「これぞパノパナの日!」Panorama
Panama Townが見せつけた最新型のバ
ンドの姿

『Panorama Panama Town 「パノパナの日 2023」』2023.8.8(火)兵庫・MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
8月8日(火)、Panorama Panama Town(以下、パノパナ)が兵庫・MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎にて、自主企画イベント「パノパナの日」を開催した。「パノパナの日」とは8月8日を『パ(8)ノパ(8)ナの日』と題し、毎年その日限りの特別なイベントを行っているもので、今年で5回目の開催を迎える。これまで東京での開催のみだったが、今回はバンド結成の地・神戸、しかもバンドのホームである太陽と虎での開催とあって、会場には全国からたくさんのファンが駆け付けた。
ライブ前半は「新譜の部」として、7月にリリースしたばかりの2ndフルアルバム『Dance for Sorrow』から新曲を立て続けに披露。1曲目「Knock!!!」、浪越康平(Gt)のギターリフで心躍ったところで、タノアキヒコ(Ba)のリズムがぐぐっと感情を高めていく。急上昇というよりもじわじわと熱を高めていき、気づけば最高潮に気持ちよくなっていた感じ。しかもそこからさらに高みへと連れて行ってくれるものだから、1曲目から楽しくって仕方がない。続く「King’ s Eyes」、タイトに刻まれるリズムにご機嫌なバンドサウンドが観客を躍らせる。
「踊ろうぜ!」、ご機嫌レベルがさらに上がる「Bad Night」へ。ライトなリズムだけれど、タノが打ち出すグルーヴの輪郭がくっきりとしていることもあって、気持ちいいところを的確に突いてくる。パノパナ流のダンスロックが早くも絶好調すぎて、これから先のステージに期待が募る……。と、思ったけれどMCでは早くもホームならではの緩さが出てしまう。この日は年に一度のパノパナのお祭りということもあり、メンバーと観客とのやり取りも一層賑やかで、岩渕想太(Vo.Gt)は「実家へようこそ!」と思わず笑みがこぼれる。
「走り続けてるオレらの曲を聴いてください」と、ここからさらに最新型のパノパナを鳴らしまくる。アルバム『Dance for Sorrow』はバンドが打ち出すグルーヴを追求する流れから、80年代などの音楽の歴史をパノパナ流に咀嚼された音が詰め込まれている(詳しくはPanorama Panama Town、「ダンスロックってかっこいい!」2ndフルアルバム完成で辿り着いた在るべきカタチ | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス (eplus.jp))。「Run」では80年代に活躍したシンセポップバンド・a-haの「Take On Me」を連想させるポップなメロを。「Cranberry,1984」でも「1984年にいきましょう!」と、80年代を思わせるメロで観客を躍らせる。もちろんレトロだとか懐古的とかで終わらない、バンドが前を見据えている姿を感じられる音楽が鳴っている。
後半は「Strange Days」「Black Chocolate」と、さらに心地よいグルーヴに心躍らされる。岩渕のビタースイートな歌声もぐっと心に染みて、もっとおかわりを欲したところで「新譜の部」は終了。
ライブ中盤はメンバーのソロコーナーへ。まずは岩渕が弾き語りで「(今日は)多くの曲を聴くことになる。図鑑みたいになるかも。曲のなかに流れる時間を楽しんで」と、「SHINKAICHI」など、地元神戸で作り上げた楽曲を中心に披露していく。
バンド初期の楽曲、しかもそれを弾き語りで聴けるレアさに喜びつつも、聴けば聴くほどに、デビューからこれまでのバンドの進化を確かに感じ取れる。ステージを一心に見つめ、じっと立ち尽くして聴き入っている観客もにこやかな表情を見せている。特に印象的だったのが岩渕の歌声だ。「もっと歌いたい! もっと聴いてほしい」という、前のめり気味な強い気持ちが伝わってくる。
浪越のソロコーナーも同じく弾き語りだが、こちらは完全オリジナル曲。以前にこの日のイベントについてSNSで「趣味音楽やらせてもらいます」と記していた通り、彼の個性が光る3曲を披露してくれた。しかも楽曲ごとに曲の構成やリリックに込めた想いを丁寧に説明してくれるので、じっくりとその世界観に没入できるのもよかった。彼が描く音世界が今後の楽曲制作にどう活かされていくのか、楽しみで仕方がない。
ライブ後半は「レア曲パート」。バンド名を表記変更する以前、「パノラマパナマタウン」時代の楽曲を中心にセレクトしていくという。カタカナ時代のパノパナをPanorama Panama Townがパフォーマンスするとなると、楽曲のセレクトはもちろん、大胆なアレンジがあるのか、原曲のままなのか。どんなパフォーマンスで魅せてくれるのか期待が高まる。浪越がギターをさらりと奏でた途端にフロアから歓声が沸き起こる。1曲目は2016年に発表したインディーズ時代のミニアルバム『PROPOSE』から「Gaffe」をセレクト。強固なリズムで足元からがっつりと踊らせる、“とことん躍らせてやる”気概がビンビンに伝わってくる。
インディーズ時代の楽曲中心に攻めるかと思いきや、次曲はメジャーデビュー後の2019年に発表した「$UJI」。ドラムのカウントですぐさま反応するファンが素晴らしくって愛おしくて、ステージとフロアを見渡しながら思わずニヤついてしまう。緻密に作りこまれたパノパナ流のバンドサウンドも刺激的で、続く「クラリス」でもこれぞ!なダンスポップロックでフロアを揺さぶっていく。フロアで踊る観客らは楽曲が披露されるたびに顔を見合わせて喜び叫び、「最高やん!」「クラリスはヤバイ!! もう泣ける」と感動しきり。
観客の喜びの声に岩渕はニヤリとしつつ、「こっからは知らんのちゃうかな~」と、「Sick Boy」へと流れる。浪越のギターリフが鳴るだけで、答え合わせをするようにすぐさま全力で楽曲に反応! “レア曲”が聴けるのはもちろん、久しぶりに大声を出して「Sick Sick!」とコールができるとあって、観客はめいっぱいに大声を出して楽しんでいる。その後も「とりこまれる」「エンターテイネント」など、観客はどの曲も瞬時にハイテンションで応えていく。ファンは新旧様々な楽曲を一度に体感できて大喜びだけれど、メンバー自身は久しぶりの楽曲=練習が必要で。思わず「懐かしい!!」「(リリース)当時でもやってない!!(笑)」と突っ込みが出てしまうシーンも。
「せっかくなんで夏の曲を!」の言葉で、会場がまたもざわついたのは「HEAT ADDICTION~灼熱中毒~」。2019年に発表された比較的新しい楽曲だけれど、リズム運びやメロの展開は最新型のPanorama Panama Townとはまた少し違っていて、でもパノパナの音楽に込めた心意気はしっかりと踏襲されている。たった1日でこんなにもバンドの集大成を楽しめて、古参も新参のファンも大満足なセットリストに誰もが興奮を止められない。その想いはメンバーも同じで、「パノパナの日」に感謝の気持ちを伝えつつ、「良い曲多いなと思いました!」「(歌詞で)言っていることも変わっていない」と、改めてバンドの歴史を振り返る。
「レア曲パート」の後半は「やり尽くして帰って!」と「マジカルケミカル」からさらに熱量高いパフォーマンスを繰り出していく。アッパーな浪越のギタープレイ、タノのフレキシブルなリズムに煽られ、フロアの熱気がギュギュっと密になっていく。「GINGAKEI」「俺ism」と突っ走るギターサウンドに乗っかり、岩渕の矢継ぎ早に繰り出されるボーカルもますます勢いが増していく。
ラストは「MOMO」、この日一番の大きな歓声が沸き起こり、盛大なコールがフロア中に響き渡る。レア曲でこれだけ盛り上がるって……。もっと頻繁に演奏してもいいのではと思ってしまうが、最新作『Dance for Sorrow』でも分かるようにバンドの進化は止まらないので、演奏したい曲はわんさかと湧き上がっているのだろう。レア曲を惜しみなく演奏する彼らの姿は懐古的ではなく、ひたすらに前を向いているのが感じ取れる。
アンコールでは「これぞパノパナの日」と振り返りつつ、「曲を超えて(バンドが)カッコよくなった」(タノ)、「過去の曲やると変わった曲が多く、改めて歪なバンドだと思った。でも、これこそが俺の思うロックバンド、これからもよろしく」(岩渕)と、これからのバンドに懸ける想いを伝え「世界最後になる夜は」へ。高まるグルーヴにたまらず岩渕がフロアへ飛び込んだりと、“今が最高!”な瞬間を何度も体感させてくれる3人。
イベントは予定になかったダブルアンコール、タノの友人(!?)という、DJのSick Boyによるクローズドパーティもあったりと、年に一度の「パノパナの日」を大満喫。バンドの今後の活動はもちろん、すでに来年のお祭り騒ぎにも期待が高まる一日だった。
取材・文=黒田奈保子 撮影=上原 俊

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