQUADの始動に続いて、SIONが歌うところの“ボロ列車”あるいは“オンボロ車”のエンジンの回転数が上がってきたことが窺えるようで、もうただただうれしいとはしゃいでいるのは、きっと筆者だけではないだろう。
『SION with Kazuhiko Fujii Acoustic Tour 2024』 at SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

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 おのずと盛り上がる気持ちを若干持て余しながら、新型コロナウイルスからの快復後一発目となる東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASURE公演に足を運んだところ、1曲目に新宿の大ガード下の風景を描きながら、《俺はここに俺がここに居るんだ》と鬼気迫る歌声を聴かせるスローナンバー「ガード下」を食らって、いきなり圧倒されてしまった。

 言葉を振り絞るように歌うSIONの歌声と重苦しいムードを持つ藤井一彦によるギタープレイ――渾身の、という表現がふさわしい「ガード下」のパフォーマンスは、ヒリヒリとした空気の中で圧倒され、金縛りに遭ったようにじっとステージを見つめるしかなかった観客の姿とともに今回のツアーのハイライトとして、後々まで語り継いでいきたいと思った。

 この渋谷公演に加え、筆者が足を運んだ横浜公演と千葉公演でも「ガード下」を演奏し始めると、客席が色めき立ったのだから、そんなふうに思っているのは、きっと筆者だけではないだろう。

 そんな「ガード下」のピーンと張りつめた緊張感から一転、藤井が奏でるチキンピッキングから繋げた軽やかな「夜しか泳げない」で観客にシンガロングの声を上げさせたところで、開口一番、「大変ご迷惑をおかけしました。帰って来たぜ」と照れ笑いしながら言ったSIONに「お帰り!」と観客が拍手喝采を贈る頃には、かつて映画館だったという2階席もある会場の空気はすっかり温まっていた。
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 そこから「SORRY BABY」「冬の街は」「ありがてぇ」といったバラードも織りまぜながら、自分に鞭を入れるロックンロールの「ボロ列車」、メランコリックな「夢の世界」、ブルージーな「SnowDrop」を繋げ、《だけど今も君を信じてる そして今も君を待っている スノードロップ咲く春を》と歌う「SnowDrop」では歌いながら、誰に向かって歌っているのか身振りで伝えることも忘れない。

 そんなふうに1曲1曲、歌心を観客の胸に染み渡らせてきた前半の流れを一気に跳ねさせたのが、藤井が派手にコードをかき鳴らして、《調子はどうだい!?》とSIONが吠えた「調子はどうだい」。ブルースを思わせる演奏と言葉をたたみかける歌、そしてそれに応える観客の手拍子とシンガロングが一つになって、会場の温度をぐっと上げていく。そこからエレキギターを弾いている時と変わらないソリッドなカッティングを、藤井がアコースティックギターで閃かせた「お前の空まで曇らせてたまるか」からSIONのライブには欠かせないアンセムの「Hallelujah」になだれこむと、歌いながら腕を振り回すSIONの熱演に観客が拳とシンガロングの声を上げ、クライマックスという言葉がふさわしい熱気に満ちた大きな盛り上がりが生まれた。
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 しかし、まだ、今回初の試みとなる2部構成の第1部が終わったばかり。第2部ではさらに大きな盛り上がりが生まれるのだが、10分の休憩を挟んでからの第2部は「Acoustic Tour」の見どころの1つと言えるSIONの弾き語りからスタートした。
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「16、17歳の頃に当時、(SIONの生まれ故郷)山口にあったラジオ局のおねえさんに気に入られて、予選を受けずに中国地方代表として、とあるイベントに出たことがあって…。そのイベント、サウンドフレッシュコンサート(筆者注:フレッシュサウンズコンテストのことか?)とかって言ったんだけど、甚平の上下がいけなかったのか、雪駄がいけなかったのか、フレッシュじゃないって落とされました(笑)」

 照れ臭そうに、そんな思い出話も交えつつ、「信号」「ゆうじ」「小さな声で話そ」、そして去年作ったという未音源化の「つっかい棒」の4曲を、曲によってはブルースハープも吹きながら披露。因みに弾き語りは各公演、選曲を変えていたそうで、横浜公演では「信号」「ゆうじ」「遊ぼうよ」、“昨日作った”と曲を紹介したタイトル未定の新曲、そして「つっかい棒」を、千葉公演では「信号」「ゆうじ」、前述のタイトル未定曲、「つっかい棒」を、軽やかなコードストロークと語り掛けるような歌声で披露していたことを付け加えておきたい。
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 「(観客に)眠くなった?(笑) 一彦、起こしてくれ!」と藤井を呼び込むと、久々にライブで演奏するという「今日もまんざらじゃなかった」の夜明けの街をスケッチしながら、よるべない暮らしの中に見つけた希望を歌詞に落とし込んだ巧みなストーリーテリングと歌声の力で再び観客を釘付けにする。そして、以前よりも歌がまろやかになった印象がある「道があるなら」に繋げると、後半戦は「笑っていくぜ」「お前がいる」「春よ」「お前の笑顔を道しるべに」――この数年、SIONが“ボロ列車”あるいは“オンボロ車”のエンジンの回転数を上げるきっかけになった思いを歌っているとも言えそうなアンセムのオンパレード。しかも、そういう歌をSIONが溌剌と歌っているのだから、客席が盛り上がらないわけがない。多くの観客が立ち上がってシンガロングする。曲と曲の間には拍手喝采とともに「SION!最高!」という歓声も飛ぶ。
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 そして、本編最後を飾ったのはミッドテンポの演奏でじっくりと聴かせる「バラ色の夢に浸る」。

 『Kind of Mind』収録の音源バージョンが持つ80sっぽい空気感をミュートしたアコギのカッティングで巧みに再現した藤井のギタープレイも聴きどころだったと思うが、この曲がこんなにも胸に染みたのは、正直、この日が初めてだった。

 なぜ、そんなに染みたのか? たぶん、《俺の仕事は音楽と人生を楽しむことだ そうだよな それでいいよな そうだよな それでなくっちゃな そうだよな それでいいよな》というこの曲のパンチラインが、“チャンスをピンチに変えてきた”と嘯きながら、《早くはない 遅くはない 始めたら始まりさ》(「通報されるくらいに」)、《リタイヤ?そりゃなんだ》(「Hallelujah」)と歌い続けてきたSIONが見つけた1つの真理であると同時に、個人的なことを書かせてもらうなら、筆者自身の人生も肯定してくれたように思えたからなのだと思う。《音楽と人生を楽しむことだ》。なんて素敵な言葉なんだろう。そう思えただけでも、この日、ライブに足を運んだ甲斐はあった。
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 鳴りやまない観客の手拍子に応え、「ここ十何年の俺の右腕!藤井一彦!」と全幅の信頼を寄せる藤井を呼び込んだアンコールでは、「俺の声」と「このままが」というデビューの頃から歌い続け、そしてファンから愛され続けている2曲を披露した。観客と一緒に歌う「俺の声」はSIONのライブには欠かせない代表曲中の代表曲だが、この日は曲の終わりに、これまたSIONのライブには欠かせない「マイナスを脱ぎ捨てる」のライブバージョンのサビを加え、渾身の歌声とともにダメ押しするように気迫を見せつけたのだった。

「また会いましょう。野音で会いましょう。どうもありがとう!」
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 2年ぶりとなるSIONと彼のファンの夏の風物詩=「SION YAON 2024」が7月14日に開催されることがすでに発表されている(会場である日比谷公園大音楽堂の改修工事が延期されたため、昨年10月に発表されたタイトルから“FINAL”が取れた)。今年はSION’S SQUADに花田裕之(Gu)と細海魚(Key)を加えた6人編成での演奏だ。今から楽しみでしかたない。
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取材:山口智男
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OKMusic編集部

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