橋本環奈・上白石萌音・川栄李奈・福
地桃子らが全員で熱意を持って全国と
世界に挑む  舞台『千と千尋の神隠
し』製作発表会見レポート

2022年、英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの名誉アソシエイト・ディレクターであるジョン・ケアード翻案・演出による世界初の舞台化をし、大きな話題を呼んだ宮﨑駿の名作『千と千尋の神隠し』。初演から主人公・千尋役で参加する橋本環奈上白石萌音に、オーディションで同役を勝ち取った川栄李奈と福地桃子を加え、2024年3月より帝国劇場公演、全国ツアー、ロンドンでの海外公演を予定している。開幕に先駆けて、製作発表会見が行われた。

松岡宏泰(東宝株式会社代表取締役社長):『千と千尋の神隠し』は、国内外で高く評価されています。奇跡のような作品を舞台化するのは壮大なチャレンジでしたが、素晴らしいキャスト・スタッフが一致団結して生み出すことができました。今回は日本各地だけでなく、演劇の聖地・ウエストエンドで日本人キャストによる公演が行われます。私たちのスローガンは「世界中のお客様に感動を」です。期待・応援して見届けていただきたいです。
(左から)今井麻緒子、ジョン・ケアード
ジョン・ケアード(翻案・演出):初めて日本で仕事をしたのは40年前の『レ・ミゼラブル』。大抵は海外で上演したものを日本に持ってきていますが、今回は日本から発信できるのが嬉しいですし、最適な作品だと思っています。宮崎さんは素晴らしいアニメーターですが、同時に日本文化を伝える歴史家でもあると感じます。才能あるキャストの皆さんと一緒に作品を作り、日本文化をイギリスの観客と分かち合えるのを嬉しく思います。
今井麻緒子(共同翻案・演出補佐):2年前は大変な時期で、次々に困難が降りかかってきました。でも、それが作品のテーマとも合致していました。改めて、新キャストも加わってイギリスにも行くのが感慨深いです。何があっても乗り越えられると感じさせてくれる作品なので楽しみです。
イアン・ギリー(PW プロダクションズ 最高経営責任者):素晴らしい作品のロンドン公演について皆さんに報告できるのを光栄に思っています。2年前、ジョンさんからこの作品の話を聞いてすぐに札幌に飛び、作品を拝見して、絶対にロンドンに持ってこなければならないと思いました。ロンドンの一番大きな劇場をおさえ、記録にないほどのセールスで、ロンドンっ子や劇場関係者の間でも話題です。代表してカンパニーの皆さんにお礼を申し上げます。
千尋役
橋本環奈
橋本環奈:舞台『千と千尋の神隠し』は自分にとってかけがえのない作品です。大変でもあったけど、役者人生の中でこれだけ充実した時間を過ごせるのは本当に幸せだと感じました。本当に大切な役を、また演じられるのが嬉しいです。新キャストも加わり、私自身も刺激を受けて、さらに進化した千尋を見せられると思います。ジョンの演出が毎日違って、進化し続ける瞬間に立ち会えているのが幸せですし、パワーアップした作品を見せられるんじゃないかと思っています。私は今年で25歳になりましたが、千尋は10歳。年齢を重ねても遠ざかるわけじゃなくより千尋の気持ちがわかったり寄り添えたりすることに驚いています。早くお客様に見ていただきたいし、どれだけ期待していただいても裏切らないものをお見せできると思います。
上白石萌音
上白石萌音:大好きな作品の一員になれるのが幸せです。この場に来てくださった方の多さとスケールの大きなお話にフワフワしてしまいそうですが、どの会場でも素朴で素晴らしいストーリーを信じて、大切に千尋を演じたいなと思っています。この4人とアンダースタディの森 莉那ちゃんと5人で千尋を作っています。キャストも2倍に増え、頼もしいスウィングさんも加わって、この作品がより豊かに、自由になっていることを日々感じます。私も毎日新鮮な気持ちで、柔らかく誠実に千尋として生きたいと思っています。
川栄李奈
川栄李奈:初演で萌音ちゃんの千尋を帝国劇場で見て、「本物の千尋がいる!」と鳥肌が立ったのを覚えています。新しいキャストをあたたかく優しく迎えてくれるカンパニーの皆さんに感謝しながら、開幕まで稽古を頑張り、千尋を務めたいです。
福地桃子
福地桃子:絶賛稽古中ですが、まだ実感がありません。初演の時は劇場で見られなかったので、一番いい席で生の千尋を見てたくさん学ばせていただいています。稽古場に行くと、大きな生き物から小さな生き物までみんな可愛くて、いろんなことに感動するのが楽しくて仕方ないです。今日はカンパニーの皆さんと一緒にここに立たせていただき、楽しみな気持ちが強くなりました。
ハク役
醍醐虎汰朗
醍醐虎汰朗:またこの役を務められること、千尋役の皆さんの小さくて大きな背中を間近で見られることをとても誇りに思います。今回も胸を張って精一杯努めていきたいと思います。
三浦宏規
三浦宏規:前回の名古屋公演で卒業宣言みたいなものをしたんですが、いろいろな奇跡が起きて再び参加できることになりました。初演からどんどん人数が増え、すごいカンパニーになっています。その一員になれることを幸せに思いますし、僕が舞台を始めたころからの夢のひとつだった「日本オリジナル作品を海外に持っていく」ことを、この素晴らしい作品で実現できたことに喜びを感じています。
増子敦貴
増子敦貴:僕は今年実は年男で、さらに宮崎駿さんと同じ誕生日。ちょっと運命を感じます。竜のように天高く舞い上がって……舞い上がる? とにかく全力で頑張ります(笑)!
カオナシ役
小㞍健太
小㞍健太​:カオナシは人の心を持ちながらも人ではない。みんなで話し合い、すごく工夫しながらやっています。「怖い」とか「チャーミング」とか、いろいろな面を見ていただけたらと思います。
中川 賢
中川 賢:小さい頃から憧れだったアニメやジブリの世界に自分がいるのがまだ信じられません。稽古場で皆さんの生の演技を見ていると、映画の印象とはまた違うものを感じました。どんどん世界に入り込めましたし、それをお客様にもお届けできるように頑張りたいです。
山野 光
山野 光:新キャストの皆さんもすごく素敵で、ここにいない方も含めてカンパニー全員で作り上げた作品です。その中でカオナシというひとつのピースを誠心誠意務め、カオナシの思いや千尋から見たカオナシも大切にしながら演じていきたいです。
※森山開次は事情により欠席
リン/千尋の母役
妃海 風
妃海 風:稽古を重ねる中で、作品やキャスト、スタッフさんへの愛やリスペクトが増しています。興奮を情熱に変えて舞台で爆発させたいと思います。
華 優希
華 優希:お話も大好きだし舞台も素晴らしくて、最初はとんでもないところに来てしまったと思いました。本当に素晴らしい作品なので、カンパニー全員で心を込めて日本と世界の皆さんにお届けしたいと思います。
実咲凜音:この作品に出られること、本当に幸運だと思っています。作品はもちろん知っていましたが、初演を拝見した時、非常に感動したのを覚えています。セットやパペットも細部までこだわっていて、皆さんの作品に対する愛が溢れています。自分にしか出せない味のあるリンとお母さんを演じたいです。
釜爺役
田口トモロヲ
田口トモロヲ:こういった形で国際的なロングラン上演になるとは思っていないかったので光栄です。カンパニーに感謝し、楽しみたいと思います。
宮崎吐夢
宮崎吐夢:私は帝国劇場もロンドン公演もWキャストも東宝さんの作品も初めてです。初々しいもぎたての釜爺をお届けできたらと思っています。
※橋本さとしは事情により欠席
湯婆婆/銭婆役
羽野晶紀
羽野晶紀:稽古場で春風さんと、「初演を作り上げた皆さんに尊敬しかないね」と話したのを覚えています。素敵なセリフがたくさんありますが、「魔法で作ったんじゃ何にもならないからね」というのがあります。この舞台では夢のようなお話をお届けしますが、やっているみんなは手探りで手作りしています。お客様も含めたみんなで作っている奇跡を劇場でご覧いただけたらと思います。
春風ひとみ
春風ひとみ:この作品を拝見するたびに、演劇の原点がここにあると感動していました。自分が参加できることに感謝しかありません。30年くらい前、ジョン・ケアードさんのワークショップに参加した時、マリさんがまだ大きな役がついたことのない私に「きっとあなた、お芝居に必要な人になるよ」と言ってくださって。マリさんが演じている役をできる奇跡に感動しています。全力のエネルギーでお届けしたいと思います。
夏木マリ:湯婆婆と銭婆を演じるのは初演、昨年、今回と3度目です。映画は20年近く前で、それだけの間ひとつの役をやれるのは幸せだと感じます。湯婆婆も銭婆も愛おしいので、もう少しやらせてほしいなと。キャストが増え、従業員も増えました。しっかり働くので今回もよろしくお願いいたします。
※朴 璐美は事情により欠席
スタジオジブリプロデューサー・鈴木敏夫:初演からはや2年、「千尋」が帰ってきました。今年2024年は甲辰の年に当たります。甲辰には「新しいことに挑戦して成功する」という意味があるそうです。今回、川栄李奈さんと福地桃子さんをはじめ新たなキャストを迎え、ロンドンでも公演が予定されているとのこと。新しいことにチャレンジし続ける「千尋」。私も楽しみにしています。皆さまもぜひお楽しみください。
続いて、質疑応答と千尋役の4名による囲み取材が行われた。
ーー4ヶ月間のロンドン公演は、東宝としてもチャレンジだったのではないでしょうか。
松岡:ここまでチケットが売れるとは予想していませんでした。ジブリブランド、そして『千と千尋の神隠し』の力を実感しています。ありがたいことに他の国からも多数お声をいただいているので、ジョンさんやイアンさんとチームを組んで今後の展開を考えていけたらと思っています。
ーー舞台化においてこだわったこと、ロンドンでこの作品がどのように愛されるか、ジョンさんにお聞きしたいです。
ジョン:一番大切なのはストーリーを明確に伝えること。例えばディズニー作品の多くは良い人と悪い人がいて若者が成長していきますが、宮崎さんの作品はヒロイン・ヒーローを含めた誰もが良い面と悪い面を持っている。人間の世界を反映した複雑なニュアンスに満ちています。釜爺が「愛だ、愛」と言いますが、そこに尽きると思います。
ロンドン公演については、世界中にジブリファンがいます。必ずしも映画館や劇場に行くわけじゃないけど、若い人を中心に熱狂的な宮崎ファンがいるので、新たな演劇ファンを獲得できるんじゃないかと楽しみにしています。
ーー初演から続投の橋本さん、上白石さんにとってこの作品とは。ロンドン公演に対する意気込みも教えてください。
橋本:私は初演の時が初舞台で、新しいことだらけでした。こんなに感情が動くことがあるんだと驚いたし、役者人生の中で絶対に忘れられない作品・役になったと思います。ロンドン公演は正直まだ想像できていませんが心配はしていません。どうなるのか私自身も楽しみです。
上白石:私にとってもとても大切な作品ですし、千尋がずっと心の中にいる感覚があります。美味しいものを食べたり素敵なものを見たりすると、千尋はどんな顔をするかなと考えています。友達のような子供のような大切な存在です。ロンドン公演は私も想像がついてないです。稽古場でジョンが「ロンドンではこうしよう」「日本語じゃないからこうしよう」ということはないので、言葉が違ってもそのまま届けることになるのかなと。日本人の心を持ってまっすぐ向き合いたいです。
ーー新たな千尋役の二人に、稽古場で印象的なことを聞きたいです。
川栄:不安が多いんですが、萌音ちゃんがいろいろなことを背中で見せてくれるし、環奈ちゃんは「大丈夫、大丈夫! いけるっしょ!」って明るく励ましてくれます。本当に助けられているので、二人を見習いながら新しい千尋を作りたいです。
福地:ジョンが「不安になる気持ちもわかるけど、心配しなくていい。次に稽古場に来る時、みんなエネルギーを持ってきて」と言っていたのが印象に残っています。生き物がパペットで出てくるシーンが多いんですが、青蛙や竜に人が命を吹き込み、見えなかったものが見えてくる発見と感動があります。お客様が見た時も、千尋が生き物たちと会話しているようにできたらと思います。
ーー夏木さんは、舞台での新たな発見はありましたか?
夏木:映画は声だけでしたが、体を使って同じセリフを言ってみると、全然違う表現になるんです。見てくださる方の中には映画ファンもいると思いますが、演劇として成立させなきゃいけない。声優としての声は忘れて新たに作っていきました。「前はこうやったけど、動いてみるとそうじゃない」というのがたくさんあって。でもジョンが「皆さん、物真似はしないでください」と言ってくださったので、すとんと納得できた感じがしました。
(左から)川栄李奈・橋本環奈・上白石萌音・福地桃子
ーーお互いの印象はいかがでしょう。
橋本:李奈ちゃんの千尋は素朴だけど周りに突き動かされて進んでいく姿を応援したくなる。
上白石:わかる!
橋本:桃ちゃんの千尋は、子供ながらにいっぱい考えてるし敏感に察知している繊細さが伝わってくる。いじけている姿とかが素敵だなって思います。
上白石:稽古場で間違えちゃった時の反応が千尋です。それに全員がきゅんきゅんしていて。一瞬で癒してくれます。
川栄:環奈ちゃんの千尋は明るく無邪気で芯の強い女の子。萌音ちゃんの千尋は序盤から芯の強さが見えていて、真面目に一生懸命生きる10歳の女の子。全然違う二人が一緒に作っている姿から学んでいます。
福地:学びで言うと、ずっと舞台上にいるし早着替えも多いと聞いていました。そういう技術的なことはやっている皆さんにしかわからないので、お話を聞けてありがたいです。
上白石:二人では見つけられなかった部分をみんなが発見してくれたので、やりやすいところが増えました。三人寄れば文殊の知恵と言いますが、五人いるので知恵だらけです!
ーー最後に、皆さんへのメッセージをお願いします。
上白石:8月末まで、長い旅が待っています。今まで同じ稽古場で稽古していたカンパニーが海を超えて散り散りになるので寂しさもありますが、何にも変え難い絆や心強さ、お互いへの愛が育った稽古期間だったと感じます。場所に関係なく同じ気持ちでやっていけると思うので、全員で責任と愛を分け合って頑張ります。
橋本:みんながこの作品を大好きで、愛を持って作っています。その熱量を生で感じられる舞台は、1回1回その時にしか出せない情熱がある。何回見ても楽しめると思います。また、初演の時からジョンもロンドンでやりたいと言っていて、カンパニーのみんなもそうでした。その夢がって羽ばたいていく舞台に置いていかれないようにしないといけないと思っています。新たなキャストも加わり、エネルギー溢れる稽古からたくさんのことを学びました。本当にいい舞台をお届けできるという自信を持っています。日本の方にも世界の方にも、思う存分楽しんでいただけたらと思っています。

取材・文・撮影=吉田沙奈

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