世界的人気番組『ゴット・タレント』
で喝采を浴びたパフォーマーが集結!
 自身がプロデュースする『グレイテ
ィスト・ベガス・ショー』の魅力を蛯
名健一が語る

全世界で圧倒的な人気を誇る、公開オーディション番組『ゴット・タレント』シリーズ。2023年には芸人のとにかく明るい安村が『ブリテンズ・ゴット・タレント』に出場し、「Don't worry, i'm wearing!!」で大ブームを巻き起こした。またYOASOBIのスペシャル・ダンサーとして『紅白歌合戦』にも出場したアバンギャルディも、やはり昨年の『アメリカズ・ゴット・タレント』出場を通して、一気に海外ブレイクを果たしている。
そんなモンスター番組で喝采を浴びた日本人エンターテイナーたちのパフォーマンスを生で楽しめるのが『Greatest VEGAS Show』だ。総合プロデューサーは、2013年の『アメリカズ・ゴット・タレント』で独創的ダンスを披露し、日本人のみならず、アジア人として初優勝した「EBIKEN」こと蛯名健一。日本各地で好評を博してきたこのシリーズが2024年4月7日、いよいよ東京でも開催される。ショーのコンセプトから出演者の魅力、パフォーミング・アートへの熱い想いまで、蛯名にじっくり聞いた。
──あらためて、ショーのコンセプトを教えていただけますか。
発想はきわめてシンプルなんです。2005年に始まった『ゴット・タレント』という人気オーディション番組があるんですね。現在まで70か国以上で制作され、全世界の視聴者数は10億人を超えると言われていて。
──日本でも、ネットでよく話題になりますね。ここ最近だと『ブリテンズ・ゴット・タレント』で爆笑をさらった芸人・とにかく明るい安村さんの印象が鮮烈でした。
そうそう。YouTubeの再生回数もすさまじかったし、国内のテレビでも盛んに取り上げられていました。僕自身も、2013年の『アメリカズ・ゴット・タレント』で優勝して、世界中の人に自分のパフォーマンスを知ってもらうことができた。そこから活動の領域が一気に広がり、人生が一変しました。もう10年以上たちますが、未だに世界中どこの国にいっても道で声をかけられます。なかにはこうやって(真下に落ちた首を両手でキャッチする動作)そのときのアクトを真似してくれる人もいて。
──おお! 『アメリカズ・ゴット・タレント』の一回戦で披露した有名な動きですね。観客の度肝を抜き、日本人パフォーマー・EBIKENの名前を世界に知らしめた。
それに続くステージでは、まったく違うパフォーマンスもいろいろ披露してるんですけどね(笑)。一種のアイコンとして、ロボマトリックス(RoboMatrix)という作品に出てくる「首落ち」を覚えてくれている人が多い。つまり『ゴット・タレント』シリーズというのは、他に比較するものがないくらい巨大な影響力を持つコンテンツなわけです。だからこそジャンルを超えて膨大な人数が番組に応募しますし。分母が巨大だから、自然とレベルも高くなる。もちろん、根っこはあくまで視聴者受けを狙ったバラエティ・プログラムですが、世に出る機会をうかがっている人にとって、最高の登竜門になっているのは間違いない。

──タイトル通り、あらゆる才能がノンジャンルでしのぎを削っていると。
その通りです。そして、ここが重要ポイントですが、この『ゴット・タレント』シリーズで世界を驚愕させた日本人パフォーマーって、他にもたくさんいるんですね。お笑いや音楽に比べると国内ではまださほどスポットが当たってないけれど、圧倒的なインパクトで海外では語り草になっていたりする。
──何なら、日本でだけ知名度が低いパフォーマーも少なくないと。
そういう日本の“逸材”をパッケージして、1つのショーとして提供したら絶対に面白くなると。そのシンプルな想いが企画の出発点です。実際、エンタテインメントの本場ラスベガスでもこういう『AGTライブショー』という『アメリカズ・ゴット・タレント』出場バラエティ・アクト・ショーはすごく人気があるんですよ。
──日本では2019年にスタートし、回を重ねてきたわけですね。総合プロデューサーである蛯名さんは、どういうお仕事をされているんですか?
大きく2つありまして、1つはまずキャスティング。『ゴット・タレント』で結果を出した日本人パフォーマーから僕が「これは世界でも確実に通用する」と確信できる人材を厳選して、出演を交渉します。あくまで個人の物差しですが、この選球眼には自信がある(笑)。もう1つはショー全体の構成。いろんなジャンルがありますからね。それをバランスよく配置し、観客が一瞬も飽きずに楽しめる流れを追求する。いわば演出ディテクター的な立ち位置です。あと公演中に各アクトの見どころを解説する役割もあります。加えてもう1つ、自分の中で大切にしているテーマがありまして。
──どういうことでしょう?
インバウンド需要を意識すること。要は、インバウンドのお客さんが心から楽しめる内容はつねに心がけています。これは日本の課題でもあると思うんですが、インバウンドのお客さんが日本の伝統芸能などの民族的なショーに「触れる」ことで楽しむ機会はあっても、純粋かつ単純に「観て」楽しめるショーって、現状ほとんどないんですね。日本だからと「和」をアピールするコンテンツは多いですが、無理に「和」を押し付けなくても「ユニバーサル」な文化芸術でも楽しめるコンテンツがあるならそれも提供した方がいいですよね。インドに行って毎日毎食インド料理ばかりじゃ美味しくても外国人としては疲れません? 海外だからこそ慣れ親しんだものが恋しくなると思うんです。なので日本の醤油も海外の人からしたらインドの香辛料と同じです。なので世界共通の「塩」ベースのものでちゃんと美味しいものを提供したいなと。今回のショーは「塩」のミシュラン料理人が揃ってるという事です(笑)。
──なるほど。世界で活躍する日本人パフォーマーをいわば逆輸入的に紹介する側面と、日本に遊びにきた外国の人たちにわが国のトップパフォーマーを見てもらうという側面。蛯名さんにとっては、どちらも大切なわけですね。
はい。もちろん日本のお客さまが各パフォーマンスの良さを満喫できるよう、日本語ナビゲートもきっちり入れていますが、志はあくまで「ユニバーサル」。日本にいてもラスベガスのショーを観ているようなワクワク感や臨場感を与えたいと思っています。
──でも、そのワクワクするような臨場感って、パソコンやスマホのディスプレイでは伝わりづらい部分もありませんか?
まさに! 目の前でリアルな肉体が躍動する迫力もそうですし、パフォーマーが超絶テクニックに挑むときの緊張も、成功した際に会場を包み込む安堵と一体感もそう。どれも、その場の空気を共有してこそ体感できる面白さなんです。実際、『Greatest VEGAS Show』をご覧になったお客さんから「YouTubeでも見てましたが、やっぱり生で見ると100倍いいですね」みたいな声をいただくことって、すごく多いんですよ。
──プロデューサーとして、これ以上に嬉しい感想はないのでは?
ないですね(笑)。もっと言えば、エンタテインメント業界全体における身体系パフォーマンスのポジションって、日本ではまだまだ低いんですよ。これがアメリカのラスベガスだと、それこそ一流パフォーマーだけが出演するショーがロングラン興行として成立し、多くのお客さんが足を運んでくれる。でも日本の場合、コンサートやお芝居をライブで楽しむ文化はあっても、お金を払ってパフォーマンスのショーにいくという意識はまだまだ薄いと思う。クオリティーの高いコンテンツを提供することで、その土壌を少しでも作りたいという気持ちは、僕の中ではすごく大きいです。
──それでいうと今回の『Greatest VEGAS Show 2024』のラインナップも、すごい充実ぶりです。プロデューサーの蛯名さんから、各パフォーマーの魅力を簡単に教えていただけますか。まずはイリュージョニストのHARAさん。2016年の『アメリカズ・ゴット・タレント』の準々決勝まで進出し、喝采を浴びました。
あえて乱暴に言うと、国境を超えて活躍する超一流のマジシャン。マジック界のアカデミー賞ともいわれる「マーリン・アワード」を日本人で初受賞した実力派です。ただ、HARAくんの魅力は、いわゆる超絶テクニックだけじゃありません。もちろん技術面もすさまじい水準にあるわけですが、それらをうまく統合し、1つの物語として提示するセンスがずば抜けている。
──マジシャンでもあり、同時にストーリーテラーでもあると。
かもしれませんね。多くのマジシャンは、マジックという現象そのもので観客を驚かせ、引き付けようとしますよね。でも彼にとってのマジックは、あくまでもツール。主眼はむしろ、それらをどう配置し、自分の世界観を表現するかにあるような気がする。ステージ1回ごとが1つの作品とでもいうのかな。僕自身、パフォーマーとしてそこはすごく大事にしているので。ジャンルは違えど、深くリスペクトしています。

──MOCHIさんは2018年の『アメリカズ・ゴット・タレント』出場組ですね。それ以前にも、カナダで開かれたジャグリング世界大会で総合優勝されています。
さまざまなジャグリング競技のなかでも、MOCHIくんはディアボロ(中国ゴマ)の日本が誇る実力者。2本のスティックを細いヒモでつなぎ、その上で鼓に似た形のコマを自在に操るものです。彼がユニークなのは、そのディアボロの動きを映像と完全シンクロさせるんですね。空中を激しく舞うコマの軌道に合わせて、バックスクリーンにさまざまな模様がリアルタイムで描き出される。その世界観が、とにかくダイナミックでかっこいい。
──デジタル技術を導入した、いわば新世代ジャグラーなんですね。
ただMOCHIくんの場合、昔ながらのシンプルな演目もめちゃくちゃ強いんですよ。しかもHARAくんと似ていて、個々のジャグリングの技を組み合わせて、1つの作品を提示するセンスにも長けている。なので今回も、映像と融合した最新鋭のバージョンと、ジャグラーの技術的すごみが伝わるアナログ的なパート、両方を見せてもらう予定です。ちなみに、3つのディアボロを同時に扱えるジャグラーというのはそれなりにいますが、ディアボロ4つを使えるのは世界中に10人もいないらしい。
──面白いですね。1つ違うだけで、難易度が天と地ほど変わってくる。
そう。実はMOHCIくんは、その限られたトップ集団の1人なんですね。そんな彼でも、毎回必ず成功するとはかぎらない。それくらい難しい技術なんですが、今回のステージでもチャレンジしてもらいます。ここも1つ、大きな見どころかなと。

──今から楽しみです。次は高速タンバリン芸のGONZOさん。2015年『アジアズ・ゴット・タレント』、2019年『ブリテンズ・ゴット・タレント』、2021年『ゴット・タレント・エスパーニャ』に出演し、毎回スタンディングオベーションの嵐でした。
何というか、GONZOくんの場合、存在そのものがキュートなんですよね。出てきた瞬間にもう面白い。芸人さんなので、タンバリン芸の合間のトーク部分も大いに笑わせてくれます。ただ以前、あまりにもお客さんにウケすぎて、本人が調子に乗ってしゃべりすぎて時間が押しすぎたことがありまして。スタッフが「GONZOタイマー」という仕組みを作ったくらい(笑)。
──独特のルックスに目が行きがちだけど、客席とのコミュ力もすごい。
今回の『Greatest VEGAS Show2024』は、どちらかというと身体系パフォーマンスがメインですが、その中では異色のキャラクターかもしれません。でも、見落とされがちですが、肝心のタンバリン芸もびっくりしますよ。誰もが知るヒット曲に合わせて、高速で叩きながら踊るというシンプルな内容ですが、誰も真似ができない。ぽちゃっとした体型、独特の愛嬌と色気、たしかな技術。すべてが渾然一体となった、唯一無二の面白さです(笑)。

──何気ないポーズ1つとっても、自分の見せ方を知り抜いている。本当のプロですね。総勢12名からなる一輪車グループ、UniCircle Flow(ユニサークル・フロウ)はいかがですか。
まだ一般にはそれほど知られていませんが、一輪車ダンスという競技ジャンルがあるんですね。「陸上のフィギュアスケート」と呼ばれ、世界大会も開かれていますが、基本的には日本で発展し、日本が世界をリードしてきた。UniCircle Flowはその中でもトップクラスの実力者たちによる超一流のチームです。メンバーには世界大会優勝者や、シルク・ドゥ・ソレイユの出演者が揃っていて。華麗さとダイナミックさがこんなにも自然に融合した集団パフォーマンスとは、なかなか出会えないと思う。
──2021年の『アメリカズ・ゴット・タレント』では、2万2000組の応募者の中から勝ち残って、準決勝に進出する快挙を成し遂げました。
一輪車の芸って、海外ではわりとサーカスの印象が強いと思うんです。ピエロが曲乗りしながら、お客さんの笑いを誘うイメージ。UniCircle Flowは、それを根底から覆したと言えます。まさにフィギュアスケートに通じるような、アーティスティックな演技で、視聴者を圧倒した。音楽の使い方もすごく素敵なんですよ。日本が世界に誇るパフォーミング・アートを、ぜひ実際に体感していただければと。

──そして最後は鉄棒パフォーマンスのAIRFOOTWORKS(エアフットワークス)。『Greatest VEGAS Show』には初出場ですね。キューブ型に組まれた鉄棒を、4人のメンバーが縦横無尽に動き、ダイナミックな技を披露する。その斬新さ、全体が力強く統率された美しさに圧倒されます。
彼らこそ、言葉本来の意味でユニークですよね。まったく存在しなかった新しいジャンルを、独力で創造してしまったわけですから。グループの成立過程も実に面白い。考案者の上西隆史くんは、もともと「WORLD ORDER」というダンスパフォーマンス・グループで活躍していた人なんですね。でも、あるとき足をケガをしてしまって。そのリハビリ期間中、上半身を鍛えるために、街や公園にある器具を使用したストリート・ワークアウト系の動画をたくさん見まくったと。そこから足をまったく地面に付けず、腕の力だけで身体を自在に動かすスタイルを発想したそうです。
──映像を見ると、まるで4人が空中を歩いているような軽やかさです。
昨年は『ジャパンズ・ゴット・タレント』に出演しましたし、『ルーマニアズ・ゴット・タレント』でも大注目を浴びて。最近は動画サイトで、似たパフォーマンスの動画をアップしている人も増えてきましたね。でも少なくとも現状は、彼らが醸し出す独特の無重力感には遠く及ばない。世界中からオファーが舞い込んでいる旬のパフォーマンスをぜひ、実際に確かめていただきたいです。

──そして、EBIKENさんご自身によるパフォーマンスも。
はい、MCがメインですがもちろん、これでもまだパフォーマーなのでやりますよ(笑)。今回も気合いを入れて演じますよ。来ていただいたお客さまの全員に大満足していただきつつ、『Greatest VEGAS Show』を続けることによって、日本のエンタテインメント文化をぜひ底上げしていきたい。心からそう願って、出演者全員で最高のショーをお届けします。
──最後にもう1つ。EBIKENさんが『アメリカズ・ゴット・タレント』で優勝されて約10年、『ゴット・タレント』経由で海外に進出するパフォーマーは大幅に増えました。コメディの分野ではとにかく明るい安村、ゆりやんレトリィバァ。アイドルグループのTravis Japan。YOASOBIとの共演でも知られる女性ダンスグループのアバンギャルディ。他にも多くの名前が挙げられます。この盛況を、EBIKENさんはパイオニアとしてどうご覧になっていますか?
これはもう純粋に嬉しいですね。特に若い人たちはどんどん海外に出て、活躍の場を広げてもらいたい。今名前を挙げて頂いた方達以外にも、すごく実力がある日本人アクトはたくさんいるんです。日本では元々の知名度の低さゆえにあまりメディアで取り上げられていなくても、海外ではものすごく注目を集めて仕事が広がっているパフォーマーも多いんです。日本でももっと注目をして欲しいですが、そこはなかなかもどかしいですね(笑)。なので日本は置いておいてもやはり『ゴット・タレント』で勝ち上がれば、世界中の膨大な視聴者にパフォーマンスを見てもらえます。うまくバズれば、海外での認知度も一気に上がります。そうすれば本人のキャリア的な可能性も広がりますし。その評判がいわば逆輸入で伝われば、日本国内でのパフォーミング・アートの地位もより向上していくと思うんですね。自分たちが始めた『Greatest VEGAS Show』も、その受け皿の1つになっていければなと。
──その意味でも、改めて「ゴット・タレント」シリーズがパフォーミング・アートの分野で果たした功績というは大きい。
はい。活動の場が一気に広がった1人として、強くそう思いますね。2013年に『アメリカズ・ゴット・タレント』で優勝して以降、いろんな分野のパフォーマーからこう言われるんですね。EBIKENさんのおかげで、世界を近く感じるようになった、と。要は「あれ、EBIKENさんでいけるなら自分も意外にいけるんじゃない?」の感覚ですよね(笑)。これはすごく大事だと思うんですよ。海外の壁は高いと思ってる人も多いですが正直、意外に世界の方が簡単だったりします。そうやって海外に飛び出した人たちのパフォーマンスを、生で体感していただくのが『Greatest VEGAS Show』の基本コンセプト。今後も好循環のサイクルを、どんどん作っていきたいと考えています。
取材・文=大谷隆之 撮影=船橋岳大

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