L→R 松尾レミ(Vo&Gu)、亀本寛貴(Gu)

L→R 松尾レミ(Vo&Gu)、亀本寛貴(Gu)

【GLIM SPANKY インタビュー】
“Goldmine”は生きている限り
尽きることがなく、みんなの中にある

歌の情報量を今まで以上に上げて
ちゃんとソウルが見える歌い方に

レミさんって愛にあふれた、愛情豊かな方だと思うんですけど、今作で“愛”とか“恋”という言葉を使っている曲を聴くと、愛に対する猜疑心みたいなものも見え隠れしていて。「Glitter Illusion」「Odd Dancer」「愛の元へ」とか、

松尾
あー! 「Glitter Illusion」は特にそうですね。結構内なる毒というか、ちょっと信じていない心というか、そういうのは書きました。その“何が正解で、何が間違っているか分からない時代”っていうのは「シグナルはいらない」(2022年8月発表のアルバム『Into The Time Hole』収録曲)を書いた時から思っていて、精神的なものがまだ歌詞に表れていますね。愛情もそうですし、物事もそうですけど、その中で何を正解にしていくかっていうのは答えがない。「Glitter Illusion」で書いたことは、他人から受け取る愛だとかラッキーなものが降って湧いてくることを待っていたり、求めていたり、期待していたりするかもしれないけど、その期待していたものが本当か嘘か分からないから、セルフで自分を抱きしめて、自ら光っていこうっていう。それは日常でも思っていて。しんどかったり、嫌なことがあったりした時、ネイルの色をキラキラにしただけでいい気分になるし、お気に入りのレコードをかけただけで“いい時間だな”とふと思える。それは自らを癒してあげているから…そうしていかないとしんどく思うことがたくさんあったから、それも歌詞に落とし込んでいますね。今の時代だから歌いたかったことです。

つい先日、Instagramに上げてらっしゃいましたよね? “気分が乗らない時でもラメ乗せて自ら光らせていこ〜”って。

松尾
実はあれ、「Glitter Illusion」の映像を撮っていた時なんです。だから、匂わせ(笑)。

このタイミングのMVをタイトル曲ではなく、「Glitter Illusion」にした理由というのは?

亀本
どの曲が一番いいかと考えた時に、楽曲としても新鮮味があるしパンチもあるので、この曲がいいなと。サウンド感とか質感も今までとちょっと違うからインパクもあって、映像栄えもしそうなので。
松尾
本当に悩んだんですけど、私はギリギリまで「The Goldmine」派だったので。でも、意外性を持たせたかったのと、新しい反応が欲しいっていうのがすごく大きくて。

この曲はいわゆるギターソロもなくて、リフだけでメロディーをつないでいて、そういうところも新鮮でした。

亀本
そうですね。全体的に洗練された感じになっていますし、ギターソロがなくても問題がなかったというか。なくても印象が強い曲になっていると思います。

その潔さみたいな部分って、ほとんどの曲のアウトロを簡潔に終わらせているところにも表れていませんか?

亀本
そこら辺はライヴを考えてやっている気がします。例えば「ラストシーン」や「Innocent Eyes」とかは曲のテンションをどうやって持っていくかっていうところで、最後に美味しいところで“ギター登場!”みたいな盛り上がりが欲しい時は、後奏を長く入れたりとか。そうじゃないもの、最後のサビでガーッ!といけた曲とかに関しては、パッと閉じたほうがその印象が生きる。それは曲ごとに判断しているというよりは、全体の流れを見た時に“最後をどう聴かせるか?”って考えているだけで。僕ら的にはアウトロのことよりもイントロを短くしていることのほうが意図的ですね。

イントロから歌にいくタイミング、どの曲も絶妙に感じました。

亀本
そこを簡潔するのは、今回は確実に必要だと思っていたので。そこのスピード感…どれだけ早く歌にいけるかっていうのがすごく重要なので。今回の楽曲のギターリフとかは“メロディアスに広く”というよりは、わりとシンプルだったり、システマチックな動きをしていて、そんなに熱量を高めすぎない。熱量をガーッ!と上げるというよりは、最初のリズムのとっかかりとか、楽曲の最初のとっかかりになるようなテンション感で上がりすぎずに上に行くみたいな。“何かが起きるんだろうな”と思わせていく手法をとっています。ギタリストやアレンジャーにとってイントロをどうするかは重要なポイントなんですけど、そこの作り方は“短い尺の中で勝負していかに早く歌にいくか?”っていう方法論に変わりました。

語弊があるかもしれないですけど、今作はより“歌のアルバム”になっているというか。しっかり歌を聴かせる、届けるためのメロディー、音作り、アレンジ、その完成形を最良のかたちで聴けるのが、今回の一曲一曲と言いますか。

亀本
そうですね。
松尾
歌い方もより感情が見えるように心がけました。特に「Innocent Eyes」のBメロは、かなり感情が見えやすい表現をしたりとか。「Glitter Illusion」もそうですが、歌の情報量を今まで以上に上げて、ちゃんとソウルが見える歌い方に…そういう挑戦をしています。特に「Innocent Eyes」はかなりピュアな歌詞なんですけど、自分的には1stアルバム(2015年7月発表の『SUNRISE JOURNEY』)の最後の「リアル鬼ごっこ」に感覚が似ていて。思いっきり開けているんですけど、今回も不器用にしか生きられない私たちのテーマソングみたいなのが最後にあって、ここに来て初心に返るような感覚が自分の中にもありますね。

流れとして面白かったのが、「ラストシーン」を「光の車輪」〜「Summer Letter」で挟んでいるというところで。

松尾
「光の車輪」と「Summer Letter」をつなげたくなかったんです。この2曲は歌詞のテーマとか気分が同じだったことと、あえて同じ言葉を使っている部分があるし、歳をとったらどうなるのかというのを違う視点で書いている曲でもあって。だから、そこは離して、“もしかしたらどちらかの曲の主人公が未来で歌っている曲かもしれない”という想像が膨らませられるようにして。「光の車輪」はこのアルバムの中でもやさしく寄り添ってくれる曲になっていると思っています。

「Summer Letter」はレミさんが好きな要素がたくさん入っていますよね。シタール系の音色が出てきたり。ただ、サウンドも言葉も、もしかしたらもっとディープにもできたのかなとも感じて。

松尾
まさにそうなんです!でも、それが“全曲主役級にしたい”という想いの表れで。しかも、この曲は変則チューニングだし、もっとアシッドフォークっぽい感じにもできるんですよ。歌詞ももうちょっとサイケデリックにゆるくも書けるけど、あえて…特にサビは誰もが分かる言葉を使っていて。いい意味でポップに仕上げることで、この曲をただのアルバム曲にしない…その意味はそこにあると思っていて。要素としてマニアックな部分が入っている曲だからこそ、しっかり伝わる部分を鮮明に作りました。

トータルで40分弱なのに、これだけ緩急と剛柔がある。それも過不足なく表現されているというのは素晴らしいなと。

亀本
そのバランスは考えながら作りました。少ない時間にいかに凝縮するかって。そして、その中で自分たちのスタンスをしっかりと伝えるという。

そんなアルバムを引っ提げてのツアーも今回はがっつり回りますね。

松尾
ゼロからのスタートな気がしていて。2019年に33公演やって、そこで積み上げたものがコロナで全部なくなったので、初心に返って全国回れるところは回って、再び仲間を増やしていく…そういうツアーになればいいなと思っています。
亀本
ディテールを突き詰める部分もあるんですけど、アルバムをトータルで聴いた時にはシンプルにでかくドン!と鳴っているものにすることは、ライヴを想定してのことなので、どの曲もライヴで力が発揮できると思っています。

取材:竹内美保

アルバム『The Goldmine』2023年11月15日発売 Virgin Music
    • 【初回限定盤】(CD+DVD)
    • TYCT-69288
    • ¥5,280(税込)
    • 【通常盤】(CD)
    • TYCT-60219
    • ¥3,080(税込)

ライヴ情報

『7th Album『The Goldmine』Release Tour「The Goldmine Tour 2024」』
“The Goldmine Release Party”
11/30(木) 東京・恵比寿LIQUIDROOM

『7th Album『The Goldmine』Release Tour「The Goldmine Tour 2024」』
1/20(土) 神奈川・横浜ベイホール
1/27(土) 高知・X-pt.
1/28(日) 愛媛・松山サロンキティ
1/30(火) 香川・高松DIME
2/01(木) 滋賀・滋賀U☆STONE
2/03(土) 鹿児島・CAPARVO HALL
2/04(日) 熊本・熊本B.9 V1
2/06(火) 静岡・浜松窓枠
2/09(金) 千葉・柏PALOOZA
2/10(土) 福島・郡山HIPSHOT JAPAN
2/15(木) 鳥取・米子AZTiC laughs
2/17(土) 岡山・YEBISU YA PRO
2/18(日) 広島・広島CLUB QUATTRO
2/20(火) 京都・磔磔
2/24(土) 新潟・NIIGATA LOTS
2/25(日) 石川・金沢EIGHT HALL
3/01(金) 北海道・札幌PENNY LANE24
3/03(日) 宮城・仙台Rensa
3/08(金) 福岡・DRUM LOGOS
3/10(日) 愛知・名古屋市公会堂 大ホール
3/20(水) 大阪・NHK大阪ホール
3/24(日) 東京・日比谷野外大音楽堂
3/30(土) 長野・長野市芸術館 メインホール

GLIM SPANKY プロフィール

グリム・スパンキー:⾧野県出身の男女二人組ロックユニット。ハスキーでオンリーワンな松尾レミの歌声と、ブルージーで情感深く鳴らす亀本寛貴のギターが特徴。特に60~70 年代の音楽やファッション、アート等のカルチャーに影響を受けており、それらをルーツに持ちながら唯一無二なサウンドを鳴らしている。2007 年結成、14 年メジャーデビュー。18 年に日本武道館ワンマンライヴを成功させ、同年開催の『FUJI ROCK FESTIVAL』GREEN STAGEに出演。ドラマや映画、アニメなどの主題歌を多数手掛けている。最近ではももいろクローバーZ や上白石萌音、DISH//、野宮真貴、バーチャル・シンガーの花譜など、幅広いジャンルで他アーティストへの楽曲提供も行なっている。GLIM SPANKY オフィシャルHP

「Glitter Illusion」MV

「怒りをくれよ
(jon-YAKITORY Remix)」Lyric Video

「Odd Dancer」Lyric Video

「ラストシーン」Lyric Video

「不幸アレ」(Visualizer)

7th Album 『The Goldmine』
全曲試聴映像

『The Goldmine』初回限定盤DVD
「Into The Time Hole Tour 2022」
@昭和女子大学 人見記念講堂
(2022.12.21)

OKMusic編集部

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