アナ雪「Let It Go」ヒットから探る
、歴代ディズニーアニメ主題歌の共通

(参考:『アナ雪』熱唱で改めて注目 歌手・松たか子の実力とキャリアとは?)

 まさに“異例”づくしの今回の『アナと雪の女王』。しかし、ディズニーアニメの主題歌と言えば、これまでにも数多くの名曲を生んでいる。今回はその中から印象的なものをいくつかピックアップしながら、楽曲の共通点を探ってみようと思う。

 『アナ雪』が登場するまで、ディズニー映画のサントラの中で国内最高の29万枚の売上を誇っていたのが『アラジン』(1993年日本公開)。劇中で歌われる「A Whole New World」は、全米No.1ヒットとなったほかアカデミー賞最優秀主題歌賞やグラミー賞ソング・オブ・ザ・イヤーなどを受賞した。注目したいのは作曲者のアラン・メンケン。彼はこのほかにも、前年の『美女と野獣』の「Beauty and the Beast」、『リトル・マーメイド』(91年日本公開)の「Under the Sea」など数多くの楽曲を担当してきた人物で、いわばディズニーアニメにおける神曲メーカー。彼が携わった作品は数ある中でも特に人気の高い/興行成績の良いものが多く、楽曲の良さが映画そのものの人気にも繋がった例と言えるだろう。

 また、名曲という意味で忘れてはならないのが、1940年に公開された『ピノキオ』(日本公開は52年)の劇中歌「When You Wish Upon a Star」(邦題:星に願いを)。当時は明確に主題歌という位置づけの楽曲はなく、挿入曲というかたちでいくつかの楽曲が使用されているが、中でも有名なこの曲は現代にいたるまで、さまざまなアーティストによってカバーされるスタンダードナンバー。アメリカ映画協会による、「映画史における偉大な歌100選」でも第7位にランクインしている。

 ディズニーアニメともなると、ポップミュージック界の大御所も喜んで駆けつけるようで、1994年の『ライオン・キング』にはエルトン・ジョン、98年公開の『ムーラン』でスティービー・ワンダーやクリスティーナ・アギレラ、99年の『ターザン』ではフィル・コリンズと錚々たるメンバーが参加している。極めつけは12年公開の『シュガー・ラッシュ』(日本公開は13年)で、なんとAKB48(アウル・シティー「When Can I See You Again?」と2本立て)をエンディングテーマに起用した。
 
 ディズニーアニメ映画のドラマはミュージカル形式で語られるものが多く、一般の映画作品よりも音楽の重要度は高いと思われる。キャラクターの心情を歌にしていたり、ストーリーをそのまま楽曲で補完していたりする点からもそれは明らか。劇中で流れる音楽はストーリーの感動と一緒に観客の心に刻まれる。その曲を聴いただけで名シーンが思い浮かぶような体験をさせることも、ある種の狙いではないかと思うのだ。一方で、昨今の日本映画などを見ると、主題歌と言うとタイアップが多く、友情の物語なのに、主題歌は恋の歌などとチグハグになってしまうことも少なくはない。ディズニーアニメ映画が77年にわたる歴史の中で変わらずに追求してきたのは、あくまでストーリーをより印象付けるための楽曲作り。曲だけ売れて映画は失敗(またはその逆)が少ないことが、戦略を物語っている。『アナ雪』の「Let It Go」のヒットも、この方式によるもの。作品が持つ芳醇な世界観を1つの曲で表現する。もっと言えば、主題歌が作品そのものと同意義ともなり得る。そんな主題歌の本分をまっとうした楽曲であることが求められているのだろう。(板橋不死子)

※筆者注:今回はウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの長編作品に対象をしぼって執筆しました。

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