【ザ・クロマニヨンズ
(デザイナー・菅谷晋一氏)
インタビュー】
アルバムのジャケットには
ストーリーがある
創作意欲が湧くというか、
背中を押してくれる音が出てくる
映画『エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット』より (C)2020「エポックのアトリエ」製作委員会
今回のアルバム『MUD SHAKES』のジャケットですけど、この蛇の図案というのはどうやって閃かれたんですか?
僕の中でアルバムのジャケットにはストーリーがあって…前作の『PUNCH』(2019年10月発表)ではボルトが落っこちてきたんです。そうすると重油がブワーッとあふれ出て、ヨシオ(マスコットキャラクターの高橋ヨシオ)が好きだった海が汚れてしまった。そこに、南米に“泥蛇”っていう蛇がいるんですけど、その泥蛇が泥と間違えてオイルの中に入ってきてヨシオたちを脅かした…というイメージで作ったんです。あとは、買ってもらってブックレットの中を見てもらうと、新たなストーリーがあるんで楽しんでください。
そのストーリーが脈々と続いているんですね!?
僕の中ではですけどね。ヨシオたちを追っていた探検家たちといろいろあって…とか。あとは、台詞のない絵を描いていて、それはファンの方が個々にどう思ってもらってもいいっていう。そういう流れで作ってます。
そのストーリーはメンバーに話したりは?
しますよ、プレゼンの時に。“今回はこうなっていて〜”とか。いつも“おぉ〜!”って聞いてくれてます(笑)。
ご自身的には今回のアルバム、どんな印象を受けました?
ライヴで観たいって思いました。今、こういう環境でライヴがどうなるか分からないですけど…早く収まればいいですよね。
映画『エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット』より (C)2020「エポックのアトリエ」製作委員会
ルーツを感じさせる曲が増えたような気がしますね。ブルースっぽい曲とか、「暴動チャイル(BO CHILE)」のボ・ディドリーのリズムとか。
あれ、カッコ良いですよね。勝治さんのドラムとかシビれました。
いろんなリズムパターンを試されているのが面白かったですね。
ほんと、“楽しんでいるな〜”って思いました。ますますライヴが観たいです。
以前にジャケットのデザインから生まれたセットがあったりしましたよね。
片手でCの文字を作っているセットがあったり。
『MONDO ROCCIA』(2009年10月発表のアルバム)の時ですね。あれ、僕の片腕を石膏で型を取ってジャケットに使ったんですよ(笑)。
映画『エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット』より (C)2020「エポックのアトリエ」製作委員会
立体物を作られるのは大変なのでは?
楽しいから作るっていう感じなんですけど、あっと言う間に時間がすぎて締め切りが来ちゃうから、そこは大変ですね。
その『MONDO ROCCIA』から全編モノラルとか、折り返しのあるフリップバックE式のジャケットとか、さらに深いこだわりが出てきた印象が。
フリップバックE式はイギリスとかヨーロッパ特有の当時のジャケットの作り方で、それまで僕は知らなかったんですけど、その時に“こういうジャケットを作りたいんだよ”って教えてもらって。The Beatlesの『ラバーソウル』を買って、その寸法を測って印刷会社に依頼して作りました(笑)。
それも楽しいですね。“MONO”と書かれたロゴ、60年代っぽいロゴデザインとかこだわっているなと思いました。
The Beatlesって年代によって“MONO”ロゴの大きさが違うんですよ。当時の一番大きい書体に揃えたり…あと、国内盤にしかない帯も面白いですね。
ここまで長く関わってこられて、菅谷さんはザ・クロマニヨンズのどこに魅かれているんでしょうか?
出てくる音楽じゃないですかね。それが一番ですよ。ライヴもすごいし。
音源がライヴに直結してますからね。
だから、創作意欲が湧くというか、背中を押してくれるふうな感じで音が出てくる。毎年、楽しみですね。
毎年、コンスタントに音源をリリースされていますからね。
では、今後のザ・クロマニヨンズに望むことというと?
ないですね。望むことと言ったら、彼らに限らず、音楽やってる人が自由にライヴできる世の中になればってことかな? 僕、アルバムを聴くとライヴを観たくなっちゃうから。
映画『エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット』より (C)2020「エポックのアトリエ」製作委員会
来年は菅谷さんのドキュメンタリー映画『エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット』が公開されるんですよね。
『PUNCH』の制作に密着して撮っていて、それがドキュメンタリー映画になります。さっきの話のように、“どこからアイディアが出てくるのか?”とか…まぁ、僕なりの作り方の話ですね。もともと僕が好きなのは、音楽とその周りにあるカルチャーなんです。かつて、ボブ・ディランとアレン・ギンズバーグがお互いに刺激し合ったみたいな関係ってカッコ良いじゃないですか。僕もそういうカルチャーが好きだから、レコードジャケットを楽しみながら作っている人がいるっていうのが届けばいいなと思って撮ってもらったんです。そういうカルチャーがなくなってほしくないのと、今またアナログレコードが盛り上がって面白がられているけど、ジャケットをデザインすることの面白さも分かってもらえればと思いますね。
ただ、CDのジャケットはコンパクトなので、デザイン的に冒険が難しいところもありますよね?
でも、今はいろんな意味で冒険している方もいますし、それを見て若い人たちが難しそうだと思うのがもったいないというか。なので、“音楽バカが作ってるジャケット、面白いよね”っていうのを観てもらえればいいかな?(笑)
そんな菅谷さんが“このジャケットにはやられた”という作品はありますか?
The Rolling Stonesの『メインストリートのならず者』ですね。買った時は分からなかったけれど、のちのち由来を聞いたらすごく意味が分かったんですよ。ジャケットを撮ったロバート・フランクはスイス人で、スイス人から見たアメリカを撮った写真がポストカードのように並んでるんです。このアルバムでThe Rolling Stonesが影響を受けたアメリカ南部の曲をやる、それは僕たちと同じ境遇だということなんです。The Rolling Stonesというイギリス人から見たアメリカ南部の音楽。そういう話を聞くと、よりグッときちゃう。僕たちも日本人だからアメリカを外から見ているわけで、その話がより分かったというか。このジャケットはレコードサイズで見てほしいですね、CDだと小さくなるので。
映画『エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット』より (C)2020「エポックのアトリエ」製作委員会
では、菅谷さん自身で手がけられたジャケットで、お気に入りというのは?
実は『PUNCH』のアナログ盤を中古盤ぽく加工してみたんです(笑)。しわくちゃになってもカッコ良いんですよ。フリップバックはしわになりやすいというところを生かしてみました。擦れて、より味わいが出たというか。エイジングしたらカッコ良かった!
ダメージジーンズみたいですね(笑)。
一緒ですよ。ギターも傷ついてこそカッコ良いものってあるじゃないですか。ファンのみなさんも各自でエイジングしてみてください(笑)。
取材:岡本 明
・・・
アルバム『MUD SHAKES』2020年12月2日発売
Ariola Japan
- 【CD】
- BVCL1103
- ¥2,913(税抜)
- ※初回仕様のみ紙ジャケット仕様(なくなり次第プラケースへ切り替わります)
- 【完全生産限定アナログ盤】
- BVJL 50
- ¥2,913(税抜)
- ※’60 年代フリップバック
- E式盤を可能な限り再現。 180g重量盤採用
・・
『ザ・クロマニヨンズ MUD SHAKES 全曲配信ライブ』
12/11(金) 開場20:45 / 開演21:00
・・
『エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット』
2021年1月8日(金)より
新宿シネマカリテ他にてロードショー!
公式HP:https://epok-film.com
(c)2020「エポックのアトリエ」製作委員会
ザ・クロマニヨンズ:2006年7月23日13時41分、『FM802 MEET THE WORLD BEAT 2006』に出現。その後、数々の夏フェスにも出現し、デビュー前から話題を呼んだ。そして、同年9月に待望のシングル「タリホー」でデビュー。22年1月に15枚目のアルバム『SIX KICKS ROCK&ROLL』、23年1月に16枚目のアルバム『MOUNTAIN BANANA』を発表。そして、24年2月に17枚目のアルバム『HEY! WONDER』をリリースし、同年2月16日より『ザ・クロマニヨンズ ツアー HEY! WONDER 2024』(全国43公演)を開催。ロックンロールをこよなく愛する4人が最強のロックンロールを響かせる!ザ・クロマニヨンズ オフィシャルHP
スガヤシンイチ:1974年3月30日生。アートディレクター/デザイナー。絵を描き、オブジェを作り、版画を刷り、写真を撮り、コラージュをし、映像のディレクションまで、ビジュアルをあらゆる手段で表現するデザイン・スタジオの代表。音楽関係、装丁、ファッション、コーポレート・アイデンティティ、ビジュアル・アイデンティティなどのデザインを主に手掛ける。菅谷晋一 オフィシャルHP
「暴動チャイル(BO CHILE)」