ロイヤル・バレエ『シンデレラ』公開
記念トークショーに来日公演中の名舞
踊手ギャリー・エイヴィスが登壇、そ
して来期シネマシーズンの日本公開が
正式決定!

世界最高峰の名門歌劇場「英国ロイヤル・オペラ・ハウス」で上演されたバレエとオペラの舞台と特別映像をスクリーンで体験できる人気シリーズ「英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン 2022/23」(配給:東宝東和)の一環としてロイヤル・バレエ『シンデレラ』が2023年6月16日(金)より1週間、TOHOシネマズ日本橋ほか全国公開され大ヒットを記録した。また6月下旬~7月上旬に「英国ロイヤル・バレエ団2023年日本公演」(主催:NBS 日本舞台芸術振興会)が開催中ということで、6月26日(月)TOHOシネマズ日本橋にて「シンデレラ」公開記念トークショーが行われた。登壇したのはギャリー・エイヴィス(シニア・レぺティトゥール兼プリンシパル・キャラクター・アーティスト)で、『シンデレラ』でシンデレラの義理の姉達ふたりのうち姉を演じた。数々の名演によって舞台を引き締める名舞踊手として名高く、自身のSNSに日本語で投稿することもあるほどの親日家として知られる。MC兼通訳は溝渕俊介。

■アクリ瑠嘉と実際の"姉妹"のように魅せた『シンデレラ』での名演
エイヴィスは英国のイプスウィッチ生まれ。1989年にロイヤル・バレエに入団し、1995年にソリスト昇進。2005年よりプリンシパル・キャラクター・アーティストとなり、2010年からはバレエ・マスターも兼任する。トークショーの冒頭「日本に戻ってくるのは、私個人としても、カンパニーとしてもうれしいことです。とくにコロナで4年間のブランクがありますので、今日いらしている皆さんをはじめ、バレエを愛してくださっている皆さまの笑顔に会えることが本当にうれしく思っております」とと笑顔を浮かべながら喜びを語った。
Avis, Gary Grayscale(c)Royal Opera House
ロイヤル・バレエの『シンデレラ』は本年約10年ぶりにリバイバルされ、舞台美術・衣裳を一新した話題作。現地メディアからも総じて高評を得ている。日本では、6月16日(金)~6月22日(木)1週間限定上映され、TOHOシネマズ日本橋の土日の上映がソールドアウトするなど動員は絶好調だった。ロイヤル・バレエの創設振付家であるフレデリック・アシュトンが1948年にはじめて手がけた全幕バレエの素晴らしさについて熱をこめて語る。
「誰もがアシュトン作品を「イギリスっぽい」と口をそろえて言うと思います。我々のカンパニー特有の作品、そしてイギリスの国全体を代表する作品・振付だと言えるでしょう。したがって、アシュトン作品が世界中で上演されるとき、それを再現し、ディレクションし、舞台を作りあげる人は、創られた当初の知識をもって取り組む必要があります。イギリスらしさを理解している人が再現すべきだと思っています。『シンデレラ』に関して言いますと、音楽性、そしてアシュトン作品の特徴であるフットワークが特筆すべきポイントです」
ギャリー・エイヴィス
エイヴィスは実の母を亡くしたシンデレラの義理の姉達の姉を演じた。同じく義理の姉達の妹に扮した日本出身のアクリ瑠嘉(ファースト・ソリスト)と共演し、強烈なキャラクターを発揮する。今回は振付指導も担い、長年『シンデレラ』のステージングにあたるウェンディ・エリス・サムズと配役について相談した際、妹役にアクリを「真っ先に推薦した」と明かす。そして芸術監督のケヴィン・オヘアの承諾を得て、抜てきに至ったという。
「瑠嘉はすぐに役にハマりました。キャラクターもよく勉強していましたし、自身のイマジネーションをフルに活用して役に向き合っていました。そして、お父様(マシモ・アクリ)が(新国立劇場バレエ団で上演された)『シンデレラ』の義理のお姉さん役をやっていた経験があるということで、お父様から教えられた部分もあったのが彼のアドバンテージになったと理解しています。本当に特別な体験で、実際に自分自身が妹と接しているような、妹を育てているような感覚になるくらいの姉妹関係を結べたと思います」
Gary Avis and Luca Acri in Cinderella, The Royal Ballet (c)2023 Tristram Kenton
約10年ぶりの『シンデレラ』上演に際して、初めて同作に参加するダンサーが多かった。指導する立場からの思いをこう話す。
「『シンデレラ』は入団してはじめて参加した作品の一つだったんですね。私にとってとても心の側にある、大事な作品です。私の使命は、自分のDNAの一部を継承していくこと、後世に受け継いでいくことであると感じました。もちろん振付は完璧に踊ってもらわないといけないですし、約10年間上演していなかったので大変なこともありましたが、皆快く取り組んでいました。アシュトンらしさというのも確実に表現することができましたし、アシュトンらしさを残しつつも全く新しいプロダクションを創りあげることができたのではないかと自負しています」
Cinderella, The Royal Ballet (c)2023 Tristram Kenton

■「日本に来ると、家族のもとに帰ってくるかのような感覚になる」
絶賛開催中の来日公演では、まず6月24日(土)~25日(日)に3公演行われた〈ロイヤル・セレブレーション〉で上演されたアシュトン振付『田園の出来事』ラキーチン役としてに出演した。
「ロイヤル・バレエ団がやるときはいつでも特別な作品です。今回は主演キャスト3組で構成されたのですが、それぞれにおいて家族のような関係性を築くことができたと思っています。『田園の出来事』を上演することは、我々キャストにとっても光栄なことだと感じております」
日本でも少なからぬファンから根強い人気を誇るエイヴィス。今回の来日公演では、どのような気持ちで踊っているのか。MC兼通訳の溝渕が「(ギャリーさんは)人気がありますよね、皆さん?」と客席に問いかけると万雷の拍手が返ってくる。喜色満面になり日本への思いを話した。
「日本に帰ってくるのは本当に楽しみです。皆さんにお会いできるのもうれしいです。地球の反対側にいる家族のもとに帰ってきたかのような感覚になります。ロイヤル・バレエとして何度も来日していますが、それだけでなく、(創設メンバーである)Kバレエ カンパニー(芸術監督:熊川哲也)で過ごしたのも貴重な時間です。その時間を通して知り合ったたくさんの方々とは本当に強い絆があると思っています。日本に来ることは、ただ外国に戻ってきたというよりは自分が大切にしている人たちのもとに帰ってくるということなので、うれしく思っております」
■開催中の日本公演、そして来季の映画館上演作品について語る!
――先日、ロイヤル・バレエの来シーズンのラインアップが発表され、映画館上映されるバレエは『ドン・キホーテ』『くるみ割り人形』『マノン』『白鳥の湖』という鉄板の人気作品が並んだ。そして日本でも来シーズンの映画公開が決定した。
「『マノン』では私がしばらくやっていないムッシューG.M.で出演しますし、カンパニーとしてもまたできるのをうれしく思います。あとご存知のように『くるみ割り人形』のドロッセルマイヤー役で、最後に舞台上をキラキラにすることができるのをうれしく思っております。クリスマスの一番いい瞬間を私ができるので。皆さんも、そう思われますよね?(客席から拍手)」
Gary Avis and Luca Acri in Cinderella, The Royal Ballet (c)2023 Tristram Kenton
最後に日本のファンに向けてメッセージを語り、トークショーを締めた。
「引き続きロイヤル・バレエを皆さまに愛していただきたいです。私にとっても大事な存在ですが、こうやって皆さんが地球の反対側で待っていてロイヤル・バレエの作品を愛して宝物のように感じてくださっているのは、私たちにとってもかけがえのない事実です。ロイヤル・バレエは本当に特別な場所・団体ですので、これからも変わらず愛していただきたいです」
6月28日(水)~7月2日(日)には英国ロイヤル・バレエ団2023年日本公演の『ロミオとジュリエット』東京公演が東京文化会館で上演される。そして、7月7日(金)~ロイヤル・オペラ『フィガロの結婚』、8月25日(金)~ロイヤル・バレエ『眠れる森の美女』の映画館上映を控える。日本に居ながらにしてロイヤル・オペラ・ハウス三昧の日々が続きそうだ。
取材・文=高橋森彦

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