11月12日(日)@日本武道館 photo by ヤマダマサヒロ

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結成15周年を迎えたフォーリミが
日本武道館で声高らかに叫ぶ
「バンド最高」宣言

バンド最高。いきなり語彙力全部放り投げて申し訳ないけれど、何回も、何回でも、精一杯大きな声で言いたい。バンドって最高。そんでもってバンドって人生。もっと言えばバンドに魅了された人の人生もそれぞれあって、その人生と人生がバンドを通して混ざり合ったのが、04 Limited Sazabys日本武道館2DAYS公演『THE BAND OF LIFE』だ。15周年を迎えた彼らがこの『THE BAND OF LIFE』という言葉を武道館で謳う説得力。開催にあたりGENが「バンドis人生」と言っていたけれど、2日間に渡って開催された日本武道館公演は、その答え合わせのような時間となった。

15周年記念となった今回の日本武道館公演はフォーリミにとって7年振りの開催。九段下の駅をおりて坂道を上りながら7年前のあの日のことを思い出す。あの日感じた感触も、芽生えた感情も肌にこびりついている。今日もそう、あの時と似ている。だけど何かが確実に違う。あの頃、挑戦の先に辿り着いた日本武道館でのライブは「ここまできたか」という万感の思いがこみ上げるものがあった。だけど今回の日本武道館公演は、辿り着いたその先で戦い続けてきたフォーリミの圧倒的な自信が溢れていた。ガラガラのライブハウスから始まった彼らの物語は15年という年月をかけ1コマ1コマ着実に踏み出してきた中で、こんなにも沢山の仲間に囲まれ、沢山の人に愛されるバンドになるまでストーリーが進んだ。旅の仲間と確かめ合いながら生き方を探し全開で冒険してきた4人の人生ゲーム。その物語の登場人物大集合な空間は、それはもうこれでもかと愛で溢れ返ってきた。
11月12日(日)@日本武道館 photo by  ヤマダマサヒロ

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初日と2日目で被り曲がほぼ無しといったセットリストで挑んだ2DAYS。12日のスタートを飾った「Keep going」を日本国旗の下で歌う4人の姿を観ながら、この数年間でこの国に、いや世界中に起きた出来事を考えていた。もう駄目だと思うことなんて何度でもあって、だけど諦めることを諦めて前に進むことが出来たのは、あの時期にフォーリミが『Harvest』というアルバムを届けてくれたからだ。前みたいに進めない中で前に進むにはどうしたらいいのか、とことん向き合って、頭を捻って、やっとここまできたのだ。声が出せない、隣の人と距離をあけなきゃいけない、ライブは何時までに終わらなきゃいけない、あれもこれもそれも色々あって、耐えて耐えて溜まっていたものを爆発させるのが、やっぱりバンドにとってはライブなのだ。「message」でステージに炎を上げた特効チームだってそれはもう本気だ。

「fade」や「Every」で歓声が上がったことでコロナ禍にリリースされた楽曲たちが本当の意味で完成したように感じたのは新たな感触だった。やはりライブバンドの作り出す音楽は作り手から誰かに届いてその音楽がその人のものになったときに出来上がる気がする。そういう意味ではこの2日間でその人だけの音楽を完成させた人も沢山いるのではないだろうか。立ち上がる以外方法がないことだって「My HERO」から学んだことだけど、音楽は時代を写すから、武道館で今聴きながら脳裏には色んな景色が浮かんでくる。あのとき何をしていたか、誰といたか、音楽は記憶に鮮明に色をつけるから面白い。
11月12日(日)@日本武道館 photo by  ヤマダマサヒロphoto by  ヤオタケシ

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愛し愛され15年、「Brain sugar」でフォーリミとファンの相思相愛を見せつけられながら満員の日本武道館をぐるっと見渡し、なぜこんなにもフォーリミが愛されているのかを考えていた。それはきっと彼らが沢山の愛を届けてくれるからだと思う。ファンに対しては勿論、仲間に対しても、家族に対しても、スタッフに対しても、フォーリミはいつだってとびっきりの愛で抱きしめてくれる。GENが「7年前と音響も照明もスタッフが変わっていない。チーム04 Limited Sazabysの本気を受け取って欲しい」と語っていたように、愛をまとったスタッフ陣もパワーアップして今日に挑んでいるのがよく分かる。「Kitchen」を演奏するフォーリミのバックで流れる野菜盛り盛りの映像だって、野菜が高騰している昨今の事情を吹き飛ばすポップさにワクワクさせられる。こういうひとつひとつの演出が、チーム04 Limited Sazabysが本気でバンドと一緒にライブを作っている証拠だ。そう、チーム含めてバンドなのだ。

事件が起きたのは「Galapagos」のときだった。いつものショートコントのくだりの中で、某ジャイアンがしたためてきたお手紙でしれっとさらっと「YON FES 2024」の開催が発表されたのだ。例年4月に開催されてきたYON FESだが、来年は6月に開催とのこと。「Galapagos」「Galapagos II」とシリーズ続けて演奏する後ろではあらゆるオマージュを散りばめたアニメーションが目まぐるしく展開されていて、ただでさえ情報量の多い楽曲なのに色々詰め込まれ過ぎていて、ここにもチーム04 Limited Sazabysの本気を見た。1秒たりとも退屈させない仕掛けの連続。織田信長やゴリラ、マツケンからLa Vie en Crisisまで、時代も生態系もジャンルの壁も超えた各界の著名人から届いたお祝いコメントにも沢山笑わせてもらった。思えば少し前まで、ライブハウスで声を出して笑うことも我慢していたんだから、みんなで乗り越えてきたんだなと、泣くポイントなんて1ミリもない映像を見ながら涙腺が緩んでしまう。
11月12日(日)@日本武道館 photo by  ヤオタケシ

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本当の意味での涙を誘ったのは10月にリリースされたセルフカバー・アルバム『Re-Birth』から演奏された「Re-monolith」「Re-midnight cruising」「Re-swim」だった。この15年間を一緒に走り続けてきた楽曲たちが日本武道館でおめかししているようで、その姿に子供の成長を見ているような気分になった。だって考えてみて欲しい。日本武道館でストリングスを迎えあの4人が演奏するなんて、想像もしていなかったでしょ。この15年でフォーリミがどれだけ経験を積んで、どれだけ沢山の音楽に触れ、色んな人に出逢って、今日ここに立っているのか。新たな表現方法を手に入れたフォーリミはきっとこれからもまだまだ進化するだろうし、あっと驚かせてくれると思う。15年でこれなんだもん。30年、50年先のフォーリミにだってきっとずっとワクワクしている自信がある。

あの頃からずっと歌ってきた「Buster call」はまるで走馬灯のようにこの15年間が蘇るけれど、それだけじゃなく、これからの未来を見せてくれるのがフォーリミだ。いつだって彼らが見据えているのは先のこと。勿論全部持っていく。歴史があって、積み重なって、その上で既成概念にとらわれないで新し色を塗っていく。それはフォーリミが「Buster call」で歌ってきたことだ。この曲を聴くときにはいつだって思い出がよぎるけれど、それ以上にこれからを予感させるフォーリミが誇らしくて仕方ない。「discord」なんて既成概念をぶっ壊して作った賜物だと思う。「夕凪」じゃないけれど、進行方向を見失ったって何度でも軌道修正すればいい。回り道だと思っても、ひとつの山を登ってフォーリミはここまできたんだから。
11月12日(日)@日本武道館 photo by  ヤマダマサヒロ

11月12日(日)@日本武道館 photo by ヤマダマサヒロ

「バンドは人に幸せを与える職業」だってこれまでのライブでもGENは何度も口にしてきたけれど、続けて「どんな仕事も人に幸せを与える職業だ」と語っていた。日本武道館に集まった人たちが普段どんな生活をしていて、どんな仕事をしているか知ることは出来ないけど、ひとりひとりの人生があって、今この瞬間、04 Limited Sazabysという共通点をもってその人生が交わっている。この数年、「hello」を一緒に歌えなかった時期があったでしょ。それでもあの瞬間はみんなの声が聴こえていた。それはコロナ禍のライブハウスで起きた奇跡の魔法だとずっと思いながらこの数年を過ごしていた。そしてコロナが明け、みんなで歌った「hello」。あの瞬間だけはいつも永久に永久に感じる。みんなの歌声はきっと、フォーリミの4人を幸せにしている。そうやって寄り添って歩いていく。7年前の武道館で謳う為に書いたという「eureka」を7年経って同じ場所で聴きながら、まだ見ぬ未来へと続く道を、みんなで一緒に進んでいきたいと心から思った。

不安がないといったら嘘になるけれど、日々は確実に色付き始めていて、音楽が、フォーリミが、僕らの人生を豊かなものにしてくれる。「Harvest」を共有することで安心も感動もこれからきっとありふれるように降り注いでくる。くしゃくしゃになった地図を広げて、何度も立ち上がって、前に進む。不安なんて「Squall」が流してくれた。こんな時代だけど、そんな時代にフォーリミがいることで僕らの時代は変われる。進める。アンコール1曲目で歌った「Feel」はまだまだ続く夢の先を期待させるものであったし、そんなフォーリミだから一生かけて共に歩いていきたいと思えるのだと思う。この日最後に演奏されたのがフォーリミからのラブレターのような「Give me」だったこと。これがフォーリミを愛したくなる秘訣なのかもしれない。15周年を記念した日本武道館2DAYSで改めて気付かされたのは、結局ずっと君たちが好きだってこと。あと、バンドが最高ってこと。

photo by ヤオタケシ、ヤマダマサヒロ
text by 柴山順次(2YOU MAGAZINE)
11月12日(日)@日本武道館 photo by  ヤオタケシ

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【セットリスト】
■11月11日(土)
01.monolith
02.knife
03.Finder
04.escape
05.days
06.climb
07.in out
08.Chicken race
09.Milestone
10.Grasshopper
11.kiki
12.Alien
13.Re-fiction
14.Re-Squall
15.Re-swim
16.Standing here
17.Now here, No where
18.Warp
19.midnight cruising
20.Lost my way
21.Night on
22.imaginary
23.milk
24.soup
25.eureka
26.Horizon
27.Just
en1.Terminal
en2.swim

■11月12日(日)
01.Keep going
02.message
03.fiction
04.fade
05.Every
06.My HERO
07.Brain sugar
08.Kitchen
09.Jumper
10.Galapagos
11.Galapagos II
12.nem...
13.Re-monolith
14.Re-midnight cruising
15.Re-swim
16.Buster call
17.discord
18.夕凪
19.mahoroba
20.labyrinth
21.Cycle
22.medley
23.Honey
24.hello
25.eureka
26.Harvest
27.Squall
en1.Feel
en2.Give me

◎セトリプレイリスト
DAY1:https://04ls.lnk.to/BOL1
DAY2:https://04ls.lnk.to/BOL2
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