クラフトビール好きによる、クラフト
ビール好きのための、クラフトビール
三昧のイベント『ニッポンクラフトビ
アフェスティバル』の充実ぶりを体験
レポート

『第27回 ニッポンクラフトビアフェスティバル 2019 in すみだ』

2019年3月30日(土)、31日(日)すみだリバーサイドホール
今回おじゃましたのは、クラフトビールのイベント『第27回 ニッポンクラフトビアフェスティバル 2019 in すみだ』である。
そのイベント内容をご紹介する前に、クラフトビールについて、ご存知の方もいると思うが、少々説明しておきたい。
日本では酒類製造免許というものがあり、ビールに限らず勝手にアルコール飲料を作ってはいけない。中でもビールは年間最低生産量が2000キロリットル以上(大瓶換算で約316万本弱!)作れなければ、作ってはダメと決められていた。それが1994年の酒税法の改正により、ビールの最低年間生産量が60キロリットル(大瓶換算で約9万5000本弱)へ大幅に引き下げられた。これによりビール作りのハードルが下がり、現在のクラフトビールが生まれたのである。「地ビール」とも呼ばれるが、少量生産ならではの技術や品質は、大量生産のビールとは違った味わいがとても魅力。その技術的な面から「クラフトビール」と呼ばれるようにもなった。
日本のクラフトビール誕生のうんちくはこのくらいにして、早速会場へ。会場は墨田区役所に隣接している「すみだリバーサイドホール」。各種シンポジウムや音楽イベントにも使われているホールである。受付でチケットと引き換えで、10枚綴りのドリンクチケット、今回飲むことができるクラフトビールと概要の冊子、ビールカップを受け取り入場。

ホールの中央に1番から45番までの番号のふられたビールサーバーが、ぐるりと陣取っている。今回は日本のクラフトビールメーカー20社から36種類、アメリカから1社2種類、イギリスから1社1種類のビールが会場に集合。それに加えて「桜ビール特集」と称した特別企画で、味わいや色など桜をモチーフにしたビールが6種類。合計45種類のクラフトビールが楽しめた。
ドリンクチケットは10枚綴りなので、どれからいただこうかじっくり吟味である。と言いつつビールは1番の北海道から順に並んでいるので、まずは1番からいただいてみた。淡い琥珀色になめらかな泡立ち。ゴクリ、うーん、飲みやすい! クラフトビール特有の香りが弱く、思わずゴクゴク飲んでしまった。飲んだあとに確認したら、1番は北海道ビールピリカワッカのピルスナーであった。
大まかではあるがビールは、上面発酵のエールと、下面発酵のラガーに分けられる。ラガーの名前は、そうそうあのキリンやサッポロのラガービールである。下面発酵は低い温度でも発酵が進むので、雑菌が繁殖しにくく、大量生産に向いている。というわけで大手メーカーのビールはほとんどが下面発酵のラガービールに属するのだ。逆にエールビールは少量生産に向いている作り方と言える。
では、2杯目は栃木県のプレストンエールのペールエールをいただいてみる。ペールエールは上面発酵の中でも「味と香りがミディアムなので最初の1杯に!」と冊子に書いてありました。そうそう、これこれ、これがクラフトビールの王道の味わい。爽やかな苦味と、バランスの取れた味はずーっと飲み続けられそう。これも旨いね! ちなみにこのプレストンエールはホームセンターでお馴染みのジョイフル本田のホンダ産業が母体とのこと。
続いて3杯目は少々趣向を変えて、東京都のストレンジブルーイングのニューブラックスタウト。黒ビールである。ギネス以外あまり馴染みのない黒ビールだが、一口飲んで驚いたぁ。ブラックコーヒーというか、ビターチョコレートというか、鼻に抜ける複雑ながら上品な香りが絶品。女性にも人気のありそうな黒ビールである。
4杯目は秋田県のあくらビールのなまはげIPAをいただいてみる。IPAとはインディアペールエール。インドにペールエールを運ぶ際、長い航海を乗り切るため、防腐剤の効果もあるホップを大幅に増やしたのがIPAである。ペールエールに比べると香りも苦味も強く、一度好きになると癖になる味だ。
立て続けに4杯いただいた。注がれる量は100ccが目安だが、ちょっと多めな感じ(注ぎ手の個人差もあるが)なので、中瓶1本ぐらい飲んだ感じである。ここで一息入れて、フードコーナーへ行こう。ポップコーンなどの乾き物から、チーズ、ポテトサラダ、砂肝のコンフィ、エスニック風のエビ料理、煮込みなどなど、クラフトビールのさまざまな味に合うメニューがずらりと並んでいる。フードとビールの無限ループの始まりである。

ステージでは来場者参加のじゃんけんイベントがおこなわれたり、ミニライブがあったりとますます賑やかな雰囲気に。
会場のある隅田川沿いの隅田公園は、江戸時代から続く桜の名所である。今回のイベントは3月末の土日で桜にドンピシャ。たくさんの花見客が公園で桜を愛でていた。

というわけで「桜ビール特集」も味わってみることに。6種類の中から田沢湖ビールの桜こまちをいただく。う~ん、これは華やかな香りと味で、清涼感抜群である。ダジャレではないが、苦いのが苦手な人(この会場にはあまりいないと思うけど)にはいいかも。この「桜ビール特集」のビールは早い時間に売り切れてしまった。
参加者に目を向けてみよう。ビールのおかげでやや饒舌に「クラフトビールが好きなんです。このイベントは、ここのところ必ず参加してるの。ビールのイベントは他にもあるけど、一度にこんなにたくさんの種類のクラフトビールが飲めるのはこのイベントだけですよ」と、かなりの常連さんである。
また、神奈川県からいらっしゃった女性二人組の方は「普通のビールよりクラフトビールのほうが好きなんです。あまりお酒に強い方ではないので、このイベントは1杯1杯味わって飲めるのがいいですね。6月も参加する気まんまんです」とこちらも上機嫌である。
男一人で来たという大学生は「クラフトビールって、お店で飲むと普通のビールより割高じゃないですか。だから色んな種類を飲みたくてもなかなか飲めないんです。このイベントはそういう意味ではコストパフォーマンスがとてもいいんです。ドリンクチケットを買い足して、たくさん試しているんです」と男らしい飲みっぷり。
どうしてこんな人気があるのだろうか。主催の実行委員会の方に訊いてみた。
「この『ニッポンクラフトビアフェスティバル』は、一般的な食やお酒のイベントとは開催の仕方が違うんです。通常は主催者が企画を立てて、場所を確保し、出店者を募ります。出店者は出展料を払って、会場でお客様に商品を売るわけです。でも、私たちのこのイベントは、企画の趣旨をご理解いただいたクラフトビールメーカーさんからビールを買い取ります。そして来場のお客様から参加費をいただいて、飲んでいただくというわけです。ですからビールをお注ぎしているのはメーカーさんではなく、クラフトビール好きのボランティアの皆さんなんです」
なるほど、通常の食のイベントなどでみられる、呼び込みのような商品のアピールが聴かれないのはそういうことなのだ。主催者もボランティアスタッフも、そして来場者も、この会場にいる全員がクラフトビール大好きというわけ。
『ニッポンクラフトビアフェスティバル』はその名の通り、クラフトビール好きが本当に楽しめるお祭りなのである。
さあ、残りのチケットを無駄にしないように、クラフトビールをじっくり味わおう。まぁ、もっと飲みたくなったらドリンクチケットは追加購入できるんだけどね。
取材の日はきっちり10杯、さまざまなクラフトビールを楽しむことができた。少しほろ酔いになりながら、6月も参加しようとチラシをもらって帰ったのである。
※お酒のイベントの大原則は「飲み過ぎ注意!」なので、充分お気をつけください。
6月1日~2日には『第28回ニッポンクラフトビアフェスティバル2019 in すみだ』が同じ場所で開催予定。詳しくはhttp://www.craftbeerfestival.org/まで。
取材・文=ハルマキケンジ 撮影=SPICE編集部

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