KERAの舞台作品に初めて挑む水川あさ
みを独占インタビュー~女優7人、豪
華キャストが揃う新作 KERA CROSS 第
五弾『骨と軽蔑』

演劇界の第一線をひた走る劇作家・演出家にして、映画監督でミュージシャンでもある、ジャンルを超越して活躍を続けているケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)。彼が自らの演出で上演していた過去の名作戯曲を、才気溢れる演出家の手で異なる味わいにして上演してきたのが2019年にスタートした“KERA CROSS”シリーズだ。
第一弾『フローズン・ビーチ』(2019年、演出:鈴木裕美)、第二弾『グッドバイ』(2020年、演出:生瀬勝久)、第三弾『カメレオンズ・リップ』(2021年、演出:河原雅彦)、第四弾『SLAPSTICKS』(2021~2022年、演出:三浦直之)と上演を重ねてきたこの人気企画、シリーズラストの第五弾の演出家はなんとKERA本人が降臨! しかも書き下ろしで新作作品『骨と軽蔑』を上演することとなった。
キャストは宮沢りえ、鈴木杏、犬山イヌコ、堀内敬子、水川あさみ、峯村リエ、小池栄子という、ゴージャスな顔ぶれが揃うのも大きな魅力だ。KERAによると「手練れの女優7人と一緒に辛辣なコメディを作ってみたい」とのことだが、果たしてどんな作品になるのか、期待は高まるばかり。そこで、KERAの舞台作品には初挑戦となる水川あさみに、本格的な稽古はまだまだ先で謎の部分が多いとはいえ、今回の作品への想いや、現在の心境などを語ってもらった。
――KERAさんの作品ということでは、映画版『グッドバイ』には出られているとのことですが、舞台作品には初挑戦となりますね。
そうですね。ですから、KERAさんから直接演出を受けるというのは今回が初めてになります。
――まず、出演オファーを受けた時の心境としてはいかがでしたか。
純粋に、すごく嬉しかったです。でも出演者のお名前を聞いて、すごいメンツの方たちでやるんだ!という驚きもありました。その中に自分も参加させてもらえるなんて。もう、これはやらせていただくしかないな、と思いました。
――KERAさんの作品に対しては、どんな印象がありましたか。
全ての作品ではないですが、何度か拝見はしていまして、すごく幅広い作品というイメージがあります。人間のユニークさから、見せたくない一面まで描いていたり、物事をこんな思いもよらない角度から捉えるのかというようなファニーな部分もある。あとは人物描写に奥行きがあり、キャラクターがすごく立っていて魅力的だなと思いながら、いつも観ています。
――ちなみに最近ではどの作品をご覧になっていますか。
『修道女たち』(2018年)とか、『世界は笑う』(2022年)とか。この間上演されていた『眠くなっちゃった』(2023年)は観に行きたかったんですが、ちょうどその期間は舞台稽古中だったので(『リムジン』2023年)、残念ながら行けなかったんです。
――KERAさんから、今回の作品に向けてはどんな言葉をかけられていますか。
それが、この作品についてはまだ特に言葉はかけられていないんです。『リムジン』を観に来てくださった時には「すごく面白かったよ」と褒めてくださいました。あと「この舞台の上演時間は1時間50分くらいだったけど、僕の舞台の場合はそういうわけにはいかないので。その点はゴメンね、でもよろしくね」とおっしゃっていました。
――覚悟をしておきなさい、と?(笑)
「大丈夫です、がんばります!」ってお伝えしました(笑)。
――その『リムジン』は、水川さんにとって久しぶりの舞台でしたね。改めて感じる、映像のお仕事とはまた違う舞台の面白さとか難しさ、醍醐味とは。
私の場合、舞台に立った経験が圧倒的に少なくて、まだまだ知らないこともたくさんあるのでもっと知りたいなという、欲みたいなものがあるんです。お芝居をするということに関しては映像の時も舞台の時も、取り組み方の意識としては変わらない。でもやはり、舞台は生ものですから。演劇というのは、お客さんも一体となってそこの場所、劇場空間を作るということなんだということを、『リムジン』で改めて知ることができました。お客さんも含めて、ひとつの舞台作品になるんだ、と。だからこそ、毎日少しずつ変化があったりすることを面白がれる、楽しめるようになれた感覚があります。
――舞台の経験が少ないというのは、別に舞台に出るのが嫌だったわけではないんですよね?(笑)
もちろんですよ(笑)。でも、嫌いではないですけどやっぱりまだ怖いです。そして、舞台で演じるということが得意になれるのか、というのも……いえ、いつか得意だと言えるようになっていたいなとは思いますけどね。あと10年くらい、もしこのまま定期的に舞台に立たせてもらうことができていたら、いつかは!と思うけど。でも、やはり怖さはまだまだあります。たとえば、台本に書かれている人物を自分はちゃんと掘り起こせているかなとか、私の表現力でこの人物をしっかり立体化しきれているかなとか。私はこう思ってたけど、え、こっちなの?と驚いたり、そういう面白さもあるんですが、だけどそれを形づくるためには自分自身、足りているのかなとか。そういう怖さみたいなものは、今もまだ確実にあります。
――やはり慣れも必要でしょうし、経験を重ねていくことでその怖さも変わってきそうですよね。
もう少し自分に余裕ができたり、面白がり方みたいなこともわかってくるといいなとは思います。
――あとは演出家の方によっても、作品によっても違ってきそうですが。
そうですよね。全然違う経験になるんだと思います。
――違うから面白いし、やりがいにもつながりますし。そういう意味では今回の作品でKERAさんと初めて顔合わせができるというのは、なかなか刺激的な経験になりそうですね。
そうですね。しかも、現時点でですが、本当にまだ何もない状態から始まるのは、私にとっては初めての経験です。だけど、何もないと準備のしようがないので、それはそれで新しくていいな、と感じています。実際に稽古が始まったら、ヒイヒイ言うことになるのかもしれませんが、こうして始まる時点では全員が同じスタートラインに立っているわけですから。このあたりまでセリフを覚えておこうとか、全部頭に入れておこうとか、事前に準備ができる時はみんなバラバラの段階から始まったりするけど、今回はみんな一緒だから。そこはいいな、とは思っています。今のところは、ですけど(笑)。
――内容に関しては、KERAさんのコメントに少しヒントがありそうですが。
「会話劇」、と書いてありましたね。
――あと「辛辣なコメディ」ともあります。また、SNSのつぶやきでは「味付けはビター、久々にウェルメイドでと思っていたもののどうにもウェルメイドな気分ではなく、不条理マークつけて発進し始めた」とありました。
え、そうなんですか! でもとにかく稽古が始まってみないとわからないことだらけなので、この状況をとりあえず楽しむしかないと覚悟しています(笑)。
――今回は手練れの女優さんばかりが7人揃う座組で、KERAさんの作品に何度も出られている方も多いですが。
堀内さんと私だけが初めて、ですね。
――水川さんとしては、この顔ぶれでどんなカンパニーになると予想されますか。
それはもう、楽しくなりそうな予感がすごくあります。私は、犬山さんとは直接お会いしたことがなくてお芝居を観たことがあるだけなので、どういった方なのかはまだ知らないのですが、とにかく全員エネルギーの高い人たちが集まったなという印象です。絶対、稽古場は楽しいと思います。誰一人として取り繕っている人がいないというか、オープンな方々なので、正直なお芝居をする人たちが集まっているという感じがしますね。
――舞台で共演するのは、初めての方ばかりですか。
峯村さんとは、ご一緒したことがあります(『地獄のオルフェウス』2015年)。
――では峯村さんになんでも聞けば、全部教えてくれそうですね。
私もわからないことがあれば「わかりません」と言いますし、もちろんみんなもきっと助けてくれるでしょうし、もし「それは違うでしょ」と思ったとしたらすぐにそう言ってくれる、そうやって正直にまっすぐぶつかり合えるくらい、お互いを信頼できるような関係性でやりたいです。いや、やりたいというかできるだろうなとは信じています。
――現時点では、確実なことは何もない状態ではありますが、この『骨と軽蔑』というタイトルだけはあります。もし、水川さんが勝手に今回どんな舞台になりそうかを予想するとしたら、どんな世界が広がりそうですか?
このタイトルのイメージだけで考えれば、怖さも感じますけど、それと同時に滑稽さもすごく感じます。だけどこのヴィジュアル写真のように、こうしてお墓の前で女性たちが笑っているという、その違和感みたいなものも面白いなと思います。
――また、この作品に挑むにあたって、どんなことを得たいと思われていますか。
それは実際にお芝居をやってみないとわからないですけれど、でもこのタイミングも本当にご縁だと思うし、この出演者の中に参加させてもらえることは私にとっても新しいチャレンジです。何かしらの発見がありそうだし、どういう風にできるんだろうかという、自分に対する期待もあります。舞台の作品が短期間で続くのは、お芝居を続けてきた中では初めての経験なので、きっと今までとは違う感覚で挑めるということにも、本当にワクワクしています。もちろん、怖さはありますけど(笑)そういう意味では、このビジュアルの女性たちの気持ちと一緒ですよ。
――背後にお墓があるけど?
笑ってる、みたいな。恐いのに、楽しみ!みたいな(笑)。
――2023年を振り返るとどんな年でしたか、そして2024年はどういう年にしたいですか?
2023年は、本当にたくさんの出会いがあった年だったので、ものすごくいい年でした!『ブラッシュアップライフ』から始まり、あのドラマの出演者の方々との出会いもすごく大きくて。
――あの作品との出会いも。
大きかったし、本当に面白かったんです。自分自身、すごく楽しくて楽しくて。連続ドラマあるあるで、後半になるとずっと眠れない日々が続くものなんですが、それでも翌日の撮影が楽しみで楽しみで仕方なかったです。
――それって、とても幸せなことですね。
そして連続テレビ小説『ブギウギ』も、本当にいろいろな方が見てくださってて。「やっぱり、朝ドラってみんな見てるんだな!」って、改めてちょっと驚きました。その中で私が演じさせていただいたツヤさんという役を、みなさんが愛してくださっていてとても嬉しかったです。
――本当に、いい役でした!
さらに『リムジン』も久しぶりの舞台で。本来ならコロナ禍の前に上演するはずだった公演が延期になってしまいましたがようやく実現できることになり、しかもキャストも一人も変わらずに、当初の予定通りの座組で実現できたというのも奇跡的でした。この公演中で、舞台に対する自分の意識みたいなものも、とてもいい意味で変わった気もしますし。気づきと、出会いの年でした。
――いい年でしたね。
いい年でした、楽しかった!(笑) 2024年もこうして、またものすごく楽しそうな作品からスタートできると思うと、こんなに幸せなことはありません。これで舞台の仕事が2本続いたあと、また映像の仕事をすることになるのですが、その時に自分のお芝居に対する想いはどう変わっているのかなという、これは自分への期待でもあるのですが。2024年は、その自分の変化を楽しみたいです。そのためにも、まずはこの舞台『骨と軽蔑』を全力でがんばりたいと思います。
【衣装】シャツ¥28,600(WAXMAN BROTHERS)パンツ¥51,700(BERNARD ZINS)ピアス¥10,450(KENNETH JAY LANE/全てCITYSHOP渋谷)【お問い合せ先】CITYSHOP渋谷 03-6696-233

取材・文=田中里津子 撮影=中田智章

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