L→R 阿部樹一(Pf&Key)、堂野アキノリ(Vo)、大塚篤史(Dr)、トサキユウキ(Gu)

L→R 阿部樹一(Pf&Key)、堂野アキノリ(Vo)、大塚篤史(Dr)、トサキユウキ(Gu)

音楽クリエイター集団バンドの
TOKYO RABBITが示す【後編】
“音楽を基軸とした
総合エンタテインメントカンパニー”

古さと新しさがいい感じに
混ざった曲が揃っている

L→R 阿部樹一(Pf&Key)、大塚篤史(Dr)、トサキユウキ(Gu)、堂野アキノリ(Vo)

L→R 阿部樹一(Pf&Key)、大塚篤史(Dr)、トサキユウキ(Gu)、堂野アキノリ(Vo)

確かに堂野の言う通りだろう。活動の方向性や楽曲の統一性といった、バンドならではの空気感は長年続けていかなければ形成されないと筆者は思う。そのベストな4人で作り上げたのが『うさぎのジャンプ』だ。作品の中で特に印象に残っている楽曲をそれぞれに訊いてみた。
「「東京」も好きだし、「ツキノヌクモリ」も「明方の唄」も好きだな。「ツキノヌクモリ」は人生初の曲だしね」(堂野)
「それこそ、僕も23歳の頃から「ツキノヌクモリ」は知っていますよ。前のバンドでも歌っていたし」(大塚)
「それぞれかなり思い出がありますよね。「HANABI」や「#37 JIBUN LIFE」は少し前なので。「#37 JIBUN LIFE」なんかは、わりとセッション的なアプローチでいこうとなって作ったり、「東京」もそうですし。「明方の唄」はシンセなんかも入れて、今後僕もシンセを取り入れようかなと思えた曲ですね」(阿部)
「「SUN SHOWER」はクオリティーが高いですよね。なので、僕は「東京」か「SUN SHOWER」が印象深いかな」(トサキ)
「「the NEW WORLD」なんかは、トサキのトラックをもらってその上にメロディーを付けたんですよ。だから、トサキ発信なんですよね」(堂野)

話は少し変わるが、「the NEW WORLD」は8月に配信シングルとしてリリースされた楽曲。そのシングルのジャケット写真はコロナ禍を現した作品に仕上がっている。歌詞もそうなのだが、どんな狙いがあったのだろうか。
「コロナ禍で生きる人へ向けたメッセージソングですね。ジャケットも地球がマスクをしていますからね(笑)」(堂野)
「そのデザインいいですよね! 誰が作ったんでしたっけ?」(トサキ)
「僕だよ、僕。予算ないからストックの素材使ってね!」(堂野)
「嘘!うまいですね」(トサキ)
「そうそう。最近『Adobe Photoshop』の使い方を覚えたのよ」(堂野)
「「明方の唄」のジャケットは?」(トサキ)
「それも僕(笑)。でも、このジャケットは少し間違えたなと思ったんだよね。写真は良かったんだけど、文字が良くなかった」(堂野)
「僕は、さだまさしさんのシングルが出たのかと思っちゃいましたよ(笑)」(トサキ)
「あははは」(全員)
「さだまさしさん大好きなんですよ。それで、こんなジャケットのアルバムあったよなと思って!」(トサキ)
「なので、兎に角「the NEW WORLD」は最近作った曲なんですよ。コロナで世の中が暗いなと思って。もうちょっとコロナを楽しむと言うと変ですけど、こういうのはこういうので変化する時期だから味わってみてもいいんじゃないかと伝えたかったし、気分って大事だと思うからハッピーになりたいなと思って」(堂野)

堂野の何事にもとらわれず挑戦しつづける人間性がとても感じられた。冒頭でも少し触れたが『TOKYO RABBIT RECORDS』は楽曲制作、レコーディングなど一貫して行なえるレーベルだ。その上で、堂野は映画を自身で作成したり、MVを撮ったりもしている。ついにCDジャケット制作にも取り組み出したというのだから、その才能には驚きを隠せない。そんな彼が書く歌詞についても2019年にリリースされた「東京」から変化を感じた。「東京」では上京をしてきた人への応援ソングとして書かれていたが、筆者は「東京」以降の作品は恋愛や失恋の歌詞が多くなっているように思えた。
「一切失恋はしてないですけど(笑)。昔からある曲はその時に失恋したりしていたんでしょうね。TOKYO RABBITの音楽においては感じたことがないようなことを書くことは絶対したくないと思っています。嘘を書きたくなくて。まったく経験していない内容のものがこのバンドを通じて世の中に出ることに対しては、変な感じがするんです。必ず何か思ったことしか言葉にしないから、作品としてその時の気持ちを真空パック作業するんですけど、その結果いいメロや歌詞だなとか、いいバランスだなと思ったものを世の中に出しています。別に今、自分が恋を引きずっているとかではないんですよ(笑)」(堂野)

何事にも器用なバンドだからこそ、アプローチとしてあえて恋愛の歌詞を書いているのかとも感じていたが。
「そういう意味では、あえて恋愛を入れましたね。あと、「SUN SHOWER」も最近書いた曲なんです。「#37 JIBUN LIFE」も今思ったことを書いています。それ以外の曲は若い時に書いた曲だから、そう言われると昔の方が恋愛をしていましたね」(堂野)
トサキユウキ(Gu)

トサキユウキ(Gu)

堂野の歌詞には彼の中で統一性があることが分かる。その他、EPを聴いてサウンドアプローチの幅広さがバンドの強みであること、そこに恋愛の歌詞が乗っているから幅広いリスナーに響く曲が揃ったのではないだろうかと強く感じることができた。
「嬉しいですね! この前、トサキに言われて印象的だったのが“TOKYO RABBITってただ遊んでるだけで面白いですよね”という言葉で。彼は全体的にバンドを見て言ってるんですよ。TOKYO RABBITって確かにただ遊んでるだけだと思ったんです」(堂野)
「ただ、やりたいことをやってるだけみたいな(笑)」(トサキ)
「映画を撮ったり、曲を作ったりね。でも、その空気感というか人生を楽しもうとしている感じはあっていいんじゃないかと思います。大人がいい歳になってもずっと遊んでる姿は逆に最初のバンドコンセプトに戻って“うさぎがアリス・イン・ワンダーランドへつまらない顔してる人間を引っ張って連れて行って遊ぶ”みたいなことを毎日考えてるわけじゃないですけど、それもいいと思いました」(堂野)

この自由な感覚、子供心があるメンバーだから生まれる楽曲なのだろう。確かに『うさぎのジャンプ』を聴いた第一印象は“面白いバンドだな”ということだった。その“面白い”という点が彼らの話を訊いて“無邪気さ”のような気がした。メンバーが思う本作の聴きどころとはどこなのだろうか。
「僕は自分が思っている強いメロディーの楽曲が揃ったので、その自信を持っているメロディーを聴いてほしいですね。いい作品が出来上がりました」(堂野)
「堂野さんがメロディーが強いと言いましたけど、楽器としては他のバンドでは気を使った演奏をすることが多かったのですが、TOKYO RABBITだとなんでも歌ってくれるし自由に好きなようにやらせてもらっているので、もし音楽をやってる人やこれからバンドをやりたい人がいたら単純に楽しんで聴いてもらえるんじゃないかなと思います」(阿部)
「僕の中では制作をする流れが今までと違ったかたちで作った作品なので、それがどう伝わるのか気になりますが、何も考えずにリスナーの素直な感覚で聴いてもらえたら嬉しいですね」(大塚)
「古さと新しさがいい感じに混ざった曲が揃っています。その点でもリスナーの層をなるべく広げたくてメロディーもサウンドも古いんですけど、今の若い人が聴いている古い感じの曲もあるし、音楽好きも楽しめるし、J-POP好きも楽しめるように意識をしました。だから、そういう意味でもそのサウンド感を聴いてほしいですね」(トサキ)
阿部樹一(Pf&Key)

阿部樹一(Pf&Key)

筆者もバンド経験者なので、演奏力の高い楽器の音にワクワクしながら本作を聴いた。阿部の言う通り、楽器経験者やこれからバンドに挑戦したい人も楽しめる作品だと思う。そして、『TOKYO RABBIT RECORDS』の強みでもある映像制作。TOKYO RABBITのMVは音楽と映像で楽しめる作品が多いが、映像制作は堂野が持つ感覚を一番引き出せるものなのだという。
「そこは僕が総合的にプロデュースしていますね。もともと、映像学部出身なんです。この間、自分が持つ感覚でどこが一番優れているか、脳を調べに行ったんですよ。テストみたいなものを受けて数値化されるんですけど、僕はミュージシャンだからもちろん音なのかなと思ったら、音は全然ダメだって先生に言われて(笑)。ちょっとショックなんですけど、視覚の情報量がめちゃめちゃ多くて、なかなか出ない数字だと言われました。いつもそうなんですけど、景色とか視覚にこだわるんですよね。なかなか共感してもらえないのですが、見た風景や物に対して一番相応しいメロディーが何かということに、変換する回路が人より太いということが調べたことで分かりました。だから、映像学部に行ったり、映像の方に行くのは、そりゃそうだよなと思いましたね。なので、音楽は他のメンバーに任せて、自分は映像をやろうかなと(笑)。2021年に長編映画を撮るんですよ。またそこで音楽が必要になったらこのバンドが活きてくるし、メンバーに助けてと言うはずです」(堂野)

作詞作曲をしている堂野からこの話を訊いて驚いたと同時に納得することができた。彼らのMVは背景の色味や景色、音とリンクした出演者の表情の流れなど、自然と視覚から音楽を楽しむことができる。この構成が堂野の感覚から生まれているのだが、科学的な根拠があることで一層強く納得した。バンドという表現では収められない“クリエイティブ集団”のTOKYO RABBIT。メンバーにとってTOKYO RABBITはどんな存在なのか。
「僕は先ほど話した、遊び場のようなものですね」(堂野)
「好きなようにやるですかね」(トサキ)
「トサキは仕事として音楽を振ると、言う通りに動かないんですよ。彼は自分の好きなように作ったらいいものになるから、それでいいんです。そういう意味ではわがままな人ですよ(笑)」(堂野)
「わがままではなくて、好きなものを作ってそれを聴いてもらえる時代じゃないですか。売り込みに行って聴いてもらえるわけじゃなくて、気軽に聴いてもらえるから頑張らなくていいんじゃないかな。自分のオリジナリティーを出していけばいいと思うんです。ただ、このメンバーで表現したい場所って感じですかね」(トサキ)

OKMusic編集部

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