林原めぐみ

林原めぐみ

【林原めぐみ インタビュー】
こんなに戦いを鼓舞している曲は
林原史上“最恐”

“今いる場所でどう生きるか?”
というのはテーマとしてあるかも

配信のみではなく、ちゃんとパッケージで出す意義のある作品ですよね。しかもジャケット写真では、林原さんご自身がエヴァ、ゴジラ、キングギドラの3体を纏っていて神々しい!

私、日頃からPinterestを眺めて“衣装っぽいな”とか“きれいだな”とかっていう写真を保存していたりするんですね。そこで海外の人のコスプレとかを見ていると、戦いのイメージって西洋のファンタジーっぽい感じか、もしくは武士になっちゃうんですよ! “ゴジラだから和が欲しいんだけど、武士じゃないよなぁ”と考えた時に“革”というイメージと、肩のパッドは鱗を重ねるようにしてゴジラの爪を表現したいと思ったんです。あと、エヴァンゲリオンってユイさんが溶けているので、なんとなく私の中では女性なんですね。なので、上半身はゴツゴツのゴジラだけど、下半身はシフォンのスカートで柔らかい女性っぽさを出して、エヴァカラーのオレンジ、緑、紫を散りばめようと。で、キングギドラは首が3本だから、3箇所を金色にするのはマストと決めていて、最初は帯を金にするつもりだったんですね。そしたらスタイリストさんが“キングギドラって首が3本だから、手首ふたつと首が良くないですか?”と言ってくれて、そこで全部が決まりました。色選びから革の質感までこだわってくださって、画伯と言われる私の落書きがこうなるってすごい!

今回はスタッフ陣も“初めまして”のチームだったとか。

はい。統括のコーディネーターさんもスタイリストさんもヘアメイクさんも女性で。経験値が高くて話が早くて、この世界をみんな切り抜けてきてるんだなぁって感じました。すごく的確だった質問があって、コーディネーターさんに“ジャケット上で林原さんはどこにいますか?”って訊かれたんですよ。で、“ごめんね、ちょっと時間ちょうだい”って考えた結果、どの陣営にも与していないのは三体を纏っている時点で明らかなので、イメージとしては戦いの女神的な感じでいこうと。仮に三体がいなくなり大地が荒れようとも、荒れ果てたところから咲く花もあろう…みたいな虚無も抱えつつ、時に誰かの勝利の先、地球という星に対する愛だけはあるみたいな、そんな人ですね。

それで雲と空の狭間に浮かんでいるんですね。初回盤はデジパック仕様の内側もいろいろと凝っていますし、いろいろな想像や解釈が膨らみます。

やっぱり買った時のワクワク感以上のものをお届けしたいんですよ。私はLPレコードを買っていた世代なので、パッケージがCDサイズになった時の悲しさたるや! だけど、小さいなら小さいなりの折り込み方だったり、絵本をめくるようなワクワクだったりはお届けしたいので、どうしたらびっくりしてくれるかと考えてしまうんです。特に、私のファンは発見するのが好きな方が多いので、いかに“これは見たことある”とか“前と同じじゃん”とか思われないよう、ありがたく困るところですね。

開くたび、めくるたびびっくりすること間違いなしですよ。ちなみに先ほど“Territory”というワードに関して、人間にはいろんなタイプがいるという話が出ましたが、林原さんご自身はどのタイプですか?

なんかね、アメーバみたいな感じ。自分がどうこうというよりは、相手が望んでいる状況を作って、その人が満足そうにしているのを眺めているのが好きです。でも、やりすぎると疲れて寝る!

相手に合わせられるというのは、やはり柔軟ですよね。思考が柔らかい。

そうじゃないと綾波レイとバカボンは共存させられないから(笑)。“えっ、これを!?”って悩むけど、その悩むこと自体を楽しめないとつらくなっちゃいますよね。逆に言うなら、“普通はこうでしょ?”っていうものが嫌いなんですよ。私は自分のことを、本当にすごく“普通”だと思っているので。

ええっ!? いろんな意味で普通ではないんじゃないかと…。

その“普通”っていうのは人と比べての話じゃなくて、例えば目玉焼きに醤油をかける人もいれば、ソースや塩やマヨネーズをかける人もいるじゃないですか。で、ソースをかけていたら、塩しか知らなかった人に“何、それ!?”って驚かれたとして、そこで“目玉焼きにはソースでしょ!”って反論するんじゃなく、“えっ、普通だよ。うちはソースが普通”って言う、その“普通”を提案したり、受け入れる普通。

なるほど! あくまでも“私にとっての普通”ということですね。

そう。だけど、みんな自分の普通ではなく“世間が決めた普通”に、一生懸命にしがみついている気がするの。その普通から外れている人たちに対して攻撃する人も多いし、逆に自分が人と違うことをわざわざアピールしていかなきゃいけない空気もあったりもする。自分は自分以上でも自分以下でもないんだから、そんなに頑張る必要なんてないのに。

特にSNS全盛の今は、自分をアピールせずにはいられない世の中のような気はします。それが“世間が決めた普通”になっているというか。

たぶん“普通”でいると取りこぼされちゃうんだろうね。“普通じゃないです!”って亀以上に首を出さないと、存在に気づいてもらえないのかもしれない。でも、みんなが自分の普通を振りかざすと、それはそれでわがまま放題な人も出てくるかもしれないから、人に迷惑をかけない普通? 迷惑かけちゃったとしても“ごめんね”と“ありがとう”が言えて、あとは普通じゃないことをやっている時に、それを自覚できてればいいんじゃないかな? 例えば、私にとって歌を歌うこととか、人前に出ることは普通じゃないんですよ。だから、そこは“普通じゃないところに今から行ってきます!”ってスイッチを入れる感じ。それが20代の頃はどこかつらかったけど、そのおかげで出会える人だったり、見える世界もあるから、出かけるってとても大事なんですよね。普通じゃないから大変だったり、しんどかったりもするけど、自分にとってはすごく意味のあることだから、最終的にはつらかったことが力になって、結果つらくないことになる。

“普通”と“普通じゃない”を自覚しながら、うまくバランスを取っていらっしゃるんですね。

そうだね。それができるようになったのは30歳すぎてからですね。今は声優がどんどん世の中に出ていく風潮になっているけれど、それは私にとっては普通じゃないから、そういう意味では結構引いていく方向かな? 別にそれは寂しいことでも恨めしいことでも1ミリもなくて。あとは、私生活が充実していればいい。状況が許すようになれば海外も行きたいし、それこそPinterestで“こんな森があるんだ!?”って場所を見たりもするから、写真だけでなく実際に行って体感してみたいですよね。

取材:清水素子

シングル「集結の果てに」2022年12月21日発売 KING RECORDS
    • ¥1,320(税込)
    • KICM-2121
    • ¥1,320(税込)
    • ※初回製造分のみデジパック仕様
林原めぐみ プロフィール

ハヤシバラメグミ:声優・シンガー・ラジオDJ ・作詞家・エッセイストであると共に一児の母。1986年、看護学校及び声優養成所在籍中に『めぞん一刻』でアニメデビュー。その後、数々の人気アニメのキャラクターを担当しており、現在の代表的な出演作品およびキャラクターは、『スレイヤーズ』のリナ=インバース、『エヴァンゲリオン』シリーズの綾波レイ、『ポケットモンスター』のムサシ、『名探偵コナン』の灰原 哀等。また、シンガーとしても活躍し、91年3月に1stシングルとなる「虹色のSneaker」をリリース。当時はまだ珍しかった“声優アーティスト”という存在を世に知らしめた立役者とも言える。オフィシャルサイト

「集結の果てに」
「集結の時 〜Territory~」試聴動画

OKMusic編集部

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