上白石萌音が安定感ある演技で魅せる
 『千と千尋の神隠し』ゲネプロレポ
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宮崎駿監督による名作アニメーション映画『千と千尋の神隠し』。日本はもちろん海外でも高い評価を受けている本作は、2022年に英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの名誉アソシエイト・ディレクター、ジョン・ケアードが翻案・演出を行い、初の舞台化がされた。
2024年の公演では、主人公・千尋を初演から引き続き橋本環奈上白石萌音、オーディションで同役を勝ち取った川栄李奈と福地桃子の4名が演じる。3月11日(月)に橋本環奈が演じる千尋で幕を開け、3月12日(火)には上白石萌音が登板。3月13日(水)に福地桃子、3月27日(水)に川栄李奈が初日を迎える。上白石の初日を前に行われたゲネプロの様子をお届けしよう。
千尋=上白石萌音
この日は千尋を上白石萌音、ハクを増子敦貴(GENIC)、カオナシを小㞍健太、リンを華優希、釜爺を宮崎吐夢、湯婆婆・銭婆を春風ひとみ、兄役を堀部圭亮、父役を伊藤俊彦、青蛙を元木聖也、頭を五十嵐結也、坊を武者真由、アンサンブルを湯屋チームが演じた。
上白石の千尋は、ぼんやりしているように見えて意志の強さがところどころに覗いている。冒頭で父(堀部圭亮)と母(華優希)に「帰ろう」と言い募るシーンから怖がりなだけでなく用心深い性格が伺えたり、最初は千尋を敵視していた湯屋の従業員たちにスムーズに馴染んでいく適応力を見せたりと、「この子なら大丈夫」と感じさせる。一方、無茶をしそうで目が離せないと思わせるところもあり、安心感とハラハラのバランスが愛おしい。ハクに見せる笑顔、ススワタリたちに手を振ってはにかむ様子など、ちょっとしたシーンの表情にキュンとさせられる。
ハク=増子敦貴(GENIC)
ハクは先に行った福地によるゲネプロと同じく増子が演じた。クールな顔と千尋に見せる優しさのギャップはそのまま、芯の強い千尋と共に成長していく少年という印象に。千尋がどんな少女かによって、ハクから受けるイメージも大きく変わる。
湯婆婆を演じる春風は、厳しいが懐が深く、頼もしい経営者として油屋をまとめる。品のある印象を受けるぶん、冒険を経て成長した坊の言葉にたじろいで慌てふためく姿がユーモラスで可愛らしい。小㞍によるカオナシは思わず手を差し伸べたくなるような物悲しさを強く感じさせ、リン役の華はきびきびとした快活な先輩として千尋を支えている。釜爺を演じた宮崎は、周囲で繰り広げられる出来事と若者たちを見守る年長者らしいあたたかさを見せた。坊を演じた武者と頭を演じた五十嵐は、緊張感のあるシーンでも思わず笑ってしまうコミカルさで癖の強いキャラクターを好演。原作の雰囲気をうまく作り上げていた。
湯婆婆・ 銭婆:春風ひとみ

釜爺:宮崎吐夢

もちろん物語の流れやセリフは同じだが、プリンシパル、アンサンブル共に細かな部分で個性が出ており、キャラクター同士の関係性もそれぞれ違って見える。
ふとした時に頑固さや気丈さを発揮する千尋に湯婆婆や兄役(堀部圭亮)、父役(伊藤俊彦)たち従業員が気圧されているように見える時があったり、カオナシが悲しそうな雰囲気をまとっていることで千尋や銭婆との交流のあたたかみが増していたり。湯屋を訪れる八百万神や従業員もキャストによって印象が少しずつ異なっており、ストーリーや舞台版の演出を知っていても新鮮な気持ちで楽しむことができた。ゲネプロで見られなかったキャストが演じるキャラクターや異なる組み合わせによって、作品がどんなカラーに変わるのか期待が高まる。お気に入りのシーンやセリフを各キャストがどう表現するか比べる楽しさもあるのではないだろうか。
また、大掛かりで高さもあるセットがステージいっぱいに組まれているため、座席によっても見えるものが変わる。角度によっては本当の魔法のように人やものが現れたり消えたりすることもあり、童心に帰ってワクワクしながら『千と千尋の神隠し』の世界に入り込み、千尋と一緒に冒険することができた。
本作は3月30日(土)まで東京・帝国劇場で上演された後、4月から6月にかけて名古屋の御園座、福岡の博多座、大阪の梅田芸術劇場メインホール、北海道の札幌文化芸術劇場hitaruでも公演が行われる。さらに、4月から8月まで、全国ツアーと並行してイギリス・ウェストエンドのロンドン・コロシアムでも上演。多くのファンに愛されている作品のさらなる飛躍に期待しよう。
【動画】上白石萌音初日スペシャルカーテンコール映像~2024年3月12日(火)夜の回
取材・文=吉田沙奈

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