親交の深い細田守監督(右)と堤大介監督

親交の深い細田守監督(右)と堤大介監督

細田守監督「未来のミライ」公開時の
不安と気づき 堤大介監督と語り合う

親交の深い細田守監督(右)と堤大介監督 堤大介監督と細田守監督が5月17日、東京・EJアニメシアター新宿で開催中の「トンコハウス映画祭」でトークショーを行った。ピクサー・アニメーション・スタジオ出身で、ロバート・コンドウとの共同監督作「ダム・キーパー」が第87回アカデミー賞短編アニメーション賞にノミネートされた経歴を持つ堤監督と、「未来のミライ」が第91回アカデミー賞の長編アニメーション賞にノミネートされた細田監督。世界から注目を集める2人が、作品の国内外評価に対して思うこと、そのなかで作品とどう向き合うか、作品を世に出すことへの“不安”や“気づき”を語り合った。
 堤監督のピクサー在籍時に、細田監督作「おおかみこどもの雨と雪」を同スタジオで上映して以来、親交を深めてきた2人。「細田さんにしか作れない作品を作っている」と話し、細田作品のファンを公言している堤監督は、「聞きたかった質問があります」と切り出すと、「未来のミライ」公開時のエピソードを明かした。
 「去年、細田監督と会って飲んだ時。ちょうど『未来のミライ』が日本で公開されて、それなりに売れていたのですが……細田監督のこれまでの成績を考えると期待がものすごく高かったので、監督は少し落ち込んでいたというか。良いことも言われれば、いろんなことを言われるわけじゃないですか」と日本公開時を振り返り、「その後海外で公開されると、去年の秋くらいから『未来のミライ』がアメリカで話題になっていったんです。いろんな業界の評論家や新聞が大絶賛して。文化も違うし国も違うので、いろんな反応があって当たり前だと思うのですが、僕はそれがすごくうれしかった」と海外での評価を告白。そのうえで、「これから細田さんが作る作品は、日本だけじゃなく、海外の人も待ちに待っている。そのなかで、作品を海外に出していくことをどのようにとらえていますか?」と質問を投げかけた。
 これに対し、細田監督は「僕らが作っているものは工業製品ではないですよね。僕らは映画を作っていて、映画というものが一種の大衆芸術だとすれば、『世界ってもっと広いんです』ということを表現するために映画や芸術はあると思うんです。だとすれば、自分が身近で感じていることを、勇気を持って堂々と作ることが、インターナショナルな世界で見てもらえる資格があるような作品にするための、ひとつのポイントではないかと思ったんです」と説明する。
 さらに「でも、これは難しいことです」と続けると、「例えば『未来のミライ』は、僕の2人の子どもがモデルなのですが、日本で作る時点で、既にそれが障害のようになっていた。作る前から『そんな地味な話を、夏の興行で作るってどうなの』みたいな話が出てきました。『海外に持っていくとしても、そんな個人的なことを世界中の人にどうやって見せるの?』という話もあったんです。でも、こういった個人的な話が、実はインターナショナルな世界と通じているんだということを、僕も(アカデミー賞に)ノミネートされてやっとわかったんです。作っている時はわかっていませんでした」と述懐。「日常や人生のなかで感じていることって『とるに足らないことだ』と思っちゃうじゃないですか。『でも、そうじゃない。価値があるんだ』と、自信を持つことが大事だなという気がしました」と“気づき”があったことを明かした。
 「トンコハウス映画祭」は、アニメーションスタジオのトンコハウスがセレクトした世界のアニメーションを、5つのプログラムにわけて上映するほか、アニメクリエイターらによるワークショップやトークショー、トンコハウスカフェなどを実施。5月26日まで開催される。

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