20年目へ向けてAnswerを探す旅路——
GRANRODEO 9thアルバム『Question』
発売インタビュー

GRANRODEOにとって約3年ぶりとなる9枚目のフルアルバム『Question』が3月23日に発売となった。またこの発売に合わせて全国7都市13公演を巡る全国ツアーも予定しており、活動15周年を越えてもなお精力的な活動が目立つGRANRODEOの2人に、今回のアルバムになぞらえていくつかのクエスチョンを問いかけてみた。アルバムを通して感じた”等身大のカッコよさ”が2人の会話の節々から見え隠れしており、来たる20周年に向けた話題まで飛び出すインタビューとなった。

■ギターがめちゃくちゃ上手くなったと思うんですよ(笑)
――およそ3年ぶりのフルアルバムということで、この3年間というのは世間的にも激動の月日だったかと思いますが、GRANRODEOとして振り返ってみるといかがですか?
e-ZUKA:そうですね。まぁ、ミニアルバムだったり、アニメ主題歌のタイアップのシングルのリリースもあったので、個人的にはそんなに前のアルバムから期間が空いたな〜って感覚は無かったんですよね。
――本作は12曲中5曲がタイアップ曲になっていますしね。
e-ZUKA:「思い通りじゃなくても」という曲に関しては完全にリモート状態の巣篭もり期間に作った曲なので、この曲に関しては反映されてるのかなと思ってますが……。
――なるほど、ではあまりコロナ禍であることは意識せずに楽曲制作に集中できたんですね。
e-ZUKA:あ!ただ、これは多分ギタリストあるあるだと思うんですけど、自粛期間中にめっちゃギターが上手くなったと思うんですよ(笑)。自分で弾いていても「あれ、オレ上手いかもな〜」って思う場面は増えたかもしれません(笑)。
――既にシングルでリリース済みのタイアップ曲も多いとは思いますが、それ以外の楽曲ですとレコーディングはいつ頃行われたんでしょうか?
e-ZUKA:それで言うと、今年の1月にあった『G15・G16 ROCK☆SHOW』のライブ後のタイミングでレコーディングを始めましたね。
――めちゃくちゃ短期集中じゃないですか!?
e-ZUKA:曲って作れないときはホントに作れないので、3月23日発売じゃなくてもいいんじゃないの?って思っていました(笑)。ライブもあったばかりなのにホントに作る気だったんだ!みたいな。がしかし、ボクの調子がめちゃくちゃ良くてバンバン曲が仕上がったので……まぁ良かったなと(苦笑)。
――1曲目の「FAQ」はインスト曲ですが、意表を突かれたというか、こんなセクシーな始まり方なんだ!って驚いて、思わず聞く姿勢が前のめりになっちゃいました。
e-ZUKA:この曲はですね、2人でTOKYO FMさんでラジオ番組をやらせていただいてるんですが、番組内で毎回お題やテーマに沿って好きな音楽を選曲し合う、みたいなコーナーがあるんですよ。そこでKISHOWがやたらとシティポップのようなオシャレな曲をかけたがるんで、アルバムのリード曲になってる「Question Time」に繋がるようなオシャレな曲が欲しいなってことでタイトルも「FAQ」としてみました。
――確かに「Question Time」のイントロのベースがより強調されるというか、先行してMVを見た時とはまた違った聞こえ方がしました。
e-ZUKA:我々、結構こういうの好きなんですよね(笑)。前作の『FAB LOVE』の時も弦楽四重奏みたいなインストから始まりましたし。「あれっ?アルバム間違えちゃった?」みたいなフックになる曲を挟んで、聞いてもらいたいな……みたいな気持ちがあるんでしょうね。
――そもそもなんですけど、今回のアルバムのタイトルを「Question」としたのは何故なんですか?……って質問に対して質問みたいでややこしいんですけど(笑)。
KISHOW:それはもう、ズバリ9枚目のアルバムだからですよ(笑)。
――9枚目で”Q”ですか(笑)。
KISHOW:なんならそれこそアルファベット1文字で「Q」でも良かったくらいなんですけど、かつてMr.Childrenさんが同じことを既にやられてたんですよ(笑)。それじゃ我々はQから始まる単語で〜……と思って考えたんですけど、Qから始まる英単語でカッコいい言葉って全然無いのね(笑)。
――”Q”だと確かに難しいかもですね。
KISHOW:結構考えたんだけどね……。多分アルファベット全26文字の中で1番冴えないと思う(笑)。けどそれも良いなと思えてきて。数字の9もなんか中途半端な数じゃないですか?
――確かに、”10”とか”8”はなんか気持ちいいですけどね。
KISHOW:ね!8だと末広がりとか無限大みたいな個性もあるし、10はキリがいいけど、9って形もなんかアシンメトリーだし……とか考えてたら「なんか、漠然としててもいいな」って思えてきて。今の世相的にも正解にすぐには辿り着けないというか、色んな事にクエスチョンマークが付いて回る事ばかりだなって思いもあって、最終的にはすごくストンと腑に落ちましたね。
――なるほど……。ひとつ”謎”が解けました(笑)。
KISHOW:GRANRODEOのアルバム制作の進め方ってまずタイトル決めから入るんですが、結局それが標語みたいになるんですよ。「Question」としたことで「FAQ」みたいな曲をe-ZUKAさんが書いてくれたし、皆がクエスチョンという言葉に支配されていって、結果いいアルバムにまとまってくれたので、個人的には”してやったり感”も結構あるんですよね。
e-ZUKA:9枚目だから9曲入りにしようか、という案もありましたがそれだとやはり少ないなと。
――確かに、最近はコンセプトアルバム的な感じでそういうリリースをする方もいますよね。
e-ZUKA:KISHOWが好きなGRAPEVINEさんもそういうのを出しているし、そっか〜とも思ったんですけど、収録しているタイアップ曲がキッカケで知ってくれた人もいるだろうし、次のアルバムは色んな曲入れたいなということで「Scorn」や「BEFORE the DAWN」といったカップリングも入れましたし、結局この曲数になりました。
KISHOW
■どうだ!カッコいいだろ!って熱量で出した曲がちゃんと皆に伝わった感じがした
――続いては特に注目して聞いて欲しい曲とか、何か思い入れのある楽曲についてお聞かせください。
KISHOW:いや、もちろん全曲思い入れはあるんですが……。久々にド直球でカッコいい曲が作れたな!みたいな手応えを感じたので言えば「時計回りのトルク」かな。
――映画『文豪ストレイドッグス BEAST』の主題歌にもなっている曲ですね!
KISHOW:自分らの曲で「背徳の鼓動」ってもう10年以上前のとても気に入っている曲があるんですが、それ以来くらいの手応えですね。e-ZUKAさんから曲が上がってきた時点で既に超カッコよかったので、こりゃふさわしい歌詞を書かなきゃと気合いも入りましたし「どうだ!カッコいいだろ!」って熱量で出した曲が、ちゃんと同じ熱量でお客さんにも伝わっているなという感じもしたので、ホント久々に手応えもバッチリ感じられましたね。
――e-ZUKAさんはいかがですか?
e-ZUKA:僕は「BEFORE the DAWN」かな。これは「カミモホトケモ」のカップリングとして作ったんですけど、とても制約のない環境で作れたというか、(曲全体を通して)歌がある所の方が短いという(笑)。リフレインのない、ほぼインストの曲みたいな楽曲なので……。
KISHOW:ライブでやるとボクは持て余しちゃうんですよ(笑)。ボケーっとするしかなくて。
――(笑)。まぁ、そういう意味ではこの曲はどちらかと言うとe-ZUKAさんが主役というか、ギターで語ってく曲かもしれませんね。
e-ZUKA:そうですね。
――個人的には「恋はハチャメチャ」がすごい好きでした。
e-ZUKA:非常に楽しい曲ですよね。去年ふたりで『俺たちひょうきんアコギ族』というライブでツアーを回ったんですが、その時にTUBEさんとか尾崎豊さんとか、色んな方の曲をカヴァーしたんです。それでやっぱ歌謡曲っていいなって思って。あとはファンクラブ限定の『Naked Show』というライブでサンバとかサルサの要素を入れたアレンジを考えてた時も「そう言えば昔、よくワールドミュージック聴いてたな」って思ったし、YouTubeとかで再生回数を見ていても「やっぱサンタナってすごい人気あるんだな」って思ったりして、絶対ラテンっぽいの1曲入れようって思ったんです。
――歌謡曲の中にラテンの風も感じますね。
e-ZUKA:それで最初、サンタナの「Smooth」みたいなカッコいい曲を作ろうと思っていたんですけど、段々とムード歌謡ぽくなってきちゃって、最終的に純烈さん風になったという(笑)。
一同:(爆笑)
■嘘かホントか、サビにフリを付けるって言ってるんですよ(笑)
――アルバムはもちろんですが、実は発売から3日後の3月26日(土)からはもうアルバムツアーが始まってしまうんですよね?
e-ZUKA:そうなんですよ(笑)。まぁ、既に視聴動画やラジオなんかではアルバムから何曲かワンコーラスだけ聞いてもらったりしてはいるんですが……。
――ライブ映えじゃないですけど、この曲で皆と盛り上がりたいな、みたいな曲だとどれになるんでしょうか。
KISHOW:「恋はハチャメチャ」はやっぱり盛り上がりそうですよね。嘘かホントか、e-ZUKAさんの中ではサビにフリを付けるって言っているんですよ。「オレがそれを考えるから」って(笑)。
e-ZUKA:そういうの純烈さんがやるじゃないですか(笑)。このコロナ禍のソーシャルディスタンスのご時世ですから、隣の人にぶつかっちゃうような大きい身振り手振りは出来ないですけど、手元でのちょっとしたフリくらいだったら、一体感も出ていいんじゃないかなという。 
――その点はどのアーティストさんも苦労というか、工夫されている部分だとは思いますが、やっぱサビの歌詞に合わせてユラユラしたいですよね。
KISHOW:そういう意味ではツアーも3年ぶりなので、楽しみですよね。やっぱりツアーを通して曲が育っていく、みたいな経験もありますからね。今回のツアーではどの曲がこう、仕上がっていくのかな?という楽しみが。
――これだけキャリアを積まれていても、その点に関してはやっぱり読めないものなんですか?
KISHOW:そうですね、やってみるまで分からないですね。今までだと「modern strange cowboy」なんて曲は、もうライブでは毎回やっている曲ですけど、やっぱり現場で育っていったなって感じがしますよね。「カナリヤ」って曲はタイアップでもないアルバム曲ですが、ライブで人気が出ていきましたし、”ハチャメチャ”みたいに盛り上がりそうだなって曲はもちろんありますが、蓋を開けるまでは……みたいな楽しみもやっぱりあります。
e-ZUKA
■もう自分らの意思では辞められない所まで来ている
――我々の方からのクエスチョンもあと数個なのですが、3年ぶりのアルバムということで、もしまた次の10枚目のアルバムも3年後となると、結成20周年という数字も見えてきますが、今後の展開なんかもお伺いしたいです。
e-ZUKA:今年で我々は17年目となるんですが、奇しくもアルファベットのQも17番目の文字ということで、そこまで計算して……ないんですけど(笑)。
KISHOW:たまたまね(笑)。う〜ん、その時になってみないと分からないですが、我々すごくキリがいいんですよね。2005年に結成なので2025年が20周年で……というかもう2005年から20年経とうとしている事にショックですね!マジか!(笑)。
――2000年ってつい最近のように感じますもんね。
KISHOW:サザンオールスターズさんが1998年に結成20周年っていうので、浜名湖の渚園にライブを見に行きましたけど、サザンが歩んできた1978年からの20年間ってすごい激動の時代だったなあと思ったりもする一方で、ボクらが歩んできた20年と比較するとホントに同じ20年か?って思ちゃいますね(笑)。
――言い方は変ですけど、サザンの背中も見えてきたというか……(笑)。
KISHOW:信じられないですね。まあ、あと3年ありますがボクらが何かひとつの事を20年も続けていられるなんて夢にも思ってなかったです。もう自分らの意思では辞められない所まで来てると思いますもん。いや、辞める気は全然ないんですけどね(笑)。
――もうKISHOWさんのライフワークとして、GRANRODEOの活動がある感じですか?
KISHOW:いやもう完全にボクの中に染み込んでますよね。GRANRODEOのKISHOWが。
e-ZUKA:ただなんでこれ、そのまま名前でやらなかったんだって時々思いますけどね(笑)。
――え、そうなんですか!?
KISHOW:うん、確かにそれちょっと思うかも(笑)。飯塚昌明と谷山紀章で良かったもん。
e-ZUKA:出演の時に「えー、今日は(from:GRANRODEO)って付いてるからe-ZUKAの方か」っていちいち確認するのがややこしくなってきて(笑)。
――そもそもどんな経緯でこういう名義になったんですか?
e-ZUKA:やっぱり昔はそういうステージネーム的なね、グループ・サウンズの時代の名残といいますか。そういうのを付けて当然くらいの雰囲気で決めたと記憶していますけど。
KISHOW:名前を分けているからこその「え!このボーカルの人って声優さんなの!?」みたいな驚かれ方が昔はあって、そういうのが気持ちよかったりもしていたんですが、逆に今だにそういう方もたまーにいらっしゃって「そうだよ!オレだよ!!」って言いたくなります(笑)。20周年を機に、2人とも名前に戻してもいいかもしれないね(笑)。
e-ZUKA:えーっ!KISHOWさんってあの進撃の巨人のジャンの人だったのー?!
KISHOW:そうだよ!うるさいな(笑)。
GRANRODEO
■GRANRODEOはボクらにとって部活みたいなもの
――改めてアルバムの話に戻りますが、振り返ってみても楽曲の幅がすごい広いなって素直に思うんですよね。
e-ZUKA:若い人のやっている事を認められなくなったりとか、それを受け付けなくなったら、成長ってしなくなるじゃないですか。「Question Time」なんかは、そういう曲になっているかは別として、YOASOBIとかずっと真夜中でいいのにとか、ボカロPの方々だったり、そういう方々の作る音楽に刺激を受けて、自分のフィルターを通して作った曲だったりもするので、勉強の為に聴いている部分もありますが、GRANRODEOを通してフレッシュなものに触れていたいなというマインドは常にあるので、その表れなんだと思います。
――最近のそういう楽曲ってすごい複雑だったりすると思うんですが、そのお話を伺った後で聞くとすごく腑に落ちますね。
e-ZUKA:結果的にいびつなものになったとしても、チャレンジできる場が欲しいんですよね。だから部活みたいな事なんですかね。それが2人にとってGRANRODEOなんです。
KISHOW:こんな曲をやってみたいな〜とか、アレを聴いたけど曲作っちゃおうよ〜みたいな(笑)。
――年齢を重ねる度にそういう感覚ってどうしても薄れちゃうというか、部活のノリってどんなんだったっけ?ってふと思ってしまう自分がいたりもするので、大人の部活ってなんかカッコいいです。男からみたカッコいい男、みたいな。
KISHOW:そういってもらえると嬉しいですよね。
■一緒にAnswerを見つけるツアーにしたい
――洒落が効いていてカッコいいですけどね(笑)。それでは最後におふたりからインタビューを読んでる方にメッセージをいただけたらと思います。
e-ZUKA:『最遊記』、『文豪ストレイドッグス』、『範馬刃牙』等、タイアップきっかけで知っていただいた方には「あぁ、こんな曲もあるのか!」と一気に知ってもらえるカタログみたいな1枚に仕上がったかなと思いますので、興味を持っていただいた方にはぜひこのアルバムから、まずはお手にとって楽しんでいただけたらと思います。あと特典BDにはですね、Acoustic ver.の映像も収録されています。
KISHOW:そんなんあったね〜!
e-ZUKA:そんな感じでカッコよく撮れた映像と、あとトーク映像も入っておりますので、そちらも合わせて楽しんでほしいのと、すぐツアーが始まりますので(笑)。毎日ガンガン聞いてください!
KISHOW:世の中にはいい音楽たちが数多、存在しておりますけども、その中でGRANRODEOが放つ存在感みたいなものが届けばいいなって思いますけどね。未だに頑張ってるぞ!っていうね(笑)。やっぱりボクらみたいな存在は皆さんに面白がって頂いてナンボですから。あとツアー終わりに毎回これを言おうと決めてるんですけど、今回Questionツアーですので、皆さんの中でAnswerが見つかればいいなと……。
――う〜ん……!
KISHOW:おっ、唸りましたね!(笑)。
一同:(爆笑)
KISHOW:でも絶対、「ほほ〜っ」って納得してもらえると思いますので。ツアーを通じて、ボクたちと一緒にアンサーを探しましょう!ということで、そういうツアーにしたいです!
インタビュー・文=前田勇介

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