【Sasanomaly インタビュー】
自分の音楽の置き場を考えた
UKクラブミュージックの新世代ジャンル“Wave”の流れを汲んだサウンドデザイン、初期衝動を感じさせるアッパーなビート展開、Joe Cruzとのアートワークコラボ…覚醒したSasanomaly、新展開に要注目です!
今作、攻めてますよね。さらに一歩踏み出したなと。
今までやってこなかったことをやろうって。おかげで時間がかかりましたね。修行の期間があったんですけど、結果的に納得できる作品となりました。
機材環境なども変化がありましたか?
はい、今回のために全財産を使い果たしたというか(苦笑)。1年間、情報収集だったり新しい機材を買ったり。
自分になかった要素を取り入れたということですか?
そうですね。今までSasanomalyとしては出してこなかった要素を。Spotifyなどストリーミングサービスによって世界中のさまざまな音楽に触れやすくなってるじゃないですか。そこからの影響は大きかったですね。そこで僕の曲も聴いてもらうためにはどうすればいいか、自分の音楽の置き場を考えたんです。
なるほど。新たなサウンド表現へとチャレンジされながらも、もともとあった要素も感じられました。
ありがとうございます。自分の根底にある変えられない血というか、Sasanomalyとして変わらない部分があるのかもしれませんね。
“Wave”というジャンル表現の、どんなところに惹かれましたか?
“Wave”をやっているクリエイターは若い層で、ベッドルームで音楽を作っている子たちなんですよ。僕自身の音楽を作る姿勢とは真逆だったんです。そういう音楽を作っている方たちは、難しいことを考えることなく音楽を作るんですよね。ツールを駆使してより感覚的に音楽と向き合っているんです。そのツールも比較的、手に取りやすい環境となっていて。その瞬発力がいいなと。それこそコーヒーを飲むかのように作曲ができる環境というか。デジタルツールとの距離感の近さゆえですよね。自由に作られているなって。そこに羨ましさを感じたんです。
今回、久々に配信で「MUIMI」をリリースとなりますが、今後もリリースは続いていく感じなのでしょうか?
修行というか苦行というか、いろんなものを取り入れまくった1年で、自分なりに消化してきました。それによって「MUIMI」が生まれて。今回得たもので、すでに何曲か作っていますね。
一曲一曲を大事に、スピード感を持ってリリースしていく時代になりつつありますもんね。新曲のタイトルが“MUIMI”に至った経緯を教えてください。
人間の大きな命題で、生きる意味ってあるじゃないですか。どんな人でも何かしら存在する意味があると思うんです。でも、自分の中で矛盾があるのが、僕自身に意味があるのかって葛藤や問答がずっとあって。人には意味を伝えられるんですよ。でも、自分だと難しくて。僕が思う無意味と思うものとの付き合い方? ずっと付きまとう無意味とどう付き合っていくか、生きていくかを僕が表すとしたら“これですよ”って歌詞で。
自分との対話、内面における葛藤が表れてますよね。
今回はこもる期間が今までで一番長かったおかげで、考える時間もより長くなったんです。だから、新しいことをチャレンジする上で、自分の意味をより考えることになったんです。今までは音のスタイルが決まっていて、“これが僕だ!”って思っていたんですけど、それを壊した時に何が残っているのか。「MUIMI」では、その経過を言葉化していますね。
ミュージックビデオでは全面的に本人が登場されていて驚きました。映像表現もテックな感じというか、新しさがあって。自信がある感じも良かったです。
「MUIMI」を表現する上での組み合わせとして最適な表現となりました。自信があるように見てもらえるのは嬉しいです。
アートワークもこだわりがありますよね。adidasやSTUSSY、G-SHOCKなどを手がけるコラージュアーティストのJoe Cruzとコラボレーションという。
もともとJoe Cruzが好きで。一緒にできて嬉しかったですね。これまでの自分だったらJoe Cruzにお願いするなんて発想すら出てこなかったと思うんです。今回、考え方が変わったことでいろんなことがスムーズに進んでいきました。
これまではコンセプチュアルな世界観で完璧主義に構築されてきたイメージがありますもんね。
アートワークは嬉しかったですね。今回はお任せでしたから。
修行中は具体的にはどんなことを?
Spotifyで聴ける世界のチャートをチェックしてましたね。自分が聴きたいものは年代が少し前のものになってしまうので、それを避けて今の時代の音を中心に。あと、いろんなシンセサイザーを買いました。Vengeanceとかソフトウェア音源も。これまではあまりシンセを使ってこなかったんですよね、得意じゃなかったので。音を録音してのサンプリングが主体だったんです。なので、シンセをどうやって自分のものにするかが大変でした。
そこが時間がかかったということなのですね。
これまでの制作方法は足し算がメインだったんです。でも、この手のサウンドは引き算なんですよ。音数をいかに減らした上でどう空間を扱っていけるか。あと、ローとハイの出方のバランスですね。限界値とかバランスを考えまくりましたね。
その結果、新しいサウンドに辿り着いたと。この期間、どんなアーティストにはまりました?
僕の中で普通ではなかった音楽をたくさん聴いてました。分かりやすいところだったらドレイクも僕にとって驚きだったんですよ。たくさん音楽を聴ける時代だからこそ、人によって選択肢が変わってくるんですね。そこを自分なりに見極めた1年でしたね。
取材:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
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配信シングル「MUIMI」2018年11月14日より配信開始
Sony Music Associated Records
ササノマリイ:エレクトロニカ、クラブミュージックに深い影響を受け、耳に残るメロディーラインと融合された深度のあるサウンドデザインが特徴的なビートメイカー/プロデューサー/シンガー。2017年には映画『3月のライオン』の主題歌になったぼくのりりっくのぼうよみの「Be Noble」のサウンドプロデュースをするなど、プロデューサーとしても多くのアーティストの作品に参加。また、過去の映像作品が動画サイトvimeoのstaff picks、『アヌシー国際アニメーション 映画祭 2016』委託作品部門(フランス)、『Anifilm』(チェコ)、『Golden Kuker-Sofia』(ブルガリア)など数々の映像、アニメーションフェスティバルにて入賞するなど、音楽のみならずアート方面での注目度も高い。 Sasanomaly オフィシャルHP
「MUIMI」MV