劇団☆新感線主宰・演出いのうえひで
のり『いのうえ歌舞伎』を語るーー最
新作『天號星』記者会見には古田新太
・早乙女太一・久保史緒里も出席

2023年劇団☆新感線43周年興行・秋公演 いのうえ歌舞伎『天號星』が、9月14日(木)からの東京公演を皮切りにして、大阪公演は11月1日(水)~20日(月)までCOOL JAPAN PARK OSAKA WWホールで上演される。本作は、世の為、人の為、生きていてはならない輩に引導を渡す引導屋が、ひょんな事から冷酷無比なはぐれ殺し屋と中身が入れ替わってしまう奇想天外チャンバラ時代劇。大阪市内で記者会見が開かれて、引導屋の藤壺屋半兵衛を演じる古田新太、はぐれ殺し屋の宵闇銀次を演じる早乙女太一、主演舞台や大河ドラマ出演など演技派として注目される乃木坂46の久保史緒里、劇団☆新感線の主宰・演出を務めるいのうえひでのりが出席した。記者会見後には、いのうえの単独インタビューも敢行。今や劇団の代名詞にもなった『いのうえ歌舞伎』について掘り下げながら、新感線の魅力について聴いている。
右からいのうえひでのり、古田新太、早乙女太一、久保史緒里
記者会見でいのうえは、芝居内容について「新感線にしてはちゃんとした時代劇で、池波正太郎テイストです。池波ファンの(出演者の)池田成志君に限っては、「池波と言うなー!」と怒ってましたけど(笑)。まぁ、入れ替わりがミソっちゃミソだし、チャンバラが見せ所になる。久しぶりにスカッとする芝居になればと!」と説明。
古田新太
古田も「おいらも池波ファンですが、(今作は)全然池波じゃない! テレビの『必殺シリーズ』のオマージュですよ(笑)」と笑う。早乙女は「新感線は7回目になりますが、今回は古田さんがおられるので尚更嬉しいです。僕たち兄弟は新感線で殺陣に興味を持ったので、新感線は夢の場所です」と語った。
久保史緒里
新感線初出演となる久保は「初めてで緊張しています。自分が新感線にいるのが想像つかないですが、ひたすら頑張るのみです。色々な方から「体力勝負になるよ」と言われましたし、共演者の方々と距離を縮めたいです」と初々しく話す。それに対して、古田は「まだ稽古場で同じシーンはないけど、一緒に呑みに行けば良い! おいらは父親役なので、おとっつぁんと呼んだら良い!」とエールを送った。
早乙女太一
また、古田は「元々チャンバラのオタクで子供の頃からテレビを観ては真似していた。もっとも愛するチャンバリストは近衛十四郎さん。後、若山富三郎さんも好きですね」とチャンバラへの熱い思いも明かす。最後に早乙女は「新感線は公演が始まってからも(内容が)変わるので、大阪には温まった状態で来れると思います!」と抱負を述べた。
いのうえひでのり
ーーいのうえ歌舞伎は今や舞台の世界では有名なジャンルとして認知されていますが、いつどのように生まれたものなのでしょうか?
これは(座付き作家)中島かずきさんが付けたんですよ。それまではネタモノやロックコント芝居をやっていたんですが、1986年頃に時代劇みたいなものをやってみませんかとなり、ファンタジーな忍者モノの時代劇をやろうとなって、『星の忍者-THE STRANGE STAR CHILD-』(1986年2月公演)にINOUE KABUKIと付けましたね。その名前から僕は歌舞伎を意識しだして。キメキメだったり、わかりやすい展開もあるので、歌舞伎に近いよねと。見得を切ったりしてね。でも、そんなのは後付けで、最初はハッタリでしたよ。今は何でもかんでも色んな『~~歌舞伎』が出て来ますけど、その先駆けになってるかもしれませんね。むしろ、「いのうえ歌舞伎」と、そう付けた後に、より歌舞伎を意識して近づいていこうとしていた。当時の市川染五郎さん、現松本幸四郎さんが最初『髑髏城の七人』(1997年9月~11月公演)を「いのうえ歌舞伎って何?!」と観に来てくれて、「これは現代の歌舞伎ですよ!」と言ってくれたんです。ある意味、『髑髏城の七人』がエポックだったし、あれでいのうえ歌舞伎の形が完成した。その後、結果的にですが、十年後「歌舞伎NEXT​」といって、新感線の芝居を本当に歌舞伎役者が演じるという、逆輸入みたいな事も出来ましたね。歌舞伎役者の方々は本当にポテンシャルが高いし、「新感線の台本でも、俺らがやると歌舞伎になるから一緒にやろうよ!」と中村勘三郎さんは言ってくれて。亡くなられたので実現は出来なかったですけど……。でも、歌舞伎と宝塚は良い意味で何でもやっちゃう感じがある。このあいだ『刀剣乱舞』を尾上松也君が新作歌舞伎としてやっていましたけど、やっぱり歌舞伎になっていましたから。僕らもスーパー歌舞伎を観たのが、ケレン味ある芝居をやるキッカケになっていますし。スーパー歌舞伎と角川映画の『南総里見八犬伝』は刺激になっています。
ーー今や新感線自体がお手本にもなってきていると思います。
色々な人が新感線っぽい何かを取り入れて、新しい事をやっているんじゃないですかね? 色々なお芝居を観ると新感線っぽいなと思う事もありますけど、俺らも先輩たちの芝居を観て勉強しているところがありますから。『NINAGAWA・マクベス』からも影響を受けたりしています。蜷川幸雄さんも構図をしっかり作られる先生だったので。
いのうえひでのり
ーー新感線と早乙女兄弟という大衆演劇の化学反応や融合も楽しみにしています。
あのふたりは、まず若者なんですよ。最初は16、7歳でしたから。尖がっているので、どうなっていくんだろうと思ったし、その生意気が可愛かったですね。彼らが変わっていくのを見ると、親戚のおじさんじゃないけど感慨深い。なので、大衆演劇どうのこうのよりも、若者と芝居をする事が無かったので、そっちが新鮮でしたね。初めて観るタイプでしたし。ただ芝居は凄いですよ。一度段取りを通すと早いですし、そういう鍛えられ方をしてるので、そこはビックリしました。歌舞伎の人も一度段取りを通すと早いんです。新感線は型から作るので、そこはやりやすいんじゃないですかね。(早乙女兄弟の)ふたりは新感線のDVDを買って、色々と観て、チャンバラの稽古とかしていたんじゃないですかね。ウチに来た時は完成していましたから。立ち回りは日舞に近いんですよ。腰の柔らかさが大事であったり。後は個人的なセンスだと思います。運動神経は良いけど、殺陣が上手くない人もいますしね。殺陣のセンスが条件というか、まぁ役者の華に近いものなのかなと。古田も殺陣を習いに行ったわけじゃないのに決まるみたいなね。(早乙女)友貴も「古田さん、カッコ良いですよね」と言ってましたし、アクションクラブのみんなも「古田さんは、ああいう魅せ方が出来る」と一目置いてます。魅入っちゃうんですよね。もちろん往年のスピードやキレは無いですけど、若山先生も60歳過ぎてもビュンビュン映画の中で(刀を)振っていましたから古田君に頑張ってほしいです。舞台は短距離走のように見えて、実は長距離走なので、そこで古田がどう殺陣を魅せていくか、僕らも楽しみです。古田対早乙女兄弟、それありきで生まれた企画なので、どうやって3人を組み合わせていくかですね。
ーー客演常連であり、いのうえさんや古田さんたちと同世代の池田成志さんが出演されるのも楽しみです。このあいだ『薔薇とサムライ2--海賊女王の帰還-』に客演された生瀬勝久さんもそうですが、この世代の小劇場出身の役者の方々は未だに元気で体が凄い動きますし、本当に声も大きくて、よく劇場に声が通るのが素晴らしいなと思います。
成志も60歳を超えましたね。変なおもしろセンスは変わりませんし、(自分の芝居の)スタイルも昔からありましたよね。生瀬さんもそうですが、昔は大きな声を出すのが基本でしたし、昔の小劇場は大声でベラベラ喋るみたいな感じでしたから。
いのうえひでのり
ーー後、新感線は43周年ですが、常に新しさを感じる劇団でおられ続けているのも唯一無二だと感じています。
しがみついていないからでしょうね。昔から好きな音楽とかはあっても、アップデートはしていますから。だから、そこまで古臭くならない。とはいえ、昭和ですから、その空気感はぬぐえないですけど。
ーーアップデートという意味では常に新しい役者さんが客演で入られるのもポイントだと思っていて、今回でいうと久保さんと山本千尋さんが初出演ですよね。
しーちゃん(久保)は大河ドラマで五徳姫というスパイみたいな難しい役を経ていけるなと感じたし​、ちーちゃん(山本)も一番最初に殺陣の稽古を見た時に大丈夫だと思いました。眼が良いですね、凄く動けますし、あれだけ動ける子は中々いないですから。
ーー毎回、どなたが初出演されるのかも本当にワクワクするんです。
出て欲しい人はいっぱいいますからね。
ーーそんな中でも古田さんはもちろんですが、劇団員のみなさんからも毎回目が離せないのですが、今回も出演される高田聖子さんが、前作『ミナト町純情オセロ〜月がとっても慕情篇〜』でのお芝居が凄く素晴らしすぎて、あの演技にはくぎ付けになってしまいました……。
あれは聖子の力を魅せる為の企画でもあったので、そういう意味では大成功だったんじゃないですかね。今、Blu-rayの編集中で観直していますが、鬼気迫るものがありますよね。
ーー劇団員のみなさん、常連客演のみなさん、初客演のみなさんで、ずっと新しい魅力を新感線は感じさせてくれるので、今作も今後も心から楽しみにしています。今日はありがとうございました。
取材・文=鈴木淳史 撮影=福家信哉

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