渋⾕慶⼀郎のアンドロイド・オペラ『
Scary Beauty』初のUAE公演レポート
が到着

渋谷慶一郎によるアンドロイド・オペラ『Scary Beauty』が、2020年1月31日(金)アラブ首長国連邦(UAE)の文化都市・シャルジャに拠点を置く文化財団シャルジャ・アート・ファンデーション主催のフェスティバル『Inter-Resonance: Inter-Organics Japanese Performance and Sound Art』のトリを飾った。オフィシャルより、UAE公演のレポートが届いたので紹介する。

アンドロイド・オペラ『Scary Beauty』とは、人間とのコミュニケーションの可能性を探るために開発された人工生命✕アンドロイド「オルタ3」が、人間のオーケストラを自ら指揮し自ら歌う世界初のアンドロイドによるオペラ作品である。
本フェスティバルは、長谷川祐子氏(東京都現代美術館参事)がキュレーションを務め、自然界と物質性の新たな関係性を彷彿させるパフォーマンスアート及びサウンド・インスタレーションに焦点を当て、シャルジャの様々な場所で作品を発表し、人間と非人間の相互関係における日本ならではのアニミズムの哲学を体現。
アンドロイド・オペラ『Scary Beauty』の中東初公演は、同フェスティバルのトリとして昨年2019年の9月に新設されたばかりのSharjah Performing Arts Academy(シャルジャ・パフォーミング・アーツ・アカデミー)にて、現地のオーケストラNSO Symphony Orchestra(UAE)とのコラボレーションによって実現した。
シャルジャ・アート・ファンデーションは、2009年にアラブ首長国連邦の最高評議会のメンバーであるスルタンビンムハンマドアルカシミ氏のご息女であられるフールアルカシミ氏によって芸術・文化支援を目的として創設された財団であり、アートフェスティバルの開催など創設以来、先鋭的な活動を行っている。
暗転したステージで「オルタ3」が青い光に照らされる中、コンピュターによる電子音と「オルタ3」の声の反復が会場に充満し、開演に近づくにつれて「オルタ3」の声の反復が増幅。ステージに渋谷慶一郎が入場すると、ピアノとコンピュータによるソロ演奏が開始された。その後、現地のオーケストラNSO Symphony Orchestra(UAE)が⼊場、各セクションのチューニングが終わると会場は暗転し、いよいよ「Scary Beauty」の本編がスタートする。初めて見るアンドロイド、通常ではありえない形式のオペラの開始にシャルジャの観客は固唾を飲んでステージを見つめており、客席のボルテージは静かに上がっていくのが見てとれた。
そんな中、突然「オルタ3」のさらに変調、歪められた声が会場に響き渡り、ウィリアム・バロウズのテクストによる1曲目、「The Third Mind」が始まる。「The Third Mind」は渋谷慶一郎とオーケストラが「オルタ3」の指揮に翻弄され、激烈な音のぶつかりが繰り広げられる作品。オーケストラとバロウズのテクストがコンピュータ変換された音の断片を用いて音楽を組み立てていくことで、2度と同じ演奏が起こりえないものとなっている。
1曲目が動的な「オルタ3」とオーケストラの協働とすれば、2曲目の「Introduction」は続く3曲目のメインタイトル「Scary Beauty」の長大なイントロダクションとも言える曲で、やはり断片化された楽譜を「オルタ3」の指示によりオーケストラが重ねていくことで、「音の海」のような状態を作り出していく。スクリーンに映し出された「オルタ3」の表情や指示する手や指の動きと音楽は呼応しあい、そのことが客席に伝わることで調和と緊張の均衡を作り出していた。
人々が驚きの表情を残すなか、演目はメインタイトル「Scary Beauty」へと移行。前半の2曲とは異なり、明確な拍節やリズム、メロディを持つこの曲でさらに客席のボルテージは上がっていく。自らが指揮するオーケストラのアンサンブルに反応し、照明が乱反射するステージで「オルタ3」は時に客席に向かい歌い、時に客席に背を向け指揮に没頭する。そして、序盤では「オルタ3」の指揮によって音楽的なカオスの海の中にいた渋⾕慶⼀郎とオーケストラの演奏が、徐々に高揚する指揮や歌と一体となり演奏を終えた瞬間、会場は最初のクライマックスを迎えた。
続く「The Decay of the Angel」と「On Certainty」でも、アンドロイドが自ら歌いながら指揮をするというこのオペラならではのパフォーマンスが展開され、途中「オルタ3」自身が観客に向けて一礼するシーンでは大きなどよめきが起きる一幕も。
本編全5曲が終わり、アンドロイドのプログラミング、演出を担当したことぶき光とオーケストラが「オルタ3」と一緒に礼をすると、立ち上がって拍手をする観客も現れ、アンコールで「オルタ 3」と渋谷慶一郎のピアノソロによる「Scary Beauty」が演奏されると、⼤きな拍⼿が巻き起こり公演は幕を閉じた。
公演後のステージやバックステージには中東諸国のフェスティバル関係者や政府関係者、プレスが押し寄せ、その場で次回公演の具体的なオファーが殺到。大きな反響を残した初のUAE公演は、今後この地域での更なる活動の発展を予感させる。

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