最新作『サマータイムシンデレラ』が
月9ドラマの主題歌に。緑黄色社会が
輝きを失わない理由は

緑黄色社会はなぜ、稀有の輝きを放つこ
とができるのか

2023年8月現在、放送中のフジテレビ系月9ドラマ『真夏のシンデレラ』で主題歌・挿入歌を担当している緑黄色社会。彼女たちはなぜ、現代のミュージックシーンで稀有の輝きを放つことができるのか。バックグラウンドや、7thシングル『サマータイムシンデレラ』の音楽的魅力、「ドラマタイアップ」というキーワードなどから、緑黄色社会のアイデンティティ、オリジナリティについて考える。

令和初期を代表する4人組バンド・緑黄
色社会

L→R 穴見真吾、peppe、長屋晴子、小林壱誓

緑黄色社会(通称:リョクシャカ)は、長屋晴子(vo./gt.)、小林壱誓(gt.)、peppe(key.)、穴見真吾(ba.)の4人からなる、愛知県出身のバンドだ。2012年、高校の同級生(長屋・小林・peppe)と小林の幼馴染の穴見によって結成された。

2013年には、TOKYO FM、ソニーミュージックなどが主催するティーンエイジ・ロックフェスティバル『閃光ライオット』(10代のみが出演できる)に出場。準グランプリを獲得すると、メキメキと頭角を現し、名古屋を中心としたミュージックシーンを代表するバンドとなっていった。2018年には、バンド名を冠した初のフルアルバム『緑黄色社会』をリリースするとともに、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』にも初出演。秋にはメジャーデビューも果たしている。その後の活躍は、音楽好きなら誰もが知るところだろう。

その後に発表した3枚のフルアルバムはすべて、オリコンのウィークリーアルバムランキングで初登場TOP10入りを記録。2020年4月にリリースした『Mela!』はストリーミング再生数3億回を突破。2022年末には、『第73回NHK紅白歌合戦』にも初出場した。令和初期を代表するバンドのひとつ、それが緑黄色社会だ。

真骨頂のカラフルなポップセンスが光る
最新作『サマータイムシンデレラ』

いまや日本のポップシーンに欠かせない存在となった緑黄色社会はこの夏、7枚目のシングルとなる『サマータイムシンデレラ』を配信リリースした(CDは9月6日リリース)。2023年7月期のフジテレビ系月9ドラマ『真夏のシンデレラ』の主題歌として書き下ろされた同曲は、夏ならではの揺れ動く恋心を、思わず口ずさんでしまうような耳馴染みのいいメロディ、軽快でさわやかなアレンジに乗せたサマーチューンだ。

ドラマを観ている方なら、容易にその印象やそこに描かれた世界を想像できるのかもしれない。瞬く間に通り過ぎていく「ひと夏」という時間のなかで、偶然から生まれた運命的な出会いが恋に発展しそうな期待感、その過程にはつきものである葛藤や焦燥感、その先にある高揚感が、彼女たちならではの言葉や音で表現されている。“たったひと夏、されどひと夏”。まさにそんな世界を私たちの耳、心へと届けてくれるのが、『サマータイムシンデレラ』という楽曲だ。SNS上には、ドラマだけでなく、その他のテレビ・ラジオ番組、店内BGMなど、ひょんなことがきっかけで同曲を耳にしたリスナーたちの好意的な感想があふれている。
2023年夏の緑黄色社会が描く3分48秒の物語は、心地いいギターハーモニクスの音からスタートする。直後に入ってくるpeppeのピアノの旋律は同曲にとって、サビのメロディにも並ぶ、コンセプチュアルなモチーフだ。

MVには、「カラフルな衣装」で歌唱・演奏する4人の姿。そのほか、印象的に登場する「水しぶき」「砂浜」「花火」といった要素は、一見すると、視聴者に夏を連想させるために散りばめられたもののように見える。けれども、それらはそのため“だけ”に用意されたものではない。そこに息づいているのは、ドラマとの伴走感。主題歌である『サマータイムシンデレラ』を通じて横断的にドラマのストーリーを感じられるような仕掛けが、随所にあしらわれている。ドラマ、MVの両方を観た方のなかには、思わずにやりとしてしまった人もいるのではないだろうか。

イントロからAメロ、Bメロ、サビ、2コーラス目と進んでいくにつれて、物語は熱を帯びていく。歌詞を目で、耳で追いながら聴いていると、まるで自分が本当に恋をしているかのような気持ちにさせられるから不思議だ。Cメロでは8月が終わってしまうことへの意識とともに、ためこんできた熱が一気に落ち着きを見せる。それまでの温度とは対照的な寂寞感は転調の気配ともに昇華され、さらなる盛り上がりへとつながっていく。

「ただ重く甘い切なさを纏わせることだけが、ラブソングのアプローチではない」

『サマータイムシンデレラ』には、緑黄色社会が真骨頂とするカラフルなポップセンスが余すところなく詰め込まれている。

8月7日に配信となった『サマータイムシンデレラ』は、前述の通り来る9月6日にフィジカルでもリリースを迎える。カップリングには、ドラマ『真夏のシンデレラ』挿入歌の『マジックアワー』が収録される。

「さわやかさ」を前面に押し出した『サマータイムシンデレラ』に対し、同曲では「儚さ」を切り口に夏を表現する。打ち上がった花火が消えるまでの数瞬、程なくして秋がやってくることに対する憂い、切なさが主題へと据えられた。

両楽曲を収録したシングルCDの発売を前に、ドラマはこれから終盤へと差し掛かっていく。『サマータイムシンデレラ』『マジックアワー』が見せる表情、そこに込められたメッセージからその先の結末を想像するのも、タイアップ楽曲ならではの楽しみ方なのかもしれない。

緑黄色社会が現代のミュージックシーン
で特別な存在であり続けられる理由

緑黄色社会は、さまざまなアーティストの一発撮りのパフォーマンスを届けるYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』にも何度も出演している。同チャンネルの一企画である『THE FIRST TAKE FES』では、ライブハウス発のありのままの演奏を切り取るという趣旨にあわせ、圧巻のステージを披露した。
緑黄色社会の魅力は、生み出す楽曲のクオリティの高さ、ライブパフォーマンスの安定感にこそあるだろう。リアルイベントから認知を広げ、現在の地位を獲得してきた彼女たち。そうしたバックグラウンドが「らしさ」の源泉となっているに違いない。

直近では、例年8月下旬に香川県で開催されている中四国最大規模の野外音楽フェスティバル『MONSTER baSH』にも出演。緑黄色社会は、2019年の初参戦から2020年、2021年のコロナ禍での中止を経て、3開催連続で同イベントに出続けてきた。今年2023年の開催では、STAGE龍神のトリを担当。コロナ禍の影響もあり全てのアーティスト/バンドにとって辛く長かったはずのこの3年間で、全方位的に何段もステップアップしてきたことがわかる抜擢となった。

緑黄色社会とリスナーの接点になっているのは、ライブやテレビ、SNSといったさまざまな媒体だ。言わずもがな、すべての音楽人にとって、これらは両者をつなぐ貴重な場となっている。過去を振り返っても、さまざまなミュージシャンたちがこうした接点をきっかけに認知を獲得し、大きく飛躍してきた。緑黄色社会もそのうちの一組である。

そのうえで特筆すべきなのが、彼女たちの活躍の場のバランスの良さだ。近年では、TikTokやYouTubeといったバイラルメディアで話題を集め、人気アーティストの仲間入りを果たす例が増えているが、緑黄色社会は同媒体だけに依存することなく、それ以前のメディア――ライブ出演やドラマタイアップなどもリスナーとの接点、飛躍のきっかけにしている。なぜ緑黄色社会はさまざまな媒体をバランスよく活躍の場とできるのか。それはアーティスト/バンドとしてのポテンシャル・魅力を示すレーダーチャートが広く大きいからにほかならない。バイラルメディア発の注目は、ある意味で一過性のものである。その点において、さまざまな媒体を横断し、リスナーの視線を集めることができる彼女たちの特性は、同世代のライバルたちが持ち合わせていないものだと言えるのではないだろうか。

ソロボーカリストやユニット、シンガーソングライターの台頭が著しい時代。緑黄色社会は王道のポップスで勝負し、成功している数少ないバンドだ。現代のミュージックシーンには、彼女たちにしか奏でられない音がある。『サマータイムシンデレラ』『マジックアワー』が与えてくれるインプレッションは、その発露のひとつと言えるのかもしれない。

緑黄色社会の新譜『SINGALONG』はこの世の中でどう響くのか?
ドラマやCMで話題!タイアップに見る2020年音楽シーンの行方

7th Single『サマータイムシンデレラ』

『サマータイムシンデレラ』初回限定盤
『サマータイムシンデレラ』通常盤

2023.9.6 release

初回生産限定盤
[CD+Blu-ray]  ¥3,900(税込)

通常盤
[CD] ¥1,100(税込)

収録楽曲

[Disc1/CD]
1. サマータイムシンデレラ
2. マジックアワー
3. サマータイムシンデレラ –Instrumental
4. マジックアワー –Instrumental-

[Disc2/Blu-ray]
ライブ映像収録 (収録内容後日発表)

緑黄色社会

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最新作『サマータイムシンデレラ』が月9ドラマの主題歌に。緑黄色社会が輝きを失わない理由ははミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

アーティスト

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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