アイドル界の新潮流!? 聖☆ボナプロ
学園、Peach sugar snow ら"JS系"グ
ループの最前線

(参考:ゆるめるモ!プロデューサー田家大知が明かすアイドル運営術「すごい表現方法だと感じている」)

 「ローカルアイドル」「ライブアイドル」というカテゴリーでは現在、何百ものアイドルグループが活躍しており、中でもBerryz工房がその可能性を示唆した「JS系」と呼ばれる低年齢アイドルグループが密かに人気を集めている。

 今回は映画『エコール』の世界にも似た、JSアイドルシーンをけん引する代表的な幾つかのグループを紹介したい。

・神聖にして可憐! 「聖☆ボナプロ学園」という架空の楽園

 オフィシャルサイトの充実ぶりやその企画性の高さ(メンバーとのBBQ大会etc)、コンセプトの明確さにおいて、JSアイドルシーンの筆頭グループに上げられるのが聖☆ボナプロ学園である。

 正統派アイドルポップからEDMまで多彩な楽曲を持つ彼女たちは、音源では強烈&狂ったAUTOTUNEボーカルを聴かせているが、真骨頂となるライブでは「生唄」を披露している。

 先日行われたアイドルの祭典「TOKYO IDOL FESTIVAL」では、会場近辺にてゲリラ的に「お名刺お渡し会&撮影会」を行い、ファンとの熱狂的な絆が話題となった彼女達。オリジナル曲も増えており、2014年最も注目すべきJSアイドルグループといえるだろう。

・まるでカヒミカリイ!? 究極の"ウイスパーボイス"アイドル「Peach sugar snow 」

 ダンスに特化したり、メタルやAORといった音楽ジャンルに特化するなど、様々な方法論で差別化を図っている昨今のアイドル界だが、その歴史を振り返ると「歌唱法」によって自らの立ち位置を明確にコンセプト化したグループはいなかったのではないだろうか。今年TIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)にも出演を果たしたPEACH SUGER SNOWは、山形出身のウイスパーボイスオンリーアイドルだ。グループ唯一のJCメンバー小越桃香は、2015ミスiDセミファイナリストにもエントリーされている。

 エレクトロニカアイドルポップとでもいうべき完成されたサウンドの中、まるでカヒミカリィか、はたまたシャルロット・ゲーンズブル(JS時代に父親とともに歌手デビューし「LEMON INCEST」ほか、傑作ウイスパーボイスポップを作り上げた)のような囁きがたゆたう楽曲は、JSポップ独特の魅力にあふれている。

 現在、東京でのライブ活動も急増している彼女たち。全国区へとその“危ういささやき”が届こうとしている。

・子役からアイドルグループへーー10年代のPRETTY CHAT? 「Pocchimo」

 古くは1997年、野村佑香前田愛・浜岡麻矢・大村彩子といった大人気ジュニアアイドル4人によるPRETTY CHATが、アイドル史に残る大名曲「WAKE UP, GIRL !」を生み出した。近年でもジブリ映画「崖の上のポニョ」のテーマを唄った大橋のぞみや、ハリウッド映画『パシフィックリム』にも出演し、その演技力をギレルモ・デル・トロ監督から高く評価された芦田愛菜など、子役出身者が歌手として活動するスタイルは現在でも続いている。子役からのデビューがJS系アイドルにおける一つの潮流となっている中、2014年の真打とでもいうべき3人組が「Pocchimo」である。

 ドラマ『ちびまる子ちゃん』にて主役のまる子役を演じた信太真妃。嵐の相葉雅紀が主演したドラマ「マイガール」での演技が評価され、第13回日刊スポーツ・ドラマグランプリにおいて助演女優賞を受賞した石井萌々果。NHKの子供向け番組「ワンワンパッコロ!キャラともワールド」での演技が、あの伝説のクッキングアイドルまいんちゃんにも匹敵するとも言われる畑芽育の3人によるPocchimo。メンバー全員が名門「セントラル子供タレント」所属で、老舗事務所が仕掛けるJS系アイドルグループ最終兵器といえる存在だ。

 すでにTVやネット系バラエティー番組、怒涛の勢いで展開されているデビューシングル発売イベントと、そこで披露されるJSとは思えないトークの面白さで話題となっている彼女たち。そのJSパワーは、果たしてどれだけ多くのアイドルファンに届くのだろうか。

 AKB48の「努力」、ももいろクローバーZの「全力」など、10年代におけるアイドルはファンと繋がるツールとして、漫画的なわかりやすい物語を必要としてきた。

 しかし「共感できる」「自己を投影できる」といった消費しやすい物語性は、本当にアイドル表現における本質なのだろうか。多くのアイドルグループが凡庸な「物語作り」にとらわれ、その魅力をスポイルされているのではないだろうか。

 本来は、社会化された窮屈な物語に絡め取られた人々を解放してくれるのが、アイドルという存在だったと思う。そして一見、あまりにもニッチに思えるJS系アイドルグループのムーブメントは、物語性重視という構造における閉塞感が徐々に蔓延している現在のアイドルシーンに対するアンチテーゼなのかもしれない。

 JS系アイドル達は、「順位」や「一生懸命」といったコトバに絡めとられることなく自由に、ただ楽しいから唄い・踊り・笑い・叫ぶ。物語から離れた、ある意味ではアナーキーな存在ともいえる彼女たちは、しかしその自由さゆえに「アイドル」の本質へと向かうーー。そんな表現を見たいと思う人達が増えているからこそ、JS系アイドルグループは増加しているし、それは現在のアイドルシーンがひとつの転換期に差しかかっていることの表れではないだろうか。(ターボ向後)

リアルサウンド

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