2月11日(日)@新宿ReNY photo by 折田琢矢

2月11日(日)@新宿ReNY photo by  折田琢矢

PENICILLIN、
バンド結成&バレンタイン記念公演の
オフィシャルレポートが到着

1992年2月14日に結成されたことから、毎年2月半ばにバンドのバースデーとヴァレンタインデーを記念したライブを開催しているPENICILLIN。32年目となる今年は<PENICILLIN HAPPY BIRTHDAY & VALENTiNE'S DAY LIVE SPECIAL 2024>と銘打った公演が新宿ReNYを舞台に、2月10日(土)・11日(日)という2デイズ・パッケージで開催された。PENICILLINと一緒に特別な日を過ごすべく両日ともに多数のオーディエンスが詰めかけ華やいだライブとなった<HAPPY BIRTHDAY & VALENTiNE'S DAY LIVE SPECIAL 2024>の2日目の模様を、お届けしよう。

開演時間を迎えて暗転した場内に重厚なオープニングSEが流れ、ステージ前面に降ろされていたカーテンが開いていく。ステージに立ったPENICILLINのメンバー達の姿に客席が騒然となる中、ライブは「永遠と花束を」から始まった。強く感情が伝わってくるHAKUEIの歌声と翳りを帯びたサウンドの取り合わせにグッと心を惹き寄せられるし、間奏で高速ビートに変化して千聖がタッピングも織り交ぜたテクニカルなソロを奏でるという構成には気持ちが高まる。ライブが始まると同時に場内を非日常の空間へと変貌させる辺り、PENICILLINの凄さをあらためて感じずにいられなかった。

その後はハードなギター・リフやアッパーなサビ・パートを配した「憂鬱と理想」と狂騒感を放ちながら力強く疾走する「Rosetta」を続けてプレイ。ライブの幕開けからどんどん加速していく流れは高揚感に溢れているし、キレのよさとうねりを併せ持ったサウンドも全身に心地いい。華やかなステージングを織りなすメンバー達の姿も相まって、目と耳を奪われずにいられなかった。
2月11日(日)@新宿ReNY photo by  折田琢矢

2月11日(日)@新宿ReNY photo by 折田琢矢

「大学生の時に結成したバンドが32年も経ってしまいました。これもひとえに皆さんの応援の力があってのことです。ありがとうございます」

――というHAKUEIのMCに続けて、セクシーなシャッフル・チューンの「サファイヤアンドロイドの夢~Juliet II~」やダークな歌中と光を感じさせるサビのコントラストを活かした「ボニー&クライド」、ギターのイントロの泣きのメロディーがせつなさを引き立てる「ひび割れたHOLY NIGHT」などが届けられた。1曲ごとに表情を変えつつ散漫さを感じさせないばかりか、逆に世界観を深めていくのは実に見事。PENICILLINならではの秀でた演奏力や表現力を遺憾なく発揮して、場内を埋めたオーディエンスを深く惹き込むポテンシャルの高さが光っていた。

「ひび割れたHOLY NIGHT」を聴かせた後、千聖とO-JIROのMCが入った。「32周年です。いろんな時代のいろんな曲をやると、その当時のことをみんな思い出すでしょう? 俺らも、そうなんですよ。あの時こうだったなとか、いろいろ思う。グッとくる瞬間というのはまだまだいっぱいあるだろうなと思うと、これから先もすごく楽しみです」(O-JIRO)。「50才を過ぎたので、キャラを変えようかなと思って。もっと優しいキャラに、寛大キャラでいこうかなと。いつもニコニコしているみたいな(笑)」(千聖)といった2人の言葉に客席からは温かみに溢れた歓声や拍手が何度となく起きていた。MCで飾ったりすることなく素顔を見せてくれることもPENICILLINのライブの魅力のひとつになっている。
2月11日(日)@新宿ReNY photo by  折田琢矢

2月11日(日)@新宿ReNY photo by 折田琢矢

もうひとつ、今回のライブを観てあらためて感じたことだが、PENICILLINのメンバー3名の組み合わせは絶妙といえる。デカダンスを体現しているような存在感とセクシー&エモーショナルな歌声を備えたHAKUEI。ヴィジュアル、ギター・ワークともにロック・テイストが色濃い千聖。オシャレな衣装を身に纏い、テクニカルかつ多彩なドラミングを展開するO-JIRO。音楽的な指向性も含めて3人はバラバラだし、楽曲に合わせてプレイヤーとしての懐の深さを見せるが、それぞれの芯がブレることはない。

たとえば、パンキッシュな曲だからといってHAKUEIがパンク直系のぶっきらぼうな歌を歌うことはないし、ソフトな曲ということで千聖が存在感のないギターを弾くことはないし、ヘヴィメタルっぽい曲調に合わせてO-JIROが大きなノリのビートを叩くというようなこともない。PENICILLINは3人の個性が上手く融合されることで、唯一無二の魅力を湛えた音楽が生まれている。

もしもPENICILLINが4~5人編成でメンバーの中の2人が似通った指向性だったら、音楽性はそこに寄っていくだろう。かといって4人編成などで全員がバラバラだったとしたら上手くバランスを取るのはかなり難しく、取れたとしてもボヤけた印象の音楽になってしまう危険性が高い。3人がバラバラなことがいい方向に作用しているPENICILLINは少し奇跡的なところがあり、“最強”という言葉が似つかわしいトライアングルを形成している。独自の音楽を作り上げたことが30年を超えてPENICILLINが存続し続け、今なお多くのリスナーから熱い支持を得ている大きな理由になっていることは言うまでもないだろう。
2月11日(日)@新宿ReNY photo by  折田琢矢

2月11日(日)@新宿ReNY photo by 折田琢矢

メロディアスな「メランコリア」や、狂気に満ちたヘヴィな「バラ」からの千聖のストロングなギターソロから始まる「Galaxy Train」、そして今度は千聖の繊細なアコースティック・ギターの音色からパワフルなサウンドへと移行する「ネオグラマラス」などを経て、ライブは後半へ。O-JIROが叩く高速ビートやHAKUEIの力強いボーカルなどをフィーチュアした「XXX」や千聖ならではのソリッドなギター・リフとパンク・テイストを融合させた「Desire」、爽快感を放つ「NEW DESIRE」などが相次いで演奏された。

アクティブなステージングを展開しながら勢いと安定感を兼ね備えた上質なサウンドを聴かせるメンバー達の姿に牽引されてオーディエンスも一体感と熱気に満ちたリアクションを見せ、場内のボルテージはさらに高まっていく。本編のラストソングとなった「天使よ目覚めて」では客席から大合唱が湧き起こり、PENICILLINがステージから去った場内は爽やかな空気に包まれていた。

最良といえる形で2024年の始まりを告げたPENICILLIN。30年を超えても彼らの魅力が色褪せないことを感じたし、2日間で同じようなライブをすることなく、初日はエモーショナルな側面を押し出して、2日目はアッパーな印象に仕上げたのもさすがといえる。ベテランになった今でも“なにが飛び出すかわからない”というオモチャ箱のようなイメージを保っている彼らは本当に魅力的だ。

また、PENICILLINは今なお攻める気持ちを失うことがなく、これからもより研ぎ澄まされていくことを感じさせた。そんな彼らだけに、今後も輝きを発し続ける存在であり続けるに違いない。

photo by 折田琢矢
text by 村上孝之

【セットリスト】
■2月10日(土)
01. パライゾ
02. SOL
03. BLACK HOLE
04. 冷たい風
05. Mind Master Mind
06. ひび割れたHOLY NIGHT
07. ハカナ
08. メランコリア
09. Galaxy Train
10. バラ
11. 透明人間バルサ-
12. 99番目の夜
13. 快感∞フィクション
14. イナズマ
15. 永遠と花束を
<ENCORE1>
01. JUMP#1
02. 男のロマンZ
<ENCORE2>
Encore2
01. QD

■2月11日(日)
01. 永遠と花束を
02. 憂鬱と理想
03. Rosetta
04. サファイヤアンドロイドの夢
05. DEAD or ALIVE
06. ボニー&クラウド
07. ひび割れたHOLY NIGHT
08. メランコリア
09. バラ
10. Galaxy Train
11. ネオグラマス
12. XXX
13. Melody
14. newfuture
15. 天使よ目覚めて 
<ENCORE1>
01. スペードキング
02. fantasia
<ENCORE2>
01. Desire

【ライブ情報】

『PENICILLIN 関東サーキット2024 「激撮III」』
3月23日(土) 埼玉 西川口Hearts
開場17:00/開演17:30
3月24日(日) 千葉 柏PALOOZA
開場17:00/開演17:30
3月31日(日) 神奈川 新横浜NEW SIDE BEACH!!
開場17:00/開演17:30
4月06日(土) 東京 新宿BLAZE
開場16:45/開演17:30
<チケット>
オールスタンディング8,500円(税込/D別)
https://eplus.jp/penicillin2024/
[問]サイレンエンタープライズ 03-3447-8822

2月11日(日)@新宿ReNY photo by  折田琢矢
2月11日(日)@新宿ReNY photo by  折田琢矢
2月11日(日)@新宿ReNY photo by  折田琢矢
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OKMusic編集部

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