『クラシカロイド』コンサート開催間
近!『クラシカロイド原曲全集』の裏
側に迫るプロデューサー対談が到着

2016年10月および2017年10月から各半年間NHK Eテレにて放送されたオリジナルアニメーション『クラシカロイド』。「ベートーヴェン、モーツァルト、バッハたち名作曲家が現代に存在したら」をテーマに様々な要素を組み合わせ制作された同アニメは、放送から7年経った今も根強い人気を誇り、2023年12月6日(水)には『クラシカロイド 原曲全集』がリリース、さらに2024年3月20日(水・祝)には日立システムズホール仙台にて、同アニメとフレンドシップコラボレーションをすることとなった仙台フィルによる『クラシカロイド』コンサートが控えている。
SPICEでは、『クラシカロイド』プロデューサーの生地俊祐氏と『クラシカロイド原曲全集』プロデューサーの鈴木則孝氏の対談をお届けする。
――23年12月に『クラシカロイド原曲全集』の発売。仙台フィルハーモニー管弦楽団の「特別演奏会 名曲トラベル 第0回✕エンターテインメント定期 第0回「クラシカロイド」コンサート」の開催も3月20日(水・祝)に控えて、『クラシカロイド』の根強い人気に圧倒されています。
生地:本当にありがたいことですね。『クラシカロイド』の放送開始から7年、まさか2度目の「原曲集」を形にできるとは。オーケストラコンサートも長年の夢でしたので、本当に感無量です。高野さんには2017年の『クラシカロイド・オン・アイス(Warner Classics発売)』のライナー執筆から関わっていただき、イベントにもご出演いただきましたね。
鈴木:しかし本当に、何年経っても『クラシカロイド』はあいかわらずですよね。ファンが熱い。
生地:情報を発信すると、皆さん「公式が生きている!」と喜んでくださる(笑)。放送終了後も2万7千人以上のフォロワーが健在で、こんな作品なかなかないよって言われます。
鈴木:僕はレコード会社でクラシック音楽を仕事にしていますが、音楽アニメもどんどん新しい作品が出てくるじゃないないですか。最近だと『青のオーケストラ』が話題でしたよね。その中で、2018年に放送終了した作品が今も愛されているのはすごいことですよね。
――音楽もキャラクターも既に200年、250年生きていますからね。
生地:5年がなんだって感じですよね。そこは当初から作品のねらいでもあって、藤田(陽一)監督とも「いつでもだれでも楽しめる作品にしよう」と話していました。制作当時は「心のビタミン」と呼んでいましたが、コロナ禍で再配信したときにたくさんの方から「元気をもらった」というメッセージをいただいて、ある意味放送時にも負けないくらい、強く作品の力を感じた瞬間かもしれません。
――ファンにとっては、音羽館の日常が今も続いているような感覚もあると思います。
鈴木:そう! 宇宙(そら)まで行ってすごいことになったりしたけど。
生地:基本、ぬるま湯サイコーって感じの話なんですけどね(笑)。あと音楽面では、バラエティ番組などでムジークを使っていただくことも多いですよ。結構、耳にします。
鈴木:そもそも原曲が名曲ばかりだから使いやすいですね。ムジークプロデューサー豪華ですし。
生地:布袋(寅泰)さん、つんく♂さん達がつくった楽曲ですからね。また、音楽の授業で思い出すという声も聞きます。実はそれも、企画段階から狙っていたことですね。作曲家たちの肖像画を見たとき、プッて笑ってもらえるようになったら勝ちだよねって思ってました。
鈴木:コンテンツとして強い! 200年後、今度はムジークがクラシックになっていてもおかしくない。
■小犬旋風
――『クラシカロイド』界隈で大ニュースもありましたね。ショパンのムジーク〈小犬のカーニバル〉がなんと、ハリウッド進出。
生地:そうなんですよ!
鈴木:『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』ですね。マーベルといえばマルチバース(複数の世界・宇宙が分散して存在するという理論)の本家。僕は生地さんへつねづね「クラシックってマルチバースじゃない?」と話していたんですよ。たとえばベートーヴェンの「運命」一つにもフルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル、クライバー指揮ウィーン・フィルなどたくさんの録音があって、それぞれが違う音楽世界を形作ってる。名曲集を作る場合にも、ワーナーミュージックやユニバーサルミュージックなど基本的に、各レコード会社の所属アーティストの音源で編みますから、また新しい世界が生まれる。
――まさにマルチバースですね。
生地:僕自身クラシックファンで、マルチバースという意識すら無いほど当たり前と思って生きてきたので、鈴木さんがレーベルを移られてすぐ「ユニバーサル版の原曲集、どうします?」と企画というか雑談を持ちかけていました(笑)。
鈴木:そうしていたら、この大作にEHAMICさんの〈小犬のカーニバル〉が使用されたというニュースが入ってきて、大興奮ですよね。映画も観ましたが、ものすごく感動的で、〈小犬〉もめちゃくちゃ音が立っていた。
生地:「ああ、ここか!」って感動しました。想像の斜め上を行く登場の仕方でした。
鈴木:宇宙っていえば、以前発売された原曲集第6集(Warner Classics発売)収録の「運命」は、(1977年に打ち上げられた探査機に搭載された)ボイジャーのゴールデンレコードと同じクレンペラー指揮の音源にしたじゃないですか! だからそのレコードを意識して盤面を創りこんだんだけど、さすがに気づかれていないよね?
生地:いやいや、皆さん気づいてますよ。「どうせあの人たち、ゴールデンレコード作っちゃう人たちだもんね」ってツッコミをいただいてます。
鈴木:えー、見逃してた、嘘でしょ⁉ クラシカファン、さすがすぎる!
生地:まぁフルトヴェングラー指揮のバイロイトの「第九」も付けちゃいましたし、我々。そして「運命」と言えば、今回の全集ではそのフルトヴェングラーの奇跡の演奏である1947年5月27日録音を入れましたしね、我々。 モノラル録音ですけどご容赦ください。凄いんで本当に。
■新たなる旅へ
――ということで今回は、ユニバーサルミュージックの音源で構成された、新しい原曲全集について教えてください。
鈴木:はい。ユニバーサルミュージックのクラシック部門には、名門ドイツ・グラモフォンと英国最古のDECCAという2大レーベルがありまして。
生地:DECCAには、旧PHILIPSも吸収されていますね。
鈴木:そうそう。僕がはじめて買ったクラシックのLPはたしかPHILIPSのモーツァルトでした。
生地:僕はドイツ・グラモフォンで、カラヤン指揮ベルリン・フィルの「新世界より」1964年盤です。中1の時に生まれて初めて買ったCDでして、今回はこちらも原曲全集に入ってしまいます。そして最愛のホルヘ・ボレットのピアノ演奏も! 完全に生地の原点入り(笑)。
――私は当時からモツ推しだったので、PHILIPSの『モーツァルト大好き』というコンピレーションCD。マリナー指揮の40番や、内田光子さんのピアノ・ソナタが原点です。
鈴木:いろんなスタートがあるからおもしろいですね。原曲全集は、アニメからスタートした方たちが聴き比べできるように、前回同様、ムジーク盤と同じ曲順にしています。加えて今回は、6枚組でどどんと一挙発売。
生地:価格が6,290円(ムジーク)なのにも気づいてほしいです。ロイダーさんは6月29日午後6時29分に発表したときも気づいてくれたから、きっと大丈夫だと信じてますが(笑)。それはさておき、今回の収録曲は脚本やムジークの打合せの時に、実際にスタッフに聴いてもらった音源が半分以上なんですよ。前回のワーナー版原曲集にもそういう音源がいくつか収録されていたので、今回のでかなりの音源がそろう。「あの人たち、これを聴きながら作ったらあんな風になっちゃったのね」と、味わっていただける仕様になっております。
――原曲全集の音源は今回、生地さんがセレクトしているんですよね。
生地:はい。打合せのときはだいたい、生地の手持ちCDからセレクトして原曲を聴いていただいたのでそれをまずセレクトしています。それ以外の曲についてもユニバーサルさんの膨大な音源から個人的なイチオシを選ばせていただきました。ムジークはもちろん、ワーナー盤とも是非聴き比べてほしいです。もう、全然違うのでクラシックの幅も感じて貰えるかと。
鈴木:それがクラシックの究極的醍醐味ですよね。
生地:ええ。僕がクラシックにハマった理由はそこです。気づいたら「新世界より」だけで40枚CDがあるとか、そういう世界にきていましたからね(笑)。
――そういう世界へ旅立つ足がかりに、原曲全集がなったら嬉しいですね。そして今回は、めちゃくちゃ楽しいボーナストラックもついています。
鈴木:最高のタイミングで小犬旋風が起きたので、僕らも面白くなってきちゃって、「よし、この原曲集を小犬まみれにしてやろう」と決めました。
生地:収録分数に余裕ありますよね?〈小犬のワルツ〉は短いから無限に入りますよね?って言いました(笑)。
鈴木:〈小犬のワルツ〉は、それこそ様々なピアニストが弾いてますからね。録音もいっぱいある。6枚組のCDを構成したとき、各ディスクに若干の空き時間ができるので、そこをできる限り〈小犬のワルツ〉で埋めてやろうと。
生地:もう、入るだけ入れりゃあいいじゃないですかってね。
――そんなこと考えるプロデュ―サー、実在するんですか⁉
生地/鈴木:ここに二人もいます!
鈴木:〈小犬のワルツ〉を入れるからには、もちろん核となるEHAMICさんの〈小犬のカーニバル〉もちゃんと収録して、みなさんに今一度味わっていただきます。
生地:快諾してくれたバンダイナムコミュージックライブの黒田Pありがとう!(笑)
鈴木:ありがとうございます!
生地:ジャケットは今回も、橋本誠一さんによる久々の描き下ろし。元ネタが何人の方にわかるかドキドキしていますが(笑)。
鈴木:今回はちょっとマニアックかもしれませんね、分かるかなぁ(笑)。
生地:ともあれ、僕は作品サイドの人間なので、こうしてキャラクターたちが生きていると伝えられること、また、新しい関連商品をみなさんのお手元に届けられことが有難いんです。放送終了から5年も経っているのにね。こんな機会をいただけて本当にありがとうございます。
――ファンを代表して、私からもありがとうございます。仙台フィルの特別公演も、どんなこだわりが爆発するのか、本当に楽しみです。ここにきて「楽しみ」って言えることが幸せですね。
鈴木:クラシック音楽の力ですね。なんかまた、聴きたくなってきたな。
生地:ファンのみなさま、僕ら二人の友情のためにも(笑)、なにより『クラシカロイド』とクラシック音楽を今後ともよろしくお願いいたします!
取材・文=高野麻衣

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