泣けるWeb漫画『母を亡くした時、僕
は遺骨を食べたいと思った。』が書籍
化 著者に執筆秘話を直撃

 同作は、漫画サイト「くらげバンチ」で連載されていた作品。漫画家の宮川さとしさんが、自身の母のがん告知や闘病、葬儀、死後を通じて、“母親のいない世界の違和感”をつづった漫画エッセイだ。



 漫画の連載が開始されると、SNSでじわじわと拡散され、「涙なくしては読めない」と評判に。Twitter上では「実際の自分の体験があるだけに、頭痛くなるほど泣けた」「この漫画とほぼ同じ経験をした。母が死ぬとは考えもしてなかった」「亡き父を思い出して涙腺が決壊した。身近な人を喪うってこんな感じ」などと共感する声が多数寄せられていた。

 今回は、単行本化に伴い、著者の宮川さとしさんにお話を伺った。

 宮川さんは、「コメディ漫画の連載でデビューしたはずが、先に自伝エッセイの方が発売になったことはちょっと変な感じがしますが(笑)、本当にありがたいことです」と、単行本化について喜びのコメントを寄せる。

 その一方で、一番見てもらいたい人に見せられなかったという悔しい思いもあり、「できれば僕の名前が入った本を母にも手に取ってほしかったという気持ちはやっぱりあります。自分のことが描かれた内容なので本人は嫌がりそうですが(笑)」と語った。

 母の死を描いた同作。最愛な人だからこそ、描く中で苦労はあったのだろうか。
 「描いている最中にどうしても当時の精神状態に戻ってしまい、涙が止まらず心臓がバクバク鳴り、ペンが進まなくなったことが何度もありました。でも悲しくないとあの頃の気持ちを100%描けないんですよ。そういうときは帰省して子どもの頃に母と一緒に買い物に行ったスーパーやその帰り道をわざと歩いたりして、自分を落ち込ませて漫画を描いていました。その間の作業はやっぱり辛かったですね(笑)」(宮川さん)

 執筆する上で気をつけたポイントは、「頭で考えた台詞を描かないこと。人間のドラマを作品として描く以上、“この台詞はこうした方が良いんじゃないか”と邪念が入ることもありました。でも、結局頭で考えた言葉では僕が現実に体験している“母親がいなくなった世界”を表現することはできませんでした。現場で本当に感じたこと、聞こえの良い言葉ではない、生の気持ちを吐き出すことに集中しました」とのことだ。

 さらに、ネット上での反響については、「皆さん、本当に優しいんだなぁと思いました。僕の母の死を偲んで流してもらった涙。自分と重ね合わせて失った大切な人を想って流した涙や、この先起こりうる別れを想像して流した涙。そのどれもがとても優しいと思うんです。SNSなどに寄せられた“泣ける”という温かい感想には随分と救われて、その結果、漫画の内容も少しずつ変わっていったように感じています」と教えてくれた。

 今後は、同作で学んだことを活かし、喜劇とも悲劇ともとれる創作漫画を描いていきたいと話す。エッセイ漫画については、「自分の闘病体験を描けたら。作中にもあるのですが、自分も大学生の頃に大きな病気を患い、就職活動期間を棒に振ってしまいました。何の肩書きもないまま退院した当時の僕は“生き残ってしまった”と感じました。あの日からずっと気になっていた“社会と自分との溝”について、また漫画にしたいと思っています」と力強く語る。

画像:(c)Satoshi Miyagawa 2014/新潮社 くらげバンチ

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