田部京子インタビュー「ブラームス 
ピアノ・ソナタ第3番に抱く、特別な
想い」 『ピアノ・リサイタル シュ
ーベルト・プラス第6回』

2019年12月12日(木)浜離宮朝日ホール にて、田部京子が『ピアノ・リサイタル シューベルト・プラス第6回』を開催する。リサイタルで演奏するブラームスのピアノ・ソナタ第3番は、田部にとって特別な思い入れのある作品だという。ドイツ留学時代の青春をかけたという、その背景とは……。インタビュー記事が届いたので紹介する。
特別な作品、ブラームス第3番
ーー今回のメイン・ピースはブラームスのピアノ・ソナタ第3番ですね。
ドイツ留学から帰国した直後の92年にデビュー・リサイタルで弾いた特別な思い入れのある作品です。若き情熱と成熟したロマンティシズムが混在していて、すごく遠くを見つめているような壮大な世界観が構成美の中で繰り広げられます。ピアニストとしては、そのすべてを伝えたいという熱い想いにかられます。
10代の頃、ブラームス作品はどう弾くべきなのかわからず距離を感じる音楽でした。留学でベルリンに到着したその日の晩、くたくたの身をひきずってベルリン・フィルハーモニーホールに行くと、クラウディオ・アバド指揮=ベルリン・フィルでブラームスの交響曲第3番を聴けたのです。その演奏に心を奪われ、ブラームスの虜になりました。
朝から晩までブラームスの交響曲1~4番を繰り返し聴いていた時期があり、徐々にピアノ・ソナタに取り組みたいと思うようになりました。
ブラームスの音楽には緻密な音の層があります。低音の土台の上に上声部を支える中声部があり、メロディーとハーモニーが何層にもなった声部間で立体交差のように絡み合っています。交響曲では指揮者がバランスや表現などを考えてオーケストラを指揮していきますが、ブラームスのピアノ・ソナタでは、ピアニストが指揮者でありオーケストラの各パートの奏者でもあるという感覚で、その挑戦が楽しく、ベルリン時代の青春の一ページです。
時を経て熟成
ーー今この曲を弾くことにしたのはなぜですか?
近年はブラームス晩年の小品を好んで弾いていましたが、昨年ブラームスのピアノ協奏曲第1番を演奏する機会があり、この若きブラームスのピアノ・ソナタをまた弾きたいという気持ちがじわじわと高まっていました。しばらく離れている作品でも、さまざまな人生経験や演奏経験を経て、音楽家の中では熟成するようで、年月が経って改めて接してみると新たに見えてくるものが必ずあります。今回はその辺りも含めつつ、いつでも新鮮な感動を覚えるこのソナタの偉大さを伝えたいと思います。
シューベルト、シューマンも
ーーシューベルトの周辺の音楽がテーマの演奏会ですね。
今回はシューベルトの晩年の作品で、友人との惜別あるいは人生への惜別までも予感させるような アレグレットを冒頭に弾きます。シューマンの『子供の情景』は、シューマンのファンタジーの世界をシンプルに凝縮した作品です。少年のようなシューマンの素顔を率直に描きたいと思います。
聞き手・構成:武内雄平(朝日ホール総支配人)

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