花總まりが「センチメンタル・ジャー
ニー」歌唱、70~80年代のヒット曲に
楽しく彩られるミュージカル『SUNNY
』開幕

2011年に公開されて大ヒットした韓国映画『SUNNY』(邦題『サニー 永遠の仲間たち』)。舞台をそれぞれの国に置き換えてのリメイク版がアジア各地で製作されるという反響を呼び、日本でも2018年に映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』が公開された。その映画を原作とし、舞台を現代の日本に移したミュージカル『SUNNY』(脚本・演出:西田征史)が6月26日(月)に東京建物 Brillia HALLにて幕を開けた。
主人公の奈美(花總まり)は夫と娘と共に何不自由なく暮らしているものの、どこか満たされないものを抱えている主婦。そんな彼女は高校時代の仲良しグループ「SUNNY」の仲間の一人である千夏(瀬奈じゅん)と偶然再会、余命いくばくもない千夏のため、SUNNYの仲間たちを探し出すことになる。一人また一人と仲間との再会を果たし、青春を共に振り返っていくうちに、彼女たちが見つけ出すものとは。
「現在」と彼女たちの青春時代である「1980年代」との交錯がテンポよく描かれていく。その舞台を彩るのは、あみんの「待つわ」やチェッカーズの「涙のリクエスト」、中森明菜の「飾りじゃないのよ涙は」等々、今も愛され続けている70~80年代の大ヒット曲。それらヒット曲が物語上に巧みに配置され、観ていて登場人物たちの心情にリンクしやすいところに、1975年生まれの演出家の腕の冴えを感じた。また、登場人物たちの現在と高校時代を二人一役で演じる趣向になっている。ロングスカートで息巻くスケバンたちに扮した渡邉美穂や須藤茉麻ら、若い世代のキャストがエネルギーを爆発させるのを、現在軸を演じる年上世代のキャストが温かく見守る様が、世代を超えた女性たちの共鳴をも感じさせるところがある。過去の自分と再会することで、今の自分と向き合い、未来の自分へと歩いていく。自分も他者も含めた不器用な生を丸ごと肯定して前向きに進んでいこうと思える、パワーを大いにもらえる舞台となっている。
奈美を演じる花總まりと千夏を演じる瀬奈じゅんは、宝塚歌劇団の入団が一期違いで、花總はトップ娘役、瀬奈は男役トップスターを務めた経験がある。その二人が自然な演技を見せて、群像劇的な魅力のある物語の芯となる。宝塚歌劇団在団中には舞台での共演はほぼないが、二人での芝居のやりとりには自然で、宝塚歌劇における男役-娘役の関係性がほのかに香るところが興味深い。松本伊代の「センチメンタル・ジャーニー」やプリンセス プリンセスの「Diamonds」といったナンバーにおける花總の歌唱シーンでは、彼女の宝塚歌劇時代の当たり役の一つ、『満天星大夜總会-THE STAR DUST PARTY-』(2003)で演じたアジアのアイドル「HANACHANG」を思い出す向きも少なくないのでは?
この作品の振付は「バブリーダンス」のPVの制作・振付で大いに話題を呼んだakaneが担当しているが、本編後のフィナーレはその「バブリーダンス」で用いられた荻野目洋子の「ダンシング・ヒーロー (Eat You Up)」で始まるのも楽しいところ。そして、フィナーレにおいてパンツルックで颯爽と登場する瀬奈の姿に、男役トップスターを経験して女優となった人だからこそ醸し出せる女性のかっこよさがあるのも味わい深い。「いったい一人で何役やってるのー」と思わず笑い出したくなる早替わりを軽妙に披露した片桐仁も、郷ひろみの「2億4千万の瞳 -エキゾチック・ジャパン-」のセンターで熱くアピール。キャスト全員が一丸となって盛り上がるこのフィナーレも大きな見どころとなっている。
取材・文=藤本真由(舞台評論家)

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