富士山、晴天、流星群もが開催20回目
を祝福! 音楽と大自然に魅せられた
『朝霧JAM'23』を振り返る

『~It’ s a beautiful day~ Camp in ASAGIRI JAM’ 23』(以下、朝霧JAM)が、10月21日、22日に静岡県富士宮市の朝霧アリーナ・ふもとっぱらで開催されました。開催20回目を迎えた今回は、国内外から総勢28組のアーティストが富士山麓に集結。記念すべき節目をジャンルレスな音楽で大いに祝い、盛り上げました。また両日とも天候に恵まれ、昼間は美しい富士山を、夜には流星群までもが出現! そんな音楽と大自然に魅せられた2泊3日の『朝霧JAM』を振り返ります。

■開催20回目を迎えた『朝霧JAM』
2001年、地元の人々と有志のボランティア団体・朝霧JAMS'と、『FUJI ROCK FESTIVAL』(以下、フジロック)を主催するスマッシュがタッグを組んでスタートした『朝霧JAM』。これまで国内外の錚々たるアーティストが出演してきた歴史のあるキャンプ・イン・フェスですが、その黎明期はメインステージとキャンプサイトの奥地にDJセットというシンプルなものでした。キャンプも場内サイトのみで、自炊をしながら時にはライブも観ずに仲間とお酒を飲んで語らうのが主流でしたが、この20数年の間にオートキャンプ場“ふもとっぱら”の起用をはじめ、KIDS LANDやドッグランなどが設置され、ファミリー層やペットとの来場をサポートするなど多岐にわたり進化しています。
2019年は台風の影響で中止、2020年、2021年はコロナ禍により開催されず、2022年に復活。20回目を迎えた今回の朝霧アリーナ場内には、RAINBOW STAGE、MOONSHINE STAGE、CARNIVAL STAR、朝霧ランド&KIDS LAND、インフォメーションエリア、そしてCAMP SITE A、CAMP SITE Bが配備され、地域密着の温かみは残しながらも規模的には大きく、独自路線を走る野外フェス。そんな『朝霧JAM』をぐるりと歩いてきました。

■『朝霧JAM』の絶景
撮影=宇宙大使☆スター
『朝霧JAM』の魅力は多々ありますが、その核は“音楽”と“ロケーション”。まずはその絶景を拝むため、RAINBOW STAGEへ続く道近くの、小高い丘にあるPhoto Spot「宇宙大使マザーシップ」へ向かいました。
天気がよければフェスサイトの大部分で富士山を臨むことができますが、中でも正面にそびえ立つ富士山とRAINBOW STAGEエリアを一望できる宇宙大使マザーシップは紛うことなき『朝霧JAM』のベストポジションです。入場したら真っ先にここに来て、『朝霧JAM』を象徴するフォトジェニックな景色を眺め、RAINBOW STAGEから大自然に流れ出る音の波を感じながら澄んだ空気を思いっきり吸い込んで、『朝霧JAM』に来たことを全身で実感する。これが大きな楽しみであり、いつしか自分の流儀になりました。さらに今回は、それまで雲がかかっていた富士山が少し顔を覗かせてもくれたので、思わず“ただいま!”と叫びたくなりました。
そんな宇宙大使マザーシップでは、宇宙大使ファミリーが富士山とフェスサイトを背景にしたベストショットを撮るお手伝いをされていました。一人参加や小さな子ども連れだと諦めがちな記念写真も、ホスピタリティ溢れる『朝霧JAM』なら気軽に手に入れられます。
撮影=Taio Konishi

■まずは腹ごしらえ! 地産地消を謳う“朝霧JAMグルメ”を満喫
撮影=早乙女 ‘dorami’ ゆうこ
キーワードに掲げられた“地産地消”のとおり、地元の食材を使った自慢のフェス飯が出店されていました。朝霧高原シチュー、富士宮やきそば、激辛ガパオ、地鶏の唐揚げ、ぐるぐるウインナーなど、食べたものはすべておいしかったのですが、“今年の優勝フードは?”と問われるならば朝霧食堂の「ミルク味噌ラーメン」が答えです。知り合いに薦められ、食べてみたら大ヒット! このメニューの開発者に話を訊くことができました。
撮影=トゥッティーニ
ミルク味噌ラーメンは“地元の牛乳を推したい”というテーマの下で開発が進められた一品で、最初はラーメンではなく“ミルクうどん”として試行錯誤が繰り返されたそう。ミルクに味噌を足すことでコクと味変を楽しめるようにし、トッピングも多数用意してカスタマイズできるようにしたほか、“折角だから富士宮名物のやきそば麺を使ってみよう”ということになり、うどんからラーメンに変更されて完成したそうです。肌寒くなった夕暮れ時に食べたのも相まってか、優しい味わいが胃袋に染みて、体もじんわり温まりました。同じような考えの人が多かったのかトッピング全部のせは早々に売り切れるほどの人気ぶりでした。

■個性派揃いの店が並ぶ「マーケット」でライブの合間にショッピング
撮影=宇宙大使☆スター
MOONSHINE STAGEエリアでは、ライブの合間にショッピングができるマーケットがあり、富士山をあしらった帽子やバッグ、小物などを扱うハンドメイドのお店や、防寒にも使えるおしゃれなウール素材の服を販売するお店などが軒を連ねていました。ワークショップも充実していて、ぬいぐるみ作りに夢中になる人が多く見られました。気軽に話せる店員さんやスタッフとのコミュニケーションも『朝霧JAM』の魅力のひとつです。
撮影=宇宙大使☆スター

■富士宮市が街の魅力をアピール! 「朝霧高原の牛乳」が大人気
撮影=宇宙大使☆スター
「朝霧ランド」では、富士宮市役所と子育て支援NPO・母力向上委員会が子連れ来場者を手厚くサポート。街の魅力をアピールする輪投げゲームや、本門寺重須孝行太鼓保存会による「太鼓ワークショップ」にはたくさんの子どもたちが参加していました。
撮影=Daiki Miura
撮影=Daiki Miura

「朝霧高原の牛乳を飲もうキャンペーン」では無料で牛乳を配布。整理券は早々に終了していたので、お店で購入しておいしくいただきました。その際、“寒いときに飲むホットミルク、最高!”と語る子どもの言葉を耳にしたのですが、それは大人が『フジロック』で言うところの“暑いときに飲むビール、最高!”の同義語だなと思えて“その気持ちわかるよ”と深く頷いたのでした。
撮影=宇宙大使☆スター

■「KIDS LAND」で解放される子どもたち。ザ・ワースレスも出演
ザ・ワースレス(THE WORTHLESS)撮影=Taio Konishi
自然に触れ合いながら遊べる「KIDS LAND」。森では秘密基地づくり、広場では焚き火、大縄とびなどの外遊びをはじめ、親子で楽しめるワークショップも多数なので、連日多くの子どもとその保護者で大賑わいでした。また、台風で中止となった2019年に出演予定だったザ・ワースレス(THE WORTHLESS)が4年越しで出演。これは地元の保育士が発案し、ボランティア団体の朝霧JAMS'が主体となってアーティストを招聘した初のケースだそうです。

ザ・ワースレス(THE WORTHLESS)撮影=Taio Konishi

■気になる牛キャラ、『朝霧JAM』20th anniversaryアンバサダー「みるを」

“20回目の『朝霧JAM』を祝い、来場者に感謝を伝えよう”というスタッフの思いから生まれた『朝霧JAM』20th anniversaryアンバサダーの「みるを」。今夏の『フジロック』で初お目見えして以降、その愛らしい牛キャラはフェスTシャツや、ワークショップ、ガチャ、のぼりなど、フェスサイトの至る所に登場し、和みの一端を担っていました。それから、KIDS LANDのワークショップでは“100人に配ろうと思って勝手に作りました。どうぞ”と、「光るみるをステッカー」をくださったスタッフさん。自分も楽しみながら来場者を楽しませようというその心意気が素敵ですし、モノもかわいいのでスマホケースに入れて持ち歩いています。
撮影=Daiki Miura撮影=宇宙大使☆スター

■キャンプサイト奥地に新登場した「サウナ・サンセット」
撮影=宇宙大使☆スター
キャンプサイト奥地の「Qサイト」に今回新登場したサウナエリア「サウナ・サンセット」では、富士山を眺めながらバレルサウナ、サウナカー、テントサウナの3種類を楽しめるとあって、予約がすぐ埋まる盛況ぶりだったとか。
撮影= 宇宙大使☆スター

ここからはキャンプ・イン・フェス『朝霧JAM』の2大テーマ“音楽”と“キャンプ”について振り返ります。まずはキャンプから!
■『朝霧JAM』でのキャンプ

撮影=宇宙大使☆スター

キャンプ・イン・フェス『朝霧JAM』では、朝霧アリーナ場内、或いは、キャンプ場・ふもとっぱらのいずれかでキャンプをする人がほとんどです。どのスタイルにするかはチケット購入時に選びます。筆者の場合、独身時代はふもとっぱらが会場に含まれていなかったので、場内の炊事可能なキャンプサイトを好んでいましたが、ファミリーで参加するようになってからは荷物を運ばないで済むオートキャンプができるふもとっぱら一択です。コロナ禍で巻き起こったキャンプブーム以降、さらに予約が取りにくくなってしまったキャンパーの聖地でキャンプを楽しみながら『朝霧JAM』を満喫しています。

ふもとっぱらに出現するピーターパンカフェ 撮影=Daiki Miura

撮影=Daiki Miura

★シャトルバスの車窓から臨む富士山とRAINBOW STAGEの全景
撮影=宇宙大使☆スター
ふもとっぱらからフェスサイトの朝霧アリーナまでは、シャトルバスで約10分。途中の長い坂道で富士山が見えてきます。ほどなくカラフルな巨大デコレーションとテント群が視界に飛び込んでくると静かだった車内が一変。“着いた~!”“あれがステージだね”“こっちでもキャンプできるの?”などの熱を帯びた声が飛び交い、フェス感が急上昇しました。このバスルートでは到着直前に『朝霧JAM』のメインステージであるRAINBOW STAGEを後方からぐるりと見渡せるので、“ここでどんな音楽に巡り会えるだろう? どんな景色が観られるだろう?”と想像し、一気に胸が高鳴るこのわずか1、2分が至福のひとときです。

★土星、オリオン座流星群も観られた「星空観察」
撮影=宇宙大使☆スター
1日目の夜、望遠鏡でおなじみのVixenによる「星空観察」が場内とふもとっぱらの2ヵ所で行われ、そのうちのふもとっぱらでの観察に参加しました。しかし観察場所が分からず困惑していると、同じ目的でやってきたオフィシャルカメラマンの知人と遭遇。その人が場所を探してくれたおかげで辿りつくことができました。
Vixenの望遠鏡を使い、説明を受けながら土星やオリオン星団を観察。土星の輪っかもしっかり観ることができて大はしゃぎの子どもたち。頑張って遅くまで起きていた甲斐がありました。この日はオリオン座流星群のピークを迎えるという好機にも恵まれ、満点の星が輝く美しい夜空に流れる星を肉眼で観ることができました。これには大人も大興奮! 筆者は3つの流星を、子は8つの流星を観測しました。

★寒さで目が覚めた夜ふけ
星空観察後の夜、予想以上に冷え込んだせいで何度も起きるはめに。前年の『朝霧JAM』では何の問題もなく使用できたマイナス3度対応の寝袋ではまったく歯が立たない厳しい寒さで、最後はヒートテックの上からベンチコートを着て寝袋に入り、どうにか就寝できました。例年よりも2週間遅れでの開催となった今回はその気温差を痛感しましたし、寝不足で翌朝の日の出も見逃しました。月曜の朝には富士山越しに輝く日の出を観ることができたのはラッキーでしたが、次回も同様の日程での開催となるならば持参するギアの見直しが必要です。
富士山に昇る日の出 撮影=Taio Konishi
■『朝霧JAM』の音楽
『朝霧JAM'23』の2日間では、国内外あわせて28組のアーティストが出演。台風で中止となった2019年に出演予定だったバッドバッドノットグッド(BADBADNOTGOOD)、OGRE YOU ASSHOLE、折坂悠太、くるりの4組も含まれ、4年越しに約束が果たされました。
バッドバッドノットグッド(BADBADNOTGOOD) 撮影=Taio Konishi
OGRE YOU ASSHOLE 撮影=Daiki Miura
折坂悠太 撮影=Taio Konishi
くるり 撮影=Taio Konishi
2つのステージ、RAINBOW STAGE、MOONSHINE STAGEに加え、CARNIVAL STARが4年ぶりに復活。場所は変わりましたが怪しい雰囲気は残されたまま。いい感じです。
RAINBOW STAGE 撮影=宇宙大使☆スター
MOONSHINE STAGE 撮影=宇宙大使☆スター
CARNIVAL STAR 撮影=早乙女 ‘dorami’ ゆうこ

チェット・フェイカー(CHET FAKER) 撮影=Taio Konishi
DJネイチャー(DJ NATURE) 撮影=Taio Konishi
チェット・フェイカー(CHET FAKER)、バッドバッドノットグッド、DJネイチャー(DJ NATURE)などの見逃しもあり、すべてのステージを観ることは今回もいませんでしたが、とりわけ心地好かったのは1日目のフェスサイト到着時に聴いたハウディ(HOVVDY)、風に乗って聴こえてきた冥丁、マジカルなにおいがしたtoe with 原田郁子clammbon)皆川真人、2日目朝のラジオ体操後に覚醒させられた本門寺重須孝行太鼓保存会による和太鼓の響き、最も観たかったオムスビ(OMSB)の熱く鋭い叫び、そしてキティー・デイジー&ルイス(KITTY, DAISY & LEWIS)がラストに放ったキャンド・ヒート(Canned Heat)の鉄板カバーなど、聴きどころ、見どころ、踊りどころがたっぷりな『朝霧JAM'23』でした。
キティー・デイジー&ルイス(KITTY, DAISY & LEWIS) 撮影=Taio Konishi
ハウディ(HOVVDY) 撮影=Taio Konishi
冥丁 撮影=Daiki Miura
toe with 原田郁子(clammbon)皆川真人 撮影=Taio Konishi
本門寺重須孝行太鼓保存会 撮影=Taio Konishi
なお、我が家の8歳はNight Tempoがぶっちぎりだったそうで、「残酷な天使のテーゼ」での幕開けから絶対知らないはずの昭和歌謡まで“楽し~!”と言いながらぴょんぴょんと飛び跳ねていました。
Night Tempo 撮影=Taio Konishi

20回目の『朝霧JAM』では、のんびりと犬を連れて歩く人やファミリーの姿も多くあり、これまでと同じく、ゆったりとした時が流れていました。音楽と自然の力を借り、長い時間をかけて、子どもも大人もより自由になれる独特な音楽空間が築き上げられてきたことに感謝し、過去の『朝霧JAM』で観た数々の名シーンや家族や仲間と過ごしたかけがえのない時間に思いを巡らせることもできました。
標高900mの朝霧高原では、秋の深まりがひとあし早く感じられることに加えて、今回はこれまでよりも開催時期が2週間遅くなったことで夜の冷え込みは予想以上に厳しいものでした。1日目は夕陽が落ちると一気に寒くなり、RAINBOW STAGE後方にある大きな焚き火には暖を取ろうとする人だかりができていたほど。2日目は前夜の教訓を活かしてフル装備で臨んだからか、最後まで寒さをほとんど感じずに過ごせましたが、初日は風もあったのでかなりこたえました。
撮影=宇宙大使☆スター
また、運動会などの学校行事や翌日の通勤通学のために参加を断念したり、日曜に切り上げるなどでゆっくり過ごせなかった人も少なくなかったため、次回は連休開催に戻ることを期待する声も多いようです。自身のキャンプ装備も整えつつ、21回目の『朝霧JAM』開催を楽しみに待ちましょう。
文=早乙女 ‘dorami’ ゆうこ
撮影=宇宙大使☆スター
撮影=宇宙大使☆スター

撮影=宇宙大使☆スター
撮影=Taio Konishi
撮影=宇宙大使☆スター

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